2021年10月16日 (土)

今週の読書はノーベル経済学賞受賞エコノミストによる経済書をはじめ計4冊!!!

今週の読書は、ノーベル経済学賞受賞のエコノミストによる新たな角度からの経済書、教養書や専門書に加えて新書まで、以下の通りの計4冊です。それから、10月2日付けで読書感想文を明らかにした竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書) が本日の朝日新聞の読書欄で取り上げられていました。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊、さらに、先週までの10月分が8冊に、今日取り上げた4冊を加えて、合計189冊になりました。たぶん、あくまでたぶん、ですが、11月中には200冊を超えるのではないかと予想しています。

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まず、ロバート J. シラー『ナラティブ経済学』(東洋経済) です。著者は、2013年にノーベル経済学賞を受賞した米国イェール大学のエコノミストです。本書の英語の原題は Narrative Economics であり、2019年の出版です。基になる論文は、2017年1月の米国経済学会会長演説であり、Robert J. Shiller (2017) "Narrative Economics," American Economic Review 107(4), April 2017, pp. 967-1004 に収録されています。ということで、ナラティブ経済学とは、私の受け止めでは、行動経済学のひとつとして、何らかの不合理な経済行動が、マイクロな個人の選択行動だけではなく、マクロの景気循環などに対しても、何らかの影響を及ぼす、という考え方ではなかろうかという気がします。特に、「ナラティブ」ですので、何らかの物語の影響を考慮しているわけです。ナラティブがバイラルになる点が重要視されています。もちろん、すべてのナラティブがバイラルになるわけではないものの、いくつか、説得的なエピソードもあるにはあります。でも、例えば、日本のバブル後の長期停滞については、バブル経済期に良寛の「清貧」思想が広まって、その後の消費減退につながった、という視点はまったく同意できません。キチンとした経済合理的なマイクロ・マクロな経済主体の行動がバックグラウンドにあると考えるべきです。もしも、我が国のバブル崩壊後の長期停滞について、何らかの非合理的な要素を見出そうとすれば、むしろ、日銀の恐ろしく合理性に欠ける金融政策運営ではなかったかと私は考えています。ただ、現時点では行動科学については、行動経済学をはじめとして、例のアリエリー教授の捏造データを基にした研究などから、ひどく胡散臭い印象を持たれていることも事実です。当然ながら、本書の執筆や邦訳時点では、こういった行動科学に対する懐疑的な見方は少なかったでしょうから、やや気の毒ではあります。いずれにせよ、やっぱりノーベル経済学賞受賞者のアカロフ教授との共著である『アニマル・スピリット』でもそうでしたし、純粋な機会的判断ではなく何らかの消費者や投資家のマインドが、単独でも集合的にでも、経済に大きな影響を及ぼす可能性はあります。特に、バブル経済の発生については十分考えられることですし、バブルの発生を防止するという観点からはナラティブがバイラルになる研究もアリかもしれません。もっとも、著者自身も自覚しているようですが、かなり大量のデータを数十年に渡って収集し、それらを間違いない形でデータ分析できるだけのキャパを必要とするわけで、どこまで主流派の合理的な経済学に対抗できるかどうか、私はやや不安です。さらに、タイトルはあくまで経済学を対象として始まっていて、本書冒頭でも経済学を俎上に載せてナラティブがバイラルになるプロセスを考慮しているように見受けたのですが、途中から、対象は経済学ではなくて経済にすり替わっています。やや理論展開の整合性にも問題あるかもしれません。ただ、地に落ちた感のある行動経済学に代替するポスト行動経済学、すなわち、個々人のマインドを質問した調査結果から分析を始めるのではなく、本書でもデータを取っているGoogle NgramsやProQuestなどのような報道やSNSなどからより信頼性が高い、というか、捏造されにくいデータを用いたポスト行動経済学としての期待ができそうな気がします。

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次に、ファリード・ザカリア『パンデミック後の世界 10の教訓』(日本経済新聞出版) です。著者は、インド出身でCNNの報道番組のホストなどを務める米国のジャーナリストです。英語の原題は Ten Lessond for a post-Pandemic World であり、2020年の出版です。まず、単純に10の教訓を並べると以下の通りです。

LESSON 1
シートベルトを締めよ
LESSON 2
重要なのは政府の「量」ではない、「質」だ
LESSON 3
市場原理だけではやっていけない
LESSON 4
人々は専門家の声を聞け、専門家は人々の声を聞け
LESSON 5
ライフ・イズ・デジタル
LESSON 6
アリストテレスの慧眼 - 人は社会的な動物である
LESSON 7
不平等は広がる
LESSON 8
グローバリゼーションは死んでいない
LESSON 9
二極化する世界
LESSON 10
徹底した現実主義者は、ときに理想主義者である

要するに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック後に考えるべき教訓は10あるわけですが、パンデミックから何を学習するかという視点も重要で、私の印象に残ったのは、やはり、経済学的な観点から第3店目の市場原理だけではダメというポイントです。パンデミックに限定しても、1980年代からの米国レーガン政権や英国サッチャー内閣の新自由主義的な経済政策により、考え方によれば現在の日本でも、市場原理を医療分野に徹底すればユニバーサルな医療は失われ、経済力のあるなしで医療を受けられる程度が決まってしまい、従って、命に軽重が出る、ということです。ただ、それほど取材に基づく文章ではないジャーナリストの出版物ですので、かなり漠たる印象論を述べるにとどまっているポイントも少なくありません。世界の経済や医療やパンデミックの実態はとても複雑なのですから、同時に、経済学的な用語で言えば「一般均衡論」的に解法を探さねばならないのです、ややその点でヌケがあるような気がしてなりません。

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次に、加藤陽子『この国のかたちを見つめ直す』(毎日新聞出版) です。著者は、日本近現代史を専門とする東大教授であり、同時に、昨年の菅内閣による日本学術会議任用拒否の6人の1人でもあります。ということで、本書は毎日新聞に毎月連載された著者のエッセイとコラムを中心に収録されていて、著者の専門分野である「国家と国民」、「天皇と天皇制」、「戦争の記憶」などをはじめとして、「東日本大震災」や「世界と日本」などのテーマまで幅広くを論じています。長期に渡った安倍内閣から役所の行政まで含めて、日本の統治機構、というか、政治経済のシステム全体が大きく劣化したと感じているのは私だけではないと思いますが、著者の専門分野である近現代史における天皇制の視点から、あるいは、21世紀の震災やチョコッとだけながらパンデミックまで含めて、幅広く論じられています。どうしても、新聞のコラムですのでひとつのテーマに対するボリュームとして圧倒的に不足しており、やや物足りない気はします。歴史学者ですので、全体像をもう少し示して欲しかった気がしますが、かなり限定した取扱に終止している気がします。というのも、安倍内閣以来のヘンなやり方として、都合のいい事実だけに着目して都合の悪い点を排除し、もしくは、目をつぶって、総合的・包括的な観点から政治や行政を進めるやり方ではなく、あくまで、少数派の都合のいい方向でしか物事を進めない、というのがありましたから、もう少しボリュームをとって歴史の包括的な理解を示し、場合によっては、反対の見方も提示しつつ議論を進めた上で、正統的な解釈を示して欲しかった気がするからです。例の「ごはん論法」に見られるように、歴史も切り取り方によっては別の見方が出来てしまう場合もあり得ないことではありません。ですから、幅広い観点からの歴史解釈のためには、新聞で許されるスペースの枠内でのエッセイでは物足りない気がして仕方ありませんでした。

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最後に、崔吉城『キリスト教とシャーマニズム』(ちくま新書) です。著者は、韓国出身の社会人類学者で、広島大学の名誉教授です。キリスト教徒でもあります。ということで、私もほのかにしか知らなかったのですが、韓国ではキリスト教徒が人口の30%近くを占めていて、宗教信徒としては最大勢力だそうですが、その韓国でのキリスト教の浸透ぶりのバックグラウンドにあるシャーマニズムについて取り上げています。著者だけでなく、私の目から見ても、呪術的なシャーマニズムや土着的な迷信っぽい物が非科学的に見え、まあ、宗教ですから、キリスト教が科学的とはまったく思わないのですが、伝統社会のシャーマニズムからすれば、キリスト教の方がよっぽど近代的な装いに見えることは確かです。おそらく、聖徳太子の時代の日本では仏教がそのような目で見られていて、仏教徒とは進歩的な勢力、という受け止めだったのだろうと想像しています。他方で、日本と違って韓国でここまでキリスト教が受容された背景として著者はこのシャーマニズムを指摘しています。やや逆説的な気もするのですが、本書での議論はそれなりに説得的です。総じて、韓国におけるキリスト教の受容とシャーマニズムの関係は複雑ながら、近くて遠い国である韓国の宗教事情には参考になったものの、私は韓国に限らず一般的なキリスト教とシャーマニズムの内容を期待していただけに、少し肩透かしを食ったような気になってしまいました。

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2021年10月15日 (金)

またまた京都を離れる!!!

本日またまた、朝から東京行きの新幹線に乗って京都を離れました。8月に続いて、今年はよくでかけます。ようやく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の新規感染者数も減少し、ひとつのチャンスかもしれません。
明日の土曜日恒例の読書感想文はポストしたいと思いますが、日曜日はお休みするかもしれません。悪しからず。

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2021年10月14日 (木)

G20財務相・中央銀行総裁会議コミュニケを読む!!!

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イタリアがホストするG20財務相・中央銀行総裁会議が開催され、昨日、10月13日にコミュニケを採択しています。コミュニケのリンクは以下の通りです。

コミュニケでは冒頭のパラで、"Central banks are monitoring current price dynamics closely. They will act as needed to meet their mandates, including price stability, while looking through inflation pressures where they are transitory and remaining committed to clear communication of policy stances." とされているインフレ警戒感ですが、我が国の報道でも、法人最低税率などとともに広く報じられいるところ、海外報道ではハンパありません。G20コミュニケだけでなく、幅広く見ると以下の通りです。

それに引き換え、我が国はいつになったら本格的にデフレを脱却できるのでしょうか?

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2021年10月13日 (水)

予想を下回る大きなマイナスを記録した8月機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から8月の機械受注が公表されています。統計のヘッドラインとなる変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.9%増の8597億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比2.4%減 市場予想は1.7%増
内閣府が13日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.4%減の8393億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.7%増だった。
製造業は13.4%減、非製造業は7.1%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は17.0%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+1.7%増でしたので、実績の▲2.4%減は、レンジの下限▲0.4%も下回っていて、大きく下振れた印象があります。特に、3か月前の5月+7.8%増の後、6月▲1.5%減とリバウンド小さく、7月も+0.9%増の後の8月統計の▲2.4%減ですから、まあ、何と申しましょうかで、横ばい圏内から大きく下振れたわけではなく、先行きを悲観する必要も小さい、と私は考えています。上のグラフのうちの上のパネルの6か月後方移動平均の太線から見ても、横ばいないしややプラスと思います。ですから、引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動きに足踏み」と半ノッチ引き下げるまでの必要があったかどうかはやや疑問です。加えて、業種別に見ても、製造業は前月比▲13.4%減に対して、非製造業は+7.1%ぞうですから、明らかに、半導体の供給制約による自動車生産の停滞の影響によるマイナスであり、我が国のリーディング産業のひとつである自動車の動向は気にかかりますが、現在の落ち込みは一時的なものであり、より少し長い目で見るとペントアップの挽回生産も含めて、増加に向かう可能性は十分あると私は考えています。

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成長率が下方修正された「IMF世界経済見通し」をどう見るか?

日本時間の昨夜、今週末の世銀・IMF総会に合わせて国際通貨基金(IMF)から「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook が公表されています。世界の経済成長率見通しは前回から少し下方修正され、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による健康上の懸念とともに供給面での混乱、さらに、インフレの懸念が基調として取り上げられています。当然のように、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関のリポートに着目するのは、私のこのブログの特徴のひとつであり、簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のテーブルはIMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economic Outlook Growth Projections を引用しています。見れば明らかな通り、世界経済の成長率は2021年に+5.9%、2022年にも+4.9%を記録すると見込まれています。この2021年成長率予測は直近の7月時点の予測から▲0.1%ポイント下方改定されています。要因としてあげられているのは、供給の混乱が一因で先進国の成長見通しが下方改定されるとともに、低所得途上国においてもデルタ変異株の影響などによりCOVID-19パンデミックの状況が悪化したためです。ただし、1次産品を輸出する新興市場国や発展途上国の一部において短期的な見通しが強まったことが、こういった下方改定要因を一部相殺しています。我が日本は今年2021年+2.4%成長と、7月から▲0.4%ポイント下方改定されています。先進国平均の▲0.4%ポイントの下方修正幅よりも大きいのは、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催してCOVID-19パンデミックを拡大した影響と私は考えています。

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次に、上のグラフはリポートから Figure 1.15. Medium-Term Prospects: Output and Employment を引用しています。今回の見通しでは、とても興味深いことに、こういった中期の見通しを明らかにしています。2024年までにパンデミック以前の水準に復帰するかどうかについて、特に後半の 3. Output Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 や 4. Employment Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 でグラフが示されており、米国をはじめとする先進国や中国と比較して、新興国などの回復が遅れる点が明らかとされています。基本的には、ワクチン格差による景気回復テンポの違いであると考えるべきです。

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最後に、上のグラフはリポートから Figure 2.12. Headline Inflation with Adverse Sectoral and Commodity Price Shocks and Adaptive Expectations Shock を引用しています。日本でエコノミストをしていると、まったく実感がないのですが、世界的にはインフレの懸念が高まっています。すなわち、景気の回復に伴い、需要が堅調に推移する一方で、一部に供給制約が明らかとなり、国際商品市況における石油価格の急上昇などにより、インフレが急速に加速しているのは事実です。今回の見通しでは、インフレ率の上昇はさらに数か月間続き、2022年半ばにはCOVID-19パンデミック前の水準に戻る可能性が高いと予測していますが、インフレ加速のリスクはまだ払拭されていません。

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2021年10月12日 (火)

上昇率を高める企業物価指数(PPI)の先行きをどう見るか?

本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+6.3%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数、前年比6.3%上昇 前月比0.3%上昇
日銀が12日発表した9月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は106.4で前年同月比で6.3%上昇、前月比で0.3%上昇だった。市場予想の中心は前年比5.9%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比11.0%上昇、前月比で0.3%上昇した。輸入物価は前年比31.3%上昇、前月比で1.1%上昇した。

とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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このところ、消費者物価指数(CPI)でみても、本日公表の企業物価指数(PPI)でみても、いずれも、順調に足元で物価が下げ止まりつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+5.9%の上昇と予想されていましたからやや上振れた印象です。国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇に起因するとはいえ、このところ、順調に物価上昇率が拡大しています。もっとも、この動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+48.3%、石油・石炭製品が+32.4%、非鉄金属が+27.0%、鉄鋼+17.8%、化学製品+12.7%などが2ケタ上昇となっています。ただし、これら品目の上昇幅拡大の背景にある原油価格の前年同月比上昇率は、今年2021年5月の+238.8%をピークに、6月+173.2%、7月+102.8%、8月+68.6%と来て、最新の9月統計では+63.3%ですから、前年同月比上昇率で見ればピークアウトに向かっている印象を私は持っています。繰り返しになりますが、基本的に、国際商品市況における石油ほかの1次産品をはじめとして、中国などの新興国における景気回復に伴って、基礎的な資源価格の上昇が背景にあると考えるべきです。つまり、必ずしも日本ではなく世界のほかの国の景気回復により、我が国の物価が上昇幅を拡大している、というわけなのかもしれません。

なお、昨夜、ノーベル経済学賞の受賞者が明らかにされています。以下の3人です。

  • David Card, University of California, Berkeley for his empirical contributions to labour economics
  • Joshua D. Angrist, Massachusetts Institute of Technology (MIT) and Guido W. Imbens, Stanford University for their methodological contributions to the analysis of causal relationships

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2021年10月11日 (月)

電車をはじめとする関西の移動について考える?

東京から京都に引越して1年半が経過し、いろいろと慣れないことも多いながら、電車だけは東京より格段に快適です。関西、というか、京都に引越して「何をするにも時間がかかる」と思うのですが、電車だけは速いです。特にひどく時間がかかるのはファストフードで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックのためにドライブスルーとかデリバリーを強化した結果なのだろうと考えられますが、ともかく時間がかかります。それに対して電車はさすがに素早い対応なのですが、時折、というか、私の利用する京都線や琵琶湖線はトラブルが多いのを除けば、とても速く着きます。JRの京都線や琵琶湖線はスピードを出しているのだろうと想像しています。その上、おそらく、まだまだ輸送キャパに余裕があるため、座れる確率も高い気がします。かなりの高校生はやせ我慢かどうか、優先席には座ろうとしません。私は60歳を超えていますので、堂々と優先席に座ります。東京でしたら、特に朝夕のラッシュ時には優先席に座ってくれないと、逆に、混み具合がひどくなります。繰り返しになりますが、関西はまだ輸送キャパに余裕ある気がします。
東京も関西もともに、電車やバスでスマホをいじっていいる人が多数を占める点は変わりありません。ただ、私なんかは空いている時間帯に乗るにもかかわらず、電車やバスでほとんど足を組んでいる人を見かけません。私自身は空いていれば足を組むのがデフォルトになっているのですが、関西では女性も足を組む人は少ない気がします。そして、同じくとても少ないのが網棚の利用です。これも輸送キャパとの関係かもしれませんが、床に荷物を置く人が多い気がします。網棚に荷物を置くのはほぼほぼ私に限られているような気がしないでもありません。それから、電車とは直接の関係ないのですが、折りたたみ傘の利用が進んでおらず、長い傘を電車やバスに持ち込む人がやたらと目立ちます。

一定のカルチャーなのか、輸送キャパから導かれる理由ある反応なのか、定かではない例もいくつかありますが、関西、特に、京都の電車事情でした。ヒマがあれば、またまた東京と京都の比較をしてみたいと考えます。

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2021年10月10日 (日)

ものすごい上り坂をがんばって太陽が丘に行く!!!

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実は、今日ではないんですが、いいお天気に誘われて宇治市にある京都府立山城総合運動公園、通称、太陽が丘に自転車で山登りをしてきました。私は京都に引越した今でこそ、上の写真に見るように、クロスバイクに乗っていますが、東京のころにはマウンテンバイクでしたので、スキーと同じで、上りは自転車を運んで下りを楽しむ、という方式でした。まあ、実は、ほとんど舗装路を走っていたんですが、マウンテンバイクはそういうものです。
ものすごい上り坂でした。その割には、上り切ってしまうと、それほど自転車で走れるスペースはなかったりします。その昔、2007年5月のゴールデンウィークには一家そろって太陽が丘の近くに宿泊して、このあたりで遊んだ記憶があります。

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2021年10月 9日 (土)

今週の読書は経済学の学術書をはじめとして新書も含めて計4冊!!!

今週の読書は、小難しい経済学の学術書を筆頭に新書を3冊の合計4冊でした。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊、さらに、先週までの10月分が4冊に、今日取り上げた4冊を加えて、合計185冊になりました。たぶん、あくまでたぶん、ですが、11月中には200冊を超えるのではないかと予想しています。今日は、大学の就職セミナーが10時からあり、普段よりも少し早めにポストします。

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まず、杉山敏啓『銀行業の競争度』(日本評論社) です。著者は、江戸川大学の研究者であり、本書は学術書と考えるべきです。すんわち、日本の銀行についてオーバーバンキングの観点から邦銀の低収益性について分析を進めています。競争とオーバーバンキングについては、2つの角度からの分析が可能であり、本書でも示されている通り、マークアップの価格面からの分析と市場集中度の構造面からの分析です。本書では後者の構造面については、地域別にハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を算出して分析しています。ただし、オーバーバンキングとしては収益面からの私的であることが多く、やはり、価格面からの分析がより重要となると私は考えます。しかしながら、我が国の現状では、ホントに競争によるオーバーバンキングから、すなわち、過剰競争によって銀行が低収益に苦しんでいるのか、それとも、金融政策に起因して低金利やフラットなイールドカーブにより利ざやが得られないのか、は判然としない恐れがあります。今世紀に入ってから、メガバンクに限定せずとも、地域の地方銀行においても銀行の合併が進んでいることは明らかであり、店舗数も面積も減少していて、おそらく、私の直感では構造的には競争度が低下している可能性が高いと考えています。通常は競争度が低下し独占度が高まれば、希少性の高まりとともに価格設定が有利になって収益が上がる、と経済理論では想定しているわけですが、実際には銀行の収益はむしろ日銀オペなどによって国債から発生しているように私は見ています。ただし、他方で、本書の第6章とかの最後の方でも分析されているように、プルーデンス的には経営の安定性は増すことが実証されており、低収益ながらも経営安定は崩れない、という点は指摘しておきたいと思います。1990年のバブル崩壊後に当時の大蔵省は、いわゆる護送船団方式を放棄して、実際に、破綻に追い込まれる金融機関が出ましたが、金融機関の合併による構造的な競争回避行動は、こういった破綻防止の観点からは有益であったと考えられます。銀行の特殊性は、何といっても、決済機能に由来しており、システミック・リスクを発生させないというプルーデンスの観点も重要です。最後に、ですから、いわゆる too big to fail (TBTF) 原則が金融機関に適用される場合があるわけですが、逆に、足利銀行の例を引いて、地域で巨大な役割を果たす TBTF 銀行であるがゆえに、ゾンビ的な地域企業を支える必要があり、そのために破綻に瀕する可能性が高まる、というのも何となく理解できる気がします。

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次に、金井利之『コロナ対策禍の国と自治体』(ちくま新書) です。著者は、東京大学の研究者であり、自治体行政学と紹介されています。本書では、昨年来の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)への地方公共団体の対応について、災害対応とも比較しつつ、中央政府と地方政府の関係も踏まえた分析が示されています。国や地方自治体の災害対応については、常時十分な対応体制を取ることはムダが多いのかもしれませんが、でも、東京都のようにCOVID-19パンデミックが目の前に見えている昨年2020年4月1日をもって都立病院の独立行政本陣化を進めるなど、コストセクターの削減を露骨に進めた点については、私は評価低いと考えざるを得ません。資源効率を重視することはそれなりに重要ですが、COVID-19対応のように業務が急速に拡大するおそれある分野については、通常の平時から一定の余裕をもたせた対応も必要です。特に、災害と同じで感染症対応についても地域住民の生命がモロにかかっている点を考慮すれば、余裕持った対応が求められることを忘れるべきではありません。本書で指摘するように、災害対応と同じようにCOVID-19対応についても法的根拠や財政の裏付けがないとして回避するがごとき対応をとってる地方自治体は少なくない印象を私は持っており、そういった地方政府の対応が感染症終息の大きな障害になっていることも事実です。逆に、中央政府を差し置いて東京都や大阪府が主導権を握らんとするような落ち着きない対応もCOVID-19パンデミック初期には見られた部分もあって、中央と地方の連携が重要だと改めて気付かされた気がします。

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最後に、半藤一利『歴史探偵 忘れ残りの記』『歴史探偵 昭和の教え』(文春新書) です。著者は、『週刊文春』や『文藝春秋』の編集長を務め、『日本のいちばん長い日』などの歴史小説でも有名なジャーナリストです。今年2021年1月に亡くなっています。その著者のエッセイのうち、アチコチのコラムなどに掲載されたものを編集して新書にしています。この2冊で終わるのか、さらに何冊か出版されるのか、現時点で私は情報を持ち合わせませんが、この2冊もやや取りとめないながら、なかなか洒脱な軽い読み物に仕上がっています。もともとは、『文藝春秋』の「新刊のお知らせ」とか、朝日新聞の「歴史探偵おぼえ書き」などに掲載されたコラムです。主として、昭和史、編集者のころに関係した文豪、文藝春秋社のあった銀座の街、あるいは、筆者の生まれ育った東京の下町や中学校に通った新潟県長岡などなど、ひとつのテーマに従ったエッセイ集ではありませんが、いくつかはとてもいい仕上がりになっていますし、何より、時間つぶしにはもってこいです。その意味で、とてもオススメです。ただし、私だけかもしれませんが、ほとんど頭には残りません。

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2021年10月 8日 (金)

雇用者増が20万人足らずに終わった米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録していたのですが、本日公表の9月統計では+194千人増にとどまっています。ただし、失業率は前月の5.2%から9月には4.8%に低下しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy adds disappointing 194,000 jobs in September as schools reopen but COVID spikes linger
Hiring slowed again in September as a surge in COVID 19 cases offset the reopening of most schools and expiration of unemployment benefits, developments that were expected to coax some Americans back to work.
The economy added 194,000 jobs and the unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 5.2% to 4.8%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 488,000 jobs were added last month.
A modest consolation: Job gains for July and August revised up by a total 169,000.
So far, the U.S. has recovered 17.4 million, or 78%, of the 22.4 million jobs lost during the depths of the pandemic in the spring of 2020. That leaves the nation 5 million jobs below its pre-crisis level.
The September report likely captured a labor market still healing from a soft patch after disappointing job gains in August followed blockbuster advances the prior two months, economists said.

長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは約+500千人の雇用増が予想されていましたので、+194千人増は多くのエコノミストから物足りない数字と受け止められているんではないかと私は想像しています。他方で、失業率は今年2021年年初には6%前後だったんですが、最近では5%を下回る水準までまで低下を示しています。ということで、やはり、9月統計については、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック拡大の影響で雇用改善にブレーキがかかった、というのが大方のエコノミストの見方ではないでしょうか。特に、8月統計の雇用者数がやや上方修正されて前月差で+366万人の増加を見ていただけに、落差を大きく感じるのも事実です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいたところに、バイデン政権の大幅な財政拡大があって、雇用改善が進んでいたわけなんですが、やはり、財政政策だけではデルタ株によるCOVID-19のパンデミックには十分ではなかった可能性があります。引用した記事にもあるように、COVID-19パンデミックで失われた雇用が22.4百万人あり、そのうちの17.4百万人、78%しか回復できていません。失業率も9月統計では5%を下回りましたが、パンデミック前には3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえません。
この先、金融政策の動向が焦点となります。11月2~3日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますが、この雇用統計を横目で見て、量的緩和政策の修正、すなわち、テーパリングの開始まで踏み込んだ金融政策運営が出来るかどうか、大いに注目です。

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