2017年1月21日 (土)

今週の読書は経済書や専門書に小説と新書も加えて計7冊!

今週の読書は以下の通り、経済書や専門書に小説と新書も加えて計7冊です。ただし、今週号の経済週刊誌のいくつかで書評が取り上げられた『大統領を操るバンカーたち』上下巻のうちの上巻を読み終えたんですが、タイムリミットで現時点ではまだ下巻が読めていません。さすがに、上巻だけの読書感想文は奇怪な気がしますので、上下巻セットで来週に回します。先週の8冊からはビミョーにペースダウンしたんですが、新書が3冊あって少し冊数としては多い気がしますが、心理的なボリュームとしては私はペースダウンしたつもりになっています。ただし、来週はドッと予約が回って来てしまいましたので、今日は自転車で取りに行くのがタイヘンそうな気がします。せっかく今週ペースダウンしたにもかかわらず、来週は大きくペースアップすること確実です。

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まず、小川光[編]『グローバル化とショック波及の経済学』(有斐閣) です。タイトル通りに、ショックの波及に関する定量分析を主たるテーマとしています。第1部は長期時系列データに基づく地域の対応分析であり、第2部では個別ショックへの対応分析を行っています。まず、第1部で、地域経済や市町村レベルでのショックに対する対応として、グローバルショックでは共通因子モデルの構造が変化したかどうかを実証し、最近時点に近くなるほど内需主導から外需依存を強め、その分だけショックの影響が大きくなっている点を示唆しています。財政ショックに対する自治体行動については私は少し異論があり、本書では投資的支出でショックへの調整を図っている点をサポートしていますが、逆から見れば、景気循環の振幅を大きくさせるような調整であり、私は支持できません。自治体財政のショック対応の国際比較は、制度面での違いを無視しており、どこまで評価できるか疑問です。ここまではいいんですが、第2部では自治体の予防接種政策は横並びかフリーライダーかを空間的自己回帰モデルで検証しており、モデルの選択が疑問です。ただ、リーマン・ショック後の金融円滑化施策については、都市と地方の効果の差はこんなもんだという気がします。また、自然災害ショックへの備えについて、銀行などの外部資金調達がより難しいと考えられる規模の小さな企業で保険の活用が進んでいないのは、そもそも、保険料支払いの資金アベイラビリティを無視した議論のように見受けられ、保険会社の提灯持ちであればともかく、これも疑問なしとしません。最後の南海トラフ地震への備えについては、徳島県阿南市の調査をもとに地震災害の要因などから家賃を推計しようと試みていますが、海岸性からの距離が津波災害への耐性を持っていて家賃に有意に効いているほかは、ほとんで意味のない回帰分析のように私には見えます。せっかく借りて読んだんですが、特に第2部はどこまで役に立つ分析なのか疑問だらけです。

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次に、ジョナサン・ウルフ『「正しい政策」がないならどうすべきか』(勁草書房) です。著者は長らくユニバーシティ・カレッジ・ロンドン哲学部教授を務め、現在はオックスフォード大学に移っている政治哲学を専門とする研究者であり、英語の原書は原題 Ethics and Public Policy として2011年に出版されています。ということで、数年前に米国のサンデル教授が正義論で脚光を浴びましたが、その流れで英国の哲学研究者が正義に関して論じた本書では、動物実験、ギャンブル、ドラッグ、安全性、犯罪と刑罰、健康、障碍、自由市場について論じ、最終第9章で結論を引き出しています。でも、ハッキリ言って、日本語タイトルは不可解です。エコノミストの目から見れば政策選択の理論を論じているように見え、哲学を論じた本書とのかい離が大きく誤解を与えかねないと危惧しています。動物実験だけを取り上げて、家畜を屠殺して食用に供する点はスルーしているのも奇妙な気がしますが、エコノミストの観点からは第2章のギャンブルと第3章のドラッグを興味深く読みました。特に、昨年はいわゆるカジノ法案と呼ばれたIR法案が国会で審議されましたし、ギャンブルとフドラッグについてはそれなりに経済学の視点も重要と考えます。しかし、まず考慮すべきは、市場経済というのは完全情報というあり得ないような強い前提でその効率性を成り立たせているわけで、ハイエクですら認めるように、完全な情報が利用可能であれば市場経済でも社会主義的な指令経済でも、あるいは他の資源配分システムでも、おそらく、効率的な資源配分が可能になることは間違いなく、論ずるに値しません。ですから、私がギャンブルについて感じているのは、はなはだ非合理的である、という1点です。確率的に損するに決まっているのにギャンブルするのは、まあ、社交場のお付き合いがあるからです。加えて、我が国のパチンコについては北朝鮮の核開発などへの資金を提供している可能性も考慮して、私は手を出していません。それから、ドラッグについては私は解禁するのも一案かと考えています。というのは、現在のように厳しい禁止下に置いて猛烈なプレミアムで価格が跳ね上げるんではなく、かつての専売制の下にあったタバコなどと同じように政府ないし公的機関の専売とし価格を引き下げた上で、ドラッグの使用者を把握して治療に差し向けるためです。ギャンブルも一定の中毒性を有しますが、ドラッグは完全に中毒を引き起こし医療機関による治療が必要です。それから、ギャンブルもドラッグも禁止している制度下では、どうしても非合法団体、特に日本の場合は暴力団の暗躍を招く原因となります。そのあたりを総合的に勘案した政策がセカンド・ベストとして採用されるような気がします。

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次に、エリック・ワイナー『世界しあわせ紀行』(ハヤカワ文庫NF) です。2012年出版の単行本が昨年2016年年央に文庫化されています。著者はジャーナリストで、ニューヨーク・タイムズをクビになり、全米公共ラジオ(NPR)などで世界のいくつかの国の海外駐在員を務めた経験があります。英語の原題は The Geography of Bliss であり、2008年に出版され、邦訳の単行本は2012年に刊行されています。昨年文庫本化されたものを取り上げています。ということで、タイトル通りに、幸福について考えるために世界中を旅行した紀行文です。訪問して本書に収録されているのは、最終章の著者の本国である米国を別にして、第1章のオランダから第9章のインドまで9か国です。オランダは世界降伏データベースを構築している学者を訪問し、その後、幸福度が高そうな欧州のスイスとアジアのブータンを訪れ、さらに、アイスランドをはさんで、金銭的に豊かなカタールとそうでないモルドヴァを比較し、アジアに戻ってタイ、そして、英国では幸福度の高くないスラウという街で6人の幸福学研究者が心理的傾向を変更させることを目指したBBCの実験を取材しています。ブータンは先年国王夫妻が来日した折にも話題になりましたが、国民総幸福量(GNH)なる指標で有名ですし、インドでは宗教的な短期セミナーを体験しつつ彼の国の幸福感は著者も謎であると認めていたりします。でも、最終的に、著者はタイ的な「マイペンライ(気にしない)」が幸福への近道ではなかろうかと示唆しているように私には読めました。ただ、幸福を個人的な状態と考えるだけでなく、英国におけるBBCの実験もそうで、功利主義的に幸福が可算かつ加算・減算できるものとして、政策目標とするのは不適当な気もしますが、何らかの方法によって世界全体の幸福度を高めることが望ましい、との著者の考えの方向は示唆されているような気がします。ただし、それを直接的にやってしまえばセロトニンを分泌する薬物を配布するのも一案となってしまい、本書でも、幸福感を感じるために食事も忘れて脳の一定の部分に電気を通じさせるスイッチを押し続けるマウスの事例が何度か批判的に引かれているのも事実です。このあたりの含意はビミョーなところがありますので、読み進むにはある程度の批判的な精神が必要かもしれません。

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次に、ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』(河出書房新社) です。昨年亡くなったエーコ教授の小説としての遺作に当たります。ただし、まだ邦訳されていない小説があり、La misteriosa fiamma della regina Loana 『女王ロアーナ、神秘の炎』は岩波書店から刊行予定らしいです。ということで、『薔薇の名前』で始まった小説のシリーズも、私はすべてこの著者の小説は邦訳されている限り読んだと思いますが、これで絶筆であり、遅い刊行の『バウドリーノ』や『プラハの墓地』ではよりエンタテインメント色をとよめ、本作ではさらにその傾向を強め、多くの読者が楽しめる小説になっているように私は受け止めています。舞台は1992年のミラノであり、主人公のコロンナは編集者として雇われ、「ドマーニ」と題する新しい日刊紙の発刊に向け、準備作業に入ります。出資者はコンメンダトールなるイタリアの勲位を持ち、業界では名を知られた人物であり、真実を暴く新聞を作るというのが表向きの理由となっているものの、じつは、触れられたくない裏話を取り上げるという脅しで、自社株を安く回してくれたり、名士仲間に入れてくれたり、といった日本の総会屋の雑誌や新聞に近い出版物であり、イタリア的には、というか、日本的にもそうで、ホントに出版される前に発刊取りやめになることが予想されるシロモノでだったりします。このため、コロンナの雇主は発刊準備から発刊中止に至るまでを小説に書いて売り出すことを思いつきます。すなわち、前評判をあおっておけば、いざ中止となった時の保険になると考え、ゴーストライターのコロンナを雇うわけです。他に6人ほどの記者を雇い、彼らには本当のことは伏せて、創刊準備号「ヌメロ・ゼロ」の編集会議を開きます。創刊準備号とはいっても、枝番まであって0-1号から0-12号までが計画されていたりします。そして、編集会議の内容をそのまま本にしようというわけです。ジャーナリズムを舞台に、その内幕を暴くのが著者の狙いなんでしょうし、小説のラストは、いかにもウラ情報を取るためにウラ社会との接点を持った記者の末路をあぶりだした形になるんですが、他方、労働騎士勲章を叙勲し、支持者にはイル・カヴァリエーレと呼ばれ、テレビと新聞の違いがありながら、ベルルスコーニ元首相を髣髴とさせる登場人物=出資者もあります。読ませどころは記事の作り方を話し合う日々の編集会議であり、著者自身の饒舌が乗り移ったかのように抱腹絶倒の怒涛の展開となり、記者達がトンデモな話をぶち上げたりします。いろいろと与太話が続く中で、特に私が印象に残ったのはムソリーニの最期に関するものですが、ほかにも風俗的というか、イタリア的な面白さがいっぱいです。このあたりは、『バウドリーノ』のホラ話に通ずるもの、というか、その現代版という気もします。

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次に、河村小百合『中央銀行は持ちこたえられるか』(集英社新書) です。著者は日銀出身の日本総研エコノミストであり、本書はいわゆる現在の黒い日銀の前の白い日銀のころの旧来に日銀理論を幅広く展開しています。日本総研がそもそも翁夫人の活動拠点ですから、そうなっているのかもしれません。私も気を付けているんですが、ものすごく「上から目線」で書かれた新書です。本書のタイトルとなっている「中央銀行は持ちこたえられるか」と同じタイトルを取っているのが第5章なのですが、基本的に、大規模な量的緩和による国債などの資産購入にともなう日銀の財務について「持ちこたえられるか」同化を懸念しているように読めます。ほかは、一貫して財政再建を訴えているわけで、判らないでもありません。というのも、財政は強制力を持って税を徴収したり、逆に公共事業を実施したり社会保障などで財政リソースをばらまいたり出来るんですが、金融については特に銀行が合理的な経済行動を取ってくれないと政策効果が発揮できません。ですから、市場メカニズムが正常に機能するよう、規制緩和や財政再建を力説するセントラル・バンカーが少なくないのは私も理解できます。でも、本書の最大の欠陥は、リフレ派の理論に基づいた現在の異次元緩和が日銀のインフレ目標の達成はおろか、ほとんど物価の上昇に寄与していない点につき、何らの分析や解釈を加えられていない点です。単なるお題目、というか、安倍総理ならば「レッテル貼り」と表現するかもしれませんが、単に日銀が債務超過になるかどうか、財政赤字が積み上がっているという事実関係のみを述べているに過ぎません。日銀財務が悪化して日銀職員のお給料にしわ寄せが行くのを懸念しているとも思えませんが、ちなみに、震災後に我々公務員のお給料は震災復興経費捻出のためにカットされたりした経験があります。それにしても、財政再建が出来ない政府が悪い、それを真っ当に伝えないメディアも悪い、正しいのは著者をはじめとする旧来の日銀理論の信奉者だけ、という、ものすごく視野狭く「上から目線」の新書です。著者あとがきなどを見ると、数十人を相手にした講演会の議事録を起こして書籍化したような印象を受けるんですが、興奮してやり過ぎたのかもしれません。もっとも、こういった新書が出ると「闘うリフレ派」のエコノミストも立ち向かう人が出るようなも気もします。でも、それは泥仕合になりかねないリスクをはらんでいそうな雰囲気を感じないでもありません。

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次に、水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書) です。著者は千葉大学の政治学の研究者です。昨年最大の話題のひとつであった米国大統領選におけるトランプ大統領の当選などの先進各国におけるポピュリズムの台頭について解説してくれています。私は1991-94年の3年余り南米はチリの首都であるサンティアゴに経済アタッシェとして大使館勤務を経験し、隣国アルゼンティンのポピュリズムなどもお話には聞いてきましたが、最近では欧州や米国でもポピュリズムの台頭が見られ、我が国でも大阪維新の会などがポピュリズム政党と見なされており、エコノミストの専門外ながら、とても参考になりました。本書でも定義されているように、ポピュリズムとは既存の政治家や官僚・企業経営者をはじめとするエリート層に対するアンチテーゼとして位置付けられ、幅広く国民の中から包摂されていないと感じられる階層の支持を受け、例えば、先進国でいえば、まさに米国のトランプ大統領の目指す政策、製造業のブルーカラーとして働く白人中年男性の利益を全面に打ち出すような政策を志向していると理解されています。ただし、日本ではほとんど実感ないんですが、そのために反移民政策、特に反イスラム政策を推進しかねない方向を志向しているようにも見えます。その理由がふるっていて、イスラム教は男女平等ではなく、反民主主義であるという民主主義やリベラルを標榜するポピュリズムが最近の傾向であると本書は指摘しています。かつてのナチスは授権法により民主主義を否定しましたが、その逆を行くと見せかけて反イスラムの方向を志向するもののようです。また、私はまったく専門外ですので、アウゼンティンのペロン党やフランスの人民戦線やその党首であるルペン女史くらいしか知らず、ほかは何の知識もなかったんですが、大陸ヨーロッパにおけるオーストリアの自由党やベルギーVBなどのポピュリスト政党の動向、あるいは、スイスの直接民主主義に基づく国民投票でいかにポピュリズム的な結果が示されるか、などの、まあ読み物も興味深く読めました。私がこのブログで何度か指摘した通り、良し悪しは別にして、間接民主制は、ある意味で、増税などの国民に不人気な政策を決定・実施する上で、別の視点に立って民意を「歪める」働きが求められる場合があるのも確かです。その昔には、 田原総一朗『頭のない鯨』(1997年)では、国民の不人気政策は「大蔵省が言っているから」というわけの判らない理由で、大蔵省が前面に立って悪役を務めることで政治家も言い訳して来た、と主張していたように記憶しています。我が国でもそういった「悪役」を務めて不人気政策を遂行することが出来なくなったわけで、その意味で、具体的かつ個別のポピュリスト政党を論じなくても、ポピュリズム的な政策形成への流れというものは出来ているような気がしますし、何らかのきっかけで政党として支持を集める素地もあるように感じます。最後に、先進国の中南米のポピュリズムの違いを論じて、伝統的な中南米のポピュリズムではエリート層への配分を中間層へ差し向けることを要求したのに対して、先進国でのポピュリズムは移民、特にイスラム系移民に向けられる分配リソースを中間層へ戻すべし、と主張する点にある、との指摘は新鮮でした。さらに、時代背景もあるんでしょうが、中年米のポピュリズムはバルコニーから集まった聴衆に対して演説するコミュニケーションである一方で、先進国はテレビやネットを活用する、というのも判る気がします。ポピュリストかどうかはビミョーなところですが、在チリ大使館に勤務していた折に、キューバの故カストロ議長が若かりしころの演説をビデオで見たことがあり、私はスペイン語は経済関係しか詳しくなかったものの、とても感激した記憶があります。「君だ!」といって聴衆の一角を指さすんですが、かなり角度的にムリがあったにもかかわらず、私自身が指差された気がしました。雄弁が求められる国民性だったのかもしれません。長々と書き連ねましたが、今週3冊読んだ新書の中では、私から見て一番の出来だった気がします。

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最後に、青木理『日本会議の正体』(平凡社新書) です。少し遅れて図書館の予約が回ってきましたが、日本会議に関する新書です。著者は共同通信のジャーナリストであり、本書のあとがきにも明記されている通り、日本会議に対しては批判的なまなざしを送っています。その上で、類書と同じような内容であり、発足当時の生長の家の強い影響や新党や仏教などの宗教との強い結びつき、憲法改正やその前段階としての教育基本法の改正に対する志向、夫婦別姓への反対などの伝統的な家族観などなどが明らかにされていますが、その意味ではありきたりな内容で、本書の大きな特徴は然るべき人物に対するインタビューをかなりナマな形で収録している点ではなかろうかという気がします。防衛大臣の稲田代議士まで登場します。私の考えは何度かこのブログでも明らかにしたつもりですが、私自身は進歩的かつリベラルな考えを有しており、進歩の反対が歴史を現時点で押しとどめようとする保守であり、もっと強烈なのが歴史を逆戻りさせようとする反動ないし復古というように捉えています。その意味で、日本会議は私の基本的な価値観の逆に当たっていると認識しています。ただし、それは歴史観と宗教観が大いに関係すると考えるべきです。すなわち、中国ほどではないにしても、日本でも円環的な歴史観を有している人は少なくなく、私のように直線的といわないまでも歴史の進歩が一方的かつ不可逆的と考える人は少ないかもしれません。一例としては、宗教的な輪廻転生が上げられます。私は浄土真宗の信者として、一方的というか、不可逆的な輪廻転生からの解脱と極楽浄土への生まれ変わりを信じていますが、来世の輪廻的な生まれ変わりを信じている人はいなさそうで、まだまだいる気がします。歴史の歯車を元に戻そうとすることは、私には無意味で不可解な努力だと見えるんですが、そういった努力をしている筆頭が日本会議だという気もします。私の理解を超えている組織・団体です。

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2017年1月20日 (金)

トランプ効果でエコノミスト誌のビッグマック指数はどう動いたか?

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最新号のエコノミスト誌で為替の購買力平価の一種であるビッグマック指数が明らかにされています。エコノミスト誌のサイトから引用した画像は上の通り、昨年来のトランプ次期米国大統領への政策期待から生じているドル高を反映しているようです。下のフラッシュもエコノミスト誌のサイトに直リンしていたりします。

諸般の事情により、これだけです。週末前の軽い経済の話題でした。

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2017年1月19日 (木)

Oxfamによる格差に関する2017年版報告書「99%のための経済」やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、今週月曜日の1月16日に、世界経済フォーラムのダボス会議に先がけて、Oxfamから格差問題に関する最新の報告書「99%のための経済」An Economy for the 99% が明らかにされています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。いくつかのメディアでは、Oxfamのプレスリリース「たった8人のトップ富裕者が世界の下位半分36億人と同じ資産を保有している」Just 8 men own same wealth as half the world をキャリーしているのを私も見かけました。まず、リポートの表紙から概要を引用すると以下の通りです。

An Economy for the 99%
New estimates show that just eight men own the same wealth as the poorest half of the world. As growth benefits the richest, the rest of society - especially the poorest - suffers. The very design of our economies and the principles of our economics have taken us to this extreme, unsustainable and unjust point. Our economy must stop excessively rewarding those at the top and start working for all people. Accountable and visionary governments, businesses that work in the interests of workers and producers, a valued environment, women's rights and a strong system of fair taxation, are central to this more human economy.

このパラグラフを見て、格差是正のために雇用の確保、環境の保護、女性の権利の尊重、公平な税制などのいくつかの主張も理解できるんですが、私の興味の範囲ながら、リポートからいくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のテーブルは、リポート p.11 にある Box 1: Oxfam's wealth inequality calculations から Table 1: Share of wealth across the poorest 50% of the global population を引用しています。このブログの昨年2016年11月28日付けのエントリーで取り上げたところですが、クレディ・スイス証券から明らかにされている世界の富裕層の資産保有に関するリポート The Global Wealth Report 2016 などから試算を行っており、2014年1月時点ではトップ富裕者85人が世界の下位半分と同じ額の資産を保有しているとしていたところ、2015年10月時点では世界の富裕層1%とそうでない99%の資産額がほぼ等しいとの試算結果を得て、その時点では下位半分の資産が占める割合は0.7%だったものが、2016年データではさらに格差が広がり、世界の下位半分の資産はわずかに0.2%にしかならず、世界の富裕者上位8人とほぼ同額となったとの試算結果を明らかにしています。

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次に、上のグラフは、リポート p.16 から Figure 2: Apple minimizes material and labour costs to maximize its profits (Apple iPhone 2010) を引用しています。最新ではないんですが、2010年の iPhone 4 のコスト構造について、"Capturing Value in Global Networks: Apple's iPad and iPhone" と題する米国の研究者の学術論文から引用・再構成しています。労働者に支払われるのはわずがに5%余りに過ぎない一方で、Appleの利益は60%近くに達しています。賃金が上がらない反面、企業が内部留保を溜め込んで、配当や株価に反映して株主の利益となったり、ストック・オプションで経営者の懐を潤わしたりしているのが読み取れるデータです。日本企業も少なからず、同じような企業行動を取っていると私は考えています。

ここ数年で日本のみならず世界経済における格差や不平等は急速に拡大を見せています。Oxfamに指摘されるまでもなく、政府が取り組むべき優先順位の高い経済課題といえます。

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2017年1月18日 (水)

ダボス会議が始まり、世界経済フォーラム Grobal Risks Report 2017 やいかに?

遅ればせながら、なんですが、世界経済フォーラムの主宰するダボス会議が昨日1月17日から始まっており、その前段階で1月11日に Grobal Risks Report 2017 が明らかにされています。景気回復のペースが歴史的に鈍化していることを指摘しつつ、いくつかのリスクについて分析います。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、Grobal Risks Report 2017 からヘッドラインともいうべき The Global Risks Landscape 2017 のグラフを引用すると上の通りです。例年と同じように、横軸が発生の蓋然性、縦軸がダメージですから、右上に位置するほぼ一般的に「危ない」ということになり、左下はそれほどでもない、というように解釈できようかと思います。ですから、異常気象や自然災害が発生の蓋然性が高く、しかもインパクト大きいリスクとして認識されています。マーカが緑色なのは環境問題のカテゴリです。ほかに、社会問題のカテゴリを表す赤いマーカの難民問題、地政学のカテゴリのオレンジ色のマーカのテロリストの攻撃、技術問題のカテゴリを示す紫色のマーカのサイバー攻撃などが目立っています。他方、経済問題のカテゴリである青いマーカでは雇用問題や金融危機などが見受けられますが、先ほどのいくつかのリスクに比べてやや後景に退いているような印象です。

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次に、というか、最後に、同じく Grobal Risks Report 2017 p.44 から Figure 3.1.1: Perceived Benefits and Negative Consequences of 12 Emerging Technologies を引用すると上の通りです。技術進歩の光と影、と言いましょうか、横軸が利益、縦軸が否定的な結果をもたらす確率となっており、このグラフで言えば、右下に位置するほど利益が大きく否定的な影響が少ない、ということになり、逆は左上に位置すれば利益が少ない割にはリスクが大きく、また、右上に位置すれば「諸刃の剣」的に利益も大きいがリスクも大きく、まあ、少し言葉は違うかもしれませんが、ハイリスク・ハイリターン型の技術と考えてよさそうです。そして、最初のカテゴリ、すなわち、利益が大きくリスクが小さい典型はエネルギの採掘・保存・輸送となっています。シェール革命などが念頭にあるのかもしれません。そして、左上の利益が少ない割には危ない技術の典型がジオエンジニアリング、地球工学と称されることもありますが、私は専門外ながら、降雨をもたらしたりする技術ではないかと思います。よく知りません。そして、「諸刃の剣」型の危ないが利益も大きそうな技術の典型が人工知能(AI)とロボットであろうと示唆されています。まあ、そうなんでしょうね。うまく使えれば大きな利益が見込める一方で、雇用が奪われるだけでなく、もっと、何と言うか、現時点では予想もつかないタイプの不都合が生ずる可能性もあります。

ダボス会議は1月20日までの予定だそうです。

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2017年1月17日 (火)

国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update やいかに?

昨日1月16日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。ヘッドラインとなる世界の経済成長率見通しは、前回の昨年2016年10月時点から変更なく今年2017年+3.4%、来年2018年+3.6%と見込まれています。そのうちの日本経済の成長率は、2017年は前回から+0.2%ポイント上方改定され+0.8%と、来年2018年は+0.5%と見通されています。まず、IMFのリポートから最初のページのポイントを4点引用すると以下の通りです。

A Shifting Global Economic Landscape
  • After a lackluster outturn in 2016, economic activity is projected to pick up pace in 2017 and 2018, especially in emerging market and developing economies. However, there is a wide dispersion of possible outcomes around the projections, given uncertainty surrounding the policy stance of the incoming U.S. administration and its global ramifications. The assumptions underpinning the forecast should be more specific by the time of the April 2017 World Economic Outlook, as more clarity emerges on U.S. policies and their implications for the global economy.
  • With these caveats, aggregate growth estimates and projections for 2016-18 remain unchanged relative to the October 2016 World Economic Outlook. The outlook for advanced economies has improved for 2017-18, reflecting somewhat stronger activity in the second half of 2016 as well as a projected fiscal stimulus in the United States. Growth prospects have marginally worsened for emerging market and developing economies, where financial conditions have generally tightened. Near-term growth prospects were revised up for China, due to expected policy stimulus, but were revised down for a number of other large economies-most notably India, Brazil, and Mexico.
  • This forecast is based on the assumption of a changing policy mix under a new administration in the United States and its global spillovers. Staff now project some near-term fiscal stimulus and a less gradual normalization of monetary policy. This projection is consistent with the steepening U.S. yield curve, the rise in equity prices, and the sizable appreciation of the U.S. dollar since the November 8 election. This WEO forecast also incorporates a firming of oil prices following the agreement among OPEC members and several other major producers to limit supply.
  • While the balance of risks is viewed as being to the downside, there are also upside risks to near-term growth. Specifically, global activity could accelerate more strongly if policy stimulus turns out to be larger than currently projected in the United States or China. Notable negative risks to activity include a possible shift toward inward-looking policy platforms and protectionism, a sharper than expected tightening in global financial conditions that could interact with balance sheet weaknesses in parts of the euro area and in some emerging market economies, increased geopolitical tensions, and a more severe slowdown in China.

1ページ丸ごと引用しましたので、とても長くなりましたが、次に、IMFのブログから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。やや愛想なしですので、いつもの通り、画像をクリックするとpdfのリポートのうちの最後の7ページ目の Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページだけを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようになっています。

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ということで、新興国や途上国を含めて、世界経済は2016年の成長率3.1%に比較して2017年は3.4%、さらに2018年には3.6%と成長率が年を追って緩やかに加速すると見込まれています。特に、米国では景気刺激策の採用により成長率が加速し、米国からの波及効果も見込めるんですが、現時点ではトランプ次期米国政権の政策動向がまだ不確定なので、詳細は4月の次回見通しで示す予定と表明されています。ただ、米国新政権の政策動向を勘案して、ラテンアメリカのメキシコとブラジルでは成長率は昨年10月時点の見通しから下方修正されており、特に、自動車産業の工場移転の取り止めなどからメキシコ経済への下押し圧力が強まっていることを織り込んでいます。我が国については、2008SNAの導入と国民経済計算の基準改定によって過去の成長率が上振れしたことや足元の経済の動向が好調であることなどから、今年2017年の成長率をわずかながら上方改定しています。
先行きリスクとしては、全体として下方リスクの方が大きいものの、米中の景気刺激策に伴う上方リスクも考えられるとしつつ、その下方リスクは、何といっても、米国新政権の内向き政策や保護主義の高まりなどが上げられており、米国の金利上昇が世界経済、特に、ユーロ圏と新興国の金融市場にバランスシートの脆弱性をもたらす可能性があると懸念を明らかにしており、中国の景気減速の深まりもリスクとして上げられています。従って、経済政策としては、引き続き、緩和的な金融政策とともに、財政余力ある場合は財政政策による弱者保護と中長期的な成長期待引上げのための支援が上げられると指摘しています。もちろん、貿易の保護仕儀に対する懸念もにじませています。

次に、目を国内経済に転じると、同じ1月16日に日銀から「地域経済報告」、いわゆる「さくらリポート」が明らかにされています。地域ごとの景気判断を見ると、全国9ブロックのうち、東北、関東甲信越、東海の3ブロックで引き上げられ、残る6ブロックは据え置かれています。以下のテーブルの通りです。

 2016年10月判断前回との比較2017年1月判断
北海道緩やかに回復している緩やかに回復している
東北生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
北陸一部に鈍さがみられるものの、回復を続けている回復を続けている
関東甲信越輸出・生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
東海幾分ペースを鈍化させつつも緩やかに拡大している緩やかに拡大している
近畿緩やかに回復している緩やかに回復している
中国緩やかに回復している緩やかに回復している
四国緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
九州・沖縄熊本地震の影響が和らぐもとで、緩やかに回復している緩やかに回復している

地域ごとに景気判断が全体としてやや上向きに修正されていますから、景気拡大が地方にも広がっていることが実感されます。なお、前回の2016年10月リポートではトピックとしてインバウンド観光が取り上げられていましたが、今回のリポートでは住宅投資の動向と関連企業等の対応状況に焦点が当てられています。それから、どうでもいいことながら、政府で毎月出している「月例経済報告」というのがあり、いわゆる「月例文学」と称されるビミョーな言い回しが見られるんですが、日銀が出すリポートもご同様な気がします。景気回復に付される「緩やか」という形容詞ないし副詞は判らないでもないんですが、私も「緩やかに回復している」と「緩やかな回復を続けている」の違いは理解不能です。

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2017年1月16日 (月)

大きく減少した機械受注とマイナス幅が着実に縮小する企業物価(PPI)!

本日、内閣府から11月の機械受注が、また、日銀から12月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注は変動の激しい船舶と電力を除くコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲5.1%減の8337億円を記録し、企業物価はヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲1.2%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、11月5.1%減 非製造業が落ち込む
内閣府が16日発表した11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比5.1%減の8337億円だった。2カ月ぶりに減った。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(2.0%減)を下回った。先月に大きく伸びた非製造業が落ち込んだ。製造業は増加したものの補えなかった。
機械受注の基調判断は、過去3カ月の動向を踏まえ「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業からの受注額は9.8%増の3635億円と4カ月ぶりに増加した。半導体製造装置や電子計算機が伸びた電気機械が68.0%増えた。原子力原動機などが好調だった非鉄金属は4.4倍になった。
非製造業からの受注額は9.4%減の4834億円と2カ月ぶりに減った。その他非製造業は前月の反動減が出て16.1%減少。鉄道車両や通信機が落ち込んだ運輸業・郵便業も12.5%減と振るわなかった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は前年同月比10.4%増だった。内閣府は10-12月期見通しを前期比5.9%減としている。10-11月の実績を踏まえると、12月実績が前月比11.0%減で達成できる。内閣府は「四半期見通しを上回りそう」との見方を示した。
12月の企業物価指数 前年比1.2%下落 下落幅は7カ月連続縮小
日銀が16日に発表した2016年12月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.7で、前年同月比で1.2%下落した。前年同月比の下落は21カ月連続だが、下げ幅は7カ月連続で縮小した。円安進行や原油など国際商品価格の上昇で、企業物価には下げ止まり感が強まっている。
前月比では0.6%上昇した。石油輸出国機構(OPEC)の減産合意による原油需給の引き締まり観測や米国と中国の財政拡大期待を背景に、原油や銅地金などの非鉄金属の国際相場が上昇したことが影響した。
円ベースの輸出物価は前年同月比で1.8%下落、前月比で5.3%上昇した。輸入物価は前年同月比で2.8%下落、前月比で4.9%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち前年同月比で下落したのは478品目、上昇は250品目だった。下落と上昇の品目差は228品目で、11月の確報値(264品目)から縮小した。
日銀調査統計局は「トランプ次期政権の財政政策や中国の環境規制の行方に不透明感が強く、国際商品市況や為替相場の先行きが商品価格に与える影響を慎重に見極めないといけない」としている。
同時に発表した16年平均の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.2で前年比は3.4%下落した。中国などの新興国の経済減速を背景にした国際商品価格の低迷が響いた。市場予想よりも米国の利上げペースが鈍化し、為替相場が円高・ドル安基調だったことも輸入品の価格下落を通じた企業物価の押し下げ要因となった。16年の平均円相場は1ドル=108.84円と15年比で12円21銭の円高・ドル安だった。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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機械受注については、引用した記事にもある通り、コア機械受注が日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの前月比▲2%減よりさらに減少幅が大きく出ています。もともと、10月統計で+4.1%とジャンプした反動が表れることは容易に想像されていたんですが、円安や株高が現れる前のトランプ次期米国大統領当選の初期ショック、すなわち、貿易制限的な政策に対する反応なのかもしれない、と考えてみたところ、どうも違う気がします。というのは、製造業で伸びて非製造業で減少を示しているからです。ですから、11月統計の機械受注は外的ショックとは大きな関係なく、自律的な動向を示している可能性も十分ありますし、私はそう見ています。結果として、10月に増加し11月に減少したわけで、もともと変動の激しい統計ですから、上のグラフのように移動平均で見るようにすべきであり、そのグラフではまだ太線の移動平均ラインは増勢を保っているように見えます。ただし、コア機械受注の外数ながら、外需と官公需は大きな増加を示しています。為替動向と経済政策動向に基づく増加であり、外需はコア機械受注の先行指標と見なされていることからも、機械受注の先行きを占う上で、決して悲観視する必要はないものと受け止めています。すなわち、11月統計については、減少幅を見れば悲観的な見方も出る可能性はありますが、それ相応に底堅い動きであると私は見ています。ですから、基本的なラインとしては、横ばいに近いながらも機械受注は増勢を保持する可能性が高いと考えています。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。上の2つのパネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、企業物価(PPI)上昇率はここ数か月でかなりマイナス幅を縮小させています。すなわち、ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で見て、2016年5月が直近のボトムで▲4.4%の下落を示した後、7月までは▲4%台だったんですが、8-9月は▲3%台に下落幅を縮小させ、10-11月は▲2%台、そして、12月はとうとう▲1.2%を記録して、11月統計から一気に1%ポイントも下落幅を縮小させました。国際商品市況の石油価格と為替動向が大きな要因であり、ここ数か月で画期的に需給バランスが改善したと考えるエコノミストは少ない気がしますが、デフレ脱却に向けた動きは着実に進んでいると私は受け止めています。従って、企業物価(PPI)でも、消費者物価(CPI)でも、今年中にはマイナスを脱却する可能性が高いと私は予想しているんですが、日銀のインフレ目標である2%に達するためには、単に国際商品市況とか為替だけでなく、需給ギャップの改善も併せて、景気回復の動きを強める必要がありそうな気がします。

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2017年1月15日 (日)

大学生協連合会「2016年度保護者に聞く新入生調査」概要報告やいかに?

先週1月10日に大学生協連合会から「2016年度保護者に聞く新入生調査」概要報告が明らかにされています。昨年2016年に入学した新入生(学部生)の保護者を対象に、2016年4-5月にかけて調査が実施されています。一般的によくいわれる通り、受験から入学までにかかった費用がかなり高額化しており、受験・入学費用に貯蓄を切り崩す家庭が増加する一方で、決して使い勝手がよくないと見られている奨学金や学資保険は敬遠する傾向にあるようです。ほかに、私から見て興味深かったグラフを2枚ほど引用したいと思います。

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上のグラフは大学生協連合会のサイトから 心配なこと・就職や将来 (専攻別) を引用しています。ただ、誤解のないように繰り返しになりますが、調査対象は新入生の保護者であって、新入生ご本人ではありませんので、念のため。就職や将来については、リーマン・ショック直後の2009-10年ころにピークに達した後、緩やかに低下を示して、世間一般の景気のよさを反映していたように感じているんですが、なぜか、2016年は再び上昇に転じています。何か特殊要因があるのか、それともたまたまなのか、よく判りません。ちなみに、我が家の上の倅が大学に入学したのは2015年で、下の倅は2歳違いです。ご参考まで。なお、専攻別では、文系がもっとも心配の度合いが高く、理系は文系よりやや低く、医歯薬系はほとんど心配がない、という結果が示されています。まあ、そうなんでしょう。

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上のグラフは大学生協連合会のサイトから 入学式同行者 を引用しています。2011年に一時的な落ち込みが見られるのは震災の影響だという気がします。それを別にすれば、ここ数年でトレンドとして同行の割合が増加しています。父親よりも母親の同行の比率が高いのは当然かもしれません。というのも、一昨年の我が家の上の倅の入学式でも、上のグラフの世間一般の傾向と同じで、我が家からは女房が同行し、私は行きませんでした。思い起こせば、40年ほど前の私の京都大学の入学式にも母親が来てくれましたが、父親は入試の合格発表は受験生の私よりも早く見に行ったくせに、入学式の日は仕事だったような気がします。

うまく行けば、今年の4月は下の倅の大学入学式があるかもしれません。その場合、女房が行きそうな気がしますが、私はパスかもしれません。

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2017年1月14日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとして専門書・教養書など計8冊!

今週は経済書をはじめとして、専門書・教養書とミステリの短編を収録したアンソロジーや野球に関する新書まで、計8冊を読みました。まあ、先週の読書感想文は早めにアップして営業日が1日多いので、こんなもんかという気もします。来週からはかなり確度高くペースダウンする予定です。今週の読書8冊は以下の通りです。

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まず、宮尾龍蔵『非伝統的金融政策』(有斐閣) です。著者は東大教授の研究者であり、昨年まで5年間に渡って日銀審議委員を務めていました。本書では、白川総裁とともに日銀にあった3年間と黒田総裁の下での2年間に及ぶ非伝統的な金融政策手段を分析しています。なお、どうでもいいことかもしれませんが、タイトルにより誤解を生じるといけないので、あくまで念のためにお断りしておくと、非伝統的なのは金融政策ではなく、金融政策の手段にかかる形容詞であり、金融政策で非伝統的な政策目標を目指すわけではなく、非伝統的な政策手段により伝統的な政策目標を目指すわけですので、大丈夫とは思いますが、念のために確認しておきます。ということで、まず、非伝統的な金融政策の政策手段として、著者が直接的に挙げているのとは別に私なりの解釈で分類すると、時間軸政策とも呼ばれるフォーワードガイダンス、これには金利と資産購入の2つのフォーワードガイダンスが含まれており、加えて、非伝統的な資産、すなわち、短期国債以外の長期国債とか株式とかの買い入れとバランスシート全体の拡大、そして、昨年から始まったマイナス金利について本書では分析を進めています。そして、各種の非伝統的金融政策の政策手段について、第2章で理論的なモデル分析を、第3章で実証的な数量分析を試み、非伝統的な金融政策手段は理論的に株価や為替のチャンネルを通じて効果があるとのモデル分析を明らかにするとともに、実証的にもGDPを引き上げたり物価を上昇させたりする効果があったと結論しています。まあ、当然、自然体で曇りのない目で日本経済を見ている限り常識的な結果であろうと私は受け止めています。その上で、第4章では2%物価目標は妥当であると結論し、第5章で懸念すべき副作用として、いわゆる「岩石理論」的なインフレ高騰、資産価格バブル、財政ファイナンスの3つのリスクを否定しています。第5章では副作用を軽く否定した後で、いわゆる長期停滞論を引き合いに出して、当時のセントルイス連銀ブラード総裁の2つの均衡論を考察し、現状では日本経済はデフレ均衡を脱しつつある、と結論しています。そして、第6章ではマイナス金利を俎上に載せています。最後の第7章では、日銀審議委員としての5年間を回顧しています。要するに、、極めて真っ当で、常識的かつ当然の結果が示されています。昨年2016年12月29日付けで取り上げた「戦うリフレ派」の岩石理論批判もよかったんですが、こういった真っ当な金融政策の解説書もいいもんだという気がします。

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次に、清田耕造『日本の比較優位』(慶應義塾大学出版会) です。著者は慶応大学の研究者であり、国際経済学を専門としているようです。本書ではタイトルの通り、いくつかバージョンのある貿易モデルのうち、主としてヘクシャー・オリーン型の比較優位について論じています。ただ単にモデルを論じているだけでなく、主として経済産業省の工業統計やJIPデータベースを用いた実証的な研究成果も示されています。既発表の論文と書き下ろしが半々くらいでしょうか。最近では経済学のジャーナルの査読を通ろうと思えば、何らかの実証が必要不可欠になっていますので、既発表論文を含む本書で実証結果が示されているのは当然かもしれません。ということで、比較優位という経済理論はリカードの昔にさかのぼり、とても理論的には評価されているモデルなんですが、実証的に正しいかかどうかについては疑問を呈されることもあります。特に、現実世界では経済学的に疑問の余地なく正しいとされている自由貿易すら実現されていないわけですから、比較優位についてもご同様です。本書では比較優位に産業構造を結び付けて、いくつかの実証研究成果を示しています。すなわち、「疑問の余地なく」ではないとしても、比較優位説は机上の空論ではなく妥当性が支持されると、既存研究ながら、何と、幕末明治維新前後の実証研究を紹介し、ほとんど貿易のなかった鎖国時代の日本と、貿易を開始し、しかも、関税自主権がなく自由貿易に近かった明治期の日本の貿易から比較優位説の妥当性を確認しています。また、米国に関するレオンティエフ・パラドックス、すなわち、世界でもっとも資本が豊富な米国がネットで資本集約財を輸入し、労働集約財を輸出しているとのパラドックスと同じように、戦後日本が非熟練労働力よりも熟練労働力の豊富な日本が、熟練労働集約財を輸入し非熟練労働集約財を輸出している、とか、エネルギーを産しない日本の輸出が必ずしもエネルギー節約的ではない、などを示しています。また、最後の第Ⅲ部ではアジアのいわゆる雁行形態発展論と日本国内の都道府県別の賃金と産業構造をそれぞれ実証しています。なお最後に、出版社からも明らかな通り、本書は学術書です。しかも、学部レベルではなく大学院博士前期課程くらいのレベルです。数式も少なくありませんし、データに基づくものではなく概念的なグラフもいくつか見受けられます。かなり専門分野に近い私でも、最後の第Ⅲ部を読みこなすのは骨が折れました。メモと鉛筆を持って数式をいっしょに解いて行くくらいでないと十分に読みこなせないかもしれません。読み進むには、脅かすわけではありませんが、それなりの覚悟が必要です。

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次に、スティーブン・ピンカー/マルコム・グラッドウェル/マット・リドレーほか『人類は絶滅を逃れられるのか』(ダイヤモンド社) です。誰が見ても、ハチャメチャで意味不明なタイトルなんですが、ムンク財団の主催でカナダのトロントで開催された2015年のディベートを収録しています。ディベートのテーマは「人類の未来は明るいか」ということで、将来に対する見方が楽観的か悲観的かについてのディベートです。上の表紙画像には3名の著者しか現れませんが、ピンカー+リドレーが楽観派で、グラッドウェル+ ボトンが悲観派です。結論を先取りすると、トロントの会場の聴衆はディベートが始まる前は楽観派が71%、悲観派が29%だったところ、ディベート終了時には楽観派が73%で悲観派が27%となり、ディベートは楽観派の勝利で終了しました。まあ、ディベートの中でも出て来るんですが、過去に比べた現時点までの人類史の実績を考えると、寿命が伸び、戦争・戦乱が減少し、消費生活が豊かになり、それらのバックグラウンドで技術が大きく進歩しているわけですから、どこからどう見ても人類史は、特に、戦後の50-70年では大きく楽観派が強調するような方向に進んでいる気がします。将来を悲観する要素としては、このディベートでも悲観墓強調した地球環境問題とわけの判らない病気のパンデミックくらいで、戦争、特に核戦力による戦争はかつての冷戦時代よりは確率が大きく減じた気がします。ディベートで出なかったポイントは、特に日本の例を引くまでもなく、先進国における人口減少問題ではなかろうかという気がします。移民の受け入れが少ない場合、欧州でもアジアでも、1人当りGDPで見て豊かないくつかの国で人口減少が始まっており、その中でも日本は飛び抜けて人口減少が大きな問題といえます。日本はすでに世界経済におけるメジャー・プレイヤーでなくなったとはいえ、悲観派が人口減少を取り上げなかったのはやや不思議な気がします。それと、ローマ・クラブ的な資源制約も着目されていません。その意味で、やや物足りないディベートだったかもしれませんが、私の考えとほぼ一致する方向の議論が圧勝している気もします。当然の結果かもしれません。

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次に、 御厨貴・芹川洋一『政治が危ない』(日本経済新聞出版社) です。著者は東大で長らく政治学の研究者だった学者と日経新聞のジャーナリストです。ともに東大法学部の同じゼミの同窓生で対談の形を取っており、少し前に日経プレミアムから本書の前作となる『日本政治 ひざ打ち問答』を出版していて、本書はその対談集の第2段となるようです。昨年年央まで3年半続き、今も継続中の安倍内閣と安倍総理について論ずるところから始めて、回顧を含めて政治家について談じ、天皇退位も含めて憲法について断じ、最後に、メディアについて論じ、その4章構成となっています。まあ、ジョークで「時事放談」ならぬ「爺放談」という言い方もありますが、好き放題、勝手放題、縦横無尽に政治を断じていますが、タイトルになっている危なさは、現在の安倍総理・安倍内閣の後継者問題に尽きるようです。かつては与党自民党の派閥が後継者を育てるシステムを有していたものの、小選挙区制で党執行部の権力が絶大になった一方で派閥の衰退が激しく、総理総裁の後継者が育ちにくい構造になっている、というのがタイトルの背景にある考えのようです。ある秘突然に日本の政治が崩壊するかもしれないとまで言い切っています。もちろん、繰り返しになりますが、それ以外にもワンサと山盛りの話題を詰め込んでいます。田中角栄ブームは昭和へのノスタルジーと同一視されているような気もしますし、鳩菅の民主党政権はボロクソです。私がもっとも共感したのは憲法論議の中で、天皇の退位を天皇自身が言い出したのは国政への関与に近く、憲法違反の疑いがある、との指摘です。私もまったく賛成で、そもそも、我が事ながら退位すら天皇は言い出すべきでなく、黙々と象徴の役割を果すべきであり、象徴の役割が出来ているかどうかは天皇自身ではなく内閣が判断すべき事項であると私は強く考えています。最後に、最近の政治家、主として総理大臣の演説で印象に残っているのは、私の場合、本書では取り上げられていませんが、2005年8月の郵政解散の際の当時の小泉総理のテレビ演説です。私は官房で大臣対応の職務にありましたから特にそう感じたのかもしれませんが、感銘を受けて記憶に強く残っています。

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次に、 ポール J. ナーイン『確率で読み解く日常の不思議』(共立出版) です。著者は米国の数学研究者であり、ニュー・ハンプシャ大学の名誉教授です。数学に関する一般向けの解説書やパズル所などを何冊か出版しています。本書の英語の原題は Will you be alive 10 years from now? であり、2014年の刊行です。日本語のタイトル通り、本書は確率論に関する一般向けの解説書なんですが、それでも微分積分に行列式を合わせて数式はいっぱい出て来ます。ただ、本書のひとつの特徴は、解析的にエレガントに式を展開して解くだけでなく、リカーシブに解くためのMATLABのサンプル・プログラムを同時にいくつかのトピックで示している点です。本書は、古典的な確率論パズルを示した序章のほかに、個別の確率論に関するテーマを取り上げた25章から成っていて、その25勝すべてにMATLABのサンプル・プログラムが示されているわけではありませんし、MATLABがそもそもかなり専門性の高い高級言語ですから、それほど本書の理解の助けになるとも思えませんが、私のようにBASICしか理解しない初級者でも割りと簡単に移植できそうなシンプルなプログラムの作りにしてくれているように感じます。テーマごとにいくつかとても意外な結果が出て来るんですが、まず、第1章の棒を折る問題がそうです。2つの印を棒に付けて、その棒をn個に折るとして、等間隔に折る場合とランダムに折る場合で、同じ小片に印がある確率はランダムに折る後者の方が2倍近く大きい、というのは意外な気がします。第11章の伝言ゲームにおける嘘つきの存在についても、嘘つきの存在確率が0と1でないなら、ほかのいかなる確率であっても、伝言ゲームの人数が大きくなれば、最後に正しく伝えられる確率は漸近的に1/2に近づきます。逆から言っても同じことで、正しく伝えられない確率も1/2に近づきます。これも意外な気がします。最後に、どうでもいいことながら、確率論の数学研究者は『パレード』誌のコラムニストであるマリリン・ヴォス・サヴァントを常に目の敵にしていて、本書でも彼女の間違いをいくつか指摘しています。でも、モンティ・ホール問題でマリリンが正しい結果を示し、多くの数学研究者が間違っていた点にはまったく口をつぐんでいます。とても興味深い点です。日本語のWikiPediaのモンティ・ホール問題へのリンクは以下の通りです。

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次に、ハリー G. フランクファート『ウンコな議論』(ちくま学芸文庫) です。2005年に出版された単行本が昨年ちくま文芸文庫として出されています。翻訳はクルーグマン教授の本でも有名な野村総研の山形浩生さんです。その長い長い訳者解説でも有名になった本ですが、その訳者解説では8-9割がタイトルにひかれたんではないかと想像していますが、私自身は昨年2016年10月29日付けで取り上げた『不平等論』の続きで読んでみました。ということで、翻訳ではすべてタイトル通りに「ウンコ」で統一しているんですが、私の決して上品でもない日常会話で使われる用語としては「クソ」とか「クソッタレ」に近い印象です。そして、訳者も認めているように、原文には「ウンコ」しかないのに訳者が「屁理屈」を勝手にくっつけている場合も少なくないように見受けられます。といのも、私はすべて読み切ったわけではありませんが、最後においてあるリンクからほぼ英語の原文がpdfで入手できます。それはともかく、本題に戻ると、「ウンコな議論」とは著者がいうに、お世辞やハッタリを含めて、ウソではないにしても誇張した表現ということになろうかという気がする。日本の仏教的な表現で言えば、いわゆる方便も含まれそうである。思い出すに、その昔の大学生だったころ、母校の京都大学経済学部の歴史的な大先生として河上肇教授が、その有名な言葉として「言うべくんば真実を語るべし、言うを得ざれば黙するに如かず」というのがあります。まあ、それとよく似た感慨かもしれません。ただ、訳者解説にもある通り、ウンコ議論のない簡潔な事実だけの議論は「身も蓋もない」と言われかねないだけに、世渡りの中では難しいところです。最後に、私はやや配慮なく本書をカフェで読もうとしてしまいました。かなり大きな活字で150ページ足らずの文庫本ですので、すぐに読めてしまうんですが、タイトルといい表紙画像といい、飲食店で読むのはややはばかられる気がしました。家でこっそりと読む本かもしれません。

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次に、日本推理作家協会[編]『殺意の隘路』(光文社) です。昨年2016年12月30日付けで取り上げた『悪意の迷路』と対をなす姉妹編のミステリを集めたアンソロジーであり、最近3年間に刊行された短編を集めて編集しています。上の表紙画像を見ても理解できる通り、売れっ子ミステリ作家が並んでいます。コピペで済ませる収録作品は、青崎有吾「もう一色選べる丼」、赤川次郎「もういいかい」、有栖川有栖「線路の国のアリス」、伊坂幸太郎「ルックスライク」、石持浅海「九尾の狐」、乾ルカ「黒い瞳の内」、恩田陸「柊と太陽」、北村薫「幻の追伸」、今野敏「人事」、長岡弘樹「夏の終わりの時間割」、初野晴「理由ありの旧校舎 -学園密室?-」、東野圭吾「ルーキー登場」、円居挽「定跡外の誘拐」、麻耶雄嵩「旧友」、若竹七海「副島さんは言っている 十月」の15編です。さすがに秀作そろいですので、伊坂作品と東野作品は私は既読でした。でも、私の限りある記憶力からして、ほぼ初見と同じように楽しめたのはやや悲しかった気がします。赤川作品や長岡作品のように小学生くらいのかなり小さな子供を主人公にした作品もあれば、今野作品や若竹作品のようにオッサンばかりの登場人物の小説もあります。有栖川作品のように時間の観念が不明の作品もあれば、乾作品のようにとても長い時間を短編で取りまとめた作品もあります。必ずしも謎解きばかりではないんですが、とても楽しめる短編集でした。

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最後に、小林信也『「野球」の真髄』(集英社新書) です。著者はスポーツライターであるとともに、中学生の硬式野球であるリトルシニアの野球チームの監督をしていたりするそうで、その野球に対する思い込みを一気に弾けさせたような本です。私より数歳年長であり、ジャイアンツの長島選手が活躍した時期の、どちらかと言えば後半を体感として知っている世代です。私もそれに近い世代なんですが、地域的な特徴から、私は特に長島選手に憧れを持ったりはしませんでした。もちろん、私も阪神タイガースには熱い愛情を注ぎ続けていますし、少なくとも観戦するスポーツとしては野球にもっとも重きを置いているのも確かです。念のため。とは言え、なかなか興味深い本でした。例えば、他の球技と違って、野球だけは生死観があって、アウトになる打者とセーフになる打者の違いがあって、セーフになって生き残る打者は塁上でランナーになる、とか、投手だけは試合と同列に勝ち負けがつく、といった指摘は新鮮でした。ただ、とても大きな誤解もいくつか散見されます。例えば、ほかの球技と違って野球では守備側がボールを支配する、としているんですが、野球の前身であるクリケットに対する無理解からの記述としか思えません。すなわち、誤解を恐れず単純化して言えば、クリケットとは野球の投手に当たるボウラーがボールを投げて、野球なら捕手のいる位置に置かれた木製のウィケットを壊しに行くという暴力的な競技であって、それを阻止すべくバットを振るのがバッツマン、つまり野球の打者なわけです。ですから、クリケットではボールを持ってウィケットを壊しに行くボウラーの方が攻撃なわけで、野球に取り入れられて攻撃と守備がなぜか逆転してしまったんですが、クリケットを判っていれば抱かざる疑問のような気もします。まあ、インチキのお話も古くて新しいところながら、なぜか歴史に残る八百長事件は取り上げられておらず、本書の中では第2章の古き佳き野球の時代が読みどころかもしれません。

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2017年1月13日 (金)

明日から始まるセンター試験に向けてガンバレ受験生!

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明日の土曜日とその次の日曜日は2日に渡ってセンター試験が実施されます。我が家では、10年近く前に私が地方大学の教員で単身赴任で出向した際に2度ほど試験監督を務め、一昨年は上の倅が受験しており、さらに、今年は下の倅の大学受験が控えています。広い日本で天候はまちまちでしょうが、我が家の周辺は寒いながらも冬晴れが続いています。
大学によっては定員割れして、受験生のほぼ全員が合格するケースもあろうかと想像する一方で、まだまだ、大学全入には届きませんから、上の画像で合格招き猫をArtBankのサイトから引用しながら、それでも合格だけを祈念するのは無責任と考えますので、後悔のないように持てる実力のすべてを出し切ることを願っています。

がんばれ受験生!

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2017年1月12日 (木)

やや停滞を示す景気ウォッチャーと順調に黒字を続ける経常収支!

本日、内閣府から12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。季節調整済みの系列で見て、景気ウォッチャーの現状判断DIは前月比横ばいの51.4を、また、先行き判断DIは前月比▲0.4ポイント低下の50.9を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆4155億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、現状判断指数横ばい 先行きは6カ月ぶり悪化
内閣府が12日発表した2016年12月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)は51.4と前月比横ばいだった。内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」で据え置いた。
部門別にみると、企業動向と雇用が上昇した半面、家計動向が低下した。企業動向では、製造業と非製造業ともに上昇した。街角では「自動車メーカーの生産が堅調で、取引先の部品メーカーの受注も安定してきている」(東海・金融)との声があった。一方、家計動向では小売りと住宅が低下。「相変わらず低調な状態は続いている」(九州・一般小売店)という。
2-3カ月後の先行きを聞いた先行き判断指数(季節調整値)は、前月から0.4ポイント低下の50.9だった。悪化は6カ月ぶり。家計動向と企業動向が低下した。企業では「鋼材の値上がりが予想され、価格転嫁が遅れる分だけ収益が落ち込む」(近畿・金属製品製造業)との声が聞かれた。家計では「1月に就任する米国の次期大統領の言動が気にかかる」(東北・スーパー)との見方もあった。
11月の経常収支、1兆4155億円の黒字 07年以来9年ぶり高水準
財務省が12日発表した2016年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4155億円の黒字だった。前年同月に比べて3095億円黒字幅を拡大した。黒字は29カ月連続。11月としては2007年(1兆6678億円の黒字)以来9年ぶりの黒字額となった。原油安と円高を背景に貿易収支が黒字転換したことなどが寄与した。
貿易収支は3134億円の黒字(前年同期は3041億円の赤字)だった。原油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が5兆5770億円と10.7%減少。円高で外貨建ての円換算の輸入額も目減りした。自動車や鉄鋼の低迷で輸出額も5兆8904億円と0.8%減少したが、輸入の落ち込みが上回った。
サービス収支は738億円の黒字(前年同期は603億円の黒字)だった。「その他業務サービス」で大口の受け取りがあった。旅行収支は訪日外国人の1人あたりの消費額減少で黒字幅を縮小した。
第1次所得収支は1兆2032億円の黒字だった。円高で企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が目減りし、前年同月(1兆5338億円の黒字)から黒字幅を縮小した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは家計動向関連で下がった一方で、企業動向関連では製造業・非製造業ともに上昇を示しています。ただ、家計動向関連でも、小売関連が低下した一方で、飲食関連とサービス関連は上昇しています。また、企業動向関連の中でも、ともに上昇ながら、製造業よりも非製造業の方が上昇幅が大きくなっています。なかなかに複雑な動きを示しており、年末12月ですから仕方ないところではありますが、極めて大雑把に考えると、家計についても企業についても、モノの物販よりもサービスの方に重点があったのかもしれません。ただ、前月比マイナスの家計動向関連ながら、雇用関連は引き続きプラスですし、全体のDIの水準もこの統計にしてはめずらしく50を2か月連続で超えるという高い水準にあります。ですから、私としては大きな懸念は持っていません。先行き動向DIは家計動向関連だけでなく、企業動向関連も前月比マイナスとなったため、全体でも前月から低下を示しましたが、先行きでも雇用関連はかなり強含みで推移しています。現状判断DIが停滞を示し、先行き判断DIが低下したのは、国際商品市況における石油価格などの上昇に連動して、国内でも燃油価格などコストの上昇が目に見える形で発生し始めた影響ではないかと私は想像しています。石油価格は上がっても下がっても、日本経済にいろんな影響を及ぼすようです。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもほぼ震災前の水準に戻った、と私は受け止めています。なお、為替相場はトランプ効果でかなり円安が進んだように感じられますが、財務省のサイトによれば、インターバンクのドル・円相場は1ドル当たり108.18円と、前年同月の122.54円から11.7%の円高となっています。また、原油価格もドルベースでは1バレル当たり49.08ドルで前年同月比で見て+3.3%の上昇なんですが、円高で相殺されて円ベースではキロリットル当たり32,412円と▲10.5%の下落だったりします。ただ、上のグラフの黒い棒に見られるように、こういった為替相場や原油価格の動向ながら、貿易収支は急速に黒字化の方向に向かっているように見受けられます。

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