2018年6月20日 (水)

ゴールドマン・サックスの予想するワールドカップ・サッカー優勝チームやいかに?

ワールドカップ2018ロシア大会が開幕し、昨夜は我が日本代表がコロンビアに快勝して興奮冷めやらぬところですが、いくつかの報道でも取り上げられている通り、人工知能 AI を用いたゴールドマン・サックスによるワールドカップ・サッカー優勝チームの予想 The World Cup and Economics 2018 が話題になっています。AI を用いて100万回のシミュレーションを行ったという触れ込みで、以下に引用したテーブルのように、ブラジルの優勝確率 18.5%、フランス11.3%、ドイツ 10.7%、ポルトガル9.4%、スペイン 8.2% などと予想しています。ちなみに、我が日本の優勝確率はわずかに 0.4% とはじき出されていおり、さらに、予選リーグ H 組で日本は0勝1引き分け2敗でセネガルとともに予選敗退と予想されていますが、すでにコロンビアを破って勝ち点3を上げており、ゴールドマン・サックスの予想は綻びを見せています。

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実は、前回2014年ブラジル大会の際にも、ゴールドマン・サックスは同じように The World Cup and Economics 2014 において、AI ではなく統計モデルからブラジルの優勝確率 48.5% という圧倒的な数字を明らかにしていましたが、結果は優勝確率 11.4% と3番手につけたドイツが優勝しました。さて、どこまで当てに出来ますことやら。一応、「経済評論のブログ」に分類しておきます。

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2018年6月19日 (火)

大阪北部地震の震度6弱の地域に企業は3万8,322社 (東京商工リサーチ調べ) !

昨日2018年6月18日付けの東京商工リサートのサイトによれば、大阪北部地震により震度6弱が観測された大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市に企業は3万8,322社が存在しており、産業別の内訳は以下の通りです。これも同じサイトから引用しています。

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これだけでは、全国平均と比較した特徴は不明なんですが、大阪市北区は大阪高裁や地裁があり、法律事務所や司法書士事務所が多い、といわれています。また、東京商工リサートのサイトでは、「個人企業まで含めた資本金1億円未満の中小・零細企業は3万7,755社(同98.5%)に達する」ことを明らかにしています。中小・零細企業は、大企業ほど外部ショックに耐久力がないケースが少なくないと考えられ、東京商工リサーチでも「外的要因への対応力も弱い」と指摘しています。

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2018年6月18日 (月)

赤字を記録した5月の貿易統計は原油高の影響か?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+8.1%増の6兆3233億円、輸入額も+14.0%増の6兆9016億円、差引き貿易収支は▲5783億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 原油高などで
財務省が18日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5783億円の赤字だった。赤字は3カ月ぶり。前年同月に比べて赤字額は2.8倍になった。輸出入ともに増加したが、原油高などを背景に輸入の伸びが上回った。
輸入額は14.0%増の6兆9016億円だった。2カ月連続で増加し、5月としては過去最高となった。原油価格の上昇を受けて原粗油が増加。航空機類や医薬品といった品目の伸びも寄与した。
輸入額を国・地域別でみると、米国、欧州連合(EU)、アジア、中国がそれぞれ5月としての最高額を記録した。原粗油の輸入額は前年同月比28.6%増の6794億円。円建ての輸入通関単価は28.1%上昇した。
輸出額は8.1%増の6兆3233億円。18カ月連続で増加した。自動車や半導体等製造装置の増加がけん引した。
5月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=109.08円。前年同月に比べて2.1%円高・ドル安方向に振れた。
対米国の貿易収支は3407億円の黒字で黒字額は17.3%減少した。減少は2カ月ぶり。対EUは1238億円の赤字、対アジアは3459億円の黒字、対中国は2802億円の赤字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても判る通り、今年に入ってから、輸出額と輸入額がかなり近接して来ており、従って、貿易収支は黒字になったり、赤字になったりと、決して、従来のように黒字一辺倒とか、赤字一辺倒という形にはなっていません。そして、下のパネルの季節調整済み系列のグラフを見る限り、赤い折れ線の輸入額の伸びが続いている一方で、青い折れ線の輸出額が伸び悩んでいることが貿易収支の動向に寄与していることは明らかです。輸入の増加が続いているのは国際商品市況における石油価格の上昇が要因となっており、例えば、もっとも直近で利用可能な5月統計で、原油及び粗油の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+28.6%の増加を見せているものの、数量の伸びはわずかに+0.4%にしか過ぎません。大部分が国際商品市況における石油価格動向に伴う名目値の変動であり、数量ベースでは大きな変動ではない、ということが出来ます。ただし、引用した記事にもある通り、ジワジワと円高が進行しており、輸出入に対する為替の影響が出始めている可能性も否定できません。

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ということで、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。輸出については、今年になってから中華圏の春節効果により大きな変動があった後、OECD先行指数に基づく海外の需要動向を見ると、中国では上り坂、OECD加盟国では下り坂となっています。5月の貿易統計については、4月に船舶の大型案件があった反動を指摘するエコノミストもいますが、2017年のデータに基づいて極めて大雑把にいって、アジアへの輸出が年間43兆円、そのうち中国向けが15兆円、先進国が北米の16兆円と西欧の9兆円を合わせて25兆円ですから、最近時点での貿易収支を見る限り、上向きの中国需要動向と伸び悩む先進国需要がその時々によって我が国輸出に影響を及ぼしている、ということになります。もちろん、中長期的には米国を起点とする貿易制限的な通商政策の方向性も気にかかるところです。

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大阪の地震やいかに?

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今朝8時少し前に大阪府北部を震源とする地震がありました。上の画像は日本気象協会の地震情報のサイトから引用しています。
我が家の下の倅は今春から大阪に下宿していますし、世話を焼いてくれている叔母も大阪にいます。安否を確認したところ、ともに特段の被害や不便はない、とのことで安心しました。
でも、亡くなった方もおられますし、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。

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2018年6月17日 (日)

まったくいいところなく楽天にボロ負け!!

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  RHE
阪  神000000000 043
楽  天02024000x 8121

ピッチャーも、バッターも、ついでに守備や走塁まで、まったくいいところなく楽天にボロ負けでした。まあ、こういう試合もあります。明日お休みの後、甲子園主催ゲームの交流戦2試合がまだ残っています。がんばりましょう。

次のロッテ戦とその次のオリックス戦も、
がんばれタイガース!

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米朝首脳会談に関する海外論調やいかに?

世紀の米朝首脳会談が6月12日に開催されて、私も専門外ながらそれなりに注目していたんですが、いくつか海外論調を集めてみました。あくまで、自分自身の覚書のためながら、ご参考まで。

まったくのついでながら、Wall Street Journal のサイトが報じたG7サミットでのトランプ米国大統領の安倍総理に対する暴言は以下の通りです。報じられた記事の関連するパラだけ引用しています。

The U.S. president jarred some with blunt observations. At one point, Mr. Trump brought up migration as a big problem for Europe and then told Mr. Abe, "Shinzo, you don't have this problem, but I can send you 25 million Mexicans and you'll be out of office very soon," according to the senior EU official who was in the room. A sense of irritation with Mr. Trump could be felt, "but everyone tried to be rational and calm," the person said.

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2018年6月16日 (土)

楽天エースの則本投手を最終回に攻略して楽天に連勝!!

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  RHE
阪  神000000002 290
楽  天000000010 180

帰宅すると、9回ウラツーアウトで走者は1塁と2塁にいて、マウンド上はクローザーの藤川投手が仁王立ちでした。まったく得点シーンは見ていないんですが、楽天エースの則本投手を最終回に攻略して連勝でした。先発岩貞投手が終盤まで踏ん張り、8回に失点したものの、9回には則本投手を攻めて土壇場でうっちゃり、最終回は復活したクローザー藤川投手が走者を出しつつもゼロで締めました。

明日の楽天戦も3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は新書の5冊を含めて大量9冊!!!

今週は先週のプラットフォームに関する一連の経済書の続きをはじめ、一挙に9冊読みました。昨日のご寄贈本を含めると10冊に上ります。新書が半分の5冊を占めるとはいえ、日本経済学会春季大会が開催された神戸への往復新幹線も含めて、よく読んだものだと自分でも感心しています。

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まず、アンドリュー・マカフィー & エリック・ブリニョルフソン『プラットフォームの経済学』(日経BP社) です。著者は米国MITの研究者であり、前作は『ザ・セカンド・マシン・エイジ』であり、ムーアの法則に基づく指数関数的なコンピュータの高性能化や経済のデジタル化が、19世紀の第1次機械時代に匹敵する衝撃を社会にもたらす、と論じられたわけですが、本書では第1部でマシンを、第2部でプラットフォームを、第3部でクラウドとコアの3つに焦点を合わせており、本書のタイトルはかなりミスリーディングです。というのも、商店としてあげた3つの潮流のうち、実は、第2部のプラットフォームはもっとも軽く扱われているからです。かなり容易に想像される通り、第1部のマシン編では当然のようにAIやロボットが取り上げられ、第2部のプラットフォーム編ではAmazonやFacebookやGoogleなどのネット企業のビジネスについて分析され、第3部のクラウド編では資金やアイデアのクラウド・ソーシング活用の現状がフォーカスされます。先行きにかなりのバリエーションがあって、必ずしも確定的な方向性を提示できないのは理解しないでもないんですが、研究者ですのでもう少し今後の方向を提示してほしかった気がします。ジャーナリスト的にいろんな事実を羅列するにとどまっているのは少し残念です。

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次に、外山文子・日下渉・伊賀司・見市建[編著]『21世紀東南アジアの強権政治』(明石書店) です。東南アジアのいわゆるASEAN創設時の5か国のうち、シンガポールを除くタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアの4か国におけるストロングマン時代のリーダーを概観しています。タイについてはタクシン-インラックの兄妹政権におけるポピュリスト的な傾向の政治、フィリピンの義賊ドゥテルテ政権、マレーシアのナジブ政権、インドネシアのジョコ大統領です。このうち、マレーシアのナジブ首相については、何と、90歳超のマハティール首相が政権に返り咲いています。東南アジアの民主化についてはフィリピンのマルコス大統領の追放がもっとも先駆けていましたが、いまではドゥテルテ大統領が麻薬追放などで人権虫の非合法活動を容認するような「規律」を展開しています。ただ、ドゥテルテ大統領については、ダバオ市長のころのアンパトゥアン一家に対抗する上で、少し勘違いした、という点もありそうな気がします。また、インドネシアのジョコ大統領は私の考えでは決してストロングマンではないと考えるべきです。いずれにせよ、例えば四国4県の知事さんの共通項があるとは限らないように、東南アジアを一色で染めようとする試みは無謀だという気がします。

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次に、クリストフ・ボヌイユ & ジャン=バティスト・フレソズ『人新世とは何か』(青土社) です。著者2人はフランスの国立科学研究センターの研究員であり、同時に、社会科学高等研究院でも教えていると著者紹介にあります。本書では、人新世 Anthropocène を18世紀半ばの蒸気機関の発明から現在までと提唱し、環境や資源などの有限性を基に、サステイナブルではない人間生活について、必ずしもタイトルと落ちに地質学的な分析ではなく、かなりの程度に社会科学的な研究成果が明らかにされています。その意味で第3部がメインになることは明らかなんですが、熱の発生、戦争を含む死の累積、爆食の実態、環境破壊、などなどが取り上げられ、現在の生産と消費のあり方のままでは、地球が気候や環境をはじめとして、決して、サステイナブルではない現状と悲観的な先行き見通しをこれでもかと並べています。著者2人の主張も判らなくもないんですが、先行きの技術革新を含めて、私はもう少し楽観的です。

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次に、新書5冊を一挙に、橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)、吉川徹『日本の分断』(光文社新書)、野口功一著『シェアリングエコノミーまるわかり』(日経文庫)、新戸雅章著『江戸の科学者』(平凡社新書)、太田肇『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書) の5冊です。上の2冊は我が国の格差社会について分析を加えています。格差はもはや階級に転じたとの主張や大学進学を境目に乗り越えられない分断が社会に生まれた、との見方が示されています。私の従来からの主張通りに、格差や貧困に対する「自己責任論」が粉砕されています。3つ目はAirbnbやUberなどのシェアリング・エコノミーについての概説書です。仕事の関係もあって少し読んでみましたが、まあ、私のように研究対象にしているエコノミストからすれば、参考程度の内容ではないかという気がします。4冊目の新書では、江戸の科学者について、人口に膾炙した平賀源内や和算学者の関孝和をはじめとして、さまざまな分野の科学者が紹介され、江戸末期には当時の西洋先進国に遜色ない陣容であった点が強調されています。最後は、イヌ型人間とネコ型人間が対比され、標準的な小品種大量生産の近代工業社会ではイヌ型人間が有利であった一方で、情報化社会が進展しデータやノウハウの重要性が高まった現代はネコ型人間の時代を迎えた可能性が示唆されています。

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最後に、綾辻行人ほか『7人の名探偵』(講談社ノベルス) です。どこからカウントするのか、私にはイマイチ不明なのですが、帯にある通り、昨年2017年が新本格ミステリ30周年であったことを記念するアンソロジです。我が母校の京大ミス研の3人を中心に、7つの短編を収録しています。すなわち、麻耶雄嵩「水曜日と金曜日が嫌い - 大鏡家殺人事件 -」、山口雅也「毒饅頭怖い 推理の一問題」、我孫子武丸「プロジェクト: シャーロック」、有栖川有栖「船長が死んだ夜」、法月綸太郎「あべこべの遺書」、歌野晶午「天才少年の見た夢は」、綾辻行人「仮題・ぬえの密室」で、最後の綾辻作品だけはミステリかもしれませんが、エッセイとして仕上がっています。少なくとも、タイトルに異議ありで、綾辻作品には名探偵は登場しません。いずれも読み応えある短編ミステリです。なお、出版社である講談社の「新本格30周年記念企画」のサイトには本書のほか、『謎の館へようこそ 白』と『謎の館へようこそ 黒』、さらに、『名探偵傑作短編集 御手洗潔篇』、『名探偵傑作短編集 法月綸太郎篇』、『名探偵傑作短編集 火村英生篇』などが紹介されています。ご参考まで。

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2018年6月15日 (金)

藤浪投手復活の確かな手応えで楽天に完勝!!

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  RHE
阪  神000002101 480
楽  天000000000 050

藤浪投手の力投で楽天に完勝でした。7回途中まで4安打無失点で今季初勝利です。ヒーローインタビューでも殊勝な発言が目立ちました。リリーフ投手人もていねいなピッチングで完封リレーを完成させました。打線も少しずつ得点が上がるようになってきており、糸原選手や藤川俊介選手のバッティングが目に付きました。

明日の楽天戦も、
がんばれタイガース!

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ご寄贈いただいた『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) を読む!

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とても久し振りに図書をご寄贈いただきました。ブレイディみかこ×松尾匡×北田暁大『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) です。私個人のブログなんぞはとても貧弱なメディアなんですが、図書をご寄贈いただいた折には、義理堅く読書感想文をアップすることにしております。当然です。
まず、私自身については、官庁エコノミストにして左派、という独特の立ち位置にあり、少なくとも左派であることを隠そうとはしていません。例えば、もう定年に達しようという年齢なんですが、そもそもの採用面接でのアピール・ポイントとして、「大学においては経済学の古典をそれなりに読んだと自負している。スミス『国富論』、リカード『経済学と課税の原理』、マルクス『資本論』全3巻、ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』などである。」と、堂々とマルクス『資本論』を読んだことを明らかにした上で経済官庁に採用されたりしています。まあ、その後、立身出世とは縁遠い人生を送ったことも事実ではあります。
ということで、本書の関連としては、著者のおひとりである松尾教授の『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店) をほぼ2年前の2016年5月28日の読書感想文で取り上げ、「ジャカルタから2003年に帰国して以来、ここ十数年で読んだうちの最高の経済書でした。まさに、私が考える経済政策の要諦を余すところなく指摘してくれている気がします。」と極めて高く評価しています。その折にも指摘したところですが、痛みを伴う構造調整による景気拡大でなければ「ホンモノ」ではなく、金融緩和による「まやかし」の成長は歪みをもたらし、加えて、財政赤字を累増させるような拡張的財政政策なんてとんでもないことで、逆に増税で財政再建を進め、デフレや円高を容認して、それらに耐えるように構造改革を進めるべし、といったウルトラ右派的かつ新自由主義的な経済政策観が幅を利かせる一方で、現在のアベノミクスの基礎をなしているリフレ派な、かつケインジアンな政策に対する世間一般の理解が進まないことを私自身はとても憂慮しています。そして、こういった私の懸念を払拭するために強力なサポートが本書でも得られるととても喜んでいます。
北田教授の社会学的な視点などの専門外の部分は別にして、そういった100点満点の本書であることを前提に、ご寄贈に応えるために、今後のご出版のご参考として私見をいくつか書き加えると、国際経済の視点をもう少し盛り込んだ経済政策論が欲しい気がします。というのも、本書で指摘されている通り、右派は内向きであり、左派は外向き、というのはその通りで、私はそれをナショナリストとインターナショナリストと呼んだりもするわけですが、米国や欧州におけるポピュリズムの台頭も横目で見据えつつ、本書では移民に対する左派的な promotive な見方が示されている一方で、自由貿易に対する見解はまったく見受けられません。私は、移民政策も同じなんですが、自由貿易についても、基本は条件付き賛成です。すなわち、移民にせよ、自由貿易にせよ、国民経済全体としてはプラスのインパクトがある一方で、平たい表現をすれば、損をする集団もあれば、得をする集団もあるわけで、その得をする集団の経済的厚生増加の一部を、たとえ期間限定であっても、損をする集団に補償することが必要です。その分配政策なしで無条件に、まあ、誤解を招きそうな表現かもしれませんが、いわば「弱肉強食」に近い形で、移民や貿易の自由化を進めるのは、私は大いに疑問を持っています。例えば、実証なしの直観的な議論ですが、高度な技能を持った移民は大企業に有利にはたらく一方で、低賃金な移民は中小零細企業で活用できそうな気がしますし、レシプロカルに自由貿易を進めると仮定すれば、メリッツ教授らの新々貿易理論の示す通り、大雑把に大企業ではないかと想像される国際競争力ある産業に有利なことはいうまでもなく、逆に、国際競争力ない産業や途上国の低賃金労働に支えられた製品と競合する産業には不利であり、後者は極めて大雑把に、大企業も含まれているかもしれないものの、中小企業も少なくないような気がします。もうひとつは、現在の日本経済の景気観です。左派は多くの場合、景気が悪くて賃金が上がらず、失業が蔓延している、といった否定的な景気観を表明することがあり、本書でもそのラインが踏襲されているような気がします。日本経済の現状は、景気局面について、左派はどう考えているのか、失業率が大きく低下しながら賃金が上がらない、あるいは、労働分配率が低下を続けるのはなぜかのか、そして、それはどのように経済政策で対応すればいいのか、とても重要なポイントのように私は受け止めています。特に、現在の安倍政権のアベノミクスを左派的な視点から高く評価しつつも、他方で、党派的な見地からか、何なのか、本書でも踏襲されている「実績が上がっておらず、景気が悪い」と、一見すれば矛盾するような結論を示されると、私のような左派でありながらも頭の回転の鈍い人間には、なかなか左派の語る経済に関する理解がはかどらないような気がします。最後の方は少し筆が滑りましたが、以上の2点はいずれも本書を批判するわけではありません。あくまで、今後のご出版のご参考です。失礼いたしました。
いずれにせよ、過去何度かの選挙結果を見れば、国民がアベノミクスの経済政策をかなりの程度に支持していることは明らかです。メディアなどで見受けるオピニオン・リーダーらの経済実感と違って、国民の経済観や景気観は決して悪くないんだろうと、少なくとも選挙結果からはうかがえます。もちろん、森友・加計問題の解明や安全保障政策の議論、さらに、憲法改正に対する意見表明などはとても大事ですが、日々の生活を抱えた国民の支持を得られるような経済政策の提示は、いずれの政党党派においても極めて重要な課題であり、その昔の米国大統領選挙で当時のクリントン候補の掲げた "It's the economy, stupid." は今でも忘れるべきではないポイントだと私は考えています。

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