2019年1月16日 (水)

前月比横ばいで足踏み続く機械受注と上昇率が大きく縮小した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から昨年2018年11月の機械受注が、また、日銀からこれも昨年2018年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、前月比▲0.0%減の8,631億円を示しています。また、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.5%と前月の+3.0%から上昇率が大きく縮小したものの、引き続き、高い上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、2カ月ぶりマイナス 0.02%減
内閣府が16日発表した2018年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比0.02%減の8631億円だった。減少は2カ月ぶり。「水準でみると、必ずしも悪いわけではない」(内閣府)とするものの、QUICKがまとめた民間予測の中央値(3.1%増)を下回った。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。「戻りが弱かった10月と同じような動きで、表現を変えるまでには至らなかった。まさに足踏み」(内閣府)という。
11月の製造業の受注額は6.4%減の3957億円だった。減少は2カ月ぶり。17業種のうち9業種が減少した。その他製造業で合成樹脂加工機械などの受注が減ったほか、非鉄金属で原子力原動機が、造船業で内燃機関などの受注が減った。
非製造業は2カ月連続で増加し、2.5%増の4650億円だった。運輸業・郵便業や情報サービス業で電子計算機等の受注が増えた。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.8%増だった。
11月の受注総額は8.3%増の2兆8506億円。外需の受注額が18.5%増の1兆2649億円と大きく増えた。化学機械や船舶、鉄道車両などの大型案件がみられた。官公需は26.8%減(2649億円)だった。10月に防衛省向け船舶の大型案件があった反動が出たという。
12月企業物価、1.5%上昇、原油下落で伸び縮小
日銀が16日発表した2018年12月の国内企業物価指数(速報値、15年平均=100)は101.5と、前年同月比で1.5%上昇した。前年実績を24カ月連続で上回ったが、伸び率は11月確報値から0.8ポイント縮小した。原油価格の下落や米中貿易摩擦に伴う商品市況悪化で伸びが鈍っている。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で取引される製品価格を調べて指数化したもの。品目別ではガソリンなどの石油・石炭製品が前年同月比4.7%上昇したものの、11月確報の14.2%から伸び率が大幅に縮小した。
非鉄金属は米中貿易摩擦の影響で銅やアルミニウムなどの価格が下がって4.1%下落した。下落幅は11月から0.5ポイント拡大した。18年平均の企業物価は前年比2.6%上昇と2年連続で上昇した。日銀は「今後も原油価格の動向に左右される展開が続く」(調査統計局)としている。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済のコア機械受注の前月比で見て+3.1%増でしたから、ほぼほぼ前月から横ばいという結果はこれを下回ったことになります。業種別では、製造業で減少した一方で、船舶と電力を除く非製造業で増加を示しています。コア機械受注は季節調整済みの系列の前月比で見て、9月に▲18.3%減と大きく落ち込んだ後、10月の戻りが+7.6%増とやや物足りない感があり、11月統計でもほぼ前月比横這いでしたから、まさに足踏みということなのかもしれません。ただ、上のグラフのうちの上のパネルに見られる通り、後方6か月移動平均のトレンドで見て、方向性として足踏みの右肩下がりであるのは明らかですが、受注の水準としてはまだかなり高いレベルにあることも忘れるべきではありません。平たい言葉を使えば、統計の対象となっている工場の稼働水準はまだかなり高いといえますし、受注元企業の設備投資意欲も先細りかもしれませんが、まだそれなりの水準をキープしている感触です。もっとも、先々月の9月統計公表時に明らかにされた2018年10~12月期見通しでは、四半期ベースでのコア機械受注は前期比+3.6%増の28003.5億円が見込まれていましたから、月次ベースでは9300億円を軽く上回るレベルに比較すると、11月実績の8631億円はかなり低い水準である、との見方も成り立ちます。また、先行きについては、私は先行指標としての外需を参考にしているんですが、2018年10月+15.5%増、11月+18.5%増と、上のグラフの下のパネルに見られる通りジャンプしています。米中間の貿易摩擦の動向が気にかかりますが、外需は堅調のように見える一方で、内需はオリンピック・パラリンピック需要のピークアウトと10月からの消費税率引き上げで年央からは景気動向は不透明です。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、また、一番下は企業物価指数のうちの円建て輸入物価の原油の指数そのものと前年同月比上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率で見て、7~10月は+3.0%を続けていましたが、先月統計の11月が+2.3%と上昇幅を縮小し、直近の12月統計ではとうとう+1.5%まで上昇幅が半減してしまいました。季節調整していない前月比で国内物価は11月から12月にかけて前月比で▲0.6%の下落を示しましたが、品目別の寄与度で見てガソリンや軽油などの石油・石炭製品が▲0.5%と大きな部分を占めますし、PPIのうちの輸入物価は同じ前月比で▲3.4%下落し、同じく寄与度で石油・石炭・天然ガスが▲3.11%に上ります。上のグラフのうちの一番下のパネルに円建て輸入物価のうちの原油を取り上げていますが、まだ前年同月比ではプラスですが、前年同月比上昇率では昨年年央2018年7月にピークアウトし、指数の水準でも昨年2018年11月にピークアウトしたんではないかと私は見ています。私だけでなく、日銀当局も物価は石油価格の動向に左右されることは認めているようです。

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2019年1月15日 (火)

先週と今週の経済指標に関する雑感

私はいくつかのシンクタンクのエコノミスト、特にマクロを担当するエコノミストと交流があった時期もあり、シンクタンクのサイトは定期的に拝見しているんですが、いくつか興味深いリポートがありましたので、簡単に取り上げておきたいと思います。

まず、第一生命経済研のサイトに先週の景気動向指数を取り上げたリポートがあり、私の見方と同じで、3か月後方移動平均の動向から最短で12月統計で基調判断が上方修正されて「改善」に戻る可能性を指摘しつつ、最後の結論として「基調判断が上方修正されるかどうかは五分五分」と指摘しています。私の見方にほぼほぼ一致しているような気がしました。

次に、大和総研が昨年2018年12月26日付けで「AIを活用した経済指標予測の公表について」と題したお知らせをアップしていて、人工知能(AI)を活用した経済指標予測モデルを開発したので、エコノミストによる予測業務をこれに置き換えると表明しています。実際に予測を出す指標は、機械受注(船舶・電力を除く民需、いわゆるコア機械受注)、失業率、有効求人倍率(一般職業紹介状況)、国内企業物価指数(企業物価指数)、第三次産業活動指数の5指標とされています。早速、先週1月11日に明日公表予定の機械受注など、AI経済指標予想として以下の通り明らかにされています。

AI経済指標予想
  • 【コア機械受注】(11月)前月比0.5%、前月実績同7.6%、発表日1月16日
  • 【国内企業物価指数】(12月)前月比-0.5%、前月実績同-0.3%、発表日1月16日
  • 【第3次産業活動指数】(11月)前月比-0.8%、前月実績同1.9%、発表日1月16日

第3次産業活動指数は遅行指標なので、私はあまり興味ないんですが、明日の機械受注と企業物価の公表がとても楽しみです。

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2019年1月14日 (月)

ニッセイ基礎研リポート「GW10連休は景気にプラスか? マイナスか?」を読む

今日は本年最初の3連休最終日なんですが、先週金曜日の1月11日にニッセイ基礎研から「GW10連休は景気にプラスか? マイナスか?」と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨のうち3点目だけを引用すると以下の通りです。

要旨
GWが10連休となったことにより、祝日数は4月が1日、5月が2日増えることになった。4/30~5/1が平日だった場合と比べると、鉱工業生産指数が▲0.95%、第3次産業活動指数が▲0.34%、全産業活動指数が▲0.41%押し下げられる。2019年4、5月の全産業活動指数の落ち込みをGDPに換算すると、2019年4-6月期の実質GDPは▲5,267億円(▲0.4%)減少する。

ということで、以下のグラフが示されています。

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このリポートの要旨の1点目でも「祝日が増えることによって、旅行業界を中心に景気の押し上げ効果が期待されているが、製造業では工場の稼働日数が減ることで生産量が抑制されることも懸念される。」と指摘しているように、ごく単純にいって、お休みが増えれば需要が増加する一方で供給は減少する、ということになります。短期的には、作り置きして在庫が可能な財貨は、ひょっとしたら、需要に応じて消費が増加する可能性がある一方で、在庫のできないサービスについては需要に応じた生産ができない可能性もあります。もちろん、長期休暇後には反動が生じる可能性も否定できません。供給面からはお休みが増えれば供給は単純に減ります。
しかし、長期的に歴史をさらに長い目で見ると、おそらく、日米をはじめとする先進国においては、我が国の高度成長期が典型ですが、終戦直後から1970年代前半くらいまでは需要が旺盛で、作れば売れる、すなわち、供給がGDPを決めていた面が強い一方で、1980年代くらいから現時点までは、生産力が大いに増強されて消費がかなりの程度に飽和しつつあり、需要が生産をけん引してGDPを決める、という側面が強くなったように私は考えています。短期的なGW10連休ならニッセイ基礎研のリポートが正しくてGDPにはマイナスのインパクトを生じる可能性が高いと私自身も考えますが、より長い目で見ると、働き方改革によるワークライフ・バランスの改善とか、より需要を喚起する休日の増加の視点も忘れるべきではありません。

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2019年1月13日 (日)

今日と明日のお天気の話題!

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きのう12日の雪やみぞれで東京の無降水継続記録は19日間で終わりましたが、明けて今日から早くも空気は乾燥してきているそうです。上の画像は、日本気象協会のサイトから引用しています。
もちろん、お天気がいいわけですから、明日の成人の日は全国的に晴れるとの予報です。これも、日本気象協会の別の記事では「あす14日 新成人を祝う晴天に」と予想されています。我が家では、大阪に下宿している下の倅が昨年の誕生日で20歳となり、明日が成人式なんですが、大阪の方で祝うんでしょうか。私はよく判りません。

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2019年1月12日 (土)

今週の読書は経済書にエンタメ小説まで加えて計6冊!

先週の読書感想文からほぼ通常通りの週数冊のペースに早くも戻り、今週も以下の6冊です。経済書はもちろんありますし、新本格派の京大ミス研出身の我孫子武丸による小説もあります。今日はすでに自転車で図書館を回り終えていますが、来週も数冊の読書が楽しめそうです。

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まず、 コンスタンツェ・クルツ & フランク・リーガー『無人化と労働の未来』(岩波書店) です。著者2人はいわゆるホワイトハットハッカーらしく、情報に強い印象です。本書は原書の全訳ではなく、いくつかの章を省略した抄訳となっています。副題は「インダストリー4.0の現場を行く」と題されていて、世界に先駆けて「第4次産業革命」を打ち出して、AIをはじめとするソフトウェアに加えて、ロボットとネットワーク化による製造現場の変革を進めてきたドイツを舞台に、主食のひとつであるパンが出来上がるまでを跡づけます。すなわち、農場で小麦が栽培されて収穫されるまでの機械化の進展を見つつ、農業機械の製造現場も振り返り、ロジスティックスで穀物の運輸、もちろん、パンの製造やその後の製品の流通など、第1部でパンが出来るのを跡づけた後、第2部で労働の未来の考察に進み、まず、話題の自動運転から始まります。結論としては、馬車がトラックに取って代わられた歴史的な例などを参照します。しかし、本書のドイツ語原初の出版は2013年であり、5年前という技術的な進歩の激しい分野では致命的な遅れがあります。もちろん、技術に関する哲学的な考察で有用なものは本書からも決して少なくなく汲み取れるんですが、それにしても、土台となる技術的な発展段階が5年前では見方にバイアスも避けられません。そのあたりは、5年前の技術水準に依拠して書かれている点を忘れず読み進むことが必要です。最後に、この書評ブログでは著者とともに、翻訳書の場合は原語の原題もお示しするんですが、わざわざ、最後に回したのは、ドイツ語原題が Arbeitsfrei となっていて、Arbeits と Frei の間にパワー=力を意味する macht を入れると、とても意味深長、というか、やや使うのはためらわれる場合もありそうです。すなわち、「都市の空気は自由にする」= Stadtluft Macht Frei をもじって、ドイツ人作家ロレンツ・ディーフェンバッハがこれを小説のタイトルとして Arbeits Macht Frei として用いた後、20世紀になってワイマール共和国期に失業対策として実施された公共事業に対しての表現として用いられ、何と、ナチス政権下ではこの表現をアウシュビッツをはじめとする多くの強制収容所の門に記しています。著者をはじめとして多くの教養あるドイツ人や、おそらく、日本人ながら翻訳者には判っていると私は想像しているんですが、私には謎ながら、何らかの意図があるのかもしれません。

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次に、藤井聡『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社) です。著者は、京都大学の工学部教授であり、最近まで内閣官房参与として安倍内閣のブレーンを務めてきた研究者です。タイトルからも理解できる通り、本書では今年10月の消費税率の10%への引き上げに強く反対する論陣を張っています。かなり経済学的には怪しい論拠がいっぱいで、レーガノミクスで税率を引き下げれば税収が増加するというラッファー・カーブというのがあり、当時のブッシュ副大統領が voodoo economics と呼んだシロモノで、大いにそれを思い起こさせる内容もあったりしますが、直感的には理解しやすいと思いますし、例えば、アベノミクスも同じで、最近の税制の変更により法人税を減税して、その分を消費税で徴収している、という主張はその通りです。ただ、1989年の消費税導入時はインフレだったのでOKだが、1997年の税率を5%に引き上げたのはデフレ圧力を強めた、というのは必ずしも私は同意できませんし、本書で大きく批判されている2014年の消費増税についても、タイミングは私自身は正しかった、と考えています。もっとも、今年の税率引き上げについては、私もタイミングについて疑問に感じる一方で、短期的にはともかく、中長期的には消費税率は引き上げざるを得ない、そうしないと政府財政のリスクが大きくなる可能性が高い、と私は考えています。著者は政府財政の破綻は将来に渡ってもないと考えているようですが、私は現実問題として何らかの市場の反応次第では、政府財政が破綻することはあり得ると考えています。実際に何が起こるかといえば、いわゆるキャピタル・フライト、すなわち、資本逃避で海外に資産を移し替える富裕層が増加し、そのために為替が急激に円安になる一方で、外貨が不足して市場介入も限界があるため、輸入ができなくなる、というルートです。そのリスクを抑制するためには政府財政の健全化は避けて通れません。他方で、本書ではスコープ外なんですが、シムズ教授らの物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level:FTPL)もあり、経済学の曖昧さが露呈している気もします。悩ましいところです。

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次に、西部忠[編著]『地域通貨によるコミュニティ・ドック』(専修大学出版局) です。編著者は北海道大学から専修大学に転じた経済学の研究者で、本書は主として北海道の地域コミュニティで実践された地域通貨事業から、ブラジルの実践例も含めて、地域のコミュニティの維持強化を分析しています。特に、ダンカン・ワッツ教授のスモール・ワールド理論などにおけるネットワーク分析はとても特徴的であると私は考えています。専門外ですので、詳しく解説はできませんが、地域通貨が何らかのノードのハブとなる団体、例えば、商店街連合会とか環境NPOとかから、地域住民や商店主にどのような広がりを持っているかは、コミュニティ維持強化の観点からの分析に、あるいは、適しているのかもしれないと実感しました。ただ、地域通貨の経済効果は、本書のスコープ外かもしれませんが、おそらくありきたりのものとなろうかという気がします。というのも、要するに、プレミア付きの地域通貨は財政政策による所得移転であろうと考えますし、あるいは、部分的にはマネーサプライの増加に代替する可能性もあります。さらに、プレミア付きの地域通貨を回収する際に手数料を徴収して、元の通貨価値で回収するのであれば、例えば本書に例に即していえば、500円の現金で525ポイントの地域通貨を発行して、回収する際には5%の手数料を徴収して525ポイントの地域通貨を500円で買い取ることにすれば、典型的にグレシャムの法則、すなわち、「悪貨は良貨を駆逐する」が働いて、通貨の流通速度が大きく増します。その点は本書でも確認されています。ただ、繰り返しになりますが、通常の財政金融政策の観点からの地域通貨の分析ではなく、地域コミュニティの維持強化の方策としての分析は、今後の地域分析のツールとして目新しい気がします。まあ、一応、地域経済研究の論文をものにしているものの、単に私の勉強不足なだけで、ほかにも同様の研究成果はいっぱいあるのかもしれません。

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次に、デイビッド・サックス『アナログの逆襲』(インターシフト) です。著者はカナダ在住のジャーナリストであり、上の表紙画像に見られる通り、英語の原題は The Revenge of Analog ですから、邦訳タイトルはそのままです。2016年の出版となっています。本書はモノの第1部と発想の第2部の2部構成で、第1部ではレコード、メモ帳、フィルム、ボードゲーム、プリントが、第2部ではリアル店舗、仕事、教育が、それぞれ取り上げられています。今までのアナログ礼賛は、単に、デジタルの現時点から昔を懐かしがるノスタルジーだけだったような気がしますが、本書はかつてのアナログから一度デジタルに進化した後、再びアナログに戻る動きを活写しています。これは今までになかった視点かもしれません。ただ、アナログ≃オフライン、かつ、デジタル≃オンライン、とも読めます。というのも、本書ではしばしば「テクノロジー」という言葉が出てきますが、テクノロジーとして考えれば、どこまでさかのぼるのか、という問題があるからで、自動車は問題なくアナログなんですが、馬車までさかのぼる必要があるのかどうか、は本書では否定的な雰囲気があります。レコードとCDではそれほど違いはないのかもしれませんが、デジタルのオンラインではかなりの程度に独立した個人として対応する必要がある一方で、アナログのオフラインではより社会性のある対応が求められる、特にゲームなんぞはそういう気がします。ただし、本書に限らないのですが、最近のオンライン技術やデジタル技術については、1990年台のインターネットの普及のころからそうですが、私のような経済を専門とするエコノミストには製造やサービス提供の場での生産性向上に用いられるよりも、典型的にはゲームのような娯楽で用いられるケースが増えているような気がします。ですから、乗馬が実用的な輸送手段としては街中から消え去って、どこかの乗馬クラブで趣味として生き残っているように、アナログもどこかで趣味として生き残る可能性は大いにありますが、生産の場でのメインストリームとして復活するのは難しそうな気もします。

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次に、我孫子武丸『凛の弦音』(光文社) です。作者は、ご存じの通り、綾辻行人や法月綸太郎と同じく、わが母校の京大ミス研出身のミステリ作家であり、本書は『ジャイロ』に連載されていたものを単行本化した小説です。高校生の女子弓道部員を主人公にその1年生から2年生にかけての連作短編、なのか、長編なのか、ややあいまいなところです。ただ、新本格派のミステリの要素はそれほど強くなく、最初の短編では殺人事件も起き、主人公の女子高校生がなぞ解きをしますが、むしろ、周囲の人々との関係を描きつつ、主人公の成長を跡づける青春小説といえます。実は、ミステリとともに私の好きな小説のジャンルだったりします。7章構成ですが、繰り返しになるものの、最初の第1章に殺人事件が起こり、ほかにも、1年生の新入部員の突然の退部の真相解明とか、高価な竹弓の紛失の謎解きなどもある一方で、放送新聞部の男子部員が主人公にピッタリとくっついて動画に収録したり、新任の女性教諭の弓道指導に対する疑問と理解の進展、同じ高校弓道部の同級生や先輩の部長との人間関係、さらには、ライバル校の花形選手との関係などなど、色んな要素がてんこ盛りなんですが、ただ、弓道に対する考え方については私には理解できないものがありました。本書でも主人公が独白しているように、戦国時代には戦闘の中で実用的に殺人を行う技だった弓の技術が、剣と同じように、徳川期の天下泰平の世の中になって、殺人技術というよりは精神的な要素を強めて、あるいは、形の美しさを極めたりもして、スポーツの要素も取り入れた弓道に変化発展する中で、それが生活の糧をもたらさないにもかかわらず、どのように人生の形成や人間的な成長に必要とされるのか、難しい問題ではないかと思います。ちょうど、お正月休みに「ホビット」3部作のDVDを見て、エルフの戦士が弓を活用しまくっていましたし、人間が龍を倒すのにも矢を使ったわけですから、何となく弓の活用も頭に残っていましたが、道を極めるという意味での弓道の青春物語は面白くもあり、同時に難解でもありました。

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最後に、高嶋哲夫『官邸襲撃』(PHP研究所) です。著者はエンタメ小説の売れっ子作家であり、私は著者の専門分野である核や原子力関係の本や自然災害のパニック本などを何冊か読んだ記憶があります。本書は、タイトル通りに、総理大臣官邸が謎のテロ組織に襲撃され、女性首相の警護に当たっていた女性SPの活躍により制圧する、というものです。もちろん、テロは制圧されます。ただ、日本国内の動機だけでなく、というよりも、テロの目的なむしろ米国にあり、米国国務長官が官邸に滞在している折を狙っての襲撃と設定されています。そして、ご本人も知らないような米国大統領の縁続きの女性が人質になったり、グリシャムの「ペリカン文書」にインスパイアされたとしか思えない文書の公開要求があったりと、いろいろな読ませどころがありますが、こういった書物にありがちな設定ながら、女性総理が官邸で人質になった後、お飾りで優柔不断で、いかにも旧来タイプの政治家であった副総理が一皮むけて立派な決断をしたり、米国と日本で判断のビミョーなズレがあったり、映画の「ダイハード」よろしく不死身の主人公が縦横無尽に活躍したりと、こういったあたりはややありきたりな気もします。私のオフィスからほど近い官邸がテロ組織に襲撃されるというのは、確かに実感としてムチャな気もしますし、著者の専門分野の原子力や自然災害のパニック本よりも、リアリティに欠けるように感じられますが、私自身がもうすぐ定年退官ながら公務員として総理大臣官邸を身近に感じられるだけに、それなりに面白く読めた気もします。私のようにこの作者のファンであれば読んでおいて損はないと思います。また、もしも映画化されれば、主人公の女優さん次第で私は見に行くかもしれません。

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2019年1月11日 (金)

大きく悪化した景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から昨年2018年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から同じく昨年2018年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から前月差▲3.0ポイント低下の48.0を記録した一方で、先行き判断DIは▲3.7ポイント低下の48.5となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+7572億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、先行き指数2カ月ぶり悪化 基調判断を下方修正
内閣府が11日発表した2018年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は48.0と、前の月から3.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.5と、前の月から3.7ポイント低下した。昨年末の株価下落や世界経済の先行き不透明感が景気実感に反映された。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に下方修正した。基調判断の下方修正は2018年5月以来7カ月ぶり。
現状判断指数を部門別にみると家計動向が3.0ポイント低下、企業動向が2.7ポイント低下、雇用が3.5ポイント低下といずれも悪化した。家計動向では「忘年会シーズンにもかかわらず夜は週末以外はどちらかといえば振るわない。週末も例年より悪い」(北陸のタクシー運転手)といった声が聞かれた。企業動向でも12月中に住宅ローン減税の拡充などが発表されたことで住宅関連に様子見の動きが見られるといった声があった。
先行き判断指数の部門別も、家計動向、企業動向、雇用とも低下した。株価下落で「国内富裕層の動きが鈍くなる」(南関東の百貨店)などの声があった。住宅関連でも株価下落により資産効果が失われることを懸念する声があった。企業動向では世界情勢の不透明感や人手不足などを懸念する声が多い。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、先行きについて「海外情勢や金融資本市場の動向等に対する懸念がみられる」とした。
経常黒字、11月43.5%減 貿易収支が赤字に転じる
財務省が11日発表した2018年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は7572億円の黒字だった。黒字は53カ月連続だが、黒字額は前年同月に比べて43.5%縮小した。黒字額が前年同月比で減少するのは5カ月連続。原油高による輸入増を背景に貿易収支が赤字に転じたことが響いた。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は1兆4388億円の黒字だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資収益が伸び、黒字額は8.2%増加した。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は121億円の黒字だった。輸送収支の赤字額拡大が響き、黒字額は前年同月の189億円に比べて縮小した。一方、旅行収支は訪日外国人の増加を背景に1723億円の黒字と11月としての過去最高を記録した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5591億円の赤字(前年同月は1991億円の黒字)だった。原油価格の上昇で原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入が増加し、輸入額が全体で13.5%増加した。船舶や有機化合物など輸出も全体で1.9%伸びたが、輸入の増加が上回った。

なるべく短めの記事を選んだつもりなんですが、それでも2つの統計を並べるとやたらと長くなりました。いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーについては、現状判断DIが3か月ぶりに悪化し、統計作成官庁である内閣府では「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、(以下略)」と下線部の一服感を加えて、景気判断は半ノッチの下方修正と私は受け止めています。「景気判断理由集」をパラパラと読むと、消費の弱さが目につきますし、衣料のように暖冬を理由に上げている場合もある一方で、株価下落や景気全般の悪化などのマクロ経済動向も上げられています。先行きでは、米中貿易摩擦とともに10月の消費税率の引き上げも懸念材料となっているように私は感じました。今週火曜日に公表された消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドであるのに対して、景気ウォッチャーは供給サイドの消費者マインドを指標ですから、いわゆる「消費者の財布のひもが固い」といった趣旨の表現が「理由集」にいくつか散見されています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。まず、上のグラフから明らかな通り、2017年102~12月期くらいを直近のピークにして経常収支の黒字幅はジワジワと縮小を見せていましたが、季節調整済の系列では11月の経常収支は黒字幅が拡大しました。しかし、これも上のグラフの黒い部分の積み上げ棒グラフで示された貿易収支は赤字のままですので、赤い棒グラフの1次所得収支が黒字を拡大させており、要するに、ドル金利が上昇しているわけです。先行きについては、原油価格の低下に伴う輸入額の減少と先進国や中国の経済停滞に起因する輸出額の減少とが同時に施行しており、いかにも景気が停滞しているような縮小均衡っぽい動きの中で、どちらの縮小効果が大きいか、ということになります。

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2019年1月10日 (木)

足踏み続く景気動向指数と日銀「さくらリポート」やいかに?

本日、内閣府から昨年2018年11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲0.3ポイント下降して99.3を、CI一致指数も▲1.9ポイント下降して103.0を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 10月の大幅上昇の反動
内閣府が10日発表した2018年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.9ポイント低下の103.0だった。低下は2カ月ぶり。9月は台風などの災害で生産や出荷が落ち込んだが、10月は挽回生産などで前月比で大幅な上昇となっていた。11月は「10月の反動が出た」とみている。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象になる7系列すべてが指数のマイナスに影響した。
鉱工業用生産財出荷指数や生産指数(鉱工業)などのマイナスが目立った。10月に大きく上向いた鉄鋼や電子部品などが11月は反動で落ち込んだ。商業販売額も振るわなかった。内閣府は「9月から自然災害の影響で振れが大きくなっていたが、今後は落ち着いていくだろう」としている。
数カ月後の景気を示す先行指数は0.3ポイント低下の99.3と2カ月ぶりに低下した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.4ポイント上昇の104.0だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気動向指数、特に、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高いのは従来から指摘している通りですが、最近の動向については、9月には自然災害に起因する供給制約や物流の停滞などから下降を示した後、10月にはその9月の落ち込みからの復旧が見られて大きくジャンプしたんですが、11月指数はまたまたその反動により下降を示しています。引用した記事にもある通り、CI一致指数に用いられている7系列がすべてマイナスを記録しています。すなわち、寄与度の順で見て、鉱工業用生産財出荷指数▲0.59、投資財出荷指数(除輸送機械)▲0.41、商業販売額(卸売業)(前年同月比)▲0.33、商業販売額(小売業)(前年同月比)▲0.29、生産指数(鉱工業)▲0.21などとなっています。そして、統計作成官庁である内閣府の基調判断は「足踏み」で据え置きとなっているんですが、上方改定されると仮定すれば1ノッチ上の景気判断は「拡大」ですから、3か月連続で3か月後方移動平均がプラスに転じなければなりません。10~11月は2か月連続で3か月後方移動平均がプラスを示していて、もしも、これまた仮定のお話ですが、12月統計で3か月後方移動平均がプラスを付ければ、基調判断は「拡大」に戻る可能性があります。そうなれば、いままでも、何回か、このブログでお示ししたように、現在の景気拡大局面が今年2019年1月まで継続すれば、米国のサブプライム・バブルに対応する戦後最長の景気拡大期間72か月を超える計算です。あるいは、このまま足踏みが続いたり、むしろ、景気悪化の方向に動く可能性もないわけではないと私は考えており、いずれにせよ、現時点で利用可能な情報だけからは、確たる判断を下すことは私には出来ません。

最後に、日銀から「さくらリポート」が公表されています。全国9地域のうち、北海道と中国地方の2地域の景気判断を前回の2018年10月調査から引き上げた一方で、ほかの7地域は据え置かれています。なお、全地域の景気判断に「拡大」あるいは「回復」の表現が入っていたりします。以下の通りです。

 【2018年10月判断】前回との比較【2019年1月判断】
北海道基調としては緩やかに回復しているものの、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力がみられている基調としては緩やかに回復しており、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力は緩和を続けている
東北緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
北陸拡大している拡大している
関東甲信越緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿台風21号による経済活動面への影響がみられるものの、緩やかに拡大している緩やかな拡大を続けている
中国平成30年7月豪雨によりダメージを受けたものの、社会インフラの復旧等に伴い、豪雨の影響が低減する中で、基調としては緩やかに拡大している緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄しっかりとした足取りで、緩やかに拡大しているしっかりとした足取りで、緩やかに拡大している

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2019年1月 9日 (水)

統計として疑問あるも毎月勤労統計から何が読み取れるか?

本日、厚生労働省から昨年2018年11月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ねたんですが、足元では同一ベースで統計を作成しているとのことです。統計のヘッドラインとなる名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+2.0%増の28万3607円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年11月の名目賃金、前年比2.0%増 増加は16カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が9日発表した2018年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、11月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比2.0%増の28万3607円だった。増加は16カ月連続。基本給の増加が続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.6%増の24万4981円だった。残業代など所定外給与は1.1%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は9.7%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は1.1%増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は1.7%増の1134円。パートタイム労働者比率は0.31ポイント低下の30.71%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。
毎月勤労統計は、一部の対象について調査手法が規定と異なっていたことが明らかになっている。厚労省は原因について「調査中」とするとともに、11月分については「調査手法は変えていない」としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。

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引用した記事の最後のパラにも見られる通り、何分、統計としての信頼性が著しく毀損した統計ですので簡単に我が国雇用の方向性だけコメントしておきたいと思います。まず、景気に敏感な所定外労働時間については、ほぼ生産とシンクロして増減していおり、全体として、2014年の消費税率引き上げ後はほぼ横ばいで推移しています。消費増税が経済の停滞をもたらした点は疑いありません。賃金については、かなり完全雇用に近い労働市場動向のため、最近時点でようやく本格的な上昇が始まったと考えてよさそうです。しかし、まだ前年同月比で+1%を少し上回ったところであり、消費者物価(CPI)の上昇率を十分に上回る段階には達していません。その意味で、消費拡大には力不足の気がします。最後に、完全雇用に近いとはいえ、まだ、フルタイムよりもパートの伸びが高い状況であり、正社員の有効求人倍率が1倍を超えているとはいえ、より安定した雇用の実現がまだ課題といえます。半年余り先の消費税率引き上げに向けて、まだ雇用の拡大が十分かどうか、私は自信が持てないところです。

最後にどうでもいいことながら、私もその昔に統計局の担当課長として、毎月の統計公表の記者会見をやっていた経験があるんですが、今日の毎月勤労統計の公表会見なんて、ホントに針のむしろもかくや、というカンジだったのではないかと勝手に想像しています。

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2019年1月 8日 (火)

2年1か月振りの低水準まで低下した消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2018年12月の消費者態度指数が公表されています。季節調整済の系列で見て前月から▲0.2ポイント低下して42.7を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の消費者態度指数、2年1カ月ぶり低水準 食品価格上昇
内閣府が8日発表した2018年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.2ポイント低下の42.7と3カ月連続で低下した。指数は16年11月以来、2年1カ月ぶりの低水準だった。内閣府は基調判断を「弱い動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「暮らし向き」が0.2ポイント低下し40.6と4カ月連続で低下した。冷凍食品などの価格やエネルギー価格が上昇しているほか、世界経済の先行き懸念が影響した。「収入の増え方」は0.1ポイント低下の41.7、雇用環境は0.8ポイント低下の45.8だった。一方、「耐久消費財の買い時判断」は0.4ポイント上昇の42.8だった。
消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は、株式相場の下落を反映し40.9と前月から1.7ポイント低下した。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比1.3ポイント低い83.2%だった。「低下する」は0.3ポイント高い4.0%、「変わらない」は1.0ポイント高い10.8%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は12月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6309世帯、回答率は75.1%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、例月に比べてとても長い記事に仕上げています。続いて、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、「耐久消費財の買い時判断」は+0.4ポイント上昇したものの、「雇用環境」が▲0.8ポイント、「暮らし向き」が▲0.2ポイント、「収入の増え方」が▲0.1ポイント、それぞれ低下となっています。特に、人手不足が雇用統計などで明らかであるにもかかわらず、雇用環境に関するマインドが大きく低下した点は気がかりです。引用した記事によれば、統計作成官庁である内閣府ではエネルギーや食品の価格上昇に対する消費者の懸念を要因として上げているようですが、消費者態度指数のコンポーネントではなく外数ながら、「資産価値」に関する意識指標は前月差で▲1.7ポイント低下していますので、米国発の株価をはじめとする金融資産価格の乱高下、というか、不安定な金融市場動向が消費者マインドに影響を及ぼしている可能性があるんではないか、と私は考えています。また、これも、引用した記事にある通り、消費者態度指数の2018年12月の水準である42.7は、2016年11月に記録した41.0から2年1か月振りの低い水準なんですが、DIですので水準で見るのは必ずしも適切ではなく、むしろ、2017年11月から2018年1月の3か月連続で記録した44.6を直近のピークにして、ほぼほぼ1年に渡って下がり続けている方向性が、今後、どこまで続くのかを見る必要があります。おそらく、供給サイドのマインドである景気ウォッチャーは今年10月からの消費税率の引き上げ直前の駆け込み需要のころには上昇する可能性が高いと私は考えている一方で、需要サイドのマインド指標である消費者態度指数は、ひょっとしたら、下がり続ける可能性も否定できませんし、もちろん、景気ウォッチャーも消費者態度指数も10月の消費税率引き上げ以降は大きく低下することは確実です。賃上げが十分でないことからマインドだけで消費を牽引するのはサステイナビリティに欠けると、従来からこのブログで主張していましたが、財政的なサポートが手厚いとはいえ、消費税率引き上げを半年余り先に控えて、消費の動向が懸念されます。

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2019年1月 7日 (月)

@nifty なんでも調査団による「和服についてのアンケート・ランキング」やいかに?

先週金曜日1月4日付けで、@nifty なんでも調査団による「和服についてのアンケート・ランキング」が明らかにされています。いかにも、正月の1月は和服を着る機会が最も高そうな気がするんですが、私もこの10年以上に渡って和服は着用していません。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、@nifty なんでも調査団のサイトから 和服を着る機会のランキング のグラフを引用すると上の通りです。圧倒的なトップの「和服を着る機会は無い」を別にすれば、いわゆる冠婚葬祭の折りであり、結婚式とか、成人式とか、葬式・法事などが上位につけている気がします。結婚式で和服を着て以来の25年近くで私が和服を着た機会は、その結婚式を別にしてわずかに3度であり、夏祭りに浴衣を着たのと、茶道の初釜と、ジャカルタから帰国直後の正月の初詣で一家4人そろって日本帰国のムードを高めた際だけです。なお、男女別のランキングで女性の方が男性より高いのは理解できるところですが、例外的に男性の方が女性より比率の高い「旅行先 (旅館など)」については、私が勝手に推測する限り、旅先の備え付けの寝間着代わりの浴衣だったりするんでしょうか。温泉旅館ではありがちな気もします。別の問いで、浴衣、作務衣・甚平を含めて、持っている和服の数を質問していますが、男性で60.6%、女性でも25.1%が和服を持っていないと回答していますので、レンタルという手もあるにはあるものの、旅館の寝間着代わりの浴衣であれば、和服を持っていなくても着る機会はあるのだろうという気はします。

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次に、@nifty なんでも調査団のサイトから この1年以内に和服を着た回数 のグラフを引用すると上の通りです。男女ともにこの1年では和服を着ていない、ゼロ回という回答が圧倒的なんですhが、なぜか、この1年に限っては男性で和服を着た比率の方が女性よりも高くなっています。大きな謎なんですが、和服を着た意識ある男性の回答率が高かったのかもしれません。繰り返しになりますが、私も結婚式で紋付き羽織り袴を着用に及んでから、25年近くで結婚式を含めて4回、含めないと3回、すなわち、ならせば和服を着るのは数年に1度に過ぎません。まあ、平均的なのか、という気もします。

@nifty なんでも調査団では、これらのほかに、和服の似合う芸能人とか、和服のイメージなどのランキングも示していますが、いろいろあって割愛します。

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