1-2月の統計はすでに過去の数字かも-景気動向指数と景気ウォッチャーと経常収支
本日、内閣府から1月の景気動向指数と2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、景気動向指数については、CI先行指数は前月から+2.1ポイント上昇の112.4を示し、CI一致指数も+2.5ポイント上昇の116.8を記録しています。また、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.3ポイント上昇の48.9となった一方で、先行き判断DIは▲0.1ポイント低下の50.0を記録し、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+9416億円の黒字を計上しています。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
景気一致指数1月は2.5ポイント上昇、生産押し上げ3カ月ぶり改善
内閣府が9日公表した1月の景気動向指数速報(2020年=100)によると、自動車の生産・輸出好調などにより、足元の景気を示す一致指数は前月比2.5ポイント上昇の116.8で、3カ月ぶりに改善した。先行指数も同2.1ポイント上昇し112.4となり、9カ月連続で改善した。基調判断は「下げ止まりを示している」で据え置いた。
一致指数を押し上げたのは、鉱工業用生産財出荷指数と耐久消費財出荷指数、鉱工業生産指数、輸出数量指数など。国内外向け自動車生産が好調だったほか、欧州連合(EU)向け自動車輸出なども伸びた。有効求人倍率は求職者の増加で悪化し指数を押し下げた。
先行指数を押し上げたのは、鉱工業用生産財在庫率指数や日経商品指数、東証株価指数、消費者態度指数など。電子部品の出荷好調や銅価格上昇、株価最高値更新などが寄与した。一方、新規求人数は指数を押し下げた。
街角景気、2月は4カ月ぶり改善 前月比1.3ポイント上昇の48.9
内閣府が9日公表した2月の景気ウオッチャー(街角景気)調査によると現状判断DIは前月比1.3ポイント上昇の48.9となり、4カ月ぶりに改善した。基調判断は「景気は持ち直している」とした。
先行きについては「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」とした。
業界別のDIの前月比では、住宅関連が4.1ポイント、サービス関連が3.0ポイント、飲食関連が2.9ポイント改善した。小売り関連は0.6ポイントと小幅な伸びにとどまった。
企業からは「物価高騰で酒類の販売に影響が生じている」(北海道・小売店)、「値上げで単価が上がったがその価格に客が慣れてきている」(九州・衣料専門店)などの声が聴かれた。
経常収支1月は9416億円の黒字=財務省
財務省が9日発表した国際収支状況速報によると、1月の経常収支は9416億円の黒字となった。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値9600億円程度の黒字をわずかに下回った。
経常黒字は、12カ月連続。前年同月は3446億円の赤字だったが、貿易収支が赤字幅を縮小したため黒字に転化した。
貿易収支は6004億円の赤字。赤字幅は前年比2兆3336億円縮小した。
経常収支の稼ぎ頭で、海外への直接投資からの収益や海外の子会社からの配当の受け取り等からなる第1次所得収支は2兆7466億円の黒字だったが、黒字幅は前年比7824億円縮小した。
第一生命経済研究所主席エコノミストの星野卓也氏は、貿易収支は半導体・AI(人工知能)周りの輸出が持ち直しており、データセンターへの投資や需要に支えられていると指摘する。貿易赤字の縮小で改善する中、円安により所得収支が膨らむという足元のトレンドに大きく変わりはない、とみる。
一方で、中東情勢不安定化による原油市場の高騰が、4月以降経常収支に影響が出てくることを懸念する。貿易赤字が再拡大して即経常赤字とはいかなくとも、経常収支面で影響が明確に出てくる可能性がある、と同氏は指摘する。
サービス収支で日中関係冷え込みによる、中国人観光客の減少が旅行収支に与える影響に関しては、中国以外である程度カバーされており、インバウンド訪日旅行客への影響はひと頃より「中国インパクト」分散化で押さえられている、とも述べた。
長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただし、統計公表からそれほど時間をおかずに引用していますので、その後追加記事が出ている可能性があります。続いて、景気動向指数のグラフは次の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

繰返しになりますが、1月統計のCI一致指数は、前月から+2.5ポイント上昇しました。3か月ぶりの上昇となります。加えて、内閣府のプレスリリースによれば、3か月後方移動平均は+0.37ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となり、加えて、7か月後方移動平均も前月から+0.13ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となっています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、昨年2025年5月統計から「下げ止まり」に下方修正されましたが、今年2026年1月統計でも「下げ止まり」に据え置かれています。基調判断はまだ据置きながら、これらはすでに「過去の数字」と考えるべきです。先行きに関しては、私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、そもそも、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。それにもまして、米国とイスラエルによるイラン攻撃から、先行きはまったく不透明になったと考えるべきです。石油価格は指標となるWTI先物がバレル当たり100ドルを大きく突破います。東証の日経平均株価も大きく下げて、50,000円が近づいています。さらにさらにで、長期金利が2%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかです。中国は全人代で今年2026年の成長目標を引き下げたと広く報じられていますし、再び、日米同時リセッションの可能性が高まっているのかもしれません。一応、本日公表の統計のうち、CI一致指数だけ見ておくと、引用した記事にもあるように、鉱工業用生産財出荷指数と耐久消費財出荷指数がともに+0.76ポイントの寄与度、さらに、生産指数(鉱工業)も+0.37ポイントの寄与度と、引用した記事のタイトルにもあるように、生産や出荷の押上げ効果が大きくなっています。

続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では昨年2025年10月統計の48.2まで6か月連続で上昇または横ばいを記録した後、今年2026年1月統計までジワジワと低下した後、本日公表の2月統計で48.9、前月差+1.3ポイントと4か月ぶりに上昇しています。ただし、現状では緩やかな上昇の動きであり、それほど大きな動きには見えません。いずれにせよ、本日公表された統計は「過去の数字」です。米国とイスラエルによるイラン攻撃、さらに、それに起因する石油価格の上昇を考えれば、景気ウォッチャーの基調判断「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる。」というのは、やや怪しくなってきたと考えるべきです。一応、本日公表の昨年2月統計の季節調整済みの現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちでは、住宅関連が+4.1ポイント前月から上昇し、サービス関連も+3.0ポイント、飲食関連が+2.9ポイント、小売関連が+0.6ポイント、それぞれ上昇しています。企業動向関連では、製造業は先月1月統計から+1.4ポイント上昇した一方で、非製造業は▲0.9ポイント低下しています。景気判断理由の概要については、記事で引用されているほかに、内閣府の調査結果の中から近畿地方の家計動向関連に着目すると、「来客数は変わらず安定している。海外からの客も昼夜問わず、多く来店している状況に変化はない(コンビニ)。」といっインバウンドに大きな変化はない、といった見方もありました。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+9600億円の黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+1兆円余りの黒字の見込みでしたので、実績の+9400億円超の黒字はやや下振れした印象です。季節調整していない原系列の統計では、+3兆円を超える黒字を計上しています。ただし、1-2月の経常収支は季節調整していない原系列の統計はもちろん、季節調整がなされていても、旧暦で決まる中華圏の春節の日取りによって大きく変化します。ですから、季節調整以外の方法でも均して統計を見る必要があります。もっとも、何といっても、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ただ、細かな動きとしては、引用した記事に丸ように、中国との外交関係に基づくインバウンド観光客が旅行収支やひいてはサービス収支に及ぼす影響、さらに、何といっても、米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢に基づく石油価格の動向、などなど考慮すべき点はいくつかあります。いずれにせよ、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えています。



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