2016年9月26日 (月)

日中関係についてのピュー・リサーチの世論調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、私がちょくちょく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから9月13日付けで Hostile Neighbors: China vs. Japan と題して日中二国間の相互の見方についての世論調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。当然ながら、尖閣諸島の問題もあって、日中関係はここ10年でも決して改善を示していませんが、最悪期は脱したかという気もします。まず、ピュー・リサーチのサイトからリポートの最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Hostile Neighbors: China vs. Japan
China and Japan - neighboring economic and military powers - view each other with disdain, harbor mostly negative stereotypes of one another, disagree on Japan's World War II legacy and worry about future confrontations.
The two East Asian nations have a centuries-old relationship, punctuated by major conflict and strife. Most recently, Beijing and Tokyo have been at loggerheads about sovereignty over a group of uninhabited islands in the East China Sea, called the Senkaku by the Japanese and the Diaoyu by the Chinese.
Today, only 11% of the Japanese express a favorable opinion of China, while 14% of the Chinese say they have a positive view of Japan. In both countries positive views of the other nation have decreased since 2006.
Sino-Japanese antipathy can also be seen in a regional context. Influenced by history, economic ties and current events, Asian publics' views of each other vary widely.

諸事情あって、今夜のエントリーの取りまとめが遅い時間帯になってしまいましたので、ピュー・リサーチのサイトからいくつかグラフを引用しつつ、かんたんに取り上げておきたいと思います。

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あず、上のグラフは最近10年の日中両国間で相互にどう相手国を見ているかの推移です。グラフのタイトルは、Japanese and Chinese hold negative views of each other となっています。見れば明らかですが、両国ともに相手国に対する見方は Unfavorable が80%を超え、逆に、Favorable が10%台となっています。まだまだながら、あえて好意的に解釈すれば、両国間で反目し合う最悪期は脱したかもしれません。

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次に、日中の相手国に対する見方です。グラフのタイトルは、Japanese views of Chinese turn more negative over past decade 及び Changes in Chinese views of Japanese と題されています。この10年で、ナショナリスティックという評価こそ両国で低下しましたが、近代的や勤勉といった肯定的な評価が低下した一方で、傲慢とか暴力的といった否定的な評価が増加しています。

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最後に、1930-40年代の我が国の軍事行動に対する謝罪が十分かどうかに関する世論調査結果で、Roughly a quarter of Japanese believe they have not apologized sufficiently for World War II 及び Chinese unchanged in belief that Japan has yet to sufficiently apologize for actions during World War II と題されています。日本人自身もまだ直近で4人に1人が不十分と回答していますが、過半数の日本人は十分と考えているようです。もっとも、中国人の中では80%近い割合の人々が謝罪は不十分と受け止めているようです。私は決して右派ではないんと自分自身を位置づけているんですが、どこまで謝罪すればいいんでしょうか?

先週金曜日の9月23日に明らかにされた言論NPOによる「第12回日中共同世論調査」の結果もかなり似たような傾向を示していると私は受け止めています。なお、明らかに外交関係に関する世論調査を取り上げた記事でありながら、かなり無理やりですが、経済評論のブログに分類しておきます。

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2016年9月25日 (日)

シルバー・ウィークを終えて9月25日の雑感、宮部みゆきの『模倣犯』と『楽園』のドラマ化など

お彼岸を含む先週のシルバー・ウィークを振り返ります。
まず、よく読書しました。プールにも通いました。要するに、いつもと同じ休日だった気がします。でも、これだけ雨が降ると困ったものでした。自転車での移動に支障を来します。

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特筆すべきイベントとして、宮部みゆき『模倣犯』がテレ東でドラマ化され、9月22日23日と二夜連続で放送されました。私は宮部作品では直木賞受賞の『理由』や『火車』などもさることながら、『模倣犯』が最高傑作だとみなしています。それから、2002年に森田芳光監督作品として「模倣犯」の映画がヒットしたのは情報として知っているんですが、何せ、我が家はその年は南の島のジャカルタでのんびりと過ごしていましたので、映画「模倣犯」は見ていません。主人公の前畑滋子は映画では木村佳乃が演じたのは知っています。今回は中谷美紀でした。何となくよく似たラインかもしれません。テレビの前にかじりつきで、どっぷりと浸かっていたわけではありませんが、やっぱり、最後のテレビ局内のシーンは迫力ありました。でも、あんなにお昼の時間帯だったのでしょうか?
また、この続きで『楽園』という宮部作品があって、同じ主人公を配して『模倣犯』の9年後という設定らしいですが、WOWOWでドラマ化されるそうです。前畑役は仲間由紀恵が演じます。2017年1月スタートで6回の放映と報じられています。ところが、私はさすがに『模倣犯』はよく覚えているんですが、『楽園』はすっかり忘れました。読んだことがあるのは確かです。もう一度読みたいと思っています。

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2016年9月24日 (土)

今週の読書も盛り沢山にペースダウンできず!

今週の読書は、月曜日にアップした話題の小説3冊を別にしても6冊でした。経済書と教養書と小説と新書です。新書はなぜか、日本会議についてでした。月曜日にアップした3冊の小説を含めると計9冊になります。シルバー・ウィークでお休みが多いとはいえ、少しこれからはペースダウンしたいと思います。

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まず、藤井聡『国民所得を80万円増やす経済政策』(晶文社) です。現在の安倍総理は民主党政権から政権交代した際に、いわゆる「3本の矢」で有名なアベノミクスを提唱しましたが、昨年9月に自民党の総裁に再選された際、「新3本の矢」として、その最初に名目GDP600兆円を打ち出しました。その名目GDP600兆円を労働分配率などを無視して、国民1人あたりの所得で引き直すと、本書のタイトルのように1人当たり80万円の増加、ということになります。そのための提案として、本書冒頭のはじめにのp.7で5項目上げられています。すなわち、消費増税の延期、所得ターゲット政策、デフレ脱却、デフレ脱却までの財政拡大、デフレ脱却後の中立的な財政運営、の5点です。そして、昨年の国際金融経済分析会合に招かれたスティグリッツ教授とクルーグマン教授の説を援用しています。ほぼ金融政策が無視されていて、実物経済における財政政策だけが重視されているのがやや不思議ですが、かなりイイ線行っていると私は思います。本書でも指摘されているように、自国通貨建ての国債発行はかなり膨らんでも、ソブリン・リスクとしては破綻の懸念は極めて低いと私は考えています。その昔から、私は財政再建には否定的な財政に関しては能天気なエコノミストだったんですが、本書の指摘はこの点だけはかなり正しいと受け止めています。我が国が財政破綻するリスクは極めて小さいのは確かです。ただ、金融市場のボラティリティが急速に高まる場合もありますから、一定の収束点は追求する必要があります。いずれにせよ、デフレを実物経済現象に偏って分析している点が気になるものの、本書はかなり正鵠を得た政策提案ではないかと私は考えています。なお、今年2016年5月28日付けの読書感想文で立命館大学の松尾匡先生の『この経済政策が民主主義を救う』を取り上げましたが、基本的な主張は同じです。この経済政策を左派が実行して憲法改正を阻止しなければならない、というのが松尾先生の主張でした。

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次に、譚璐美『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社) です。今年2016年5月8日付けの読書感想文で岩波新書の『京都の歴史を歩く』という歴史書を取り上げましたが、よく似た趣向だという気がします。でも、本書は地図こそ豊富に紹介していて、どうも著者自身はホントに歩いたような気配がうかがえるんですが、「歩く」ことは重視されていないようで、そういった本文中の記述はほとんどありません。ということで、明治維新の成功と日清・日露戦争の勝利という目をみはるような日本の躍進の一方で、1905年には中国で科挙制度が廃止され、こういった事情も手伝って、明治・大正の東京では中国から多くの亡命者や留学生を受け入れていたようです。特に、近代的な軍制を重視する中国ながら、欧米では軍学校、すなわち、陸軍士官学校や海兵学校に中国人を受け入れる日本が海外留学先として選ばれたようですが、本書では早稲田大学をはじめとする高等教育機関に受け入れた留学生や亡命者だけを取り上げています。解像度はかなり低くて、特に古い地図は同じようなのばっかりですが、かなり多くのカラー写真が取り込まれていますし、章ごとに関連する中国人留学生や亡命者の住まいの地図が示され、それなりにビジュアルに仕上がっています。でも、例えば、p.58の蒋介石の下宿先周辺地図など、どうも南北の上下が反対ではないかと疑わしい地図もあったりします。肩も凝らずに、気軽に読める教養書かもしれません。

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次に、エドワード O. ウィルソン『ヒトはどこまで進化するのか』(亜紀書房) です。著者は米国の生物学者であり、ドーキンス教授やグールド教授などとともに、現在正靴学界でももっとも影響力の大きい大先生ではないかと思います。生物学の世界は私の大きく専門外ですので、実はよく知らないんですが、この3人くらいは私もご尊名を存じ上げています。物理学会のホーキング教授やかつてのカール・セーガン教授などと同じランク、と私は考えています。本書は The Meaning of Human Existence の原題で2014年に出版されており、本書には長谷川眞理子先生の解説が付け加えられています。なお、著者のウィルソン教授は社会生物学の創始者とされており、本所でも狭い意味の生物学にとどまらず、人文科学も視野に入れた議論が展開されています。例えば、最近の心理学などの知見からは、人類が進化したのは、社会的知能を身体的能力とともに進化させ、集団の生存率を高めたためだといわれており、要するに、人間は人間に魅力を感じるからこそ、物語やゴシップやスポーツを好むということになります。ですから、同族意識があるからこそ仲間内で協力もするが、その同族意識は集団外への攻撃、つまり現在も頻発するテロや紛争の源泉ともなる可能性があるというわけです。それを難しい生物学の用語で表現すると、包括的適応度の限界から、データ本位の集団的遺伝が取って代わるべきである、ということになります。補遺に収録されているPNAS論文はそれを明らかにしており、原著論文へのリンクは以下の通りです。

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次に、門井慶喜『ゆけ、おりょう』(文藝春秋) です。作者は前作の『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補にもなった新進気鋭の時代小説作家です。この作品はタイトルから判る通り、おりょうを主人公にしていて、そのおりょうとは坂本龍馬の妻なわけです。もちろん、上の本書の表紙画像から連想される通り、有名な日本で初めてのハネムーンとか、京での寺田屋事件なども詳しく取り上げられています。ただ、おりょうが主人公ですから、龍馬との出会いの前から、軽くおりょうの人生が振り返られており、まるで、終盤に差しかかったNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」のように、気丈に家族や幼い弟妹を守る姿が描かれています。おりょうはいうまでもなく京女なんですが、その昔の男についていくタイプの女性としては描かれていません。たぶん、東山彰良だと思うんですが、何かの小説で「中国の女性は気が強い」といった旨の評価を見た記憶があるんですが、その東山流の「中国女性」のような気の強さをおりょうは見せています。口が達者で、ものすごく酒に強く、したたかに生きる幕末の女性がここにいます。龍馬に対するおりょうの評価は厳しく、最初のころは頼りないと思いつつも結婚した龍馬が、実は、日本を動かす英雄と成長していく中で戸惑いながらも、自分なりのやり方で龍馬を愛し、また、夫を支える姿は共感を呼ぶんではないでしょうか。最後に、おりょうと龍馬が結婚していた期間はそう長くはないわけで、龍馬が死んだ後の落魄したおりょうの後半人生についても著者は温かい目で描き出しています。でも、残念ながら、デビュー作を超えるものではありません。

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最後に、菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書) と山崎雅弘『日本会議』(集英社新書) です。急に思い立ったわけでもないんですが、日本会議に関する新書を2冊ほど読みました。日本会議とは現内閣を支える勢力のひとつであり、憲法改正や靖国神社問題などでウルトラ右派の活動を続けている団体です。私は明確に自分を左派だと認識していますので、こういった団体には馴染みがなく、それなりに新鮮な情報が多かった気がします。『日本会議の研究』はほぼ人脈情報に限定して情報収集している雰囲気なんですが、何といっても扶桑社からの出版というのに驚きます。扶桑社とはメディアの中でももっとも右派的なフジサンケイ・グループの出版社です。集英社の方は人脈や組織を始めとして、広範な情報を網羅していますが、全体的にやや薄い気がしないでもありません。ということで、前にもこのブログで私の考えを明らかにしたことがあるような気がしますが、保守主義とは歴史の進歩に棹さす勢力であり、フランス革命の前後では民主主義を否定して王政を擁護し、社会主義・共産主義に進もうとするマルクス主義を否定します。ですから、保守主義の反対は進歩主義であり、もっとイってるのが急進主義です。逆に、歴史の進歩を否定するだけでなく、逆行させようとするのが反動ないし懐古主義・復古主義です。日本会議はこの最後のカテゴリーかと受け止めています。もう少し踏み込んで、人脈だけでなく、金脈、というか、資金源なども明らかにして欲しいところです。

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2016年9月23日 (金)

2008SNA対応による名目GDPの上振れは20兆円近く!

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の9月15日に内閣府から
「国民経済計算の平成23年基準改定に向けて」と題するアナウンスがなされていて、基準年の改定に合わせた国連の2008SNA基準への準拠により名目GDP水準が約20兆円増加するとの公表がなされています。
すなわち、現在の2005年基準から2011年基準に基準年を改定するとともに、1993SNAから2008SNAに対応を進め、その結果、それまで中間投入とされていた民間企業の研究・開発(R&D)を固定資本形成=投資とみなしたり、政府消費だった防衛装備品も同様に固定資本形成=公共投資と同じ扱いに改めたりして、約+19.8兆円、改定前GDP比で+4.2%の上振れが生じる、と明らかにしています。

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上のテーブルは内閣府の公表資料のp.9を画像化して引用しています。5年前の2011年時点の計数ですが、名目GDP471.6兆円が491.4兆円に+19.8兆円の増加になるんですから、アベノミクス新3本の矢の1番目で掲げた名目GDP600兆円を目指す現内閣には朗報かもしれません。

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2016年9月22日 (木)

消化試合ながら藤浪投手が1失点完投勝利!

  HE
阪  神000101020 480
広  島000000001 151

すでに優勝を決めた広島、そして、クライマックス・シリーズ出場の亡くなった阪神と、完全な消化試合ながら、藤浪投手が1失点完投勝利でした。来年につながることを期待します。
ところで、日本ハムとソフトバンクの首位攻防第2戦はどうなってるんですかね?

来年は、
がんばれタイガース!

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「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、9月7日付けで関西大学宮本名誉教授の推定による「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」の結果が明らかにされています。広島県だけでしめて約331億4,916万円と推計されています。そして、「阪神タイガースや読売ジャイアンツには及ばないものの、過去の他球団の優勝と比較しても、非常に大きな経済効果である」と結論しています。

ただし、ややケチいことに、詳細な推計方法や分析結果はウェブサイトには掲載せず、個別に関西大学まで連絡する必要があるようです。宮本教授のこういった推計は研究成果ではないことが明確にされた瞬間のような気がします。

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2016年9月21日 (水)

3か月振りに赤字を記録した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整されていない原系列の統計で、輸出額は前年同月比▲9.6%減の5兆3163億円、輸入額は▲17.3%減の5兆3350億円、差し引き貿易収支は▲187億円のわずかな赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 187億円
財務省が21日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は187億円の赤字だった。貿易赤字は3カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は2000億円の黒字だった。円高の影響で輸出入ともに減少が続いていることに加え、8月はお盆休みなどによる工場の稼働停止の影響から輸出額が落ち込んだ。
輸出額は前年同月比9.6%減の5兆3163億円にとどまった。減少は11カ月連続。8月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=103.24円と、円が対ドルで前年同月と比べて16.8%上昇したことが響いた。
米国向けの自動車、鉄鋼で韓国向けの鋼板製品が減った。地域別では米国が14.5%減、中国を含むアジアは9.4%減だった。
輸入額は17.3%減の5兆3350億円と20カ月連続で減少した。サウジアラビアからの原粗油、カタールからの液化天然ガス(LNG)などの減少が目立った。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整していない原系列の統計では、まだ時折貿易収支が赤字を記録するものの、トレンドに沿った季節調整済みの系列ではほぼ貿易黒字が定着したように見受けられます。もちろん、まだ、国際商品市況の石油価格安に起因した輸入額の落ち込みによる貿易黒字であり、その意味で、どこまで持続性があるかは不安なしとしませんが、中国を除く地域別・国別や財別の貿易動向を見る限り、リーマン・ショック前までいかないとしても、震災以降の貿易赤字からは脱したと考えるべきです。ただ、引用した記事にもある通り、輸出も輸入も数量ベースでは前年同月比で増加を示しているにもかかわらず、為替が円高に振れた影響で輸出額と輸入額がマイナスを記録しています。円高は企業収益に悪影響をもたらし、物価の下押し圧力となり、もちろん、貿易にも自国通貨建てで見て縮小効果をもたらします。インフレ目標とともに、金融政策当局には為替も視野に入れた政策運営が求められるのはいうまでもありません。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、BREXITによる公表取りやめが解除され、OECD先行指数との対比も復活しました。円高の価格効果への悪影響はまだ残るものの、所得効果の基となる海外需要は最悪期を脱しつつあるのが見て取れると思います。特に、中国については急速に回復する可能性を示しています。繰り返しになりますが、地域別・国別や財別の貿易動向を詳細に検討して、そろそろ我が国の輸出数量も増加する局面に達しつつあると私は考えています。

最後に、日銀は金融政策決定会合にて、ビミョーなレジーム・チェンジを行い、金融政策の操作目標をマネタリーベースから、長期金利の低め誘導によるイールドカーブ・コントロールへシフトしました。というか、シフトではなく、マイナス金利と同じく操作目標が追加されたということのようです。バーナンキ議長のころの米国連邦準備制度理事会(FED)もいわるゆるツイスト・オペレーションによって長めの金利を低め誘導しようと試みましたが、意図としては同じではないかという気がします。ただ、国債のストックが急速に減少するという意味で、量的緩和が長期戦に適さないので、色々と考える必要がありそうです。

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2016年9月20日 (火)

厚生労働省「所得再分配調査」の結果やいかに?

先週木曜日9月15日に厚生労働省から3年に1度の調査である「所得再分配調査」の2014年調査の結果が公表されています。より詳細なpdfの全文リポート「平成26年所得再分配調査報告書」もアップされています。格差拡大で注目されているジニ係数は当初所得で0.5704に上り、前回調査の2011年の0.5536から上昇しましたが、再分配後の所得のベースでは逆に2011年0.3791から2014年は0.3759に抑えられています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

所得格差、高齢者増加で34.1%縮小厚労省が再配分調査
厚生労働省が15日発表した所得再分配調査によると、税金や社会保障制度を使って低所得層などに所得を再分配した後の世帯所得の格差を示す「ジニ係数」は2013年に0.3759となった。再分配前の所得でみた係数より格差は34.1%縮小しており、改善度合いは過去最高だった。年金や医療で給付を多く受ける高齢者の増加で再分配機能が強まっている。
ジニ係数は0-1の間の数値で表され、所得がどれだけ均等かを示す。1に近いほど格差が大きいことを意味する。所得再分配調査はおよそ3年に1度、前年の所得を対象に実施している。
再分配前の当初所得のジニ係数は0.5704で、前回調査の10年(0.5536)を上回り過去最高になった。主な要因が高齢者世帯や単身世帯の増加だ。共働き世代などと比べて所得が低いため、格差が広がる結果となった。
再分配後の所得格差を示すジニ係数は前回調査の0.3791から0.0032ポイントとわずかに改善した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。今夜のエントリーではいくつかグラフを書いてみましたので、私の従来からの主張である高齢者優遇というか、年齢階級別の格差にも着目しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、昭和の昔にさかのぼって、1981年からの3年おきのジニ係数の推移は上のグラフの通りです。黄色が再分配前の当初所得のベースのジニ係数であり、2005年以降は0.5を超える水準で推移し、25年近くの間一貫して上昇を続けていますが、赤の再分配後所得のベースのジニ係数は直近の2014年でも0.4をわずかながら下回る水準に抑えられています。ということは、青い折れ線で示した税や社会保障による不平等の改善度が高まっているわけで、2011年調査から30%を超えており、2014年調査では34.1%に達しているのは、引用した記事にもある通りです。

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ただ、この当初所得の不平等が改善される度合いは、仕方ない面もありますが、高齢者に偏っています。上のグラフはそれを示しており、年齢階級別に見た所得再分配前後のジニ係数をプロットしています。青い折れ線が再分配前の当初所得ベースの年齢階級別ジニ係数であり、赤は再分配後です。いずれの年齢階級でも再分配後所得のベースではジニ係数は当初所得ベースよりも低く抑えられており、不平等の度合いが改善されているのは明らかですが、特に60歳以上層で改善の度合いが大きくなり始め、75歳以上では当初所得ベースで0.8に近いジニ係数が半分以下の0.4足らずに抑えられています。ある意味で、高齢者の不平等度合いが不釣り合いに偏って改善されている、ともいえますし、逆に見て、再分配しない当初所得ベースの高齢の引退世代の不平等が、勤労世代に比べて極めて高く、我が国はこの引退世代の増加に伴う高齢者数の増加により、見かけ上、不平等が進行している、ともいえます

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もっとも、高齢者に多くの財政リソースがばらまかれていることも事実であり、上のグラフは年齢階級別に見た再分配前後の所得をプロットしています。年齢階級別に見て、緑色の折れ線が当初所得、水色が再分配後所得、黄色の棒グラフがその差額の比率である再分配係数です。正負の符号で見て、60歳に達しない勤労世代は一貫してマイナスの取られる側になっているのに対して、60歳以上の引退世代はもらう側になっていて、しかも、年齢が高くなるほどもらう比率が高くなっています。財政リソースはい勤労世代から徴収して高齢者に支払われる構造になっているのは、一定の範囲で仕方ないにしても、世代間の不平等感をもたらさない範囲で行われるべきであることはいうまでもありません。

我が国では、雇用との関係で、ついつい、正規雇用と非正規の格差とか、地域振興の関係で大都市と地方の格差とか、ソチラの方の格差に目を奪われがちですが、生まれた時代による不平等は、本人にはどうしようもないことなので、こういった格差や不平等は是正されて然るべき、と私は考えています。

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2016年9月19日 (月)

3連休に読んだ小説3冊の読書感想文!

土曜日に阪神のBクラスが確定し、ついつい、この3連休はまたまた読書にいそしんでしまいました。最近の人気作家の小説を3冊読みました。とてもめずらしいことなんですが、3冊とも買い求めました。図書館から借りたわけではありません。

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まず、池井戸潤『陸王』(集英社) です。この作者の作品は私もかなり読んできたつもりで、ほぼいつものパターンの作品といえます。まあ、『下町ロケット』のシリーズと構図は変わりません。それなりに技術力ある中小企業とライバル企業、そして銀行とか技術の提供者やサプライヤーの人間関係とか、経済合理性とか、日本的な経営を持ち上げて、米国的なMBA流の経営を否定せんがごとき仕上がりになっています。最初は、創業100年超の足袋メーカーが地下足袋のようなランニング・シューズを開発するところから始まります。ランニング・アドバイザー、大手ライバル企業をクビになったシュー・フィッター、さらには、シューズのソールの素材を提供する起業家、もちろん、地元の取引銀行も相まって、独特の「池井戸節」のようなものを奏でています。それにしても、やっぱり、中小企業で新規事業が成功するのは、この作品くらいの極めてありえないような幸運が何重にも重ならないとなし得ないんだと、しみじみと感慨にふけってしまいました。諸条件が有利だったとはいえ、ソニーやホンダやパナソニックやといったカリスマ経営者が立ち上げて大企業に発展するのは、極めてまれな例外的ケースなんだろうと思います。でも、それをこういった形で小説に取りまとめると、それなりに感動が生まれます。でも、こういった中小企業の成功談はまれな例であって、小説は事実よりも奇なんではないか、という気がしないでもありません。終わり方がスッキリしているわけではないので、続編があるのかもしれません。

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次に、東野圭吾『危険なビーナス』(講談社) です。殺人事件があって名探偵が謎解きをするという形ではないものの、さすがに、一種のミステリですので、この作品は従来の東野作品と同じというわけにはいきません。そのあたりが、池井戸作品と東野作品の違いかもしれません。というわけで、獣医の兄が行方不明になった異父弟を彼の妻とともに探すミステリです。大金持ちの病院経営一族の遺産相続がからんで、失踪事件は複雑怪奇な展開を見せますが、最後は極めて論理的に解決されます。特に、延々と謎解きを展開する名探偵役はいないんですが、半分を少し過ぎたあたりから玉葱の皮をむくように、少しずつ新装が明らかになる方向に向かいます。でも、出版社のサイトかどこかで「どんでん返し」であるといった紹介を見た記憶があるんですが、私はジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムとアメリア・サックスのシリーズを読んでいますので、それほど大きなどんでん返し、すなわち、事件が解決したと考えられる段階に達してから、さらにカウンター・ファクトが発見されたり、被害者と加害者が実はまったく入れ違っていたり、というような強烈などんでん返しではないように受け止めいました。でも、最後の最後に、それまで謎とされていて、解釈のつかなかったいくつかの事実が解明され、とても読後感は爽やかです。『陸王』と違って、キャラ立ちがとても鮮やかです。

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最後に、宮部みゆき『希望荘』(小学館) です。杉村三郎シリーズの最新作です。前作で今多コンツェルンの妾腹の令嬢と離婚し、一時は郷里の山梨に戻っていた杉村三郎が、いろいろな経緯を経て東京に戻って探偵事務所を解説し、さまざまな事件を解決するというストーリーです。いままで、このシリーズはすべて長編だと記憶しているんですが、この作品は連作短編集です。4編の短編ないし中編から編まれています。必ずしも時系列で陣番に並べてあるのではなく、3番目に置かれている「砂男」が山梨のころの物語です。砂男とは本書でも言及されますが、メタリカの「エンター・サンドマン」のことで、まあ、怪物です。サイコパスとして描き出されています。メタリカの曲はヤンキースの21世紀の黄金時代にクローザーを務めたリベラ投手の登場曲でした。ということで、いかにも宮部作品らしく細部に渡ってビッチリと記述されており、今回の作品では、杉村三郎の置かれた境遇が前作から大きく変化し、山梨での事件も収録されていますから、特に長くなっています。読後感のいいミステリだけではないんですが、この宮部作品のシリーズは1作目の『名もなき毒』の姉妹の関係から、どうしても毒々しいイヤミスに近い作品が多くなっています。でも、宮部ワールドは全開です。私のような宮部ファンはぜひとも読んでおくべき作品です。

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2016年9月17日 (土)

横浜に逆転負けしてBクラス確定!

  HE
横  浜00004020 690
阪  神200000100 381

能見投手が筒香選手の逆転打に沈んで、横浜に逆転負けしてBクラス確定でした。今年の超変革野球はシーズン当初5月くらいまでしか野球が楽しくありませんでした。

来年は、
がんばれタイガース!

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