2016年12月10日 (土)

今週の読書はいろいろあってやっぱり9冊!

今週は、少し体調を崩して風邪をひき、咳き込んで睡眠不足になったりしたんですが、それでも読書時間は確保されてしまい、以下の9冊を読んでいます。ついつい手軽に読める新書に手が伸びてしまい、実質的には8冊くらいの勘定か、という気もします。でも、来週こそはペースダウンする予定です。

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まず、ジェリー・カプラン『人間さまお断り』(三省堂) です。著者はスタンフォード大学人工知能研究所(AI研)での長い研究歴を有し、その知識を持って新興企業を次々と起業していて、ややお歳を召したとはいえ、AI研究に草創期から従事して来た伝説的な研究者・企業家です。すでに人口に膾炙しまくっている通り、英語の原題は Humans Need Not Apply であり、日本語タイトルはほぼそのままで、2015年の出版です。邦訳書には、東京大学松尾豊准教授の解説が末尾に数ページ付属しています。米国でも日本でも話題の書といえます。ということで、最近、私が何冊か読んだ人工知能(AI)に関する一般向けの解説書のうちでもさすがに出色の出来です。タイトルだけからすると、AIが雇用を奪うという恐怖を煽るような内容に受け止められかねないんですが、決してそれだけではありません。前半はAI開発の現状や基本的な哲学的ともいえる考え方の整理なんですが、特に、後半の第6章以降などは、エコノミストからすれば背筋も凍りそうな内容も、サラリと含まれていたりします。人工知能を合成頭脳と労働機械に分毛て議論し、大雑把に、前者がソフトで後者がハードなんでしょうが、この両者を合体、というか、人間型の労働機械に合成頭脳をインストールすれば、そのままヒューマノイド方のロボット、というか、アンドロイドになるわけで、両者を分けて考えても、いっしょに考えても大きな違いはないかもしれません。著者の最後の最後の提言はエコノミスト的にも大いに合意できるものですが、AIに契約の当事者となる権利と試算を被有する権利を与えてはいけない、というものです。要するに、人間さまが駆逐されるという恐れがあるんだと思います。ただ、私は基本的には、また、長期的には楽観的に見ていて、AIの進歩に人間の進化が追い付く可能性が本書では見落とされている可能性があります。というか、本書では人間の進化がAIの指数的な進歩に追いつかない、という現在までの事実を当然視しているような気もします。クラークの『地球幼年期の終わり』とか、高野和明の『ジェノサイド』ではないですが、人間も進化しAIと共生する可能性も無視できない、というのが私の見方です。もちろん、タイムスパン的に間に合わない、という見方もありそうな気はします。大いにします。

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次に、ニック・レーン『生命、エネルギー、進化』(みすず書房) です。著者は英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの遺伝・進化・環境部門の研究者であり、『ミトコンドリアが進化を決めた』で高い評価を受けているそうです。英語の原題は The Vital Question であり、上の表紙画像に見える Why the Life the Way it is? は副題です。2015年の出版です。ということで、難解な生物学進化学の書物です。絶え間なく流動する生体エネルギーが、40億年に渡る生物進化の成り行きにさまざまな制約となって来たとの観点から出発し、そのさまざまな制約こそが、原初の生命から我々人類に至るまでのすべての生物を彫琢して来た、というわけです。特に、シロートの私なんぞからみても、なかなかなもので、第2章で生命の定義に関してNASAの「ダーウィン進化の可能な自立した科学的システム」から始まって、第3章で化学浸透共役なるエネルギー形態のシンプルかつ変幻自在な特性に注目し、生命の起源のシナリオを説得的に描き出そうと試みたり、また、第5章では1遺伝子あたりの利用可能なエネルギーを手がかりに生物の大型化の限界や真核生物と原核生物の間の大きなギャップを説明しようと試みるなど、目を見張るようなアイデアを次々に提示しています。そして、第6章で有性生殖の生命現象については費用便益分析や囚人のジレンマをはじめとするゲーム理論などの経済学用語での分析を志向しています。地球における生命の起源、進化に伴う複雑化、性による生殖と増殖、そして、最後の死といった難題を統一的に解釈しようとの姿勢はさすがという気がします。他方で、いわゆるソーシャル・エンジニアリングには懐疑的であり、宇宙のマクロ的視野では生命に必要なショッピング・リストのカンラン石、水、二酸化炭素の3つの物質だけであり、この天の川銀河だけでも400億ほどの惑星が該当するといい切ります。ムチャクチャに難しい専門書です。私程度の頭の回転では、私くらいの鈍感な忍耐力がないと読み進むことはできません。忍耐力がない場合には専門性が要求されそうです。最後に、翻訳上の問題として、「陽子」はプロtンと表現され、電子はそのままでエレクトロンとはされていません。「プロトン勾配」や「プロトン駆動力」などの用語があるので仕方ないのかもしれませんが、電子と陽子、でなければ、プロトンとエレクトロン、というように統一的な邦訳のセレクションができなかったものか、やや疑問です。

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次に、大谷光淳『ありのままに、ひたむきに』(PHP研究所) です。著者は我が家が信仰する浄土真宗本願寺派の第25代門主・本願寺住職を2014年6月に引き継いだばかりの宗教家です。この門主就任を阿弥陀如来と親鸞聖人の前に奉告する伝灯奉告法要をおつとめするにあたり、本書の出版となったらしいです。新門主の公式ガイドブックといった趣であり、我が家の菩提寺をはじめとして浄土真宗のお寺さんでは広く読まれていたりするんでしょうか。経済的にも社会的にも、なかなか、生き難い世の中になりつつあり、思うように安定した生活を送るのが難しくなっている気がする中で、マルクス主義的には単なるアヘンの役割かもしれませんが、宗教の役割はそれなりに私のような凡人には有り難いものです。特に、我が浄土真宗の教えでは極楽浄土への往生は阿弥陀さまのおはからいによるものであり、ムリに自力で努力する必要もない、ということになっています。私も倅たちに「ムリをする必要はない」と日ごろからいっていますが、エコノミスト的に考えれば、ムリ=何らかの矛盾や均衡からのズレを生じるわけで、何かが歪むのがムリの結果だと私は考えています。『ゲド戦記』のゲドと同じで、私は多くの社会的経済的現象は均衡に向かっていて、正のフィードバックループで均衡から離れていく場合もなくはないものの、誰かの妙ちきりんなムリでもって歪みさえ生じなければ、経済社会的な均衡で悪くない結果が得られるものと私は考えています。ですから、楽観派なんだろうと自任しています。ただ、のんびりするのは大好きながらも、ムリと紙一重かもしれませんが、自分自身の出来る限りの努力は必要です。それは本書のタイトルになっているような気がします。ムリをせずありのまま、でも、ひたむきに努力する、そういった姿勢が大切な気がします。私自身は図書館で借りて読みましたが、別に買い求めて倅たちに読ませようかと考えています。そろそろ、我が家の宗教的なバックボーンについて知識を深めさせる年齢に達したような気がします。

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次に、屎尿・下水研究会『トイレ』(ミネルヴァ書房) です。『マンホール』、『銭湯』、『タワー』に続くシリーズ・ニッポン再発見の第4弾です。副題は「排泄の空間から見る日本の文化と歴史」となっていて、私は以前のシリーズは読んでいませんが、何となく副題にひかれて、これだけ借りてみました。著者となっている研究会は、出版社のある京都と東京のそれぞれの府庁や都庁の下水関係者を主要なメンバーとして構成されているようです。私は京都の片田舎の出ですので、小学生のころなんかに少しひなびた方向に行ったりすると、まだ、畑の中に肥溜めがあったりしました。ですから、本書での主張の通り、「江戸のまちは循環型のエコシティだった」といわれて、し尿を肥料、ただし下肥として使っていたのは自分自身の記憶としてまだ持っていたりします。他方、本書とは関係ありませんが、肥料ということでいえば、南米はチリの日本大使館で経済アタッシェをしていた折に、チリ北部の町でイワシなどを原料に肥料、この場合は古い日本語では金肥を作っていて、それはそれで臭いがすごいというのも実体験として持っていたりします。日本語では本書のタイトルであるトイレのことを便所というのが一般的な気がしますが、古い言葉では「はばかり」と称して、まさに、行くには憚ったんだろうという実感がこもっていますし、「かわや」という名称は、まさに、川に落としていたんだろうというのが想像されます。また、本書では高野山式のトイレというのが平安時代に高野山にあった、というのが紹介されていて、決して我が家の一族ではないものの、それなりに上品な年配女性が「ちょっと高野山へ」といって席を外すのを、私はとある初釜の席で体験したことがあり、まったくな何のことか理解できずにいたが、その謎が解明されたような気がします。最後に、トイレの最新版では、商品名かもしれませんが、ウォシュレットについてもっといろいろと書いて欲しかった気がします。私自身がこういったスタイルのトイレを知ったのは、いわゆるバブル期で、銀座の松屋に出来た豪華トイレを見に行った記憶があります。こういった最先端のトイレの設備は、ジブリにドラえもん、ポケモン、ガンダムなどのアニメと並ぶ我が国の偉大な文化だという気がします。カジノなんぞよりはずっと重要だと私は考えています。

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次に、松井今朝子『料理通異聞』(幻冬舎) です。お江戸は浅草新鳥越町の料理茶屋である八百善こと福田屋の4代目、というよりも実質的に初代でこの料理茶屋を江戸1番にした福田屋善四郎の一代記です。著者は直木賞作家であり、京都は祇園の割烹川上の生まれ育ちですから、まさに八百善を取り巻く時代小説をものにする適任者といえます。時代背景として、主人公は田沼バブルのころに青春を過ごし、その後の寛政の改革デフレのころに料理茶屋を引き継ぎ、最終的には11代将軍徳川家斉のお成りを得ており、さらにその孫の千太郎の代になってからも12代将軍徳川家慶のお成りを迎えています。青春時代において、貧乏旗本の娘である千満とのほのかな恋心、さらに長じて伊勢参りで得た豊富な西国の知識とインスピレーション、蜀山人大田南畝、亀田鵬斎、酒井抱一、葛飾北斎、谷文晁、渡辺崋山といったそうそうたる文人墨客との交わり、そして、『料理通』の出版と、料理人として時代の頂点を極め、私のように食事を単なるエネルギー補給と考えるのではなく、料理や食事を文化と捉え、それを供する場であるレストランを人の交わるサロンと見なす、という意味で、とても文化的な時代小説です。あとがきにあるように、数多くの古文書をひも解いて得られた情報を基に、作者が展開した料理と食事の文化の世界に当然となる読者も少なくないと思います。ほかに、料理や食事をテーマにした高田郁のみをつくし料理帖シリーズも少し前に完結して、私は愛読しそれなりに感激もしたんですが、さすがにこの作品の重厚な仕上がりを絶賛せずにはおかれません。先日、何かの報道で今年のベストセラーは田中角栄を題材にした石原慎太郎の『天才』であると見かけた気がしましたが、おそらく、私の今年のナンバーワンは先日取り上げた平野啓一郎の『マチネの終わりに』であろうと考えますが、私の大好きなジャンルである時代小説のナンバーワンはこの作品ではなかろうかと考えています。題材やストーリーだけでなく、文体、というか文章のリズムやテンポもとてもよく、一気に読める割には頭に残ります。今週の読書の中ではピカイチです。

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次に、秋吉理香子『絶対正義 』(幻冬舎) です。作者は『暗黒女子』や『聖母』などの女性にまつわるイヤミスをモノにしてきたミステリ作家です。この作品は、高校生の女子グループ5人のうちの1人が「絶対正義」を振り回すという意味で、モンスター的な正義感を持ち、融通が利かないというか、ハッキリと周囲に迷惑をかけまくっていて、その高校卒業から15年を経過した30代前半で、正義のモンスターをほかの4人が寄ってたかって殺してしまう、というストーリーです。そして、その殺人事件から5年後になぜか、残った4人にパーティーの招待状が届き、その場で殺人が明らかにされることになります。しかし、もっとも恐ろしく感じられるのは、その娘が正義のモンスターとして母親と同じ方向に向かう、というのではないでしょうか。正義が絶対化した怖さをホラー小説的な手法でイヤミスに仕立ててあります。とても読後感が悪いのは、湊かなえや真梨幸子、沼田まほかるなどと同じで、これはどうしようもないんでしょうが、プロットはよく練られています。ただ、絶対正義のモンスター以外の高校時代の友人女性4人もかなり極端なキャラに仕立ててあり、もう少し一般的なキャラも欲しかった気がしますし、登場人物が高校時代の友人仲間だけでは物語に縦にも横にも広がりが出ない気がします。こういった点は次回作に期待です。

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次に、山田昌弘『モテる構造』(ちくま新書) です。著者は著名な社会学者であり、『パラサイト・シングルの時代』なども売れました。本書では、「モテる」ということを通じて男女の非対称性を論じています。すなわち、男性は公的な世界で競争を通じてできる人が異性からモテることとなる一方で、女性はそうならない、例えば、男性は仕事ができるビジネスマンや高身長などの体が大きいスポーツマンがモテるんですが、女性は必ずしもそうなりません。バリバリ働くキャリアウーマンが異性にモテるとは限りませんし、高身長の女性に魅力を感じる男性は限られています。こういったことから、やや古いジェンダー観では、男性は外で働き、女性は家で家事をする、という役割分担が当然視された時代もあったわけです。本書では女は女らしく、男は男らしく、などなど、旧態依然とした価値観が今も生き残っているという事実につき、こういった性別規範が社会から消えないのは、どういう相手を性愛の対象として好きになるかという、「モテる構造」から解明しようと試み、それらが人間の性愛も含めた感情に固く結びつけられているからだと結論しています。加えて、性別機能の身も蓋もない社会的現実を、透徹した視線で分析しつつ、男女それぞれの生き難さのカラクリを解剖し、社会構造変化の中でそれがどう変わりうるのか、また、LGBTなどの支店からも変化の大きさに対応した社会的な受容のあり方などについても考察を広げています。日常のなんでもなく不思議にすら思っていない事実のいくつかを社会学的に着目して、人が人として生きやすい、というか、生き難さの程度を低減してくれるような方向を考えようと試みています。人によっては当然のことかもしれませんが、目から鱗が落ちる人も少なくないような気がします。

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次に、エマニュエル・トッド『問題は英国ではない、EUなのだ』(文春新書) です。著者は我が国で人気の歴史人口学者だそうで、誠に不勉強ながら、私は歴史人口学というものをよく把握していません。第4章のタイトルは、「人口学から見た2030年の世界」だ他t利しますし、その分析結果として、米国とロシアが安定化の方向に向かって、欧州と中国は不安定化する、とされており、その次の章では、中国の経済大国化は幻想であると結論されていたりして、その結果はそれなりに受け入れられるんですが、論理的な分析の道筋は私にはよく理解できません。結論だけが直観的に先にあるような気もします。しかし、前著『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』もそれなりのインパクトでしたが、本書もいわゆる著作というよりも、アチコチでしゃべった講演録の寄せ集めにしてはよく出来ている気がします。その理由は、繰り返しになりますが、直感的な結論が私の印象に一致する一方で、論理の筋道がよく理解できないからではないかと考えないでもありません。もっとも、タイトルにあるように英国とEUについて正面から論じた部分は決して多くはありません。かなり、見方にもよりますが、漫談調で取り留めもなくいろんな話題を取り上げている印象です。ですから、個別には指摘しませんが、読みようによっては前後で矛盾する主張もありそうな気がします。ただ、私は読んでいませんが、同じ著者の『シャルリとは誰か?』を引いている部分があり、欧州のイスラムに対する無知や偏見に基づく部分を指摘していて、フランス人としてはとても新鮮な見方が示されたと受け止めました。本書では、実は、ほとんど展開されていないんですが、タイトルの英国のEU離脱に関する問題については、私は本書のタイトル通りに、英国ではなくEUの問題であろうとほのかに認識しています。確たる認識ではありません。トランプ次期米国大統領などになぞらえて、英国が内向きになってEU離脱を決めたような報道や論評も目にしますが、少なくとも通貨統合に関しては、私の目から見てもかなりムリがあったような気がします。マーストリヒト・コンバージェンスがあるとはいえ、財政政策がバラバラ、すなわち、国債発行が各国政府に任されていて、金融機関に対するマクロとマイクロのプルーデンス政策も統一性が必ずしも図られていないにもかかわらず、通貨が統合され同一の金融政策が執行されるのはムリです。社会保障政策などの個別の政策はともかく、少なくとも国債発行に関する何らかの強い統合がなされないと金融政策は統合されるべきではないと私は考えています。

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最後に、藤田孝則『貧困世代』(講談社現代新書) です。著者はソーシャル・ワーカーでいくつかNPO法人の代表なども務めているようですが、昨年2015年に話題になった朝日新書の『下流老人』の著者でもあります。私のこのブログでは2015年9月19日付けの読書感想文で取り上げています。ということで、本書はやっぱり世代論です。p.13の人口ピラミッドで、65歳以上の貧困層を下流老人、40-65歳を下流老人予備群(本書では、「予備軍」としているんですが、軍隊用語を用いるのもナンだと思って、このブログでは書き替えています)、そして、15-40歳を貧困世代と年齢というか、世代で貧困層を分類しています。そして、40歳以下あるいは未満の世代では、高齢の引退世代と比べて特に社会保障が手薄くなっている事実を明らかにしています。前著の『下流老人』について私の評価は、第4章 「努力論」「自己責任論」があたなを殺す日、は十分に説得力があり、高齢者だけがこの第4章の議論の対象となっているわけではなく、子供やワーキング・プアの若者も同じく社会保障の網から漏らされるべきではないと指摘しました。もっとも重要なのは、社会保障の緊急性としては、私は子供や若者に軍配を上げるべきではないかと考えています。もちろん、余命の問題はありますが、高齢者は10年後も高齢者である一方で、小学生は10年後は義務教育期間を過ぎているおそれが高く、適切な時期に教育や訓練を受ける必要があります。加えて、私は決して重視するつもりもないんですが、あえて世間の潮流に乗れば、自己責任は引退世代の高齢者にこそ問うべきであり、若い世代については、特に子供は自己責任ではなく親をはじめとする家族や親戚縁者の責任である場合が圧倒的に重いと考えるべきです。企業が暴力的とも見える『資本論』的な剰余価値の生産にまっしぐらで、しかも、内部留保という形で労働者にまったく還元しないわけですから、本書の結論の第1に上げられている労働組合の役割は重要であると私も同意します。同時に、本書の第4章でも強調されているように、住宅政策も重要です。2009年の総選挙による政権交代では大いにコケましたが、住宅政策であれば、かつての京と・大阪・東京などの都市部での革新自治体による政策でも大きな転換が可能です。そういった形で、中央政府だけでなく地方政府の役割も社会保障や社会福祉の観点から考える必要を感じます。

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2016年12月 9日 (金)

法人企業景気予測調査に見られる企業マインドは改善を示す!

本日、財務省から10-12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は7-9月期の+1.9から上昇して+3.0を記録しています。さらに、来年2017年1-3月期は+3.2と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月の大企業景況感、2期連続プラス 法人企業景気予測調査
財務省と内閣府が9日発表した法人企業景気予測調査によると、10-12月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス3.0だった。化学工業や卸売業がけん引し2期連続のプラスとなった。前回調査の7-9月期はプラス1.9だった。
10-12月期は大企業のうち製造業はプラス7.5となり、7-9月期のプラス2.9から大幅に改善した。医薬品や住宅関連部材が好調な化学工業や印刷業関連が押し上げた。
非製造業はプラス0.7だった。原油価格が安定して卸売業や広告収入が増えた情報通信業が寄与した。7-9月期のプラス1.4からは悪化した。
先行き2017年1-3月期の見通しはプラス3.2で、製造業がプラス4.6、非製造業がプラス2.4だった。4-6月期はマイナス0.4となった。電気機械器具や生産用機械器具製造業が海外の需要減や円高で悪化に転じた。財務省と内閣府は総括判断を「企業の景況感は慎重さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」として前回の判断を据え置いた。
16年度の設備投資見通しは前年度比2.5%増だった。加工食品向けに食料品製造業やスマホや自動車関連部材の投資が増えている化学工業が伸びた。前回調査の4.9%増からは減少した。経常利益は前年より円高が進んだことにより自動車や情報通信機械器具製造業の利益が減少し6.9%減の見通しとなっている。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は11月15日時点。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と青の折れ線の色分けは凡例の通りです。濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、今週は消費者マインドの指標である消費者態度指数と景気ウォッチャーも公表され、企業マインドのこの法人企業景気予測調査とともに、各種マインド指標が明らかにされ、来週12月14日には日銀短観も公表されます。この法人企業景気予測調査の結果を見る限り、大企業と中堅企業の景況感は来年2017年1-3月期がピークで、上の大企業のグラフに見られる通り、来年4-6月期には景況感は悪化を示しマイナスに突っ込むと予想されています。この統計のクセともいえますが、足元のプラス幅が大きくないので、少しのスイングでマイナスになることもあり得るのかもしれません。ただ、消費者マインド、企業マインドともに最悪期を脱しつつあるんではないかと考えられ、日を改めて取り上げる予定の日銀短観予想でも景況感は上向くとの予想を見かけます。個別項目では、雇用に引き続き不足感が広がっています。特に人材確保が難しい集権・中小企業が大企業に比較して人手不足感が大きいとの結果で、産業別では機械で代替できない部分の大きな非製造業の不足感が高くなっています。引用した記事にもある通り、今年度2016年度の設備投資計画は全産業全規模で+2.5%に上っています。上期は▲0.7%減に沈むものの、下半期に+5.2%と大きく伸びる計画となっており、やや疑問に感じなくもありませんが、製造業で設備投資の伸びが高いのは理解できるところです。

繰り返しになりますが、企業マインドの典型的な指標である日銀短観が来週12月14日に明らかにされます。いくつかパラパラと見ていると、景況感の上昇を予想する向きが多いんですが、来週になってから日を改めて取り上げたいと思います。

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2016年12月 8日 (木)

今日は上の倅の20歳の誕生日!

今日は我が家の上の倅の誕生日です。節目の20歳を迎えました。
誠にめでたい限りです。我が家恒例のジャンボくす玉を置いておきます。

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下方修正されたGDP統計2次QEは日本経済の停滞を示唆するのか?

本日、内閣府から7-9月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は1次QEの+0.5%から+0.3%にやや下方修正されています。外需中心ながら、まずまずの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月GDP改定値、設備投資下振れで年1.3%増に下方修正
内閣府が8日発表した2016年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.3%増だった。設備投資が下振れし速報値(前期比0.5%増、年率2.2%増)から下方修正された。今回の改定値から推計方法と基準年が見直され、数値が改定されている。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.6%増、年率2.3%増)を下回った。
実質GDPの伸び率を需要項目別にみると、設備投資は前期比0.0%増から0.4%減に下方修正した。法人企業統計で不動産や鉄鋼などの設備投資が減少に影響した。民間在庫の寄与度も速報値のマイナス0.1ポイントからマイナス0.3ポイントに下振れした。原材料や仕掛かり品在庫に加え、製品在庫も下方改定された。
公共投資は9月の建設総合統計が堅調だったことから、0.7%減から0.1%増となった。個人消費も飲料やテレビ、宿泊施設サービスなどの消費が好調で0.3%増と速報段階の0.1%増から上方修正された。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.0ポイント(速報値はプラス0.1ポイント)となった。輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.3ポイントとなり、プラス0.5ポイントから減少した。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.1%増(0.2%増)、年率では0.5%増(0.8%増)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.2%となった。
16年7-9月期の名目GDPは年換算で537兆円となり、これまで最大だった1997年10-12月期の524兆円を上回った。今回の改定値で05年から11年への基準年の改定と国連の新たな国際基準が適用され、企業の研究開発費や防衛装備品などが投資としてGDPに算入されるようになったため。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/7-92015/10-122016/1-32016/4-62016/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.2▲0.4+0.7+0.5+0.5+0.3
民間消費+0.5▲0.7+0.4+0.2+0.1+0.3
民間住宅+1.8▲1.2+1.3+3.5+2.3+2.6
民間設備+0.6+0.4▲0.3+1.4+0.0▲0.4
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.1)(▲0.1)(+0.2)(▲0.1)(▲0.3)
公的需要+0.2+0.0+1.0▲0.6+0.2+0.3
内需寄与度 *(+0.3)(▲0.5)(+0.3)(+0.5)(+0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(▲0.1)(+0.1)(+0.4)(▲0.1)(+0.5)(+0.3)
輸出+2.1▲0.6+0.8▲1.3+2.0+1.6
輸入+2.5▲0.9▲1.2▲0.9▲0.6▲0.4
国内総所得 (GDI)+0.6▲0.3+1.2+0.6+0.4+0.3
国民総所得 (GNI)+0.5▲0.2+0.8+0.4+0.3+0.1
名目GDP+0.6▲0.3+0.8+0.2+0.2+0.1
雇用者報酬+0.8+0.4+1.2+0.4+0.7+0.8
GDPデフレータ+1.8+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.2
内需デフレータ+0.0▲0.0▲0.3▲0.7▲1.0▲0.8

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年7-9月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、黒い外需が大きくプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与して在庫調整が進んでいるのが見て取れます。

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まず、成長率の下方修正については、基本的に、前々期の1-3月期と前期の4-6月期のそれぞれの成長率が上方改定されていて、発射台が高くなっていますので、やや7-6月期の成長率が低まったように見える点も考慮すべきでしょう。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比+0.6%、前期比年率2.3%でしたから、ずいぶんと下振れした印象がありますが、発射台の違いとともに、需要項目別で見ても、在庫調整に伴うマイナス寄与の拡大もあり、それほど悲観的に受け止める必要はないものと私は考えています。もちろん、下のグラフに関連して後に見る通り、今回の2次QEの公表に関しては基準改定に加えて、1993SNAから2008SNAへの国連マニュアルのアップデートに従った大幅な見直しの結果ですから、この程度の修正はあり得ると多くのエコノミストは考えていたんではないでしょうか。すなわち、1次QEから1か月を経過したことに伴う新たな経済指標が、景気動向によって下振れしているわけではないと考えるべきです。ですから、7-9月期は外需主導ながら、消費も底入れを示して来ており、3四半期連続のプラス成長でもありますので、日本経済がいわゆる踊り場を脱却して、持ち直しの動きに復帰する方向にあるとの見方を示すエコノミストも私だけでなく少なくないものと予想しています。ただし、BREXITに始まったEUの動揺、TPPからの離脱をはじめとするトランプ次期米国大統領の経済政策動向などなど、先行きリスクはまだまだたくさん残されています。

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今回2次QEについては、第1回目の年次推計、いわゆる確報の作業とともに、実質と名目の基準を2005年から2011年に新しくする基準改定、そして、何よりも準拠する国連マニュアルを1993SNAから2008SNAにアップデートするという、極めて大規模な改定でした。国連マニュアルのアップデートにより、従来から明らかにされていた通り、企業活動のうちの研究開発(R&D)が資本化されて設備投資に算入されることなどにより設備投資額のかさ上げがなされています。他の項目と含めて、2005年から2011年への基準改定の影響を除く意味で、名目GDPの実額の水準をプロットしたのが上のグラフです。水色の棒グラフが従来の統計で、赤い上乗せ部分が今回の大規模改定に伴って生じたかさ上げ部分です。2015年度で32兆円近くになります。安倍内閣の名目GDP600兆円の目標が近づいたのかもしれません。

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最後に、GDP統計を離れて、本日、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、財務省から10月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、下のパネルは青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列です。景気ウォッチャーの力強い回復が印象的です。

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2016年12月 7日 (水)

OECDによる学習到達度調査(PISA)2015の結果やいかに?

昨日、経済協力開発機構(OECD)から昨年2015年に実施された学習到達度調査 (Programme for International Student Assessment, PISA) の結果が発表されています。72か国・地域の15歳約54万人を対象に実施されており、平均得点でみた日本のランクは科学的リテラシーが2位、数学的リテラシーが5位であり、ともにOECD加盟国の中ではトップであるとともに、前回2012年調査のランクを上回り、トップレベルの水準を維持した一方で、読解力は8位(OECD加盟国の中では6位)で順位が下がるなど、いくつかの課題も見受けられたようです。このブログでは国際機関のリポートを紹介するのをひとつの特徴にしているんですが、OECDのサイトから報告書を入手したものの、今日の時点では、第1巻だけで500ページ近いボリュームですので、読み切れているハズもなく、国立教育政策研究所のサイトにアップされている資料から図表も引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」から、平均得点及び順位の推移のグラフを引用しています。繰り返しになりますが、我が日本の15歳は科学的リテラシーで72か国中2位、数学的リテラシーでも5位と、世界のトップクラスに君臨しています。読解力でも8位と、前回よりは少し順位を落としたものの、イイセン行っているのは明らかです。なお、示しているPISAは3年に1回実施され、前回の結果は当然3年前で、このブログでも2013年12月4日付けで取り上げています。上のグラフを見ても判る通り、2003年に我が国の順位が急落しており、PISAショックといわれて、「ゆとり教育」に起因する学力低下への批判が集まり、文部科学省は学習指導要領を改訂し、小中学校の授業時間や学習内容を増やすなどの対応が取られています。

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続いて、上のグラフは同じ「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」から、全参加国・地域(72か国・地域)における比較のテーブルを引用しています。見て明らかな通り、科学的リテラシーで日本の上に立ったトップ国はシンガポールです。15位までに我が国を含めてアジアから7か国・地域がランクインしています。また、数学的リテラシーで日本を上回ったのはトップから順に、やっぱりシンガポール、香港、マカオ、台湾とアジアの各国・地域がズラリと並びました。また、5位の日本の後には北京・上海・江蘇・広東、韓国と続き、8位になってようやく欧米の国としてスイスが入っています。読解力でもトップはシンガポールとなっていて、他の科目ほどはアジアからランクインしていないのがひとつの特徴かもしれません。なお、今回のPISAは初めて手書きではなくパソコンを使って解答する方式で行われたそうで、日本の平均点が3分野とも前回を下回ったり、特に、読解力で大きく下がった点について、紙の試験に手書きで回答する方式がほとんどの日本の生徒が混乱した可能性を文部科学省は指摘しているようです。

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3年前も同じグラフを引用したんですが、PISA 2015 Results VOLUME I p.62 Figure I.2.7 Science performance and per capita GDP を引用したのが上のグラフです。もっとも、少しデフォルメしており、大きな赤いマーカが日本です。当然ながら、縦軸の科学リテラシーのスコアと横軸の1人当たりGDPで代理されている経済的な豊かさは緩やかな正の相関を有しており、我が国はその1次の近似ラインの上方に位置しているわけですから、科学的リテラシーがムダに高い、というか、逆から見て、15歳時点での科学的リテラシーを1人当たりGDPに反映し切れていない、ということになろうかと思います。

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次に、上のグラフは、同じく PISA 2015 Results VOLUME I p.188 から Figure I.5.6 Relationship between change in mathematics performance and students' exposure to computers in 2012 のうちの右側の Use of computers in mathematics lessons を引用しています。これまた同じように、少しデフォルメしており、大きな赤いマーカが日本です。横軸が数学の授業でコンピュータを使う割合であり、日本はわずかに24%と低くなっていて、それでも、縦軸のPISA2012から2015への数学的リテラシーのスコアの落ち方は近似ラインの上を行っています。すなわち、数学授業でのコンピュータ利用が少ないにもかかわらず、スコアの落ち方は小さく、15歳の少年少女は政府の貧困な教育政策にもかかわらず、世界平均に比較してがんばっているわけです。ですから、教育政策がもっと充実すれば、まさに、デンマークやノルウェイのような成果を出せる可能性を持っていると考えるべきです。悪いのは教育政策であって、15歳の少年少女の能力ではありません。PISAに関して最後に、メディアでは読解力の低下が大問題のように取り上げている雰囲気を私は感じますが、我が国の生徒はほぼ世界のトップクラスにあり、スコアに現れている能力の向上には彼らの努力だけではなく、教育政策のさらなる充実が求められると考えるべきです。

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最後に、本日、内閣府から10月の景気動向指数が公表されています。CI一致指数は前月から+1.4ポイント上昇の113.9を示した一方で、CI先行指数は+1.0ポイント上昇して101.0を記録しました。この結果に基づいて、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「足踏み」から「改善」に引き上げています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルがCI一致指数とCI先行指数、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。

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2016年12月 6日 (火)

毎月勤労統計に見る賃金動向は上昇の気配なし!

本日、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から+0.1%増と、生産に歩調を合わせてほぼ横ばいだった一方で、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.3%の伸びとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金、10月は横ばい 天候不順で物価上昇
伸び率8カ月ぶり低水準

厚生労働省が6日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいだった。増加が止まったのは9カ月ぶり。天候不順で物価がやや上昇したことで、名目での小幅な増加がかき消された形だ。
名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は26万6802円と、前年同月比0.1%増加した。増加は3カ月ぶり。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.3%増の24万655円で、名目賃金の増加をけん引した。基本給の増加は4カ月連続だ。
内訳をみると一般労働者の所定内給与は0.2%増だった。一般労働者の所定内給与は2年6カ月連続で前年同月を上回っている。パートタイム労働者は0.3%増だった。業種別では人手不足が深刻といわれる建設業で現金給与総額の増加が目立った。
実質賃金は名目賃金から物価上昇分を差し引いて計算する。10月は天候不順で野菜などの生鮮食品の価格が高騰し、物価全体を押し上げた。10月の消費者物価指数(CPI)は、持ち家の帰属家賃を除く総合で前年同月比0.1%上昇していた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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所定外労働時間の動向については、最近ほぼ横ばいを続けている鉱工業生産指数と整合的に動いていると私は認識しています。雇用や労働については生産の派生需要ですから、当然といえます。また、賃金については基本的に名目で私は見ているんですが、いわゆる恒常所得部分の所定内賃金については、ほぼ安定的に前年比でプラスを記録するようになったと受け止めています。ただし、引用した記事にある通り、消費者物価上昇率でデフレートした実質賃金は、天候不順に起因する野菜価格の高騰などから、最近時点で急ブレーキがかかっているのも事実です。すなわち、所定内給与だけでなく現金給与総額で見た実質賃金の前年同月比は、今夏のボーナスが好調だったこともあって、6月+2.0%増、7月+1.8%増の後、8月+0.6%増、9月+0.8%増と伸びを縮小させて、直近統計の10月速報ではとうとう前年から伸びゼロの保合いになってしまいました。このあたりが昨日公表された消費者態度指数に現れたマインドの低迷にもつながっているのであろうと私は考えています。
ただし、上のグラフの一番下3番目のパネルを見て、フルタイムの一般労働者の伸びが、速報段階ながら、とうとうパートタイム労働者を超えました。かねてよりこのブログでも主張している通り、ほぼほぼ完全雇用に近い人手不足の現在の労働市場では、賃上げではなく正規雇用の増加という雇用の質の改善の方向に進むのかもしれません。でも、正規雇用の増加とともに、賃金も上がるのが何といってもベストであろうと考えるエコノミストは私だけではなかろうと思います。

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2016年12月 5日 (月)

基調判断が下方修正された消費者態度指数の悪化の主因は野菜価格か?

本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲前月比1.4ポイント低下して40.9を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の消費者態度指数が低下 基調判断9カ月ぶり下方修正
内閣府が5日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.4ポイント低下の40.9だった。前月を下回るのは2カ月連続。夏場の天候不順による生鮮野菜の価格高騰が重荷となった。内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直しのテンポが緩やかになっている」とし、前月の「持ち直しの動きがみられる」から引き下げた。下方修正は9カ月ぶり。
指数を構成する4指標は全て低下した。「暮らし向き」は1.3ポイント低下の40.1、「雇用環境」は2.3ポイント低下の42.5だった。昨年に比べてボーナスの伸びが鈍化するとの観測が出ていることが響き「収入の増え方」は40.4と0.6ポイント低下した。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた比率(原数値)は74.2%と、前月から0.4ポイント上昇した。
調査基準日は11月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5576世帯、回答率は66.4%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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11月統計では、引用した記事で指摘されている通り、消費者態度指数を構成する消費者意識指標4項目がすべて前月から下降を示しています。すなわち、マイナス幅の大きい順に、雇用環境が▲2.3ポイント低下し42.5、耐久消費財の買い時判断が▲1.4ポイント低下し40.5、暮らし向きが▲1.3ポイント低下し40.1、収入の増え方が▲0.6ポイント低下し40.4を、それぞれ記録しています。消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントすべてが2か月連続で前月から低下しており、統計作成官庁である内閣府では前月までの「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しのテンポが緩やかになっている」と、持ち直しの動きについては肯定しつつも、その動きが緩やかになっているとし、基調判断を半ノッチ下方修正しています。
短期的に、この1年ほどの消費者マインドの動きを大雑把に振り返ると、2015年年末から2016年年始にかけての水準から、今年2016年に入っての円高や金融市場の動揺に伴い、2016年2月に40.1と直近の底を打った後、9月の43.0まで緩やかに上昇を続けたんですが、その9月から10月にかけての天候不順に伴う野菜の価格高騰などから、再び消費者マインドは低下しています。確かに、私がスーパーマーケットなどで見かける限り、ここ2-3年季節果物のミカンが高く、大好きな私でもなかなか手が出せないのは別の話としても、最近では野菜価格が高騰しているのは明らかです。かつては100円くらいだったブロッコリーも、最近では250円の値がついていることもめずらしくありません。引用した記事でも、こういった野菜価格が消費者マインドに及ぼす影響をクローズアップしていたりします。それだけに、トランプ次期米国大統領の政策動向によって、TPPが不成立に終わるのは残念であるという気がします。
もっとも、ここ2か月、すなわち、10-11月の2か月で消費者態度指数が合わせて▲2.1ポイント低下していて、4つのコンポーネントの中でもっとも低下幅が大きいのが雇用環境です。10-11月の2か月で合わせて▲3.7ポイントの低下を示しています。8-9月の2か月で合わせて+3.2ポイント上昇した反動かもしれませんし、まだ、4つの構成項目の中ではもっとも水準が高いことから、現時点では何ともいえませんが、これだけ失業率が低くて有効求人倍率も上昇している中で、この10-11月に雇用環境に関するマインドが大きく低下したのはパズルです。私なんぞは、やっぱり、お給料がよかったり、正社員だったりする、という意味で、いい条件の職が見つかりにくいのだろうかと思わないでもないですし、ほかに、求人と求職のマッチングの問題など、いろいろと想像しています。明日、厚生労働省から公表予定の毎月勤労統計も参考にしたいと思います。

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2016年12月 4日 (日)

先週の読書はやっぱり10冊!

何となく、読書感想文のブログが米国雇用統計で1日後ずれしたこともあり、今週も10冊の大台に乗ってしまいました。やっぱり、1週間で10冊というのはフルタイムで公務員をしている私にはやや過重な気がします。でも、引退したらもっと読むかもしれません。

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まず、ジャスティン・リン『貧困なき世界』(東洋経済) です。著者は2008年から12年まで世銀の上級副総裁兼チーフエコノミストを務めた開発経済学者です。その後任が先月11月12日の読書感想文を取り上げた『見えざる手をこえて』の著者であるバスー先生で、現任者はポール・ローマー教授です。本書の英語の原題は The Quest for Prosperity: How Developing Economies Can Take Off であり、2012年の出版です。ただ、リン教授の2012年の出版といえば、以下のリファレンスにもpdfへのリンクを置いておきますが、New Structural Economics: A Framework for Rethinking Development and Policy が有名です。リン教授の提唱する「新構造経済学」ともタイトルがぴったりな気もします。なぜ、翻訳がこれだけ時間がかかったのかは不明ですし、なぜ、コチラを翻訳に選んだのも大いに疑問ですが、まあ、私もエコノミストとして開発経済学を専門分野のひとつとしていますので、読んでみました。著者のリン教授の提唱する新構造主義経済学とは、その昔の中南米に適用された「新」のない構造主義経済学、プレビッシュ理論などと称され、途上国における市場の失敗は誤った価格シグナルから生じており、独占や生産要素移動の不完全性により価格が歪められているとの認識で構成されており、先進的な産業である輸入代替産業の育成を目指すのに対して、「新」のつく新構造主義経済学では途上国で先進的で資本集約的な産業が育たないのは各国における生産要素賦存によって内生的に決定されていると考え、教育による労働力の質の向上やソフトないしハードなインフラの整備、その上での先進国からの直接投資の受入れなどを志向します。大雑把な歴史的地域的な概観では、中南米の1970年代とアジアの1990年代を比較すれば理解がはかどりやすいかもしれません。なお、どうでもいいことながら、私は1990年代前半に南米はチリの日本大使館で経済アタッシェとして3年余り勤務しましたが、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会がサンティアゴにあり、そのもっとも大きな会議室がラウル・プレビッシュ・ルームと命名されていたことを思い出します。本題に戻って、もっとも重要なポイントは、政府の開発政策における比較優位の、もっといえば、動学的な比較優位の発見とその活用です。途上国で失敗した開発政策は比較優位に基づかず、逆に、ファミリー・ビジネスなどの汚職やレント・シーキングに有効な産業に乏しい政策リソースをつぎ込んだ点にある場合が多く見受けられます。というか、かなり多いような気もします。本書の主張はとてもシンプルです。しかも、第7章のタイトルが特徴的なように、シンプルであり実践的、というか、政策志向的でもあります。もしも、私が開発経済学のゼミを持っていれば、輪読の候補にしたいような本です。さいごに、以下にリン教授の論文と別の代表的な著作へのリンクを置いておきます。いずれも英語です。

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次に、水野和夫『株式会社の終焉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) です。著者は証券会社のエコノミスト出身で、最近は、『100年デフレ - 21世紀はバブル多発型物価下落の時代』(2003年)、『人はグローバル経済の本質をなぜ見誤るのか』(2007年)、『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』(2011年)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(2013年)など、なかなか独特の歴史観を示して、資本主義の限界とカギカッコ付きの「成長信仰宗教」批判を繰り広げています。本書もそのライン上に位置することは当然です。そして、タイトルの通りに、本書では株式会社について、近代資本主義とそれを担う近代株式会社の誕生から現代までの歴史をひも解きつつ、頻発する企業の不祥事や格差の拡大、国家債務の拡大、人口減少等の各国に共通する課題ならびに、これからの社会と株式会社について論じています。私もこの著者の主張は読んだつもりなんですが、ここまでシリーズ的に継続できるとは思ってもみませんでした。でも、さすがにネタ切れの様相を呈しつつあるような気もします。他の著作と同じように、ブローデルを援用して「長い16世紀」の終了とともに近代資本主義が勃興し、それを担う近代株式会社も誕生した、とするのは、基本的にどこかで見たような同工異曲ではないかと思わないでもありません。そして、やや一足飛びに結論にすると、初期値として我が国経済がゼロ成長であるとの前提の下に、企業利潤・雇用者報酬・減価償却費などをすべて毎年同額とし、第1段階として1999年度以降の新自由主義の影響で歪んでしまった労働と資本への分配を見直すフローの是正を行い、引き続き、第2段階として日本が資本を「過剰・飽満・過多」に抱えてきたことを是正する、という提案をしています。私はマルクス主義的、あるいは、シュンペタリアンな歴史観として資本主義が何らかの終焉を迎えるという方向性は決して突飛なものではないと考えないでもないんですが、国家や政府の前に株式会社がこのような解体のされ方をすべきであるとは思いません。少なくとも、私的に形成され運営されている株式会社と、領土や国家の範囲内で主権を有する国民の同意に基づいて何らかの役割を委託された政府とは、後者に米国憲法的な「革命権」が及ぶとしても、前者に対して一律に解体の方向を示すのは、社会主義革命であるかどうかはともかく、政府または何らかの強権的な権力の下でなされる可能性の方が高いと感じています。ということで、著者の今までの路線を引き継いでいこうとすれば、この先はまたムチャが生じるような気もします。次は、陸の帝国と海の帝国ですかね?

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次に、ギャビン・ニューサム『未来政府』(東洋経済) です。著者は米国カリフォルニア州の副知事であり、本書にも頻出すようにサンフランシスコ市長も務めた民主党の政治家です。英語の原題は (span class="ita">Citizenville であり、2013年の出版です。後述のようにICT技術の活用による行政の革新を提案するには、やや古いかもしれません。ということで、古いとか、細かな点は別として、全体としてとても面白かったです。要は、中央政府・地方政府の官僚機構はムダに現状維持バイアスがきつくて、大きく変化する世の中にまったく対応できておらず、ICT技術の活用により情報を公開し、世間のニーズに応える必要がある、ということです。基本は地方自治体なのかもしれませんが、スマホ、アプリ、ソーシャルメディア、ビッグデータ、ゲーム化などなど、著者は政治や行政を住民に対するサービス業と捉えているようで、住民に直接接する陸運局や水道や衛生などを市民のレビューによる星の数で計測するとか、米国のレストラン批評サイト「イェルプ」の政府版導入のような話題も盛り込まれています。私自身も30年以上も前に我が国の政府機関に就職して、政府で働くことも長くなり、民間企業と違って競争のない世界でのんびりと仕事するのに慣れてしまい、本書のような視点はとても新鮮でした。そして、強く同意したのはプライバシーに関する見方であり、我が国の行政機関や学校・病院などでは周回遅れで個人情報保護に熱心に取り組んでいるようですが、実は、ミレニアル世代はプライバシーを気にかけないと著者が主張しているように、むしろ、プライバシーの保護から積極的に必要な部分を開示して行政に活かそうという方向に転換すべき時期に来ているような気が私はしています。著者もGPSなどの位置情報などのプライバシー保護は諦めるべきとの立場のように見受けられます。ガス管の埋設情報も盛り込まれていますが、秘密にして得るものと公開して得るもので、それなりに比較衡量は必要とは私も考えますが、バランスは明らかにプライバシー保護を諦める方向に向かいそうな気がします。伊藤計劃の『ハーモニー』の世界かもしれません。最後にひとつだけ気にかかったのは、政治や行政にICT技術を導入して多彩な方法によって選挙だけでなく民意を繁栄することはとてもいいことなのですが、直接民主主義にまで進むのがいいのかどうか、最近のBREXITや米国大統領選挙、あるいは、韓国での大統領弾劾デモなど、国民が直接意見を述べるのはとても重要なんですが、間接民主主義によってポピュリスト的な民意の一部を選良が選択する余地を残すのも、あるいは、必要なケースがあるかもしれません。もちろん、そのようなケースはないかもしれません。でも、何らかのカギカッコ付きの「民意を歪める仕組み」はあった方がいいような気がします。

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次に、大澤真幸『可能なる革命』(太田出版) です。著者は我が母校の京都大学教授も務めた経験のある社会学者です。一応、研究者なんではないかと思いますが、大学には属していないと私は受け止めています。本書では、革命について、非合法な暴力活動のようなものでなく、もっとも強い意味で社会的な変革を意図的にもたらすこと、あるいは、「不可能だったことを可能にするような変化を、社会運動によってもたらすこと」(p.30)を指すと定義し、現在では革命に誰も言及しなくなったのは、資本主義から社会主義や共産主義への以降の可能性が信じられていないからであると指摘します。まあ、その通りなんでしょう。私は大学時代に、革命とはマルクス主義的に定義すれば、権力階級の交代、例えば、地主から産業ブルジョワジーへ、あるいは、産業ブルジョワジーから労働者階級へ、ということだと聞いたような記憶があります。それはともかく、本書では、私の印象では革命論よりも若者論が展開されているような気がします。すなわち、古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』で展開されたコンサマリー論について取り上げ、さらに、若者の自由については何とセン教授のケイパビリティ論を援用し、さらに映画やドラマなどの映像表現、例えば、朝井リョウの原作に基づく映画「桐島、部活やめるってよ」、あるいは、ヤマザキマリによるマンガを原作とする「テルマエ・ロマエ」、池井戸潤の小説を原作とする「半沢直樹」シリーズ、NHK朝ドラ「あまちゃん」などを題材にし、若者論が延々と展開されます。いわく、政治や社会への関心が高く、社会貢献にも熱心であるにもかかわらず、選挙の投票率は低く、古市的な議論として主観的な幸福度は高いものの、客観的な条件がいいとはとても思えない現在の若者に関して、著者はオタク論を持ち出します。すなわち、狭い条件や範囲での主観的な幸福感は高いものの、広い視野で見て客観的な幸福の条件はそろっていない、という意味なんだろうと私は解釈しています。この議論と革命論がどのように切り結ぶのかは決して自明ではなく、むしろ、私なんぞはまったく理解できないんですが、強力な社会変革がオタクの若者によってもたらされたりするんでしょうか。それなりにペダンティックな本でしたが、私もどこまで著者の真意を理解したか、自信がありません。

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次に、道尾秀介『スタフ』(文藝春秋) と『サーモン・キャッチャー the Novel』(光文社) です。作者は注目のミステリ作家であり、『向日葵の咲かない夏』で注目を集め、『月と蟹』で第144回直木賞を受賞、ほかに、『カラスの親指』が映画化されて私も見ました。といことで、まず、『スタフ』は「週刊文春」連載が単行本化されています。移動デリを営み街をワゴンで駆けながら、料理を売って生計を立てる30歳過ぎの女性が主人公です。彼女が中学生の一風変わった姉の子の甥と2人暮らしをしていたところ、何故か拉致されて、甥とともに芸能人のスキャンダルメールの回収を手伝うことになります。そして、移動デリの場所を提供してくれている不動産屋、甥の通う塾の数学講師、などの脇役のキャラもなかなかよく出来ていて、ラストの大どんでん返しが印象的です。ひょっとしたら、この作者の作品のマイベストかもしれません。次に、『サーモン・キャッチャー the Novel』はケラリーノ・サンドロビッチが「the Movie」の方を担当して別々に創作活動を行っているそうです。場末の釣り堀「カープ・キャッチャー」を舞台に、釣った魚の種類と数によるポイントを景品と交換できるこの釣り堀のシステムで、「神」と称される釣り名人がいた一方で、釣り堀の受付でアルバイトしている女子大生はヒツギム人からヒツギム語ネットの講座でを習っていて、また、引退生活を送る近くの婆さんは復讐心に燃えてヒツギム人に復讐の殺人を依頼したりして、などなど、浅くて小さな生け簀を巡るささやかなドラマは、どういうわけか、冴えない日々を送る6人を巻き込んで、大きな事件に発展していくストーリーになっています。ちょっと、私のような読解力の弱い読書しかできない人間にはツラいものがありました。なお、この作者は私は大好きですので、この2冊のみ購入しています。

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次に、川村元気『四月になれば彼女は』(文藝春秋) です。作者は2012年に『世界から猫が消えたなら』で作家としてデビューし、小説第2作『億男』は私も読んでいて、この作品は小説の3作目ではないかと思います。タイトルはいわずと知れたサイモンとガーファンクルのアルバム「サウンド・オブ・サイレンス」に収録された曲名であり、英語の原題は April Come She Will です。私の読み方に従えば、精神科医の男性を主人公に、その医学生のころからの人生を舞台として、大学生のころに付き合っていた女性、そして、現時点で結婚を間近に控えながら失踪した年上の獣医の女性、とのそれぞれの恋愛を通して、男女の恋愛というよりは結婚観とか人生観、また、生死観について考えさせられる小説です。かなり映像的、というか、大学の写真部の物語から始まるせいもあって、景色や風景などが目に浮かぶような構成となっています。でも、ストーリーは重いです。主人公の男性精神科医と彼と付き合ったことのある写真部の後輩女性、結婚直前で失踪した獣医の女性、ほかに、主人公の同僚の後輩精神科医の女医がどうして恋愛できなくなったかとか、大学時代の写真部の後輩女性がガンで死んだ事実を知ったり、婚約者の獣医の妹との関係が怪しくなったり、婚約者が失踪したり、また、ゲイというよりはバイの男性との恋愛観や結婚観の重さも感じたり、とてもヘビーです。12か月の月ごとの章構成になっているんですが、私ですら読むのをやめようかと思ったほどでした。元気のある時に読むべき本だという気がします。

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次に、大森望[編]『ヴィジョンズ』(講談社) です。書き下ろしのSF短編集です。一見して作者陣が豪華で、ついつい、手を伸ばして見ました。まず、収録作品は以下の通りです。すなわち、宮部みゆき「星に願いを」、飛浩隆「海の指」、木城ゆきと「霧界」、宮内悠介「アニマとエーファ」、円城塔「リアルタイムラジオ」、神林長平「あなたがわからない」、長谷敏司「震える犬」です。これで、上田早夕里でも入っていれば、必ずしもSF小説には詳しくない私に関してはオールスター・キャストと考えてしまいそうです。なお、飛浩隆「海の指」と木城ゆきと「霧界」の2作はコラボとなっており、「海の指」の小説を基に「霧界」でマンガ化されています。「星に願いを」では、隕石の落下と宇宙人の存在を示唆する内容ながら、実は主人公の少女の夢のお話なんではないか、と思わせぶりなところもあり、他方、日常からの脱出とも考えられ、なかなか多彩な読み方のできる小説です。「海の指」とコラボの「霧界」は、灰洋に面した泡州という街を舞台にし、この街は海の指によって灰洋の底から陸地に押し出された建物によって構成されていて、それらは イスラム風建物、オスマン様式ドーム、日干し煉瓦、などなどの雑多な建築様式で成り立つ壊滅的な絶望の街の様相を呈しつつも、コミュニケーションを取りながら生きる数少ない市民を描いています。 「アニマとエーファ」では、 主人公のアニマは小説家によって作られ、消滅しつつある言語アデニア語を守るために物語を書くロボットで、エーファはその小説の読者です。アニマは彼を作った小説家の手から離れ、次の持ち主によってベストセラーを書くまでになるが 数奇な運命によりアニマとエーファが再会します。「リアルタイムラジオ」は、主人公がフォックストロットこと「A6782DE9067C8AA3716F」といい、ワールドと呼ばれるデータ世界に住む100億体のエージェントの1人という設定で、そのワールドの外にはリアルタイムが存在してラジオが流れてくるわけですが、私の理解不足で何が何やら十分に読解し切れませんでした。「あなたがわからない」では、主人公の亡くなったばかりの妻にエンバーミングが施されるんですが、それが亡くなった妻本人の希望で遺体防腐処理液の代わりにクローン培養液が使われたことから、夫婦の会話が復活したりします。最後の「震える犬」はかなり長くて、短編というよりも中編に近く、アフリカはコンゴの研究施設において、チンパンジーにAR(拡張現実)の装置を装着して、類人猿から人類への進化の過程の謎を探るプロジェクトを舞台に、1匹の冴えない犬に対するチンパンジーの愛情の芽生えを追います。

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次に、大澤真幸『日本史のなぞ』(朝日新書) です。繰り返しになりますが、著者は我が母校の京都大学教授も務めた経験のある社会学者です。一応、研究者なんではないかと思いますが、大学には属していないと私は受け止めています。ということで、本書はタイトルの革命について、p.11において、外因による変化や非意図的で自然発生的な変化を除いた内発的で意図的な変化、と特異な表現を持って定義し、それを鎌倉幕府第3代執権だった北条泰時であると指摘し、その理由として天皇権力の院宣に反して幕府軍を率いて天皇軍を破り、天皇制政府を打倒して幕府制政府を樹立して御成敗式目を制定し、加えて、天皇の臣下でありながら3人の上皇を配流した、という観点を示しています。さらに、このような反天皇制的な所業、というか、行動にもかかわらず、『神皇正統記』で天皇制の称揚に当たった北畠親房などから激賞されている、という事実も付け加えています。その理由について日本史と関連して論じたのが本書の眼目となっています。すなわち、欧米的な革命、あるいは、中国的な易姓革命に対して、我が国の万世一系の天皇制の特徴を明らかにしています。天皇は統治せず、例えば、明治以降に首相を選出するにも元老の意見に基づいており、戦後はこの元老の役割を米国が果たしている、などは秀逸な分析と私は考えますが、まあ、一面的ではあります。繰り返しになりますが、「革命」の定義がかなり恣意的なので、それは割り引いて考える必要があります。織田信長による天下統一や明治維新、太平洋戦争の敗戦後の米国による大規模な民主化などがすべて革命ではないとして除外されており、私の歴史観からして微分方程式の特異点として考えるべき歴史的転換点が、外圧や非意図的として排除されているのは同意できません。でも、先に取り上げた同じ著者の『可能なる革命』と併せて読めば、それなりにペダンティックな雰囲気を感じることが出来るのではないかと思います。

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最後に、日本推理作家協会[編]『所轄』(ハルキ文庫) です。警察の、しかも警視庁や県警本部ではない所轄警察署に所属する警官の活躍をクローズアップしたミステリのアンソロジーです。上の表紙画像に見られる通り、収録されている作家陣はオールスターキャストです。収録短編は、薬丸岳「黄昏」、渡辺裕之「ストレンジャー」、柚月裕子「恨みを刻む」、呉勝浩「オレキバ」、今野敏「みぎわ」の5編です。ファンにはお馴染みだと思いますが、夏目刑事、佐方検事、安積警部補たちが登場する警察小説のアンソロジーです。もっとも、佐方検事は検察なんですが、例の出世街道から外された南場署長が登場します。沖縄県警に出向中という与座哲郎警部と浪速署生活安全課の鍋島刑事は私には初顔でした。大阪の鍋島刑事は、東京の新宿署生安課の鮫島刑事を意識しているんでしょうか。定番ともいえる執筆陣と主人公で安心して入って行ける短篇集です。順に、私なりの観点から主人公の刑事を中心に据えてナナメに見ていくと、第1作の「刑事のまなざし」シリーズの夏目刑事は、東池袋署から錦糸署へ異動の辞令があり、東池袋署では最後の事件となりそうです。第2作の与座刑事は沖縄県警に新設された外国人対策課へ警視庁から異動してきたものの、実は沖縄出身という設定で、沖縄県警vs警視庁という対立とともに、刑事vs公安の軋轢も読み応えあります。第3作の佐方検事は警察や検察の黒星になっても正義を追い求める姿に相変わらず感動させられます。第4作の鍋島刑事は、関西人の私から見ても、大阪弁での会話がとてもテンポよく心地よい響きを持っています。最後の東京湾臨海署の安積警部補羽目の前の事件から昔の記憶をたどりますが、安積警部補の若いころの活躍が読めるという意味で貴重な作品だという気がします。

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2016年12月 3日 (土)

米国雇用統計は連邦準備制度理事会(FED)の年内利上げに追い風か?

日本時間の昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+178千人増とひとつの目安となる+200千人増の水準には達しないものの前月の+142千人増から伸びを加速させており、さらに、失業率は前月から0.3%ポイント下がって4.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の4パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

President Obama Is Handing a Strong Economy to His Successor
Departing occupants of the White House rarely hand off an improving economy to a successor from the opposing party.
When Barack Obama was waiting in the wings after the 2008 presidential election, for example, the economy was in a severe downward spiral: Employers reported cutting 533,000 jobs that November, the biggest monthly loss in a generation.
But according to the government's report on Friday, Donald J. Trump can expect to inherit an economy that has added private sector jobs for 80 months, put another 178,000 people on payrolls last month and pushed the unemployment rate down to 4.6 percent today from 4.9 percent the previous month. Wage growth, though slower, is still running ahead of inflation, and consumers are expressing the highest levels of confidence in nearly a decade.
The Federal Reserve is confident enough about the economy's underlying strength that it is now set to raise the benchmark interest rate when it meets later this month.

この後、さらにエコノミストなどへのインタビューや米国大統領選へのインプリケーションの分析が続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、非農業部門雇用者の増加は9月に+208千人増、10月に142千人増の後、11月に178千人増を記録し、市場の事前コンセンサスが180千人増くらいでしたから、ほぼジャストミートしたカンジです。他方で、失業率が4.6%まで低下し、ほぼ完全雇用に近い水準と考えるべきです。全体としての米国雇用は堅調であると見受けられますが、相変わらず、専門サービス、ヘルスケアなどのサービス業の雇用が順調に伸びている一方で、トランプ次期米国大統領が選挙戦で訴えてきたメインストリートの製造業はわずかながら4か月連続で減少しています。これも貿易制限的な政策への志向が強まる懸念のひとつかもしれません。同時に、トランプ次期米国大統領は海外進出を図る企業への課税措置にも言及していると報じられており、こういった内向きの政策が米国経済に何らかの影響を生ずる可能性は否定できません。
この雇用統計に加えて、先日の7-9月期GDP成長率+3.2%とか、その前の10月の小売売上とか、米国経済の堅調な指標が目白押しとなっており、12月13-14日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げにかなり強いフォローの風が吹いている、と考えるべきです。イエレン議長らのFED高官も次回FOMCでの利上げを示唆しています。ただ、FEDが米国政府から独立しているとはいえ、大統領選挙が終わったばかりの段階で、しかも、かなり異色な経済政策スタンスを明らかにしているトランプ次期米国大統領に対して、5500億ドルのインフラ整備などの経済政策と金融政策の整合性をどのように確保するのかは大きな課題です。すくなくとも、インフレ圧力が大きいとはいえない物価情勢もあり、私自身は利上げの確率がかなり高いと考えるものの、決して確実ではあり得ません。経済指標以外にいろいろと考慮すべき点が多いような気がします。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性はほぼなさそうに見えます。

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2016年12月 2日 (金)

来週発表のGDP統計2次QEの予想やいかに?

昨日の法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が明らかにされ、来週木曜日の12月8日に7-9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年10-12月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクは、みずほ総研だけであり、いくぶんなりとも言及があるのも第一生命経済研くらいでした。この2機関については、やや長めに先行き予想をリポートから引用しています。ほかは短くヘッドラインの成長率だけの引用です。何せ、2次QEですので、アッサリと終っているリポートも少なくありませんでした。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.5%
(+2.2%)
n.a.
日本総研+0.4%
(+1.7%)
7-9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資、公共投資が上方修正、在庫変動が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+1.7%(前期比+0.4%)と1次QE(前期比年率+2.2%、前期比+0.5%)から下方修正される見込み。
みずほ総研+0.6%
(+2.5%)
2016年10-12月期以降を展望すると、7-9月期の押し上げに寄与した一時的要因(新型スマートフォン向けの部品出荷など)が徐々に剥落する一方、経済対策に伴う公共投資の執行などが下支えとなり、景気は緩やかに持ち直していくと予想される。今週発表された10月の鉱工業生産(前月比+0.1%、11/30)や小売業販売額(同+2.5%、11/29)が堅調な結果だったことは、10-12月期に景気が持ち直すとの見方を裏付ける材料といえる。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.4%)
12/8公表予定の16年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.4%)になると予測する。1次速報の前期比0.5%(前期比年率2.2%)とほぼ変わらないだろう。
第一生命経済研+0.6%
(+2.3%)
1次速報から景気認識に変更を迫るようなものにはならないだろう。16年1-3月期以降、3四半期連続のプラス成長であり、7-9月期は伸び率も高い。内需に弱さが残る点に物足りなさはあるものの、景気が長らく続いた踊り場を脱し、緩やかに持ち直しつつあると評価して良いのではないか。
伊藤忠経済研+0.4%
(+1.7%)
2016年7-9月期の実質GDP成長率は現行統計ベースで前期比+0.4%(年率+1.7%)へ下方修正されると予想。公共投資が上方修正される一方、設備投資や在庫投資が下方修正される見込み。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.4%
(+1.7%)
実質GDP成長率が、1次速報の前期比年率+2.2%から同1.7%に下方修正されると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.0%)
12月8日に発表される予定の2016年7-9 月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、設備投資、公共投資が若干下方修正される可能性があるが、1次速報値の前期比+0.5%から変化はないであろう(ただし、年率換算値では+2.2%から+2.0%に下方修正される見込み)。
三菱総研+0.6%
(+2.5%)
2016年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.6%(年率+2.5%)と、1次速報値から同+0.1%p(年率+0.3%p)の上方修正を予測する。

ということで、昨夜のブログでは私の直観として設備投資の上方修正で成長率も1次QEから上方改定、と書いたんですが、シンクタンクなどでは半々ないしやや下方修正の方が多いくらいかもしれません。いずれにせよ、緩やかながらのコンセンサスとして、大きな修正はない、加えて、景気は緩やかに回復している、の2点は共通しているような気がします。ただし、ほぼすべての機関で指摘されている点として、今回のGDP統計の推計から2008SNAに準拠することとなり何らかの不連続な統計になる可能性が否定しきれず、ハッキリいって、何が起こるか判りません。少なくとも、GDPの実額はかなり上振れするものと思いますが、伸び率=成長率に何が起こっているかは私には判りかねます。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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