2024年5月27日 (月)

ピーターソン国際経済研究所(PIIP)によるトランプ候補の財政提案の分析やいかに?

先週月曜日の5月20日に、ピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics=PIIE)から "Why Trump's Tariff Proposals Would Harm Working Americans" と題する Policy Brief が明らかにされています。すなわち、米国大統領選挙に共和党の候補として出馬するトランプ候補の関税と減税の提案が低所得や中所得の層が税負担の増加を負うダメージをもたらすとの主張です。まず、引用情報は以下の通りです。

私が大雑把に読んだところ、伝統的なミクロ経済学の余剰分析、すなわち、厚生経済学の第2定理に基づく市場価格に関税が課された時の消費者余剰と生産者余剰の変化、さらに、死荷重(dead weight loss)の計測を行っています。そして、それをいくつかの所得階層別に計測するとともに、逆進的な消費者課税の提案の影響も併せて計測しています。トランプ提案は2017年税制改革法の延長、一律10%の関税率の設定、特に中国からの輸入には60%の関税率の適用などが中心として考えられています。

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まず、リポートから Figure 3 Consumption-based taxes are less progressive than other tax instruments, putting more burden on lower-income taxpayers を引用すると上の通りです。10分位所得で見ていて、もっとも所得の低い第1分位は所得の0.7%を占める一方で、ほとんどの税金の0.7%未満、給与税の0.7%、物品税/関税の1.7%を負担しています。このように間接税は逆進性があり、トランプ提案は低所得層の税負担を重くするものであると主張しています。

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続いて、リポートから Figure 5 Trump's fiscal agenda includes both regressive tax cuts and regressive tax increases を引用すると上の通りです。グラフのタイトル通り、トランプ提案は逆進的な減税と同じく逆進的な増税の両方を含んでいると分析しています。TCJAというのは、2017年税制改革法=Tax Cuts and Jobs Act のことなのですが、所得の5分位でみて、低所得層ほどネットのロスが多くなっているのが見て取れます。

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続いて、リポートから Figure 6 Trump's fiscal agenda places a greater burden on lower- and middle-income taxpayers を引用すると上の通りです。要するに、このリポートの結論となるわけで、5分位所得で見てもっとも低所得の第1分位から第4分位までは負担増となり、所得が低い方が負担が大きい、と結論しています。5分位の中でネットでプラスとなるのは、もっとも所得の高い第5分位だけと試算されています。そして、その5分位所得の中の第5分位でもプラスは+0.21%にしか過ぎない一方で、100分位で考えてもっとも裕福なトップ1%は+1.36%のプラスと結論しています。

米国大統領選挙の二大政党の候補者はほぼほぼ決まったも同じで、これからいろんな政策議論が行われると考えられます。いろんな政策課題の中で、1992年のクリントン陣営のモットーであった "It's the economy, stupid." は今でも真実なのではなかろうか、と私は考えています。

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2024年5月26日 (日)

2枚看板のクローザー2人がともに失点して巨人に惜敗

  RHE
読  売0000000011 2100
阪  神0000001000 150

終盤に失点して、ジャイアンツに惜敗でした。
序盤から中盤までは緊迫した投手戦で、今日もノーヒットノーランされるのか、という危機感すらありましたが、ラッキーセブンの集中打で1点をもぎ取ります。そして、終盤8-9回はゲラ投手と岩崎投手が登場です。しかし、この2枚看板のクローザーのゲラ投手と岩崎投手がともに失点しては勝てません。

今週から始まる交流戦も、
がんばれタイガース!

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2024年5月25日 (土)

ノーヒットノーランの翌日は完封リレーでジャイアンツにリベンジ

  RHE
読  売000000000 041
阪  神01011000x 381

先発のビーズリー投手が6回まで3安打無失点で抑え、7回から強力リリーフ陣が繰り出され、ジャイアンツに快勝でした。昨夜のノーヒットノーランのリベンジです。
序盤の1回ウラに3番森下選手と4番大山選手が相次いでヒットを放ち、昨夜の嫌なイメージを払拭した後、2回には木浪選手のタイムリー、4回には先発5番サードに入った渡邉選手のソロホームラン、5回にも森下選手のタイムリーで着々と加点し、投げては完封リレーでした。それにしても、3連戦の初戦を落としては続く2戦を取ってのカード勝ち越しが続いています。その昔のプロレス3本勝負を思い出してしまいました。

明日の交流戦前最後のゲームも、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書と歴史書に新書を合わせて計6冊

今週の読書感想文は以下の通り計6冊です。
まず、エドワード・チャンセラー『金利』(日本経済新聞出版)は、どこかで見たような低金利批判のオンパレードです。クィン・スロボディアン『グローバリスト』(白水社)は、シカゴ学派ではなくジュネーブ学派のハイエクなどに新自由主義=ネオリベの源流を求めた歴史書です。堤未果『国民の違和感は9割正しい』(PHP新書)では、能登半島地震の復興策や自民党のパーティー券収入の裏金などに関して、国民の違和感を正しく評価しています。雨宮処凛『死なないノウハウ』(光文社新書)は、格差が広がり貧困が蔓延する日本社会で、生死を分けかねない社会保障などの重要な情報を収録しています。柯隆『中国不動産バブル』(文春新書)は、中国のバブルはすでに崩壊したと指摘し、中国バブルの発生と進行を後づけています。寺西貞弘『道鏡』(ちくま新書)は、日本史上の悪僧として名高い道鏡について、巷間のウワサの域を出ない物語を否定し、その実像に迫ろうと試みています。
ということで、今年の新刊書読書は1~4月に103冊の後、5月に入って先週までに19冊をレビューし、今週ポストする6冊を合わせて128冊となります。順次、Facebookやmixiなどでシェアする予定です。なお、経済書ということで冒頭に取り上げた『金利』はすでにAmazonでレビューしており、現時点では私しかレビューを掲載していないようです。誠に申し訳ないながら、2ツ星の評価としておきました。

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まず、エドワード・チャンセラー『金利』(日本経済新聞出版)を読みました。著者は、金融史研究者、金融ジャーナリスト、ストラテジストと紹介されています。英語の原題は The Price of Time であり、2022年の出版です。本書は三部構成であり、金利の歴史、低金利の分析、ビー玉ゲームとなっています。日本経済新聞らしく、本書の一貫したテーマは低金利に対する批判です。第Ⅰ部は金利の歴史をなぞっていて、第Ⅱ部が本書の中心的な部分と考えるべきです。そして、この第Ⅱ部で極めて執拗な低金利及び低金利政策に対する批判が加えられています。おそらく、本書のタイトルからして、金利とは時間の価格であり、一般的に正の時間割引率を前提とするのであれば金利はそれ相応の水準になければならない、ということのようです。歴史的に、自然利子率の考えは、名称ではなく、考えは、17世紀のロックの時代までさかのぼることが出来ると指摘しつつ、しかしながら、20世紀のケインズ卿は自然利子率が完全雇用を保証するとは限らない、しかも、利子率の水準よりも雇用のほうが重要、という価値判断から金利を低く抑えて完全雇用を達成するための政策手段のひとつとして利用しようとします。私はこのケインズ卿の理論は完全に正しいと考えていますが、本書ではこういった考えに基づく低金利が攻撃の槍玉に上げられています。繰り返しになりますが、それが第Ⅱ部の主たる内容です。まず、グッドハートの法則を持ち出して、金融政策の操作目標が金利になると不都合を生じる可能性を示唆します。後はどこかで見たような主張の羅列となります。ゾンビ企業が淘汰されずに生き残ってしまって非効率が生じ、当然のようにバブルが発生してしまうと主張します。バブルは生産活動に従事しなくても所得を得る可能性を生じさせて経済の生産性を低下させるわけです。もちろん、低金利では社会保障基金の収入が低下しますので、第13章のタイトルは「あなたのお母さんは亡くならなくてはいけません」になるわけです。でも、マリー・アントワネットではないのですから信用を食べて生きていけるわけではない、という結論です。最後の第Ⅲ部では金融抑圧や中国の例が持ち出されて、低金利批判が繰り返されます。要するに、低金利が原因となって非効率や低成長といった結果をもたらすという主張なのですが、整合性を欠くことに、時間の価格としての金利を想定していますので、時間が経過しても生産が増加せずに結果として低金利に帰着する、という因果関係は無視されています。私は、金利と生産性のは双方向の因果関係、というか、もはや因果関係とは呼べないような相互のインタラクションがあるのではないかと考えていますが、本書ではそうではなく、低金利がすべて悪い、という主張のようです。しかも、しばしば言及されているのは国際決済銀行(BIS)のチーフエコノミストだったホワイト局長とか、ボリオ局長です。ややバイアスあるエコノミストという気がしないでもありません。ただ、出版されてほぼ1か月を経過し、アマゾンのレビューの第1号が私のもののようですが、日経新聞が利上げを強硬に強力に主張し、日銀が3月に利上げを開始したところですから、ある意味で、タイムリーな出版ともいえます。それなりの注目を集める可能性があります。でも、それほど大した内容ではありませんし、間違っている部分も少なくないと私は考えています。

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次に、クィン・スロボディアン『グローバリスト』(白水社)を読みました。著者は、カナダ生れの歴史学者であり、現在は米国ボストン大学の研究者です。ご専門はドイツ史や国際関係史だそうです。ですので、p.20では「本書の物語は、中欧からみたネオリベラルなグローバリズムのビジョンを提示する。」と宣言しています。そうです、ネオリベといえば英米が中心、しかも、フリードマン教授やスティグラー教授などの米国のシカゴ学派が拠点と考えられがちですが、本書ではシカゴ学派ではなく中欧のジュネーブ学派、ミーゼスやハイエクなどのエコノミストを念頭に置きつつ、1920年代から現在までのほぼ100年に及ぶネオリベラルな政治経済史を明らかにしようと試みています。そして、私はエコノミストですので、1980年前後から英国のサッチャー内閣、米国のレーガン政権、あるいは、モノによっては我が国の中曽根内閣などのネオリベな経済政策が頭に浮かびますが、そういったネオリベな経済政策、国営や公営企業の民営化や規制緩和などはほとんど言及されていません。そうではなく、もっと政治経済学的な帝国、特に、ハプスブルグ帝国やその末裔、また、帝国の後を引くような国民国家(インぺリウム)と世界経済(ドミニウム)を融合させる連邦を理想とした政治家たちを取り上げて、制度設計を中心に据えるネオリベラルの歴史をひもといています。特に、英米や日本といった先進国もさることながら、途上国にも自由貿易を理想として示したり、あるいは、21世紀になって「ワシントン・コンセンサス」とやや揶揄されかねない呼称を与えられた経済政策を旗印にした国際機関にも注目しています。ここでも、ジュネーブ学派が国民国家における民主的な議会制度などではなく、超然とした存在の国際機関をテコにしたネオリベラリズムを志向していた可能性が示唆されます。他方で、一国主義的な自由や民主主義はグローバリズムによる制約を受ける可能性、というか、グローンバリズムが一国内の民主的な制度を超越しかねないリスクもありえます。私は、今世紀初頭にインドネシアの首都ジャカルタで国際協力の活動に参加して、1990年代終わりの国際通貨危機の後始末もあって、ワシントン・コンセンサスに基づくネオリベなIMF路線が蛇蝎のように嫌われていながらも、受け入れて救済を受けるしかない国民の不満を目の当たりに見ましたし、韓国でも同じような状況であったと聞き及びました。ただ、それでは国内に重点を置けばいいのかというと、ポピュリスト政権、例えば、米国のトランプ政権のような方向性が望ましいのかといえば、もちろん、そうでもありません。ネオリベな格差の是認や貧困の放置は、少なくとも日本では極限に達していますが、それだけではなく、ネオリベラリズムの国際的な側面、歴史的な成立ちを解き明かそうとする真摯なヒストリアンの試みの書といえます。

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次に、堤未果『国民の違和感は9割正しい』(PHP新書)を読みました。著者は、国際ジャーナリストであり、私はこの著者の新書は『デジタル・ファシズム』、『堤未果のショック・ドクトリン』ほかを読んでレビューしています。5章構成となっていて、第1章では、災害の違和感として、災害時、特に今回の能登半島地震などに見られる棄民の実態、あるいは、地方政府などの提供するインフラの切売りを取り上げています。第2章では戦争と平和を取り上げて、ガザやウクライナにおける戦争や防衛費増額の疑問に焦点を当てています。第3章では農業と食料を取り上げ、第4章ではパーティー券収入の裏金問題をはじめとする情報操作に注目し、第5章ではこれらの違和感に対する対応につき議論を展開しています。ということで、特に、官庁エコノミストとして長らく官庁に勤務した私の目から見て、やっぱり、パソナや電通をはじめとする民間企業に政府のなすべき公務を丸投げして大儲けさせている実態には唖然とするしかありません。水道インフラを外国企業に売り渡す地方自治体があったり、農家を立ち行かなくする制度を作った上で農地を海外投資家に売るように仕向けたりといった形で、なんとも日本の国益に沿った政治がなされているのかと疑問に感じるような政策が次々と実行されています。加えて、貿易費調達のためにNTTの通信インフラを売りに出したり、無理ゲーのマイナカードの普及を図ったりと、国民生活を中心に据えた政策ではなく、政治家や一部の政治家に癒着した企業が儲かるだけの違和感タップリの政策をここまで堂々と推し進められてはかないません。しかし、他方で、メディアの劣化もはなはだしく、災害報道や芸能ニュース、はたまた、実にタイミングよく飛び出す北朝鮮のミサイル発射など、国民の耳をふさぎ真実を伝えない報道も本書では明らかにされています。本書では取り上げられていませんが、私は最近の民法改正の目玉であった「共同親権」については大きな疑問を持っていますが、メディアでは法案が成立した後になって報道し始め、一部に批判的な専門家を取材したりして、それでもってお茶を濁すような姿勢が明らかです。メディアがここまで政府の提灯持ちとなって劣化していますので、本書の最終章でも「選挙で政権交代」といった解決策は提示されていません。そうです。私も現在の日本でホントに選挙で政権交代が出来るとは思っていませんし、その意味で、日本は中国やロシアの独裁政権に似通った部分がある可能性を憂慮しています。かといって、武力革命なんて選挙による政権交代よりも10ケタ以上可能性が低いことは衆目の一致するところです。このままでは、米国ハーバード大学のエリカ・チェノウェス教授の『市民的抵抗』で取り上げられている3.5%ルールに望みをかけるしかないのか、という悲観論者になってしまいそうです。

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次に、雨宮処凛『死なないノウハウ』(光文社新書)を読みました。著者は、反貧困や格差への抵抗を旗印にした作家・活動家です。本書は、タイトルこそおどろおどろしい印象なのですが、実は、困ったときのマニュアルといえます。もちろん、何に困るかにもよりますが、表紙画像にあるように金欠問題を取り上げた第1章のお金始まって、第2章では仕事、第3章で親の介護、第4章で健康、第5章で相続などの近親間でのトラブル、最後の第6章で、これも表紙にある散骨を含む死を取り上げています。私はカミサンとともに両親ともすでに死んでいて、現時点で親の介護の必要はないものと想定していますが、その他のお金にまつわる問題点についても、何とか大問題と考えずに済むような状態にあります。仕事も60歳で公務員の定年を、65歳で大学教員の定年を、もう2度の定年を超えて退職後再雇用の状態にありますから、それほど心配はしていません。ただ、もう60代半ばですから健康についてはこれから悪化していくことが明らかであり、何かで見たように「死と税金ほど確かなものはない」というブラックジョークにあるように、いつかは不明であるとしても、そのうちに死ぬことは確かです。その意味で、自分自身の身に引きつけての読書ではありませんでしたが、日本の経済社会一般の格差や貧困を考慮しての必要とされる一般教養として、とても勉強になります、本書の序章では必要な情報を持っているかどうかで生死を分けかねないと指摘していますし、それを持ってタイトルとしているわけですが、まったくその通りです。本書の位置づけは、決して、より豊かに、あるいは、楽をして暮らすためのマニュアルではなく、生死を分ける境目で役に立つ情報を収録していると考えるべきです。本書の評価としてはとても素晴らしいのですが、本書で取り上げている生命を維持し、健康を保つなどのために必要な実効上の日本の福祉制度などの評価は何ともいえません。ただ、「ないよりまし」な制度もあり、本書では、それでも死を避けるためには有益、という評価なのだろうと思いますが、もう少し有益なものにする努力も中央・地方政府に求めるべきではなかろうか、というものも散見されます。最後に、こういった本が出版されるのは、本書でも指摘しているように、特に地方政府に総合的なワンストップの窓口がないことによります。そこまで含めた見直しが必要かもしれませんし、そもそも、こういった情報が本に取りまとめられて売り物になる日本の現状を憂える人も少なくないものと想像します。私もこういった情報本がなくても死なない日本を構築する必要を痛感します。それにしても、入居金6000万円の高級老人ホームのコラムは嫌味でした。

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次に、柯隆『中国不動産バブル』(文春新書)を読みました。著者は、長銀総研や富士通総研の勤務の後、現在は東京財団の主席研究員だそうです。アカデミックな大学などではなく民間シンクタンクのご経験が豊富なようです。本書では、タイトルのとおりに中国のバブルについて論じています。ただ、本書冒頭で指摘しているように、すでに中国のバブルは崩壊したと著者は考えているようです。2021年の恒大集団(エバーグランデ)のデフォルトがバブル崩壊の幕を開け、昨年2023年10月には碧桂園(カントリーガーデン)がオフショア債の利払いを延滞しています。この2社は不動産開発会社=デベロッパーですが、今年2024年1月には不動産関連案件に投資するシャドーバンキング大手の中植企業集団が破産を申請しており、これらをもって中国のバブル崩壊と見なすべきであるという見解です。また、バブル崩壊の要因は2点あり、第1は、習近平主席が「家は住むためのものであり、投機の対象ではない」と発言したことから人民銀行が住宅ローンへの規制を強化したことであり、第2に、ゼロコロナ政策によるコロナ禍の中での需要の減退、と指摘しています。もう中国バブルはすでに崩壊したのか、といぶかる向きがあるかもしれませんが、我が国でも、現在から見れば1991年2月には景気の山を迎えていた一方で、その後もしばらく認知ラグが発生してバブル崩壊が認識されなかったことは歴史的事実です。私は1991年3月から南米チリの日本大使館での勤務を始めましたが、バブルの象徴という人もいる「ジュリアナ東京」は私の離日直後の1991年5月にオープンし、私が帰国した1995年4月の直後の1994年8月に閉店しています。ほぼ私の海外生活の時期と重なっていて、私が帰国した時にはバブルがすでに崩壊していたのは明らかでしたから、私はジュリアナ東京に足を運ぶ機会はありませんでした。それはともかく、本書では中国のバブルの発生と進行について詳細に報告しています。基本的に、日本の1980年代後半のバブル経済や米国の2000年代半ばのサブプライムバブルと同じで土地や不動産を起点にするバブルであると結論しています。ただし、中国は土地国有制ですので、土地使用権に基礎を置くバブルであり、したがって、地方政府が収入を得るタイプのバブルであったと見なしています。すなわち、不動産開発に基礎を置くバブルにより、地方政府が正規と非正規の収入を得るとともに、住宅開発の面からは地域住民の利益になる部分もあった、ということです。日本では地方政府はそれほどバブルの「恩恵」は受けていないように思います。また、地方政府が非正規の収入を得たというのは、政府、というよりも政府で働く公務員がワイロを、しか、お、莫大な学のワイロを受け取った、という意味です。不動産開発会社=デベロッパーが大儲けし、そこに融資したシャドーバンクも同様です。日本のバブルと少し違う点が3点ほど私の印象に残りました。第1に、中国人の家に対する執着です。まず家を用意した上で結婚を考える、ということのようです。日本ほど賃貸住宅の発達が見られないのかもしれません。第2に、地方政府の公務員に対するワイロです。とても巨額のワイロが平気でまかり通っているのが不思議でした。第3に、本書では第7章の最後に、バブルは崩壊したものの、情報統制で金融危機が防げる可能性が指摘されていると同時に、第9章ではコロナ禍によりすでに「恐慌」に入っている可能性も示唆されています。ここの理解ははかどりませんでした。何といっても、バブル崩壊はその後の金融危機、特に、大規模な不良債権の発生で金融システムのダメージが大きいことが経済への大きな影響につながりますから、金融危機を防止できればひょっとしたら大きな影響は避けられるのかもしれません。同時に、強烈なゼロコロナ政策により経済が不況に陥っている可能性も無視できません。バブル崩壊は大きなインパクトないが、ゼロコロナ政策のために不況に陥っている可能性がある、ということでしょうか。でも、やっぱり、少し不思議な気がします。

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次に、寺西貞弘『道鏡』(ちくま新書)を読みました。著者は、和歌山市立博物館の元館長さんです。本書では、日本史上稀代の悪僧と見なされている道鏡について確実と考えられる史料から、その実像の解明を試みています。まず、道鏡が太政大臣禅師の地位に就いたのが、重祚前は孝謙天皇と呼ばれていた称徳女帝と同衾しその性的な能力や魅力に基づく、とする淫猥伝説は一刀両断の下に否定されています。すなわいち、8世紀後半のこういった太政大臣禅師就任などの政治動向について、性的な能力によるとする淫猥伝説が現れたのが数百年も時代を下った『水鏡』、『日本紀略』、『古事談』などであることから、何ら信頼性がない俗説であると結論しています。加えて、称徳女帝は未婚のまま践祚し次の男帝までのつなぎの位置づけであったことが明らかであり、その点は周囲もご本人も十分に認識していたハズ、と示唆しています。まあ、そうなのだろうと私も思います。そして、道鏡の出自を明らかにし、出家と受戒についても考察した後、道鏡がいかにして称徳女帝の信頼を勝ち得たのかについては、当時の仏教界の状態や影響力に基づいた議論を展開しています。繰り返しになりますが、道鏡が活動していたのは8世紀後半であり、高く評価していた称徳女帝の父は東大寺建立で有名な聖武天皇、そして、次代はやや無名の光仁天皇ですが、さらにその次代が桓武天皇ですから平安遷都の直前といえます。その時代の仏教はいわゆる「鎮護国家」であって、僧侶は今でいえば国家公務員です。国家の安泰を目指すとともに、本書では医者の役目など一般国民に対する呪術的な役割も果たしていた、と指摘しています。しかも、平安期に入って空海や最澄などが世界の大先進国であった当時の中国から最新の密教を持ち帰る前の時代ですので、日本の伝統的な呪術信仰と仏教が入り混じった宗教であった可能性を本書では示唆しています。現在、というよりも、数百年後の日本ですら記憶が薄れた呪術的な仏教、国家を鎮護するとともに、病気の平癒を祈念するとかの幅広い効用を仏教に求めていたため、その方面で道鏡は称徳女帝から過大評価を受けていた可能性があるとの意見です。ですから、道鏡からの求めや働きかけ、というよりも、称徳女帝からの一方的な過大評価かもしれない、というわけです。このあたりの本書の見方は、私には何とも評価できませんが、まあ、あり得るのだろうと受け止めています。奈良時代末期の歴史をひもとくいい読書でした。

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2024年5月24日 (金)

+2.2%と上昇率が縮小した消費者物価指数(CPI)の先行きをどう見るか?

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.2%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は22か月連続、すなわち、2年あまりの連続です。ヘッドライン上昇率は+2.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.4%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4月の消費者物価2.2%上昇、エネルギー上昇に転じる
総務省が24日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.1となり、前年同月比で2.2%上昇した。エネルギーが上昇に転じ全体を押し上げた。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.2%の上昇だった。2年8カ月連続で前年同月を上回った。伸びは前の月の2.6%から縮小したものの、日銀の物価安定目標である2%を超える上昇が続いている。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.4%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.5%上昇した。
エネルギーは0.1%上がり、前月の0.6%下落から上昇に転じた。プラスに転じたのは2023年1月以来、1年3カ月ぶりとなる。
資源価格の上昇や円安が影響し、ガソリン価格の上昇が加速したほか、都市ガス代のマイナス幅が縮まった。
5月以降は光熱費の上昇が加速しそうだ。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている「再生可能エネルギー賦課金」の上げが5月の電気代に反映される。物価高対策として進めてきた電気代やガス代を補助する事業は5月使用分で終了する。中東情勢の悪化や円安も上昇圧力となる。
4月の結果について他の品目をみると生鮮野菜・果物の上昇が目立った。キャベツが39.4%、リンゴが37.6%それぞれ上がった。天候不良で出荷量が減少し品薄になったことが影響した。
果実ジュースは28.9%上昇した。オレンジジュース果汁の主要原産国であるブラジルや米国で、天候不良による不作や病害の影響で需給が逼迫した。
生鮮食品を除く食料は3.5%上昇だった。8カ月連続で上昇幅が縮小した。アイスクリームや冷凍ギョーザ、チョコレートなど昨年4月にあった値上げの影響がはく落した。
宿泊料は18.8%伸びた。3月の27.7%からは上昇幅が縮小した。前年4月には全国旅行支援の影響縮小などで宿泊費が大きく伸びていた。今年4月はその反動が出た。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.2%ということでしたので、まさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、3月統計では前年同月比で▲0.6%まで下落幅が縮小し、本日発表された4月統計ではとうとう+0.1%と上昇に転じました。ヘッドライン上昇率に対する寄与度はまだ+0.01%なのですが、先月3月統計では▲0.04%でしたので、先月との寄与度差を見ると+0.05%押し上げたことになります。ガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は3月統計では+4.3%、本日公表された4月統計でも+4.4%と、ともにヘッドライン上昇率に対する寄与度は+0.09%となっています。
現在のインフレの主役である食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.38%あり、うち生鮮野菜が+0.26%、生鮮果物が+0.14%の寄与をそれぞれ示しています。生鮮食品を除く食料の寄与度が+0.83%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、せんべいなどの菓子類が+0.15%、調理カレーなどの調理食品が+0.13%、うるち米などの穀類が+0.12%、焼肉などの外食が+0.10%、鶏卵は下がったものの牛乳など上昇した乳卵類が+0.09%、などなどとなっています。サービスでは、宿泊料が前年同月比で+18.8%上昇し、寄与度も+0.19%に達しています。
消費者物価指数(CPI)の先行きに関しては、コアCPIの前年同月比上昇率で見て、3月の+2.6%から4月統計では+2.2%に縮小しましたが、先行き、順調に物価上昇率が沈静化していくとは考えられていません。特に、エネルギーの価格が上昇に転じており、さらに、5月から再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価が、経済産業省の発表によれば1kw当たり3.49円と大幅に引き上げられます。それまでは1.4円でしたので、大幅な引上げといえます。したがって、日経新聞の報道では、「標準家庭で月836円負担増」があると報じられており、国民生活を直撃するとともに、食料に加えてエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。日銀は金利上昇をどこまで許容するのでしょうか?

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2024年5月23日 (木)

気候変動のマクロ経済への影響はかなり深刻

全米経済研究所(NBER)からワーキングペーパー No.32450 として、気候変動のマクロ経済への影響を分析した "The Macroeconomic Impact of Climate Change: Global vs. Local Temperature" が明らかにされています。もちろん、pdfファイルもアップロードされています。引用情報は以下の通りです。

まず、このワーキングペーパーのAbstractをNBERのサイトから引用すると以下の通りです。

Abstract
This paper estimates that the macroeconomic damages from climate change are six times larger than previously thought. We exploit natural variability in global temperature and rely on time-series variation. A 1℃ increase in global temperature leads to a 12% decline in world GDP. Global temperature shocks correlate much more strongly with extreme climatic events than the country-level temperature shocks commonly used in the panel literature, explaining why our estimate is substantially larger. We use our reduced-form evidence to estimate structural damage functions in a standard neoclassical growth model. Our results imply a Social Cost of Carbon of $1,056 per ton of carbon dioxide. A business-as-usual warming scenario leads to a present value welfare loss of 31%. Both are multiple orders of magnitude above previous estimates and imply that unilateral decarbonization policy is cost-effective for large countries such as the United States.

ごく簡単に取り上げておきたいと思いますが、まず、ワーキングペーパー p.18 Figure 5: The Average Effect of Global Temperature Shocks を引用すると下の通りです。

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要するに、Abstractにもある通り、気候変動により地球の温度が+1℃上昇すれば、世界GDPが▲12%減少する "A 1℃ increase in global temperature leads to a 12% decline in world GDP." と試算されています。従来考えられていたよりも、6倍大きいと指摘しています。逆にいえば、世界GDPの12%を地球温度+1℃上昇の防止策に注ぎ込んでも経済的には釣り合う、ということです。この試算結果は少し私も驚きました。

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なお、この気候ショックの地域的な影響を試算した結果について、ワーキングペーパー p.28 から Figure 12: Regional Impacts of Global Temperature Shocks を引用すると上の通りです。少し違和感ありながらもショックだったのは、右上の Central and East Asia と左下の Southeast Asia が真逆の影響と試算されている点です。おそらくは中国を含む Central and East Asia が気候変動からGDPが上振れする影響を受ける一方で、逆に、Southeast Asia ではひときわダメージが大きいと試算されています。それほど蓋然性が高いとは思えませんが、この研究成果を見て、中国が気候変動対策に reluctant になってしまうリスクを感じないでもありません。

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2024年5月22日 (水)

2か月ぶりの赤字を記録した4月の貿易統計と基調判断が上方修正された3月の機械受注をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注統計の結果が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+8.3%増の8兆9807億円に対して、輸入額は+8.3%増の9兆4432億円、差引き貿易収支は▲4625億円の赤字を記録しています。機械受注については、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+2.9%増の9130億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

4月の貿易収支、4625億円の赤字 2カ月ぶり
財務省が22日発表した4月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4625億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶり。赤字幅は前年同月に比べて7.6%増加した。
輸入額は9兆4432億円で前年同月に比べ8.3%増えた。2カ月ぶりに増加した。輸出額は8兆9807億円と8.3%増え、5カ月連続の増加となった。いずれも4月としては過去最高だった。
資源高や円安で原油などの輸入額が膨らんだ。品目別にみると原油は1兆64億円で13.1%増えた。航空機類や電算機類も伸びた。石炭が4003億円で22.5%減だった。
原油はドル建て価格が1バレルあたり85.7ドルと前年同月から2.6%上がった。円建て価格は1キロリットルあたり8万1719円と17.7%上昇した。
地域別では米国が1兆1143億円で29.0%増、アジアが4兆4081億円で10.3%増えた。
輸出は米国向けのハイブリッド車など自動車が1兆5824億円で17.8%増加した。半導体等製造装置や半導体等電子部品も増えた。
地域別にみると米国が1兆8027億円で8.8%増、アジアが4兆7139億円で9.7%増だった。
4月の貿易収支は季節調整値でみると5607億円の赤字となった。赤字幅は前月比17.8%縮小した。輸入は0.5%減の9兆4032億円、輸出が0.9%増の8兆8425億円だった。
機械受注、4四半期ぶりプラス 1-3月4.4%増
内閣府が22日発表した1~3月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比4.4%増の2兆6236億円だった。プラスは4四半期ぶりとなる。製造業、非製造業ともに発注が増えた。
船舶と電力を除く非製造業は6.8%増で2四半期連続のプラスを確保した。製造業も0.9%増で3四半期ぶりに増加した。
内閣府は全体の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。2月までの判断は「足元は弱含んでいる」だった。上方修正は2022年4月以来、1年11カ月ぶりとなる。
発注した業種ごとにみると船舶と電力を除く非製造業では、鉄道車両が押し上げて運輸業・郵便業が7.1%増えた。汎用コンピューターなどの電子計算機が増えて情報サービス業も11.0%プラスだった。
製造業では「電気機械」が27.7%プラスだった。汎用コンピューターや半導体製造装置などが増えた。「情報通信機械」は53.7%、「その他輸送用機械」は22.1%それぞれ増加した。
3月末時点の4~6月期の受注額見通しは前期比1.6%減だった。見込み通りなら2四半期ぶりのマイナスとなる。製造業、非製造業ともに減少する。
見通しは企業から聞き取った受注額に、実績を見通しで割った「達成率」を直近の3四半期で平均した数値をかけて算出する。足元の達成率の平均は93.4%だった。単純に企業から聞き取った受注額では、4~6月期の見通しは前期比5.3%増える見通しだ。
同日発表した3月単月の民需は前月比2.9%増の9130億円だった。2カ月連続のプラスとなる。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は1.6%減だった。

長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲3000億円を超える貿易赤字が見込まれていましたので、実績の▲4625億円はやや下振れした印象です。ただし、引用した記事の最後のパラにあるように、季節調整済みの系列で見ると、輸出が前月比で増加した一方で、輸入は減少していて、結果として貿易収支赤字は前月3月統計から縮小しています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。そして、私の知る限り、少なくないエコノミストは貿易赤字は縮小、ないし、黒字化に向かうと考えているんではないかと受け止めています。
4月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が再び2ケタ増となっています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲3.9%減ながら、金額ベースでは+13.1%増となっています。数量ベースの減少以上に単価が上昇した結果、輸入額が増加しているわけです。引用した記事の4パラ目にある通りです。しかし、LNGについては、数量ベースでは+16.7%増、金額ベースでも+12.5%増となっています。数量の伸びほどは金額が増えていませんから、単価が下がっていることがうかがわれます。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では+9.5%増、金額ベースでも+3.0%増となっていて、数量ベースのトン数ほどに金額が伸びていないのは単価の低下が背景となっていると考えるべきです。引用した記事にみられる航空機類は前年同月比+293.7%増となっていて、何か特殊要因があったことが伺われます。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で見て、数量ベースの輸出台数は▲5.8%減ながら、金額ベースでは+26.0%増と大きく伸びており、円安による価格上昇があったものと想像しています。すなわち、外貨建て、例えば、米ドル建ての価格が大きく変更ないならば円建ての輸出単価は膨らむわけです。自動車を含む輸送機械が金額ベースの前年同月比で+25.5%増であるのに対して、一般機械は+1.3%増、電気機器も+0.1%増とそれほどの伸びはみられません。

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まず、引用した記事の最後にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比マイナスでしたが、実績はプラスとなっています。予想レンジの上限は+5.0%増でしたので、実績の+2.9%増はそれほどの大きなサプライズではなかった気がします。しかしながら、今年2024年1~3月期の四半期データには影響大きく、季節調整済みのコア機械受注の系列で見て前期比+4.4%増の2兆6236億円となり、4四半期ぶりの前期比プラスを記録しています。したがって、というか、何というか、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正しています。ただ、先行きが問題ないわけではなく不安が残っています。すなわち、コア機械受注の4~6月期の見通しは前期比で▲1.6%減の2兆5,810億円であり、製造業▲2.0%減、非製造業(除く船舶・電力)▲4.0%減といずれも減少すると見込まれています。ついでながら、グラフは示しませんが、四半期データでコア機械受注の達成率を見ると2023年7~9月期95.0%、10~12月期93.1%、そして、今年2024年1~3月期92.1%とジワジワと低下してきています。エコノミストの経験則として、この達成率が90%を下回ると景気後退局面入りのシグナル、と見なす向きもあります。何度も繰り返していますが、景気回復局面もかなり後半の部ですので、欧米先進国がソフトランディングに成功するとしても、中国の景気、あるいは、国内要因から景気局面が転換する可能性があります。

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2024年5月21日 (火)

日本の低所得家計の負担率を国際比較する

先週金曜日5月17日、NIRA総合研究開発機構から勤労者世帯の負担と給付の国際比較について、「勤労者世帯の負担と給付の国際比較」と題するワーキングペーパーにより明らかにされています。もちろん、pdfファイルもアップロードされています。引用情報は以下の通りです。

まず、ワーキングペーパーの概要をNIRA総合研究開発機構のサイトから引用すると以下の通りです。

概要
家計にどれほどの税や社会保険料の負担がかかり、手当などの給付を受けられるのか、ということは、人々の大きな関心事であり、その制度設計は政策的に非常に重要である。しかし、税制・給付制度は複雑で全体像を把握しづらく、また、他国の情報を参考にすることも容易ではない。本稿では、OECDが各国の政策・制度の内容を収集して構築したOECD tax-benefit model (TaxBEN) を用いて、勤労者世帯における収入と純負担の関係を分析し、国際比較を踏まえながら日本の特徴を整理した。モデル世帯アプローチ (hypothetical family approach) に基づき2022年のデータでシミュレーションしたところ、以前から指摘されるように、日本は低中所得層において収入に占める社会保険料の負担割合が高いことが確認された。また、諸外国と比べると、日本は負担率全体の累進度が低く、高所得層ほど相対的に負担率が低くなることがわかった。この傾向は子どもの有無にかかわらず観察された。さらに、収入が児童手当の所得制限や所得上限を超えるところで負担率が上がる段差があることや、配偶者の働き方によって世帯の負担率が異なることも検証した。不公正な仕組みを是正し、税と社会保険を一体的に改革する必要性が示唆される。

実に、上に引用した概要にある通り、「諸外国と比べると、日本は負担率全体の累進度が低く、高所得層ほど相対的に負担率が低くなる」ことが確認されています。極めて直接的にこれを表したテーブルは以下の通りです。

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上のテーブルは、ワーキングペーパー p.14 から 表8 共働き世帯の負担率 (日本と主要9カ国、2022年) を引用しています。少し判りにくいのですが、共働き世帯の世帯総収入70%のやや低所得の家計、100%平均的な家計、そして、200%の高所得家計の3ケースについて、OECD平均及び主要9か国と比較しています。累進度が低くて高所得家計ほど相対的に負担が低くなる、というすでに指摘した点とともに、子供がいない方が負担が大きい点も見逃すべきではありません。このワーキングペーパーでは負担とともに給付の試算も同時にしていて、子供がいなければ給付が大きく減りますので、子供がいない家計の方の負担率が高くなるのは当然といえば当然なのですが、岸田内閣が掲げる異次元の少子化対策の財源を考える上で議論になる可能性があると私は受け止めています。

先日、第一生命経済研究所のリポート「賃金と物価の好循環の幻想」を取り上げて、日本では国民負担率がほかの先進国と比較して大きく増加していて、賃上げにより所得が伸びても消費への影響が小さい可能性がある、との議論を示しました。まさに、政府の外郭団体の研究成果により実証的に裏付けられた形です。

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2024年5月20日 (月)

リクルートのコラム「『熱意』は仕事に必要か?」を読む

先週月曜日5月13日にリクルートによるコラム「『熱意』は仕事に必要か?」を読みました。伝統的に、マイクロな経済学では労働は不効用であり、その不効用を補償(compensate)するために賃金が支払われる、と考えます。ただ、そうはいっても所得を得るために労働は必要なわけですし、ひるがえって、労働に何らかの正の効用を見出す個人も少なくありません。

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まず、リクルートのサイトから、伝統的なマイクロ経済学に即して「仕事とはそもそもつらいものであり、そこに楽しさを見出すことは困難だ」に対する回答の結果を引用すると上の通りです。それなりに左右対称の分布を見せています。伝統的な経済学からすれば、圧倒的に「そう思う」が多いとみなされるのですが、まあ、そうはなっていません。ただ、少なくとも、楽しくはないとしても、もしも、苦痛の程度がはなはだしければ労働を継続することが難しくなりますので、そこそこのレベルでの「つらさ」が経済学でも暗黙のうちに前提されている、と考えるべきです。まあ、ケース・バイ・ケースなんだろうと思います。

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そのケース・バイ・ケースで考えるべきポイントは、いうまでもなく、仕事に対するエンゲージメント=「熱意」です。ということで、上の画像は、エンゲージメントとパフォーマンスの関係認識に基づく就業者のタイプ を考えています。縦軸は、仕事におけるエンゲージメントとパフォーマンスがリンクするかどうか、横軸は、仕事におけるパフォーマンスの高さそのもの、です。私が考えるに、縦軸はエンゲージメントとパフォーマンスのリンクよりも、エンゲージメントの強さ/高さそのものと同じではないか、あるいは、エンゲージメントをダイレクトに取った方がいいのではないか、と受け止めているのですが、まあ、それなりに、コンサルらしい判りやすい画像かという気がします。

2点ほどコメントしておきたいと思います。まず、私自身ですが、典型的な「仙人」だと思います。合理的な経済人らしく、仕事はかなりの程度に苦痛です。しかも、出来の悪いことはなはだしく、周囲に迷惑をかけている気がします。エンゲージメント=熱意は低くて、パフォーマンスは悪いわけです。ただ、第2に、この分析では絶対優位だけが考慮されていて、比較優位の観点が無視されています。おそらく、私は絶対優位の観点からは、エンゲージメントが低くて、パフォーマンスも悪いんでしょうが、比較優位の観点からは、公務員/大学教員に適している、というか、ほかの職業にはより適していないのではないか、という気もします。

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2024年5月19日 (日)

リリーフ投手陣の差を見せつけてヤクルトに大勝

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阪  神02020003x 7110

先発の才木投手が先制点を奪われながら、ヤクルトに逆転勝ちでした。リリーフ投手陣の差を見せつけた形です。
序盤の1回に才木投手が先制を許しますが、2回には下位打線で同点に追いつき、中盤4回には才木投手がフォアボールを選んで逆転、近本選手のタイムリーも飛び出します。終盤8回には満塁男の木浪遊撃手のタイムリーなどでヤクルトを突き放しました。才木投手はハーラートップの5勝目です。打線も2ケタ安打で、援護点が少ないと嘆いていた才木投手をバックアップしました。ヒーローインタビューが関西っぽいノリのよさで面白かったです。

次の広島戦も、
がんばれタイガース!

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