2019年3月25日 (月)

ピュー・リサーチ・センターによる米国の将来に関する世論調査結果やいかに?

先週3月21日に米国の夜狼調査機関であるピュー・リサーチ・センターから米国の将来に関する世論調査 Looking to the Future, Public Sees an America in Decline on Many Fronts の結果が明らかにされています。米国市民は米国の世界的な重要性は低下し、格差がかくだするとともに、政治的な分断が広がるとの懸念を持っており、将来世代の生活の質の(QOL)の向上のためにヘルスケアと教育に対する政府支出の増加が必要と考えている、との結論となっています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
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まず、ピュー・リサーチのサイトから米国の将来に関する見方のグラフ Public is broadly pessimistic about the future of America を引用すると上の通りです。米国の重要性の低下が60%、格差の拡大が73%、政治的な分断の拡大が65%、とそれぞれ多数を占めています。特に、最後の点では、政党間の見方の差が大きい政策として、環境保護、高齢者へのサポート、そして、教育を上げています。経済的な物が多くを占めそうな格差問題については、ますます格差拡大の方向に向かうと多くの米国市民は受け止めているようです。
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次に、ピュー・リサーチのサイトから政府支出の重点項目に関するグラフ Majorities say increased government spending on health care, education would improve life for future generations を引用すると上の通りです。大雑把に、将来世代の生活の質の(QOL)の向上のためにヘルスケアと教育に対する政府支出の増加が必要と見なされているようです。
今回の調査は2050年を念頭に質問しており、私なんぞはもう人生を終えている気がするんですが、米国民は将来についてはかなり悲観的な印象を持っているとの結論です。tだし、グラフは引用しませんが、ほぼ30年後の2050年の生活水準を問うたところ、18歳以上の大人全体では悪化44%に対して改善20%なんですが、18~29歳ではに対して悪化36%改善28%と、例えば、私と同じ世代である50~64歳の悪化49%、改善15%と比較すれば、もちろん、悪化の割合が改善を上回るにせよ、若い世代の方が相対的に楽観的な見方を示しているようです。古市説に基づく若者観を持ち出すまでもなく、日本も同様な気がするんですが、このあたりが救いなのかもしれません。

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2019年3月24日 (日)

世間に遅れつつも POLYPLUS 『debut』 を聞く!

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とてもユニークな活動を続けてきた POLYPLUS がCDデビューしています。CDは出さない、ホームページも作らない、ライヴしかしない、そして、それぞれが多忙なバンドマンでありながら、ユニークな活動形態を貫いてきたグループですが、結成4年にして初のフル・アルバム『debut』を昨年2018年9月にリリースしています。メンバーは、CalmeraのTSUUJII(サックス)、175RのYOSHIAKI(ドラムス)、JABBERLOOP/fox capture planのMELTEN(キーボード)、同じくJABBERLOOPからYUKI(ベース)ですから、いわばジャズとロックの混合バンド、昔の言葉でいえばフュージョンということになるのかもしれません。収録されているのは以下の9曲です。
  1. we gotta luv
  2. ratz
  3. m'n'dass
  4. ppps
  5. wake me up (cover of Avicii)
  6. tokyo class
  7. sugar
  8. late at night
  9. limiter
私は不調法にしてこのグループのライブは聞きに行ったことはないんですが、さすがに、ライブ感を彷彿とさせる構成となっています。キーボードを演奏しているMELTENのfox capture planの印象と同じで、中毒になるような繰り返しのフレーズが多用されていて、ノッケのwe gotta luvではサックスによりリフレインされていたりします。私は圧倒的にモダン・ジャズですので、少しクラブのダンス音楽とは距離をおいているんですが、エラそうな表現を許してもらえるのであれば、それなりに、聞ける音楽です。大昔のスイング・ジャズと同じと考えていいのかもしれません。50年前のモダン・ジャズ中心ながら、こういった進化した21世紀のジャズも同時に聞きたいと思います。

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2019年3月23日 (土)

今週の読書は経済書より小説が多く計8冊!

今週も文庫本を含めて小説の数が多く、経済書は少なくなっていますが、話題の本も何冊か含まれています。来週くらいまでは数冊の読書ペースを維持したいと考えていますが、来週限りで公務員を定年退職しますので、4月に入れば読書ペースを大きく落として再就職先を探すのをがんばりたいと思います。
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まず、牛山隆一『ASEANの多国籍企業』(文眞堂) です。著者は日本経済研究センターの研究者です。本書では、タイトル通りに、ASEAN諸国、本書ではASEANオリジナルのインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポールの5か国に加えて、ベトナムを加えた6か国の多国籍企業をリストアップしています。従来から、東アジアの中国も含めて、先進国からの直接投資を受け入れる形で経済発展が図られてきた、日韓が国内資本による経済成長を実現したのとは大きく異なる形での経済発展として捉えられてきましたが、1990年台からASEANの東南アジア諸国では、受け入れる対内直接投資だけではなく、対外直接投資を積極的に実施する企業が増加している現状を、基本的に国別の企業レベルで取りまとめています。すなわち、シンガポールやマレーシアについては国策として国営・公営企業やソブリン・ウェルス・ファンドからの投資も含めて、対外投資を実行しており、タイやインドネシアやフィリピンなどは民間企業が、ベト並みは社会主義経済ですので国営企業が、それぞれ表立って対外投資の主役となっています。また、従来、1990年台から貿易に関しては欧州以上に東南アジアでは域内貿易の比率が高くなっているんですが、直接投資についても同様であり、ASEANなどの東南アジア域内の相互の直接投資の比率が高くなっているようです。ただ、本書では記述統計というか、現状どういった企業がどの国に多国籍企業として展開しているか、という点についてはそれなりに詳しいリサーチがなされているんですが、誠に残念ながら、その背後の経済的な諸用因については目が届いていません。例えば、日本に歴史を紐解くまでもなく、我が国では製造業が対外直接投資の主役であり、その要因としては、米国などの先進国に対しては関税や輸出自主規制などの貿易制限的な制度を回避するため、途上国に対しては現地の安価な労働力を活用するため、というのが極めてステレオタイプながら、典型的な理解だったような気がします。他方で、本書で取り上げられているASEAN[の多国籍企業は、通信や運輸が世界的な展開を志向するのは理解できるとしても、それなりに国別の差の大きい食生活で外食産業が海外展開しているのはなぜか、私はとても興味がありますが、本書では踏み込み不足という気もします。実は、例えば、我が国でもカフェをはじめとしてハンバーガーやフライドチキンなどのファストフードも含めて、海外の外食産業はかなり多く日本国内で事業展開しています。ASWEANでも基本的に同じことだとは思うんですが、日本でいえば牛丼やうどん・そばなどの伝統的な外食産業との共存関係も気にかかるところで、多国籍企業だけを単独で分析することは限界があります。ただ、海外事情については、かなり身近なASEANであっても、これだけの情報が利用価値高いんでしょうから、まだまだ入手の壁が高いのかもしれません。
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次に、ステファニー L. ウォーナー & ピーター・ウェイル『デジタル・ビジネスモデル』(日本経済新聞出版社) です。著者2人は米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のビジネススクールの研究者です。本書の英語の原題は What's Your Digital Business Model? であり、2018年の出版で、邦訳は模村総研だったりします。本書では、タイトル通りに、デジタル・ビジネスモデル(DBM)に関して、最近のビジネス書でも共通限度と説得力あるフレームワークが欠けていると主張し、副題にある6つの問いとは、1.脅威:あなたの会社のビジネスモデルに対して、デジタル化がもたらす脅威はどれほど大きいか、2.モデル:あなたの会社の未来には、どのビジネスモデルがふさわしいか、3.競争優位:あなたの会社の競争優位は何か、4.コネクティビティ:「デバイスやヒトとつながって(コネクトして)学びを得る」ために、モバイル技術やIoTをどのように使いこなすか、5.能力:将来のためのオプションに投資するとともに、必要な組織変革の準備をしているか、6.リーダーシップ:変革を起こすために、すべての階層にリーダーとなる人材がいるか?であり、その上で、4つのフレームワークを以下のように示しています。1.サプライヤー:他の企業を通じて販売する生産者(例:代理店経由の保険会社、小売店経由の家電メーカー、ブローカー経由の投資信託)、2.オムニチャネル:ライフイベントに対応するための、製品やチャネルを越えた顧客体験を創り出す統合されたバリューチェーン(例:銀行、小売、エネルギー企業)、3.モジュラープロデューサー:プラグ・アンド・プレイの製品やサービスのプロバイダー(例:ペイパル、カベッジ)、4.エコシステムドライバー:エコシステムの統括者。企業、デバイス、顧客の協調的ネットワークを形成して、参加者すべてに対して価値を創出する。特定領域(例えばショッピングなど)において多くの顧客が目指す場所であり、補完的サービスや、時にはライバル企業の製品も含め、よりすばらしい顧客サービスを保証する(例:アマゾン、フィデリティ、ウィーチャット)、となります。これは、本書p.13の4象限のカーテシアン座標の図を見る方が判りやすいかと思います。大企業などでは、複数のフレームワークに基づく事業展開をしているものもある、と指摘しています。いつもながら、ビジネス書ですので極めて多数のケーススタディを実行していて、サクセスストーリーを数多く紹介しているんですが、その背後にどれくらいの失敗例があるのかは不明です。さらに、成功例について、売上げの伸び率が高いとか、利益率が高いとか、いくつかの数値例を上げていますが、これにつては逆の因果が成り立つ可能性を指摘しておきたいと思います。すなわち、デジタル・ビジネスモデルを確立した事業だから利益率が高い、という因果の流れではなく、逆に、何らかの他の理由で利益率が高いので、デジタル・ビジネスモデルの確立のために豊富なリソースを割くことができる、という可能性です。利益や売上げとR&Dの関係には、一部に、こういった因果の逆転が見られる例もあったのではないかと私は記憶しています。まあ、経営に関する私の知識には限りがあります。
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次に、ハンス・ロスリング & オーラ・ロスリング & アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS』(日経BP社) です。著者はTEDでもおなじみのスウェーデン人医師とその息子とその妻の3人です。ただ、ファースト・オーサーであろうハンス・ロスリングは2017年に亡くなっています。原書は2018年の出版です。本書では、ついつい陥りがちな偏見や先入観を排して、世界の本当の姿を知るために、教育、貧困、環境、エネルギー、人口など幅広い分野を取り上げています。いずれも最新の統計データを紹介しながら、一昔前とは時を経て変化した世界の正しい見方を紹介しています。私のやや歪んだ目から見て、著者の見方はほぼほぼマルクス主義的な経済の下部構造が政治や文化などの上部構造を規定する、というのと、開発経済学的な経済発展による豊かさとともに世界は収斂する、という2つの視点を支持しているように見えます。そして、実際には章別第1章から10章までのタイトルに見られる通り、分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人捜し本能、焦り本能の10のバイアスを克服する必要を説いています。そして、ハンス・ロスリングの医師としての国際協力の現場などでの体験を基に、とても判り易く解説を加えています。世界各国を1日1人当り所得で4つの階層に区分し、それぞれの生活様式がとても似通っている点などは経済の下部構造の重要性を指摘して余りあります。加えて、ハンス・ロスリングは自らを「可能主義者」と定義していますが、私も基本的には世界の先行きについては、とても楽観的な見方をしています。本書では何ら触れていませんが、私は楽観的な見方の根拠には技術革新に対する信頼感があります。人間はなにかの必要に応じて技術革新でもって対応できる、と考えているわけです。そして、技術革新を基礎としつつ、歴史の進歩に対する信頼感もあります。世界はいい方向に向かって進んでいると私は考えているわけですが、基本的に、時系列で考えて、一直線とはいわないまでも単調に増加もしくは減少するものと、何らかの上限もしくは下限があってロジスティックなカーブを描く場合と、カオス的とはいわないまでも循環的に振動するケースの3つがあると私は考えています。もちろん、この組み合わせもアリで、経済は循環しつつ拡大を続け、先進国だけでなく発展途上国も豊かさの点では成長が継続し、世界経済は収斂に向かう、と私は考えています。今週の読書の中では、ベストでした。実は、2月16日付けの読書感想文で『NEW POWER』をもって今年のマイベストかもしれない、と書きましたが、本書もそうかも知れません。今年はマイベストを連発しそうで少し怖かったりします。
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次に、上田岳弘『ニムロッド』(講談社) です。ご存じ、第160回芥川賞受賞作品です。主人公はネット・ベンチャーで仮想通貨を採掘する中本哲史、その恋人で中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の田久保紀子、さらに、小説家への夢に挫折した職場の元同僚であるニムロッドこと荷室仁の3人を軸に物語は進みます。ニムロッドから中本にダメな飛行機コレクションが送られくるのもとても暗示的です。本書のテーマは「「すべては取り換え可能」というものですが、実は、著者はそれを必死になって否定しようとがんばっているような気がします。「取り替え可能」というのは、資本主義の宿命であり、資本主義を象徴するマネーの変種である仮想通貨の採掘を、ビットコインの考案者であるサトシ・ナカモトと同名の主人公にタスクとして割り振っているのも象徴的です。「取り替え可能」を本旨とする資本主義の生産の最前線でがんばっている3人を見る著者の眼差しはとても温かく、励まされるものを感じます。いわゆる純文学ですから、私のよく読むエンタメ小説、というか、ミステリのような解決編、いわゆるオチはありませんが、表現力や構成力は芥川賞にふさわしく感じました。それにしても、数年前までは、私は熱心に芥川賞受賞作品を読んでいて、ほとんど『文藝春秋』の特集号で選評と併せて読んでいたものですが、年齢とともに純文学を読まなくなり、この作品はホントに久し振りの芥川賞受賞作の読書となりました。そこで、斜向かいに感じたのは主人公の年齢が日本社会の高齢化とともにジワジワと上がっているんではないか、という点です。その昔の吉田修一の「パークライフ」では主人公は20代ではなかったかという気がします。そして、芥川賞受賞作で初めてパソコンに関するテーマを私が読んだのは、絲山英子の『沖で待つ』でハードディスクを壊す、というのではなかったかと思うんですが、主人公はアラサーだったような気がします。そして、本作ではアラフォーにまで年齢が上がっています。そのうちに、芥川賞や直木賞も70代の主人公が活躍する小説に授賞されたりするんでしょうか。やや、気が滅入る思いだったりします。
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次に、ジェフリー・ディーヴァー『スティール・キス』と『ブラック・スクリーム』(文藝春秋) です。著者は、ご存じ、米国の売れっ子ミステリ作家であり、終盤のどんでん返しで有名です。実は、『スティール・キス』の方は決して新刊ではなく、2017年の出版なんですが、『ブラック・スクリーム』の出版を知って検索していると、『ブラック・スクリーム』はリンカーン・ライムのシリーズ第13作であって、その前の第12作が『スティール・キス』として出ていたらしいので、少しさかのぼって読んでみたところです。『スティール・キス』の方はいわゆるサイバー・テロの可能性を示唆するもので、『ブラック・スクリーム』は移民や難民に偽装したテロリストの侵入を扱っていて、特に、『ブラック・スクリーム』ではリンカーン・ライムがアメリア・サックスとともに、ニューヨークを出てイタリアに出張してのご活躍ですので、ややめずらしげに目を引きます。また、ご当地イタリアの森林警備隊の隊員が鮮烈なデビューを果たしますから、アメリア・サックスとか、ロナルド・プラスキーのように、リンカーン・ライム率いるチームのレギュラーメンバーになる可能性は低いとは思いますが、今後の成長も楽しみです。『スティール・キス』では、サイバー・テロのホントの首謀者がだれなのか、『ブラック・スクリーム』では難民に偽装したテロリストを暴こうとする意図が、それぞれ、ミスリードされていて最後の鮮やかなどんでん返しが堪能できます。さらに、『スティール・キス』ではライムがアメリアにまったくロマンティックではないセリフでプロポーズしたことが明らかにされ、『ブラック・スクリーム』事件の解決後に2人は欧州でハネムーンを楽しむようです。最後に、すでに米国ではほぼ1年前の2018年春先にリンカーン・ライムのシリーズ第14作が出版されていて、なかなかのペースでの執筆ぶりがうかがえます。
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次に、猪谷千香『その情報はどこから?』(ちくまプリマー新書) です。著者はジャーナリスト出身で、先に取り上げたロスリング一家の『FACTFULNESS』と違って、明確にフェイク・ニュースをターゲットにしています。ただ、そのターゲットは曖昧で、情報リテラシー一般も同時にテーマとなっていて、とても焦点がピンぼけのわけの判らない解説書です。読んでも読まなくても、その前後で情報リテラシーが向上するようには思えません。情報の選別に関しては、従来からの伝統的なメディアであった新聞や雑誌にラジオが加わり、さらにテレビが入ってきて、本書でも指摘するように、この4つが伝統的なメディアなんでしょうが、そこにインターネットが登場し、さらに、個人がSNSなどで情報発信をできるようになり、さらにそれが拡散していく、というプロセスが技術的に可能になった現段階で、明らかに、本書でも取り上げられているようなフィスター・バブルが生じ、また、本書では忘れられているエコー・チェンバーが発生したりしているわけで、その情報リテラシーの向上に何ができるかを考えるべきです。最後の最後に、図書館の利用が唐突に割って入っていますが、図書館のヘビーユーザである私の目から見て、この著者はほとんど図書館を利用していないように見えて仕方ありません。最近、東京などの区立や公立の図書館では、いわゆる指定管理者制度が広範に導入され、図書館職員の質の低下が著しくなっています。私はいろんな図書館に週当たりで3~4回くらいは行くんですが、図書館員すべてではないにしても、図書に対する知識がなく、まるで、できの悪い公務員になったかのように利用者にエラそうな態度で接する図書館員が目につくようになっています。ただ、利用者の方のレベルも低下している可能性があり、何ともいえませんが、図書館の利用が情報リテラシーの向上につながると考えるのは極めてナイーブな視点ではなかろうかと思います。さらに、ジャーナリスト出身らしく、インターネットよりも伝統的なメディアに信頼感があるようですが、単にジャーナリストノヨウニダブル・トリプルで裏を取ることを指した「ファクト・チェック」の用語を使うだけでは何の解決にもならないことは明らかです。経済学の著名な論文に "Who will guard the guardians?" というのがありますが、ファクト・チェックをする人をチェックする必要はどうなんでしょうか。さらに、それチェックする人は? となればキリがありません。
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最後に、カレン M. マクマナス『誰かが嘘をついている』(創元推理文庫) です。この作者のデビュー作です。高校の最終学年の何人かの生徒が登場し、まあ、何となくですが、青春小説風になっています。携帯電話に厳しい先生の授業に携帯電話を持ち込んだというので、作文、反省文の居残りをさせられた5人の高校3年生のうち、日本でいえば学校裏サイトのようなゴシップ情報を集めたアプリを運営している生徒が死にます。ピーナツ・アレルギーらしいんですが、水分補給の際にピーナツオイルをいっしょに摂取し、しかも、保健室にアナフィラキシー補助のエピペンが処分されている、という状況です。殺人と警察で考えられて捜査が進みます。死んだ生徒以外の4人には、学校裏サイトにゴシップをアップさせられる予定があり、それなりの動機があるとみなされます。しかも、この4人は代々イェール大学に進学する一家出身の優等生、大リーグからドラフトにかかりそうな野球のピッチャー、はたまた、マリファナの販売容疑で逮捕東国の前科ある不良、などなど、そろいもそろってクセのある生徒ばかりです。日本でいえばワイドショー的なメディアの取材攻勢があったり、人権保護団体の弁護士が乗り出してきたりと、いろいろとあるんですが、ハッキリいって、謎解きのミステリとしてはレベルが低いです。がっかりです。ただ、高校最終学年の青春小説として読む分にはそれなりの水準だという気もします。

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2019年3月22日 (金)

エネルギー価格のプラス寄与が続き消費者物価(CPI)上昇率は26か月連続の上昇を記録!

本日、総務省統計局から2月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅をやや縮小して+0.7%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の全国消費者物価、0.7%上昇 エネルギーの寄与度縮小
総務省が22日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.3と前年同月比0.7%上昇した。上昇は26カ月連続だが、伸び率は1月(0.8%上昇)に比べて鈍化した。エネルギー構成品目の寄与度縮小が響いた。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.8%上昇だった。エネルギー構成品目の寄与度はガソリンなど石油製品の伸び悩みを背景に前月に比べて縮小した。ガソリンは前年同月比1.3%下落した。前年同月比で下落するのは16年11月以来2年3カ月ぶり。
生鮮食品を除く総合では全体の51.2%にあたる268品目が上昇した。下落は188品目、横ばいは67品目だった。生鮮食品を除く総合を季節調整して前月と比べると0.1%上昇した。総務省は「緩やかな上昇傾向で推移している」との見方を示した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は101.2と前年同月比0.4%上昇した。上昇率は1月と同じだった。掃除機やルームエアコンなど家庭用耐久財が押し上げに寄与した。
生鮮食品を含む総合は101.5と0.2%上昇した。伸び率は前月と同じだった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
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生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は、1月の+0.8%からやや縮小して、2月は+0.7%を記録しています。国際商品市況における石油価格はかなり下げているんですが、時間的なラグを伴う国内の電気ガス料金がまだ上昇を続けています。この結果、電機・都市ガス・石油製品などから構成されるエネルギーとしては1月の+0.37%の寄与から、2月は+0.34#の寄与と、小幅に寄与度が縮小しただけで、2月統計でもプラス寄与が継続しています。加えて、2~3月は4月からの新年度を迎えるにあたっての準備期間ですので、それなりに耐久消費財の価格が上昇しやすい時期でもあり、昨年も今年も2月は電機や教養娯楽向けなどの耐久消費財が前年比プラスに転じています。従って、10月の消費増税という撹乱要因はあるものの、石油価格の動向と携帯通信料の値下げ、さらに、幼児教育無償化などを考慮すれば、消費者物価の基調としては、この先年央にかけて上昇率は縮小しゼロに近づくものと私は考えています。もっとも、今年のゴールデンウィークに宿泊料が跳ね上がったりする小規模な撹乱要因はあるかもしれません。加えて、やや不思議なのは、小幅ながら東京都区部のコアCPI上昇率が今年に入って1~2月とやや加速している点です。1~2月ともに+1.1%を記録しています。通常は、東京の物価は全国の先行指標と考えられているんですが、ここ2~3年はそうでもなくなったといわれ続けており、それほどの注目は集めていません。それでも、やや不可解な動きと私は受け止めています。

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2019年3月21日 (木)

来年の東京オリンピックでもっとも紫外線リスクの高い種目は何か?

とても旧聞に属する話題ながら、我が家で購読している朝日新聞で、3月14日付けで<a target="_blank" style="color:#ff0000;font-size:2em;font-weight:bold;" href="https://www.asahi.com/articles/ASM3G3430M3GULBJ001.html" title="東京五輪、紫外線を最も浴びる種目は? 競技長いアレ">「東京五輪、紫外線を最も浴びる種目は? 競技長いアレ」</a>なる記事を見かけました。元になるのは英国のジャーナル Temperature に掲載された学術論文 Downs, Nathan J. et. al. (2019) "Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games" のようです。以下にリンクとともに、論文から Figure 4. Total erythematic ultraviolet exposure of 144 gold medal events scheduled to compete in an outdoor environment arranged by sport category for the 2020 Tokyo Summer Olympics を引用しておきます。

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2019年3月20日 (水)

東洋経済オンラインによる企業ランキング正社員数の多い企業と非正社員数の多い企業やいかに?

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やや旧聞に属する話題ながら、東洋経済オンラインにて、3月13日付けで非正社員数の多い企業のランキングが、また、3月18日付けで正社員数の多い企業のランキングが、それぞれ明らかにされています。取りあえず、それぞれの1位から50位までは上のテーブルの通りです。やっぱり、というか、何というか、トヨタはどちらでもトップ5に入っています。改めて、巨大企業だということを実感してしまいました。私は、正社員でも非正社員でも、どちらでもいいので、何とか早めに再就職先を見つけたいと努力していますが、悲しいことに、いまだに成果が出ていません。

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2019年3月19日 (火)

帝国データバンクによる「2019年度の雇用動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、3月14日に帝国データバンクから「2019年度の雇用動向に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文ファイルもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の要旨を4点引用すると以下の通りです。


調査結果


  1. 2019年度に正社員の採用予定があると回答した企業の割合は64.2%と、5年連続で6割を超えたものの、3年ぶりの減少に転じた。特に「大企業」(84.8%)の採用意欲は高く、調査開始以降で最高を更新した。しかし「中小企業」(59.1%)は前回調査(2018年2月実施)を下回った。正社員採用は、大企業の積極性が続く一方、中小企業の採用姿勢は高水準ながら一服した

  2. 非正社員の採用予定があると回答した企業の割合は50.3%となり、2年連続で半数を超えたものの、前回調査を2.1ポイント下回り、採用意欲がやや一服した。非正社員が人手不足の状態にある「飲食店」は9割、「飲食料品小売」「医薬品・日用雑貨品小売」は8割を超える企業で採用を予定している

  3. 2019年度の正社員比率は企業の18.3%が2018年度より上昇すると見込む。その要因では、「業容拡大への対応」(45.8%)をあげる割合が最も高く、「退職による欠員の補充」「技術承継などを目的とした正社員雇用の増加」が3割台で続く

  4. 自社において生産性向上に最も効果がある人材育成方法について、短期間(1年以内)の生産性向上に効果がある方法では「職場内における教育訓練(OJT)」が60.1%で突出して高かった。他方、長期間(1年超)の効果では、「職場内における教育訓練(OJT)」(26.8%)、「職場外での教育訓練(Off-JT)」(22.7%)、「職場内における能力開発(OJD)」(22.4%)がいずれも2割台となり、効果的な人材育成方法が分散する傾向が表れた



ほぼほぼ調査結果が網羅されているような印象です。いろんな視点があるとは思いますが、ここでは正社員と非正社員の雇用動向に的を絞って、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。


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まず、リポートから正社員採用の動向についてのグラフを引用すると上の通りです。正社員採用予定ありの企業割合は、リーマン証券破綻後の2009~10年度に底を打ってから増加してきており、2019年度は昨年度2018年度からやや低下したとはいえ、それなりの高い水準にあります。また、特に大企業では84.8%に上り、調査を開始した2005年度以降で最高を記録しています。ただ、中小企業は59.1%となり、前回2018年度調査から▲2.2%ポイント減少し、帝国データバンクでは「大企業の積極性が続く一方、中小企業の採用姿勢は高水準ながら一服した」と評価しています。


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次に、リポートから非正社員採用の動向についてのグラフを引用すると上の通りです。ここでも、採用予定ありと回答した企業は50.3%と2年連続で半数を超えているものの、前回調査を▲2.1%ポイント下回り、帝国データバンクでは「採用意欲がやや一服した」と評価しています。


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最後に、リポートから2019年度の正社員比率についてのグラフを引用すると上の通りです。2019年度の正社員比率については、2018年度と比較して上昇と回答した企業は18.3%で、低下の6.1%を12.2%ポイント上回っており、雇用形態の正社員化で一段の進展が見込まれるものの、正社員比率が上昇するとの回答の割合は前回調査から▲2.4ポイント低下しており、その勢いはやや鈍化しているようです。

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2019年3月18日 (月)

5か月振りに黒字を記録した貿易統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.2%減の6兆3843億円、輸入額は▲6.7%減の6兆453億円、差引き貿易収支は+3390億円の黒字を計上しています。原系列の貿易統計では5か月振りの黒字です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、5カ月ぶり黒字 対中輸出増は春節の影響
財務省が18日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3390億円の黒字だった。黒字は5カ月ぶり。輸出入ともに減少したが、原粗油など輸入の減少が大きかった。中国向け輸出は3カ月ぶりに増加したが春節の日並びの影響が大きい。
輸出額は前年同月比1.2%減の6兆3843億円だった。減少は3カ月連続。米国向け自動車やタイ向けの鉄鋼が減少した。
中国向け輸出額は1兆1397億円と5.5%増加した。増加は3カ月ぶり。1月や2月は中華圏の春節(旧正月)日程の影響が出やすく、1月はその春節の影響で大きく減少した。2月はその反動でプラスとなった。品目別で見ると半導体等製造装置や自動車がけん引した。財務省によると、対中国輸出は1月と2月を合算したベースで2兆979億円と前年同期比6.3%減少した。
輸入額は前年同月比6.7%減の6兆453億円。2カ月連続で減少した。原油安で原粗油や石油製品が減少した。2月の原粗油の円建て輸入単価は8.6%下落した。
対米国の貿易収支は6249億円の黒字で、黒字額は0.9%減少した。減少は2カ月ぶり。
2月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=109円66銭。前年同月に比べて0.4%円安・ドル高に振れた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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2月の5か月振りの貿易黒字は、私の目から見て、短期的な要因として、2月の中華圏の春節を見越しての生産調整の反動が2月に現れた点に加えて、国債商品市況の石油価格が徐々に下落する中で石油輸入額が減少しつつある点の2点の影響なんでしょうが、もうひとる忘れてならないのは、2月統計では貿易黒字を計上したとはいえ、中長期的に、先月まで我が国が4か月連続で貿易赤字を記録していた要因のひとつは、世界経済の景気低迷に比較すれば、相対的に我が国景気の減速度合いが小さいという可能性も忘れるべきではありません。後者のこの中長期的な景気局面の視点は見落としがちなので、強調しておく値打ちがあると私は考えています。従って、中華圏の春節という撹乱要因が終了すれば、我が国の貿易収支は安定して黒字に戻る、とは限りません。国債商品市況における石油価格や非鉄金属価格などの影響も無視できませんが、景気局面が世界経済全体の方がより速く悪化しているのは実感として私も感じていますし、我が国景気が世界経済の景気局面に比べて安定的であれば、逆に、その先で急速に日本の景気が悪化する局面が現れて、まあ、表現はおかしいですが、世界経済の景気局面に追いついてしまう場面があってもおかしくない可能性があります。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、現時点での輸出を見る際の注意点は、中国の景気が上向いているにもかかわらず、まだOECD先行指数が前年同月比でマイナスのままですので、我が国からの輸出が減少を続けていて、先進国加盟国の集合体であるOECDの先行指数は前年同月比マイナス、かつ、下り坂でマイナス幅が拡大していますので、我が国の輸出にとっては中国向けと先進国向けのいずれも需要サイドで減少要因となっています。2月の中国向け輸出が伸びたとはいえ、引用した記事にもある通り、1~2月を合算したベースではまだ前年比マイナスのようですから、この先、貿易摩擦ももちろんですが、中国などの新興国も含めて世界経済の景気動向も注目です。

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2019年3月17日 (日)

日本気象協会による2019年第4回桜開花予想やいかに?

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先週の木曜日3月14日付けで、日本気象協会から2019年の第4回桜開花予想が明らかにされています。日本気象協会のサイトから、今年の桜開花のポイントを3点引用すると以下の通りです。

2019年桜開花予想
  • ◆開花が最も早いのは、福岡や愛媛県宇和島で3月18日、東京は21日の予想
  • ◆満開のトップは高知と愛媛県宇和島で3月29日、東京は30日の予想
  • ◆3月は全国的に気温が平年より高く、桜の開花・満開とも平年より早い

日本気象協会では、この冬は寒気の流れ込みが持続せず暖冬となった上に、来週から4月上旬にかけて気温は平年より高く、開花・満開ともに平年より早いと予想しています。ただ、今週末にかけて寒の戻りとなることから、関東を除く多くの地域で前回第3回の桜開花予想よりは1日から3日遅くなっているようです。

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2019年3月16日 (土)

今週の読書は文庫本の海外ミステリをいくつか読んで計8冊!!!

今週は、経済書・ビジネス書は冒頭の自動車に関するCASE革命の本くらいで、ほかは数学は自然科学、さらに昨年話題になった海外ミステリの文庫本など、以下の通りの計8冊です。なお、すでにこの週末の図書館回りを終えており、来週も芥川賞受賞作や海外ミステリを含めて、数冊の読書に上りそうです。なお、来週は経済書もそれなりに読む予定です。

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まず、中西孝樹『CASE革命』(日本経済新聞出版社) です。著者は、自動車に関するリサーチを行う独立の研究機関の経営者であり、ジャーナリストのような面も持っているんではないかと私は受け止めています。タイトルの「CASE」とは、C=接続 connected、A=自動運転Autnomous、S=シェアリング&サービス Sharing and Service、E=電動化 Electric、の4つのキーワードの頭文字を並べたものです。ということで、自動車産業とは20世紀初頭のフォードT型車から始まって、ハイブリッド車や電気自動車が登場するまでは、例えば、レシプロ・エンジンにはさしたる大きな進化もなく、製品としても産業としても成熟の極みであって、コンピュータが登場した電機などとの差は明瞭だった気もしていたのですが、最近になって、ハイブリッドや電気自動車やさらには燃料電池車まで視野に入れれば駆動方式に大きな変化が見られるとともに、ソフト的にも自動運転の実証実験が次々に実行され、死者が出るたびに大きく報じられたりしていますし、さらに、MaaSやカーシェア、ライドシェアなどの自動車を資産として家庭に保有する以外のサービスの提供元として活用する方法の広がりなどが見られます。本書ではそういった自動車の製品と産業としての最近時点での方向をざっくりと取りまとめるとともに、将来的な方向性を2030年くらいまでを視野に入れて論じています。まあ、いつまでの賞味期限の出版か、私には判りませんし、時々刻々と情報はアップデートされるんでしょうが、現時点での私のような専門外の人間にはとても参考になります。特に、タイトルにありませんし、本書でも重きを置かれているわけではありませんが、人工知能=AIの活用が進めば、さらに自動車が大きな変化を見せる可能性が高まります。私自身は今ではすっかりペーパードライバーですが、その昔は自分で運転を楽しむ方でした。でも、自動運転が大きく普及すると、自動車の運転は現時点の乗馬のように、閉鎖空間でマニアだけが楽しむスポーツのような存在になるのかもしれません。その場合、自動車レースなどはどうなるのか、今の競馬のような位置づけなんでしょうか。また、先ほどの電機産業などと対比して、次々と新製品を生み出したイノベーションあふれる業界ではなく、自動車産業が今まで量的にのみ拡大してきたわけですが、ここに来て、大きなイノベーションを体現して産業としても製品としても大きな進化の段階にあり、逆に、今までこういった進化が出来なかったのはなぜなのか、本書のスコープは大きく超えてしまうものの、自動車産業だけでなく、製造業や産業一般のイノベーションの問題としても、私は興味あるところです。まさか、単なる巨大IT産業経営者の気まぐれ、というわけでもないんだろうと思います。

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次に、ミカエル・ロネー『ぼくと数学の旅に出よう』(NHK出版) です。著者はフランス出身の数学者、専門分野は確率論で、本書のフランス語の原題は Le Grand Roman des Maths であり、2016年の出版です。自然科学の分野の学問領域では、いわゆる実験のような科学の実践があるんですが、社会科学、特に経済学では最近流行りの実験経済学などの一部を除けば実験がそれほど出来ないわけですし、また、自然科学でも数学については実験のような実践手段はなさそうに思えます。ということで、本書では邦訳タイトルに「旅」が入っていますが、旅をしつつ、何らかの数学の実践を盛り込もうと試みています。もっとも、実際には数学というよりも物理学とか天文学ではなかろうか、という例も散見されます。ただ、実践的な数学だけでなく、ほかの物理学とか化学などと違って、数学は高度に抽象化されているわけですから、定義、公理、定理の証明に一見すれば少し矛盾があるようなパラドックスなどまで、幅広く数学的な論理性を追求する姿勢も見せています。また、無限小という普通は取り上げないような数学概念を章として独立させて扱い、ピアソン-ジョルダン測度に代わって、極限関数の積分を可能とするルベーグ測度を実にうまく説明しています。また、ゲーデルの不完全性定理についても、無矛盾性と完全性が同時に成り立つことがない、という観点から、これまた実にうまく説明しています。物理学におけるハイゼンベルクの不確定性定理は位置と運動が同時に決定できない、ということですし、経済学におけるアローの不完全性定理は、私の学生時代には非独裁制が排除されないと飲み方が多かった記憶がありますが、現在では推移律が成り立たないと解釈されますし、専門外の私のようなシロートに、こういった判りやすい説明は歓迎です。ただ、最後に、20世紀初頭のヒルベルトの23問題を取り上げるのであれば、クレイのミレニアム懸賞問題についても言及が欲しかった気がします。実践の数学として暗号を取り上げないというのは、それなりの筆者の見識のような気もしますが、ミレニアム懸賞問題は数学実践として欠かせないと私は考えています。

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次に、リック・エドワーズ & マイケル・ブルックス『すごく科学的』(草思社) です。著者はいずれも英国出身で、テレビ司会者と科学ジャーナリストです。英語の原題は Science(ish) であり、2017年の出版です。副題にも見られる通り、SF映画から最新科学の解説を試みており、取り上げられているSF映画と科学テーマを書き出すと、「オデッセイ」から宇宙や他の惑星での生活について、「ジュラシックパーク」から恐竜や遺伝子について、「インターステラー」からブラックホールについて、「猿の惑星」から進化論や遺伝子について、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」からタイムマシンやタイムトラベルについて、「28日後...」からウィルスの脅威やゾンビについて、「マトリックス」からシミュレーション世界について、「ガタカ」から遺伝子やデザイナーベビーについて、「エクス・マキナ」から人工知能AIについて、「エイリアン」から地球外生命体について、ということになります。私も実は感じていたんですが、四次元ポケットから飛び出すドラえもんの道具となれば、かなりの程度に荒唐無稽ながら子供心に訴えるものがある一方で、これらのSF映画に応用されている科学はかなりの程度に大人に対して真実性をもって訴えかける部分が少なくありませんSF映画で科学を語るというのは、ありそうでなかったアイデアかも知れませんし、ジャーナリスト系の2人の著者ですので、科学者が書いた場合に比べて不正確かもしれませんが、それなりに判りやすく仕上がっているような気もします。また、取り上げられた映画について私なりに論評を加えてお口、。私は少なくとも冒頭の2作品、すなわち、「オデッセイ」と「ジュラシックパーク」については原作となる小説も読み、映画も見ていますし、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の映画も見ています。また、ウィルスとゾンビについては「バイオハザード」でお願いしたかった気がします。ただ、シミュレーション社会ということになれば、やっぱり「マトリックス」なんでしょうね。映画化されていないんですが、「リング」の貞子シリーズの「ループ」も悪くないような気がします。最後に、私はジャズファンで、よくCDSのジャケ買い、なんて言葉があったりするんですが、本書については表紙デザインで少し損をしている気がします。もっと壮大な宇宙をイメージするイラストなんぞはダメなんでしょうか?

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次に、ミシェル・フロケ『悲しきアメリカ』(蒼天社出版) です。著者はフランスのテレビのジャーナリストです。対米5年間の経験から本書を取りまとめています。フランス語の原題は Triste Amérique であり、2016年の出版です。タイトルは、レヴィ-ストロースの『悲しき熱帯』 Triste Tropiques を踏まえていることは明らかです。ということで、シリオンバレーの華やかなGAFAといった先進企業や強力な軍隊などの裏側にある米国の素顔、それも決して自慢できるものではない負の面を明らかにしようと試みています。出版社のサイトにかなり詳細な目次がありますので、それを一瞥するだけでもっ十分な気がしますが、まあ、取り上げられている項目はそれほど新規なものではなく、かなりありきたりです。しかも、編集者の能力の限界か、あるいは、著者のこだわりか、トピックが脈絡なく、せめてもう少し章の順番くらい考えればいいのに、と思わないでもありません。取り上げられているトピックは貧困や格差の経済的な問題、黒人やネイティブ・アメリカンの差別の問題、ファストフードなどの食品の工業化による肥満などの健康問題、ラストベルトなどにおける産業の衰退、銃社会における犯罪やひいては戦争の問題、そして、最後に、オバマ前大統領政権下における成果に対する疑問、現在のトランプ政権への批判、などなどとなっていますが、それなりにジャーナリストの取材に基づき、既存文献などからの引用で補強はされていますが、繰り返しになるものの、今までのいくつかの論調をなぞったものであり、新規性はありませんし、加えて、所得格差や貧困などの経済的な問題と薬物や犯罪の問題などが、かなり明瞭にまちまちで議論が展開されているため、これらの問題の本質が総合的に把握されることもなく、悪くいえば、問題の本質をつかみそこねているようにすら見えます。宗教の問題も取り上げられていますが、個々人の価値観の問題と社会的な構造問題は、いわゆる「鶏と卵」のように、どちらがどちらの原因や結果となっているといいわけではなく、一体となって分かちがたく因果を形成しているよう気もしますし、逆に、やはり経済や所得の問題がまず解決されるべきである、というエコノミスト的な見方も成り立ちます。ジャーナリストとして議論する題材を提供したことは大いに評価しますが、やや中途半端で踏み込み不足の感もあります。

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次に、井上章一『大阪的』(幻冬舎新書) です。著者は関西ネタのエッセイで有名な井上センセです。最近では『京都ぎらい』がベストセラーになった記憶があります。本書は、産経新聞大阪夕刊に連載されていたコラムを集めたものです。どうでもいいことながら、東京版では産経新聞は夕刊を出していないような気がするんですが、大阪版では夕刊があるんだと気づいてしまいました。ということで、、上の表紙画像にあるように、基本は、大阪的な「おもろいおばはん」に関するエッセイなんですが、それは1章だけで終わってしまっており、残りの2章から9章は大阪をはじめとする関西の文化一般に関するエッセイです。いつも通りに、さすがに研究者だけあって、調べがよく行き届いています。大阪的な「おもろいおばはん」は中年女性に限ったことではなく、男性も含めて、大阪弁の響きも含めて、ユーモアやウィットに飛んだ会話ができる大阪人あるいは関西人一般に対する印象であり、テレビがそれを増幅している、と著者は分析しています。それから、相変わらず、阪神タイガースに対する鋭い分析が見られ、私も目から鱗が落ちたんですが、関西であっても1960年代くらいまではテレビで放送されるジャイアンツのファンが多数を占めていた、というのは事実のような実感を私も持っています。そして、京都在住だった私の目にはそれほど明らかではなかったんですが、1968年に開局し、1969年から阪神のナイターしあいを試合開始から試合終了まで中継し始めたサンテレビの影響が大きく、一気に関西で阪神ファンが増えた、と分析しています。加えて、1971年からABS朝日放送のラジオで中村鋭一が「六甲おろし」を歌いまくったのも一因、と主張しています。実に、そうかも知れません。私の小学校高学年から中学生のころですので、うすらぼんやりながら、そのような記憶があります。また、神戸と亡命ロシア人の関係については、お節の通り、洋菓子のパルナスやモロゾフなどのロシア名のお店が頭に浮かびます。音楽もそうかも知れません。また、言葉については「がめつい」という形容詞が戦後の造語であって、決して関西伝来の言葉ではないというのは初めて知りました。ちょっとびっくりです。また、芦屋や岡本あたりの山の手の標準語に近い柔らかな関西弁については、今やノーベル文学賞候補に擬せられる村上春樹を上げて欲しかった気がします。

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次に、アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』上下(創元推理文庫) です。昨年我が国で出版された海外ミステリの四冠制覇に輝くベストセラーです。著者はヤングアダルト作品を手がけたほか、人気テレビドラマの脚本もモノにしていたりしますが、私が読んだ記憶があるのは、いわゆるパスティーシュばかりで、ホームズものの『絹の家』と『モリアーティ』、ジェームズ・ボンドの『007 逆襲のトリガー』の3冊であり、少なくともホームズものはやや血なまぐさい殺人事件やビクトリア時代にふさわしくない社会風俗なんぞが飛び出して、ちょっと違和感を覚えなくもありませんでした。でも、007ものは、最新映画の主演であるダニエル・クレイグのようなやんちゃな主役であればOKだという気はしました。英語の原題は The Magpie Murders であり、2017年の出版です。邦訳タイトルはほぼほぼ直訳です。ということで、この作品はメタな構造になっており、現代ロンドンを舞台にした出版界の殺人事件と、その出版会社で出しているミステリである約60年前の1955年の田舎の准男爵邸を舞台にする事件の両方の謎解きが楽しめます。本書の宣伝にある「名探偵アティカス・ピュント」というのは、実際には出版会社が出している小説の中で活躍する探偵であって、本書でダイレクトに扱っている現代ロンドンを舞台とする殺人事件は、その作者の担当編集者が謎解きに挑みます。どこまでホントかはやや疑わしいんですが、現代ロンドンの殺人事件と小説中の殺人事件が、ほどよく絡み合っていたりします。近年にない大傑作とは思いませんが、それなりに水準の高いミステリであることは受賞歴から見ても明らかです。

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最後に、ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』(創元推理文庫) です。『カササギ殺人事件』が昨年の海外ミステリの各賞総なめであったのに対して、この作品は多くのランキングで2位につけていました。作者は長編ミステリ2作目だそうです。英語の原題は The Kind Worth Killing であり、2015年の出版です。邦訳タイトルは、あまりのセンスなさに私は呆れてしまいました。ということで、ロンドンのヒースロー空港のラウンジで出会った男女が男の妻を殺害するという点で意気投合し、米国への帰りの飛行機の中で計画を練る、という出だしで始まります。この女の方がサイコパスなんですが、男の方の浮気されたから妻を殺す、という発想にも少し飛躍があるような気がします。ところが、逆に男が妻の陰謀で殺されてしまい、その妻も同じ実行犯の手で殺され、その実行犯も姿を消す、という極めて複雑怪奇な人間関係の中で、そのカラクリに気づいた刑事が独断で捜査を進めてサイコパスの黒幕を尾行するうちに、刑事の方の異常性が浮かび上がって、などなど、基本的に倒叙ミステリであって、謎解きはほぼほぼないに等しいながら、極めて複雑で不可解な構造が解き明かされます。そして、真相にもっとも近づいた刑事は逆に異常と見なされ、サイコパスの黒幕は無事に逃げおおせる、という結末となるような示唆が示されています。かなりいい出来のミステリなんですが、私が最近ここ数年で読んだミステリの中では『ゴーン・ガール』に類似し、かつそれに次ぐくらいの不可解なミステリだった気がします。最後に、主犯的な主人公を務める女性が逃げ切るというのも似通った結末のように感じました。これまた、『ゴーン・ガール』と同じように、ミステリというよりは、サイコスリラーと呼ぶほうが似つかわしいのかもしれません。翻訳がいいのでスラスラ読めるんですが、映像向きだという気もします。

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