2021年7月24日 (土)

新型コロナウィルス感染症(CVID0-19)ワクチンの副反応やいかに?

AERA7月26日号で「9割がワクチン接種部位に『痛み』あり 対処法は『冷却』と『エクササイズ』」と題する記事が掲載されています。まず、AERA.dotのサイトからファイザーとモデルナそれぞれの接種後9日目以降に起きる副反応の頻度のテーブルを引用すると以下の通りです。

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私の勤務する大学の職域接種はモデルナであり、私は3日前の今週水曜日に第1回目のワクチン接種を受けています。モデルナの方はファイザーに比べてサンプル数がかなり小さいので誤差も大きいんでしょうが、それでも、副反応率がかなりあります。私の場合は、接種翌日でも、触って少し違和感がある程度、今はほぼほぼ違和感すらない、というカンジなのですが、AERAの記事によれば、「モデルナ・アーム」と呼ばれる副反応はワクチン接種から1週間以上経過してから接種部位に起こることもあるようです。私の同僚教員の中にも、ワクチン接種翌日にかなり腕に痛みがあった人もいると聞き及んでいますが、1週間以上の後に副反応があるとは知りませんでした。
副反応の対策なんですが、タイトルにあるように、米国疾病対策センター(CDC)では、清潔な冷たい濡れタオルで腕の痛い部分を冷やしたり、痛い側の腕を動かしたり、あるいは、エクササイズをしたりすることで、痛みが和らぐことがある、とAERAでは紹介しています。同時に、厚生労働省では痛みがひどい場合市販の解熱鎮痛剤を飲むのもひとつの選択肢、とも紹介しています。私も今のところ大丈夫なのですが、この先、何らかの副反応が出ないとも限りませんので、頭に入れておきたいと思います。

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2021年7月23日 (金)

カミさんとマンション見学に出かける!!!

先週のこのブログで、ニッセイ基礎研のリポート「2020年のマンション市場と今後の動向」を取り上げたりしましたが、今日は、まだ授業を完全に終わったわけではないとしても連休中ですので、カミさんとマンション見学に行きました。
決して、すぐにマンションを購入して引越す必要があるわけではありませんし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が終息したら、ひょっとしたらひょっとして、東京に回帰しないとも限りませんので、まあ、基本は関西でいうところの「冷やかし」なんですが、夫婦2人でじっと家にいても気詰まりですし、行楽代わりのお出かけで、営業の人には迷惑かもしれないと思いつつ、朝からマンションを見学して、タップリと2時間に渡ってお話を伺い、その後、買い物などなど、ひと通り夫婦2人でお出かけを楽しんできました。

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2021年7月22日 (木)

今週の読書は経済書をはじめとして計4冊!!!

今週の読書は、いつもは土曜日にポストするんですが、今週だけは変則的な4連休になりますので、連休初日の本日にお示ししておきたいと思います。ですから、いつもはおおむね4~5冊あるんですが、今週だけは特殊条件で3冊です。逆に、来週は多めになろうかという気がします。というのは、私はもともと東京オリンピック・パラリンピックには反対ですし、特に現在のような新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック第5波の中で開催するのは強烈に反対しますから、それほど、世間一般よりはオリンピック報道を見ないと考えられるからです。ということで、毎週お示ししておりますところ、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月で56冊、今日取り上げたものを含めて7月で21冊、これらを合計して133冊になりました。来週、というか、今週これから先を含めて、すでに手元に、慶應義塾大学出版会の『「副業」の研究』などを借りて来ており、オリンピックに熱中することなく読書の時間を確保したいと考えております。

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まず、大橋弘『競争政策の経済学』(日本経済新聞出版) です。著者は、東京大学の教授です。タイトル通りに、幅広く競争政策について、バックグラウンドにあるモデル、計測、実証まで議論を展開しています。4部構成となっており、順に、競争政策や産業組織論、産業分野、需要停滞期の競争政策、デジタル市場の競争政策、を主眼としています。冒頭で競争政策のアプローチを論じ、基本的なモデルの提示と計測について示されています。その後の残る3部が産業ごとやデジタル化の進む経済での課題や解決のための政策論などが展開されています。基本的には学術書だと考えてよさそうなのですが、それにしては物足りない部分もあり、一般ビジネスパーソン向けも意識したのか、やや中途半端な出来上がりという気もします。市場の競争、というか、独占の弊害について、市場占有率などの市場構造のアプローチとともに、マークアップ率の計測など、いわゆる「実害」についても併せて論じており、逆に見れば、市場占有率が高くても、限界生産費価格付けに近い企業行動であって、不当な市場支配力の行使がなければOK、ということなのかもしれません。そういう意味で、潜在的な市場支配力ではなく企業行動に即した判断が必要との立場のように見えます。従って、本書の用語に即していえば、ブランダイス学派なのではなく、シカゴ学派なのかもしれません。第2章の結論のように、市場シェアの集中化だけが判断材料となるわけではない、と明記していたりします。ですから、八幡・富士製鐵の合併、新日本製鐵の成立については、1968年の多くのエコノミストによる反対意見の表明とはまったく逆の方向で、生産性工場も考慮した動学的な効率化の含めれば、合併用人の見方を明らかにしています。製剤的な独占力の構築には目を向けず、その独占力の行使だけを問題にする立場のように見えて、私にはやや疑問が残ります。ただ、参考文献に本文で引用されている大橋ら(2010)が見当たらないので、何ともいえません。加えて、同じコンテクストで、過剰供給と過当競争についての見方についても、人口減少下での需要不足と、そのコインの反対側となる供給過剰の解消に競争政策がどのような役割を果たすのか、少し曖昧な気もします。産業別に公共調達における談合、携帯電話市場におけるアンバンドリングの効果、、電力自由化の中での再生エネルギー政策の展開と競争政策のあり方、については、どうも従来から見かけることの多い結論に終止しているようですが、デジタル経済における競争政策、特に、プラットフォーム企業に対する見方については、私もそれほど見識ないことから、ある程度は参考になります。特に、GAFAに対しては分社化という構造的規制、あるいは、透明性確保と説明責任を問う行動的規制など厳格な対応が必要という結論には私も同意する部分が多いと感じました。しかしながら、パーツ・パーツではおかしなところもいっぱいあり、例えば、人口減少局面=需要停滞期に企業合併を違う視点から見ようというのは、競争政策の名に値するかどうか、やや疑問です。市場メカニズムにおける競争均衡は効率的な資源配分に役立つのはいうまでもありませんし、そのための競争政策の重要性も当然認識されて然るべきですが、リザルト・オリエンテッドな視角だけでなく、構造的、あるいは、潜在的な市場占有力の軽視は疑問です。

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次に、マシュー C. クレイン & マイケル・ぺティス『貿易戦争は階級闘争である』(みすず書房) です。著者は、ジャーナリストと在中国の金融研究者です。英語の原題は Trade Wars Are Class Wars であり、2020年の出版です。よくわからない取り合わせですが、本書の基本的なスタンスは極めて明確であり、「国家間の貿易戦争を激化させるのは、国家の内部で進行する不平等の拡大だ」(p.8)ということになります。もう少し判りやすくいえば、バックグラウンドとなるモデルはシンプルなマクロの投資貯蓄バランスであり、不平等が高所得層での低消費と過剰貯蓄を生み出し、この過剰な貯蓄を解消するために輸出で過剰生産の不均衡を解消すべく貿易戦争が勃発する、という考え方です。「階級闘争」というネーミングを別にすれば、かなりまっとうな経済モデルであり、ある程度は主流派エコノミストにも受け入れる余地あるような気がします。ただ、私の知る限り、マルクス主義的な「階級闘争」は Class Struggles ではなかったか、と記憶しています。記憶は不確かですし、自信もありません。いずれにせよ、国内の不平等を体外不均衡と結びつけるのはムリのないところです。基本的に、どちらの面から見るかによりますが、現時点でのサマーズ教授命名の長期停滞もそうですし、現代経済の停滞は需要の不足、あるいは、その逆から見て、供給の過剰から生じます。ですから、ケインズ経済学はその需給ギャップを埋めるべく政府支出を拡大することを主眼にしていますし、その極端なのがMMT学派ともいえます。マルクス主義経済学では、極めて単純化すれば、供給の方をコントロールして需要の範囲内に収めて供給過剰を生じないようにする、そのために生産手段を国有として中央司令経済で生産を管理する、というものです。どちらも需給ギャップを埋めることを主目的としている、と私は考えています。もちろん、その背景にある考え方は大きく違っています。本書では、貯蓄投資バランスを経済モデルとして考え、国内経済における需給ギャップを政府支出ではなく輸出によって解消するという方向が貿易戦争であり、その基礎は国内の階級闘争である、という理解です。貯蓄投資バランス式は事前的にも事後的にも成り立つ恒等式ですから、経済モデルの基礎とするには決して不都合ではありません。ただ、ケインズ的な乗数効果をどこまで盛り込むかについては、本書では特に取り上げられていません。いずれにせよ、近代初期には我が国の歴史をかえりみても、完全自主権が不平等条約により認められていませんでしたし、20世紀前半ではブロック経済化により貿易が差別的になされていました。従って、本書のような議論は判りやすいと思います

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次に、北川成史『ミャンマー政変』(ちくま新書) です。著者は中日新聞・東京新聞のジャーナリストで、バンコク駐在員の経験もあり、その際に、ミャンマーの現地取材もしているようです。冒頭で、かなり最近時点までのミャンマーの現状、すなわち、クー・デタからその後の国軍により残虐行為などが明らかにされます。第2章では、独立の英雄であrアウンサン将軍の娘であり、事実上NDL政権のリーダーであるアウサンスーチー女史と国軍の関係、かなり、ビミョーな関係が明らかにされます。その国軍の暴走、というか、アウンサンスーチー女史が黙認したのか、止め切れなかったのか、ロヒンギャ問題の詳細が取材の基づいて展開されます。ロヒンギャはバングラから渡ってきたイスラム教徒であり、仏教徒が90%を占めるミャンマー国民から蔑視・差別されている実態は広く報じられているところですが、多民族国家としてほかに、ワ自治管区なるものがあるそうです。中国と国境を接して麻薬の原料となるケシの栽培で有名な黄金の三角地帯にあり、ミャンマー語よりも中国語の方がよく通じて、じんみんげんがりゅつうしているそうです。最後に日本を含む国際社会の対応を検証し、日本政府はODAの停止をしないばかりか、日本ミャンマー協会という団体はクー・デタ容認というあり得ない態度を取っている点が浮き彫りにされています。私は専門外もはなはだしいんですが、今年2021年4月11日にはミャンマー民主化闘争連帯の集会+デモにも参加しましたし、ミャンマーの民主化を進める観点から注視していることも事実です。本書は、ジャーナリストらしく取材したことをはじめとして事実をいっぱい並べていて、国軍のクー・デタに対して、アウンサンスーチー女子の方もロヒンギャではひどかった、と両論併記というか、喧嘩両成敗のような記述が見られるわけですが、私の目から見て、丸腰の国民を虐殺する武装され訓練された軍隊というのは、まったく許容し難いといわざるを得ません。我が国政府がアジアの一因として明確な態度を示すことをはじめ、強い圧量を持って臨むべきであると考えますし、そこからミャンマーの民主化が進むことを願ってやみません。

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最後に、香原斗志『東京で見つける江戸』(平凡社新書) です。著者は、歴史評論家・音楽評論家だそうです。本書はタイトル通り、現代の東京で見られる「お江戸」をカラー写真とともに取り上げています。『GQ Japan』のweb版に連載していたのを新書化しています。構成としては、江戸城、すなわち、現在の皇居周辺から始まって、武士の街を象徴する部分、神社仏閣、水道などの土木遺産、そして、最後に、江戸城に戻っています。明らかに理解できるように、上野浅草など庶民の下町は対象外、というか、お江戸は残っていないようです。まあ、関東大震災とか、戦災とか、いろいろとありましたから、下町の庶民の江戸は今の東京には引き継がれていないのかもしれません。何度か言及されている通り、江戸はその性格上武士階級の比率が高く、しかも、武家屋敷はそれなりに贅沢、というか、ゆったりと作られていることから、現在とそう変わらない人口密度だったようですが、庶民の町民はかなり人口密度高く、ギュウギュウ詰めで生活していたようです。1000円そこそこのお値段で、これだけ豪華なカラー写真をいっぱい含む新書ですから、かなりお買い得な気がします。私は東京生活も長かったですし、しかも、自動車ではなく、自転車でかなり隅々まで東京の街を走り回った記憶があり、それなりに感慨深いものがありました。東京を離れて1年半近くたち、生まれ育った京都に戻ったとはいえ、ひょっとしたら、東京にホームシックを感じているのかもしれません。いずれにせよ、豪華図版を眺めるだけでもお値打ち品ですし、オススメです。

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2021年7月21日 (水)

6月の貿易統計は世界と日本の景気局面を反映する!!!

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+48.6%増の7兆2208億円、輸入額も+32.7%増の6兆8376億円、差引き貿易収支は+3832億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを手短に報じた記事を引用すると以下の通りです。

6月の貿易収支、3832億円の黒字
財務省が21日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3832億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4599億円の黒字だった。
輸出額は前年同月比48.6%増の7兆2208億円、輸入額は32.7%増の6兆8376億円だった。中国向け輸出額は27.7%増、輸入額は17.6%増だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べましたので長くなってしまいました。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は約+4600億円の黒字でしたし、レンジの下限は+3490億の黒字でしたので、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見て、米中をはじめとする世界各国の景気回復により輸出額が+50%近い増加を見せ、うち、数量が+37.2%増を記録しています。ただし、昨日のこのブログでも軽く取り上げたように、米国経済は昨年4月が谷だったわけで、なにぶん、昨年4~6月期がコロナ・ショックの底であって、そのリバウンドが大きいものですから、それほど単純な評価は控えるべきです。また、先月5月統計では輸入の増加のうち医薬品の寄与が大きくなっていましたが、今月6月統計ではすっかり落ち着いてしまっています。すなわち、5月統計では医薬品輸入額の伸びが+30%超だったのが、6月統計では+7.5%増にとどまっており、特に、数量ベースでは▲13.6%減を記録しています。ただし、米国からの医薬品輸入は+20.9%増、EUからも+15.2%増となっている一方で、米国・EUとも輸入数量は▲20%減を上回る減少です。ワクチン供給=輸入がストップしているのかどうか、貿易統計からだけでは判断がやや難しいところです。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額指数の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国向けの輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に上限や下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。グラフからも明らかな通り、OECD加盟の先進国も中国も、ワクチン接種で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を脱しつつあり、中でも米国はバイデン政権の大型財政政策で急速な回復を見せています。我が国だけがワクチン接種も進まず、世界経済の回復に伴う輸出の増加をテコに景気回復を目指す政策を展開しているようです。

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2021年7月20日 (火)

NBERは昨年2020年4月を景気の谷と同定!!!

すでに、日本国内のメディアでも広く報じられている通り、NBERは米国の景気後退の谷を2020年4月と同定しました。山が2020年2月でしたので、何と、2か月だけの景気後退だったことになります。通常は、景気後退の同定の際は、半年6か月くらいの期間が要されるケースが多いんですが、今回だけは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による猛烈な経済活動レベルの低下がありましたから、期間がわずかに2か月でも景気後退と同定するということらしく、この点は私も賛成です。NBERの参考サイトは以下の通りです。

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わずかに上昇幅を拡大した消費者物価指数(CPI)は基準改定でホントはマイナスか?

本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は先月統計で+0.1%と1年2か月振りの上昇となった後、今月も+0.2%と上昇率をわずかながら拡大しています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.2%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

6月の消費者物価0.2%上昇、2カ月連続プラス
総務省が20日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)によると、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は101.7と前年同月と比べて0.2%上がった。2カ月連続でプラスだった。上げ幅は5月の0.1%を上回った。携帯電話の料金値下げで通信料が大きく下落したが、原油価格の上昇でエネルギー項目で広く上がり、全体を押し上げた。
エネルギー全体では4.6%上昇し、上昇幅は5月(4.2%)から拡大した。ガソリンは17.9%、灯油は21.4%上がった。電気代は1.7%低下したが、原油価格の上昇に伴って5月(マイナス2.9%)と比べて下げ幅が縮んだ。
自然災害の増加などを受けた値上げにより、火災・地震保険料が16.4%上昇した。国産品の牛肉を含む肉類は0.3%上がった。5月と比べても0.4%上昇した。米国や中国での需要増やアルゼンチンによる輸出停止で、牛肉は世界的に供給不足の状態だという。
一方で通信は15.5%下がった。特に携帯大手各社などによる料金引き下げが続いている影響で、携帯電話の通信料は27.9%下がった。下げ幅は5月と同じだった。20年6月に需要が高まり価格が高騰していたマスクを含む保健医療用品・器具は、昨年の反動もあり1.0%低下した。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは0.1%の上昇でしたので、やや上振れたとはいうものの、ほぼミートしました。引用した記事にもあるように、基本的には国際商品市況における石油価格の上昇という押し上げ要因がある一方で、政策要因、というか、政府からの強い圧力により、通信料(携帯電話)が下落しています。6月統計の前年同月比上昇率で見ると、エネルギーが+4.6%上昇し、ヘッドラインCPIに対して+0.35%の寄与があります。とくに、エネルギーの中でもガソリン価格の上昇が大きく、+17.9%の上昇率を示し、ヘッドラインに対して+0.34%の寄与を持っています。他方で、通信料(携帯電話)が▲27.9%下落しており、ヘッドラインに対して▲0.54%のマイナス寄与を示しています。この携帯電話通信料の要因がなければ、ヘッドラインCPIの上昇率も+0.5%超の上昇を示していると考えられます。ただ、東京で再び緊急事態宣言がでましたし、先行きは、オリンピックなどとともに、まったく不透明ながら、国内需要の高まりとともに物価も着実に上昇幅を拡大する可能性が十分あります。ただし、1点だけ注意すべきは、CPIの基準改定です。というのは、本日公表されたCPIは2015年基準ですが、2020年基準への改定スケジュールがすでに総務省統計局から明らかにされています。これに従えば、7月9日にすでに品目別ウェイトが明らかにされており、今後、8月6日に本日好評の6月統計も含めて遡及改定され、新しい2020年基準の7月統計が8月20日に公表される運びとなっています。この新しい2020年基準ウェイトに従って試算された結果が、ニッセイ基礎研大和総研などからリポートで明らかにされています。どうしてもラスパイレス指数には上方バイアスがあることから、基準改定によりコアCPIの前年同月比上昇率で▲0.3%程度の下振れが予想されています。ですから、今日公表された6月統計の+0.2%は、ホントは、実力マイナスなのかもしれません。

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2021年7月19日 (月)

東京商工リサーチ「上場企業2220社 2021年3月期決算『女性役員比率』調査」やいかに?

先週金曜日7月16日、東京商工リサーチから「上場企業2220社 2021年3月期決算『女性役員比率』調査」の結果が明らかにされています。メディアで広く報じられ、また、今年2021年4月2日付けのこのブログでも、世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダー・ギャップ指数2021」のリポートに着目したところですが、そこでも、我が国の男女間格差は教育や健康では大きくないものの、政治・経済の分野でかなり大きい、と結論されていました。東京商工リサーチのリポートから経営における女性役員の占める比率を簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから、3月期決算 上場企業2,220社 女性役員比率 の最近5年間の推移のグラフを引用しています。上場企業2,220社の役員総数は2万4,777人で、このうち女性役員数は1,835人と、前年から+20.8%増加し、女性役員比率も7.4%と、前年から+1.4%ポイント上昇しています。他方、女性役員ゼロの企業は965社と、前年から▲15.3%減少したものの、それでも上場企業のうち43.4%と半数に近い企業では女性役員がゼロとなっています。女性役員は人数でも比率でも右肩上がりで上昇しているわけですが、現在の数字をどう評価するかはややビミョーなところです。

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次に、上のグラフはリポートから、2021年3月期決算上場企業2,220社 産業別女性役員比率 のグラフを引用しています。東京商工リサーチの分類による全10産業ですべて女性役員比率は上昇しています。しかし、比率の高い業界でも、電気・ガス業と金融・保険業でわずかに10%を超えているだけです。本来でしたら、30%とか、40%とかを超えていてもいいんでしょうし、もちろん、50%超えなんてのも個別企業によってはあり得るんでしょうが、これまた、前年から改善しているからといって、決して、胸を張って強調できる数字ではないと考えるべきです。

最後に、役員ですから、官庁にはない数字だったんですが、管理職であれば、ひょっとしたら、官庁よりも上場企業の方が割合が高いかもしれません。定年まで公務員だった私の実感として、官庁は上場企業よりも、決して進んでいるわけではありません。

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2021年7月18日 (日)

前期授業がそろそろ終わリかけて夏休みが楽しみな7月18日(日)本日の雑感!!!

そろそろ、大学の前期授業が終わりかけています。夏休みがグッと近づいて楽しみです。公務員を定年退職して私大の教員になって、何が楽しみかといえば夏休みです。私は海外勤務が2回ほどありますので、1か月の一時帰国休暇、なんて経験もありますが、コロナ禍で出歩けなかったり、また、猛暑日が多いとはいえ、2か月近い夏休みは大いに心休まる季節です。
いくつかの授業は先週で15回目の授業で、すでに終わっています。ただし、学部と大学院でビミョーに学年暦が異なり、私の担当する授業がすべて終了するのはさ来週になります。定期試験はほとんど実施されず、私の担当授業はすべて定期試験に代わるリポート試験です。ただし、いくつか定期試験をする授業もあって、さ来週はその試験監督の手伝いがあったりします。
夏休みといえば、そろそろ来週あたりで小中学生や高校生も夏休みに入るようです。私は週末にプールで2~3キロ泳ぐのですが、今日は、たぶん、夏休みの水泳教室のクラス分けか何かで小学生が一番端のコースで順々に泳いでいました。私なんぞよりもよっぽど速く泳ぐ子もいて、というか、多くの小学生に私は泳ぐスピードでまったくかないませんでした。ついつい、年齢を実感させられました。
水泳競技も含めて、ホントに来週からオリンピックやるんですかね。もうタイミングを失したという見方はあり得るものの、私は今からでもオリンピック・パラリンピックは中止にした方がいいんではないかと考えています。秋までにあるハズの総選挙で有利、と現政権は考えているんでしょうが、むしろ、逆のような気すらします。総選挙はいうまでもなく政権選択選挙ですから、国民の意志を明確に示す必要があると私は考えています。

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どうでもいいことながら、Facebookで赤川次郎「懐かしの名画ミステリー」のシリーズ4冊『血とバラ』、『悪魔のような女』、『埋もれた青春』、『明日なき十代』をシェアしておきました。

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2021年7月17日 (土)

今週の読書は経済書なしでサンデル教授の話題の新著をはじめとして計5冊!!!

今年度前期授業の終盤を迎えて、リポートや何やと少し忙しくしていた今週の読書は、久し振りに経済書なしで、サンデル教授の話題の新刊をはじめ、小説も含めて以下の通りの計5冊です。それから、毎週アップデートしていますところ、今年に入ってからの読書は、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月で56冊、今日取り上げたものを含めて7月で17冊、これらを合計して129冊になりました。来週は、すでに手元に、東大大橋教授の『競争政策の経済学』を借りて来ており、ほかにも何冊かあります。もうすぐ夏休みも始まることから、いろいろな本を読むべく読書の時間を確保したいと考えています。

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まず、マイケル・サンデル『実力も運のうち』(早川書房) です。著者は、「ハーバード白熱教室」でも知られる米国の政治哲学の研究者です。コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者であり、私は、この著者の代表作である『これからの「正義」の話をしよう』と『それをお金で買いますか』を読んだ記憶があります。英語の原題は The Tyranny of Merit であり、2020年の出版です。なお、東大本田由紀教授が最後の解説を書いています。ということで、「メリット」という用語は、日本ではデメリットと対にされて「長所」とか「美点」のような使われ方をしますが、巻末のホンダ教授の解説にもあるように、本書では多くの場合「能力」と訳されており、「功績」にも近いとされています。ですから、本書では邦訳タイトルにあるように、運をはじめとして自分ではどうしようもない宿命のようなものに対して、自分で努力すればなんとかなる能力や実力のようなものを指していると考えられます。そして、大学卒の学歴をはじめとしてサンデル教授は幅広くこういった実力主義に疑問を投げかけています。私も大学の教員の端くれですので、少なくとも、貧困からの脱却においては大学卒の学歴は有効だと何度か主張したこともありますし、今でもそう考えています。ただ、サンデル教授の考えもわからないでもなく、特に、学歴エリートを重用した米国オバマ政権が、それらのエリートから見下されていたように感じた白人労働者階級などから反発を受けてトランプ大統領の当選につながった、という視点は、ある程度理解できます。学歴主義、特に大学の学歴、さらに、大学院での学士号を超える学位の取得により、いわゆるアメリカン・ドリームの達成が近づく可能性が大きいものの、逆に、そこから取り残された階層が格差や不平等に不満を持つ可能性も高いわけです。そして、そういった学歴に基づく格差は「努力の賜物」として肯定される可能性が高くなるものの、サンデル教授から見れば、少なくとも実力100%ではなく、運の要素もかなりの程度に混入しており、そういった世間一般で肯定される格差も含めて是正する必要がある、というのが本書の主張です。実は、昨年2020年11月21日付けの読書感想文で取り上げたコリアー教授の『新・資本主義論』も、本書ほどではないにしても、大学卒のテクノクラートの所得増という意味で格差が広がっているとして、かなり似通った主張をしています。そして、結論の最後のパラグラフで自分の「才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない」としています。私もかなりの程度に同意しますが、それでも日米の違いについて2点指摘しておきたいと思います。まず第1に、米国での格差拡大はICT関連のスキル偏重型の技術革新にも支えられて、所得階層の上位層がさらに所得や富を増やすことによって深刻化しています。オキュパイ運動の99%なんかに典型的に現れています。しかし、日本では賃金が伸び悩む中で所得階層がさらに所得を減少させることにより格差が拡大しています。非正規雇用に典型的に現れています。ですから、所得階層から、あるいは、貧困からの脱却のためには、私の見方のように、大卒の学歴は有効であり、もちろん、格差を拡大する可能性は否定しないにしても、米国ほどの深刻さはないものと考えるべきです。第2に、運とか宿命を強調する際、例えば、パットナム教授の『アメリカの恩寵』ではありませんが、米国のように極めて宗教色の強い社会では、それなりの受容度がある一方で、欧州や、ましてや日本のような神や宗教の役割をそれほど認めない場合、混乱を来す可能性が米国より強い可能性があります。すなわち、運命を認識すれば、より謙虚な態度が生まれるとサンデル教授は指摘していますが、その運命が神によってもたらされたと考えない日本人は、どう考えるべきなのか、やや迷う人もいるかも知れません。あるいは、神の存在を否定する私のような人間は、運の占める比率を過小に評価する可能性もあります。このあたりを注意して読むとさらに、サンデル教授の指摘がクリアになるように私は感じています。

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次に、斎藤文男『多数決は民主主義のルールか?』(花伝社) です。著者は、もう90歳も近い憲法学の大御所であり、九州大学の名誉教授です。とても端的に、多数決ではなく、民主主義の方を多数の支配か、あるいは、人民の統治かで考えており、やや単純化が過ぎるような気もしますが、後者の方を推奨していることはいうまでもありません。私の知る限りでも、英国のサッチャー元首相を礼賛するマルキストの経済学者が知り合いにいるんですが、そのエコノミストからすれば、民主主義は決定の方法であり、むしろ、サッチャー元首相が重視した自由のほうが重要、というものです。サッチャーらいさんとともに、本書の多数決と民主主義の定義については、私は少し違和感があり、むしろ、多数決の方が決定方式とか、多数の支配ではないのか、と受け止めています。逆に、民主主義は1人1人が主体的に決定に参加するとともに、その決定の結果において1人1人が平等に尊重されることである、と考えています。まあ、後者の1人1人が等しく尊重されるというのは、多数の支配の否定に近い気もしますが、やや違うと私は考えています。ですから、本書に戻ると、多数決の限界として人権の否定は多数決ではなし得ない、としています。加えて、国会で頻発する強行採決は、もちろん、多数の支配として本書では否定的に取り上げられています。ただ、本書の論法も極めて混乱しており、ルソーやロックといった民主主義に関する人類の大いなる遺産と呼んでもいいような研究をひもとく一方で、タイトルにある疑問文について、本書冒頭(p.3)で早々に「多数決は民主主義に固有のルールではありません。万能でもありません。人権保障の限界があります。」と結論を述べており、それでは本書タイトルの疑問はお終い、ということになりかねません。しかも、むすび(p.166)では「結論はどうなんだ」と自らに問うと、「わたしたちは問いの立て方を間違えたようです。問題の核心は、なにごとも多数決できめてよいのか。多数決に限界がありはしないか、ということだったのです。」と、大きなちゃぶ台返しを演じています。ただし、私の目から見て、このむすびの問であれば第4章の多数決の限界-人権保障で尽きているわけで、何をどう論じようとしていたのか、著者にも大きな混乱があるように思えてなりません。加えて、第5章で人民の多数決、すなわち、直接民主主義の危険性をヒトラーの例を引きながら指摘するのはまだいいとしても、ご自分の経験からか、地方公共団体における政治倫理条例制定運動に関しては、かなり脱線がひどいと私は感じました。「90歳に近い大御所」と年齢的な指摘を冒頭でしましたが、本書のご指摘はそれなりに私も受け入れられる部分が多いと感じていますし、前の安倍内閣や今の菅内閣のように強権的な決定方式を多用する印象ある内閣がはびこる中で、とてもタイムリーな内容なのですが、それ相応に十分に警戒心を持って読みこなす必要がありそうです。

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次に、桐野夏生『日没』(岩波書店) です。著者は、直木賞作家です。この作品は、岩波書店の雑誌「文学」と「世界」に掲載されたものを単行本としています。ということで、とてもショッキングな内容です。女性作家のもとに、総務省文化文芸倫理向上委員会と名乗る政府組織から召喚状が届いたため、出頭先に向かった作家は断崖に建つ海辺の療養所へと収容され、そのまま「診療」と称して幽閉生活を余儀なくされる、というストーリーです。そして、その療養所での生活を克明に綴っています。要するに、政府によって「表現の自由」が奪われるとすれば、こういったことなのだろうと想像させるに十分なSF小説ともいえます。そもそも、セックス描写があからさまだとか、差別的な表現があるとかで、決して権力批判ではなく、そういった形で、割合と社会的にも受け入れられやすい理由で療養所に収容され、そこでは、スマホはつながらず、電話や手紙も禁止され、新聞やテレビなどの外からの情報も得られず、所長から「社会に適応した小説」を書けと命ぜられたりして、徐々に作家としての見識が鈍化させられます。もちろん、生活としても、食事の貧しさや入浴時間や回数の制限など、いかにも刑務所を思わせる待遇です。その上、高速技を着用させられる罰則などもある上、精神科医の診断でいかようにも待遇が変化しかねません。中には、密告者も配置されており、徐々に主人公が精神を蝕まれてゆくさまが克明に描写されています。実際の我が国では、ここまでの表現の自由を制限されていないのではないか、という意見はあり得ると思います。しかし、前の安倍内閣では「特定秘密保護法」と「共謀罪」が成立しましたし、地方公共団体によってはヘイトスピーチ条例などが制定されているところもあります。ポリコレも装いつつ、こういった形で、徐々に表現の自由が制限されている恐れすらあると考えるべきではないでしょうか。他方で、政府の重要な文書も自分たちに都合の悪いものは改竄されています。官僚は人事権を官邸に握られ、過剰なまでの忖度をし、メディアは首相や官房長官と食事をして情報を流してもらって、同時にコントロールもされていることに気づきません。そういった現実を考えるにつけ、本書の表現の自由の制限は、決して誇張されているわけではなく、現在の方向をそのまま将来に引き伸ばせば、こういった事態につながりかねないと警告しているようでもあります。オーウェルの『1984』にも匹敵するディストピア小説です。今週の読書の中では、私として多くの方に読んでほしい作品のナンバーワンなのですが、それだけに、心して読みたい小説です。

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次に、藤崎翔『あなたに会えて困った』(双葉社) です。著者は、お笑い芸人として活動した後、エンタメ小説家に転身し、デビュー作の『神様の裏の顔』は私も読みました。ということで、この作品では、刑務所から出所したばかりの空き巣は、初恋の人と再会して、懐かしい過去を思い出すとともに、この昔の恋人を窮地から救うために、いろいろと策動する、というストーリーなのですが、最後に大きなどんでん返しが待っている、ということになります。これから先は、ある意味で、この作品もミステリですので、口をつぐみたいと思います。ただし、1点だけ明らかにしてもよかろうと思うのは、本書は叙述トリックによるミステリです。ですから、表現によって読者をミスリーディングしながら、書き進められています。そして、よくあるように、最後まで読んでからもう一度最初から2度読みする、のが、まあ、謳い文句になっていたりするのですが、残念ながら、この作品にはそこまでのクオリティはありません。悪いですが、「ふーん、そうなの」で終わりです。私はそれほど多くの作品を読んでいるわけではありませんが、例えば、乾くるみの『イニシエーション・ラブ』、我孫子武丸『殺戮にいたる病』、綾辻行人『殺人鬼』などが私の読んだ叙述トリックの中で出来のいいものですが、これらの作品までの高い完成度は求めない方がいいと私は考えます。しかも、最後の方で、いかにもといった形で、不必要なまでのクドクドと種明かしがされます。これも、初心者向けの趣を持っていたりします。この作品では、叙述トリックで読者をミスリードするために、現在の出来事と過去の高校生であったときの出来事が交互に進行しているように書き分けられていて、そのあたりは、まずまず考えられた構成であると私も思います。ただ、主人公の視点からだけ書き進められていて、その主人公が誰であるのかをしっかりと把握していれば、大きなサプライズはなくラストまで読み進めるような気もします。我孫子武丸『殺戮にいたる病』では3人の見方が交錯するように書き進められているのですが、ここまでの高度な描写を求めるのは少しムリがあるのかもしれません。読者をミスリードすることに集中するあまりストーリーの本質の面白さを少し軽視したのかもしれません。ミステリとしてはまずまずの出来だといえますし、時間潰しにはもってこいですが、大きな期待は慎むべきであると考えます。

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最後に、太田肇『同調圧力の正体』(PHP新書) です。著者は、同志社大学の研究者で、組織学を専門としています。タイトル通りに、日本社会の窮屈さを同調圧力の観点から解き明かそうと試みています。そして、極めて単純化すれば、組織には2種類あり、第1に、地域社会や、特に、家族・親戚といった自然発生的な共同体、そして、第2に、何らかの利害の一致する人々が意図的に構成する組織、ということになりますが、利害関係者で集まったドライであるはずの組織が、日本では共同体的な親密な関係で構成・運営されているから、どうしても同調圧力が高くなる、ということになります。しかも、構成員が同質的で同調しやすければ、組織は超過的な貢献を求めることが可能になり、例えば、企業では利益を出しやすくなる、とういうことになります。ですから、企業も体力ある限り、あるいは、社員の賛同が得られる限り、本来の企業活動以外の活動、社員旅行を企画したり、運動会を開催したりといった活動に力を注ぐことが合理的となるわけです。そうすれば、本来の合理的な部分を超える貢献が期待できるわけで、社員のサイドからは非合理的なのかもしれませんが、企業経営の方から見れな合理的なわけです。それが、私の解釈する限り、いわゆる「義理と人情」の世界だと思います。そして、コロナ禍の中でさかんになったテレワークについては、この日本的な同調圧力が非生産的な方向で作用している可能性も示唆しています。すなわち、アドビの調査によれば、米国ではテレワークの生産性は以前の形態の仕事と比べて同等か生産性が上昇したとの回答が多いのに対して、日本では生産性が下がっているようなのです。これは私が見た範囲でも、経済産業研究所のペーパーでも生産性が⅔程度に一たという結果が示されていますし、妥当なところと受け止めています。従って、対面による暗黙の了解といった日本的な生産性の上げ方がテレワークでは失われている可能性を本書では示唆しています。加えて、オフィシャルな仕事だけでなく、いわゆる自粛の動きでもって、強権的なロックダウンを必要とせず、日本では第1波のコロナ感染拡大を乗り切ったわけですが、それについても、「自粛警察」的な動きとともに、やはり、日本的な同調圧力の強さが関係していると指摘しています。そうかもしれません。この同調圧力をはねのける方法も3つほど示されていまう。私自身は、役所という対面かつ同調圧力の強い職場から、大学教員というより独立性の高い職場に再就職しましたが、やっぱり、それでも同調圧力は強いです。たぶん、東京という大都会から関西の片田舎に引越したという地域性もあるんだろうとは思いますが、組織がフラットであるにもかかわらず、たぶん、人に押し付ける圧力の異常に高い人々が集まっているせいでもあろうかと考えて、ブツクサと文句をいうばかりです。

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2021年7月16日 (金)

日銀「展望リポート」では物価見通しが上方改定される!!!

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」が公表されています。報道などでは、気候変動対応の新制度が注目されていますが、金融政策決定会合の本旨である金融政策では、短期金利を▲0.1%、長期金利の指標になる10年物国債利回りを0%程度に誘導する長短金利操作=イールドカーブ・コントロールの維持を決定しています。加えて、私は経済見通しにより興味があります。ということで、2021~2023年度の政策委員の大勢見通しのテーブルを引用すると以下の通りです。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 2021年度+3.5 ~ +4.0
<+3.8>
+0.3 ~ +0.6
<+0.6>
 4月時点の見通し+3.6 ~ +4.4
<+4.0>
0.0 ~ +0.2
<+0.1>
 2022年度+2.6 ~ +2.9
<+2.7>
+0.8 ~ +1.0
<+0.9>
 4月時点の見通し+2.1 ~ +2.5
<+2.4>
+0.5 ~ +0.9
<+0.8>
 2023年度+1.2 ~ +1.4
<+1.3>
+0.9 ~ +1.1
<+1.0>
 4月時点の見通し+1.2 ~ +1.5
<+1.3>
+0.7 ~ +1.0
<+1.0>

見れば明らかな通り、足元の2021年度については成長率見通しを引き下げた一方で、物価見通しは上方改定されています。フィリップス曲線的には不整合な動きといえますが、この背景には、国内でのワクチン接種の遅れに加えて、海外、というか、国際商品市況における石油などの資源価格の上昇があります。金融政策よりも、資源価格の方が国内物価への影響が大きいわけですから、金融政策当局の舵取りもタイヘンです。また、「展望リポート 2021年7月」から、政策委員の経済・物価見通しとリスク評価のグラフを引用すると以下の通りであり、少し前までリスクは下方にあったように記憶していますが、現時点でほぼほぼリスクはニュートラルといえます。

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私自身も、先行き経済や物価の見通しについては、基本的に、日銀と同じ方向感覚を共有しており、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が終息すれば、所得と需要の好循環が復活する可能性が十分あると考えています。しかし、最大のリスクは政府要因です。すなわち、大前提となるコロナ終息なんですが、ワクチン供給をはじめとして、現内閣にコロナ終息の能力がまったくないように私には見えます。東京に第4次の緊急事態宣言を出した一方で、オリンピック・パラリンピックに関しては、中止すべきと私は従来から考えていますが、強行開催されようとしています。また、財政政策の方向についても私には懸念があります。例えば、先週7月6日に開催された経済財政諮問会議において、有識者委員から「今後のマクロ経済政策運営について」と題するメモが提出され、来年度2022年度の予算編成について、「財政規模の縮小自体が景気回復の足かせとならないよう、景気動向を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済財政運営を実施すべき」との指摘がなされていて、釘を差された形になっています。ホントにこのメモにあるように、機動的なマクロ経済財政運営がなされるかどうか、緊縮財政に陥ることがないよう、注視する必要がありそうです。

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