2020年1月26日 (日)

今週のお天気は大荒れか?

実は、4月から勤務する私大の研究室を見せてもらったり、不動産屋さんに新しい住まいの候補となる物件をいくつか見学させてもらうため、今週後半関西方面に出かける予定なんですが、東京も関西もお天気が大荒れのような雰囲気で、やや心配です。

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まず、上の天気図はウェザーニュースのサイトから引用しています。週明けの明日1月27日(月)は低気圧の接近に伴い、西日本の広い範囲で荒れた天気となるようで、特に、東シナ海を進む低気圧と大陸の高気圧との気圧差が大きく、沿岸部は東よりの風が強まる見込みとなっており、低気圧や前線に向かって暖かな空気が流れ込むため、1月としては記録的な大雨の可能性があります。取りあえず、今週前半の西日本のお天気ですから、私が行く週後半はここまで荒れたお天気ではない可能性もあります。

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次に、上の天気図もやっぱりウェザーニュースの別のサイトから引用しています。週明けの交通機関への影響予測なんですが、‹鉄道›、‹高速道路›、‹空の便›、の3部作から私が使う鉄道のみを引用しています。週後半の東海道新幹線への影響が気がかりですので、引き続きフォローしたいと思います。

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2020年1月25日 (土)

今週の読書はかなりたくさん読んで文庫本まで含めて計8冊!!!

今週は、データ経済におけるプライバシー保護や英国における階級分析の社会学をはじめとして、文庫本のシリーズ3巻まで含めると、以下の計8冊の読書でした。そろそろ、ペースを落とそうと思いつつ、なかなか巡り合わせがそうなりません。

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まず、日本経済新聞データエコノミー取材班[編]『データの世紀』(日本経済新聞出版社) です。データをいかにビジネスに生かして収益を上げるか、その際のプライバシーの扱いはどうなるのか、こういった疑問に関して、かなり否定的な見方を提供しています。日経新聞のジャーナリストのリポートらしくない気もします。本書の謳い文句なんですが、20世紀は石油の世紀であって、でも、産油国が我が世を謳歌したわけではなく、むしろ、石油をうまく利用した製品を生み出した先進各国の世紀だった一方で、21世紀のデータの世紀もデータを生み出した国が中心になるわけではなく、そのデータを上手く利用する国が国民に豊かな生活を提供するわけです。ということで、急遽設えられた雰囲気のある第0章のリクナビによる内定辞退率の提供問題から始まって、米国のGAFAが個人情報を収集・利用したビジネスで大きな収益を上げている事実を基に、経済学的な用語としてはまったく用いられていませんが、データ利用の外部性について、個人データを提供させられているサイドと、それを利用して実に効率的なビジネスを構築したサイドを対比させて、このままでいいのか、あるいは、個人情報や付随するデータをどのような利用に供するのが個人と情報企業の最適化につながるのか、考えさせられる部分が大きいです。それにしても、先週の読書感想文で取り上げた『デジタル・ミニマリスト』でも書いたんですが、FacebookやInstagramなどのSNSで嬉々としてアテンションと個人情報を提供している人達を見るにつけ、それはそれで幸福度が上がるのであればいいんではないか、ある意味で、データに関する前近代性をさらけ出しているような気がして、もはや意味のある個人データ保護がどこまで可能なのかに疑問すら生じます。例えば、リクナビ問題でも、就活学生サイドからすれば、個人情報を提供することなく採用に関する企業情報だけを得たいわけでしょうし、逆に、採用する企業サイドからすれば、企業サイドの採用に関する情報を開示することなく、就活学生の情報だけを得たいわけです。ただ、注意すべきは、情報企業だけでなく、自動車だって、電機だって、製品に関する情報は企業の方が消費者よりも圧倒的に持っているのは変わりありません。ですから、製造物責任のような制度を情報産業に対しても適用できるか、あるいは、外部経済の大きな産業に特有な独占の形成をいかに規制するか、その際、スティグラー的な「規制の虜」をいかに政府は克服するか、こういった問題を新たな産業でいかに国民本位に運営するかの問題と考えるべきです。すなわち、決して、本書のように、利便性と個人方法提供の間のトレードオフというわけではない、と私は考えています。

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次に、マイク・サヴィジ『7つの階級』(東洋経済) です。今日の日経新聞の書評欄で取り上げられていました。著者は、英国ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの社会学の研究者です。明示的にクレジットとして上げられているこの著者の他にも、社会学や教育学の研究者が何人かで共著しています。ただ、エコノミストはいなかったように見受けられました。英語の原題は、上の表紙画像に見られるように、Social Class in the 21st Century であり、2015年の出版です。栄子くんBBCが2011年に調査した結果を2013年に取りまとめて公表し、それらを学術的な出版物として取りまとめた成果であると私は認識しています。結論からすれば、邦訳タイトルのように、英国には7つの階級が存在し、上流から順に、(1) エリート7%、(2) 確立した中級25%、(3) 技術系中流6%、(4) 新富裕労働者15%、(5) 伝統的労働者14%、(6) 新興サービス労働者19%、(7) プレカリアート15%、となっています。そして、超えらの階級における3つの資本の賦存、すなわち、第1に、フローの所得やストックの金融資産や不動産といった経済資本、第2に、オペラ鑑賞や美術館での美術鑑賞、ほかに読書などのハイカルなどの文化資本、第3に、学歴や人脈やクラブの所属などの社会関係資本、の3つの資本で階級を可視化しようと試みています。(1) エリートは3つすべての資本を多く持ち、(2) 確立した中流はエリートについで3つの資本を持ち、(3) 技術系中流は比較的裕福で社会関係資本がやや少なく、(4) 新富裕労働者は比較的裕福で文化資本が少なく、伝統的労働者は3つの資本すべてがやや少ないものの、バランスがよく、(6) 新興サービス労働者は年齢的に若いこともあって、経済資本が少ないながら、文化資本と社会関係資本は持っていて、(7) プレカリアートはすべての資本に恵まれない、ということになります。また、それぞれの個人の人生は登山に例えられて、山を登るように3つの資本を蓄積して、従って、階級を上昇させる、と考えられていますが、もちろん、同じ地点から登山を始めるわけではなく、前の世代から受け継ぐものに大きな違いがあり、登山を始めるベースキャンプの標高には大きな差があるのは当然です。マルクス主義的な階級観では、生産要素の所有もしくは雌雄が基礎にあり、その経済的な下部構造が上部構造の文化や意識を決定する、と大雑把に考えられています。土地を所有する貴族、資本を所有するブルジョワジー、自分の労働力以外の生産手段を保有しない労働者階級、ということになり、それぞれの下部構造が上部の文化や社会関係を規定します。本書の社会学的な分析では、経済資本は他の2つと並列のひとつの要素に過ぎません。この3つの資本を本書のように分けて理解するか、マルクス主義的な階級観のように、経済資本が他の2つの資本を規定すると考えるか、議論は決定していない気がします。少なくとも、マルクス主義のように経済資本から文化資本や社会関係資本への一方的な決定論も、本書のように3つの資本相互間のインタラクティブな関係を考慮の外に置いて各資本を独立に扱うのも、どちらも片手落ち、というか、やや深みに欠けるな気がします。

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次に、保阪正康『昭和史7つの裏側』(PHP研究所) です。著者は、編集者や在野の歴史研究家となっています。本書の「昭和史」というのはやや広すぎる表現なんですが、昭和20年くらいまでの戦争に関する歴史に焦点を絞っていると考えるべきです。その中で、タイトルにあるように、章立ての順に従って、(1)「機密戦争日誌」はいかに保存されたか、(2)「昭和天皇独白録」の正体、(3) 学徒出陣壮行会で宣誓した学生代表の戦場(江橋慎四郎へのインタビュー)、(4) 逆さまに押した判子と上司・東条英機(赤松貞雄へのインタビュー)、(5)「日本はすごい」と思っていなかった石原莞爾(高木清寿へのインタビュー)、(6) 本当のところが知られていない東条英機暗殺計画(牛嶋辰熊へのインタビュー)、(7) 陸軍省軍務局で見た開戦経緯(石井秋穂へのインタビュー)という構成になっています。なんだか、ほとんど第2章から第7章までのが取材対象者、というか、歴史の実体験者からの証言、的に構成されているんですが、私には疑問に思える部分も少なくありませんでした。当然ながら、いろんな歴史上のイベントが生じてから、まず、終戦という大きな不連続点を通過し、さらに、それなりの年月を経過した後のインタビューです。しかも、インタビューの対象が、東条英機の秘書だった赤松貞雄、あるいは、石原莞爾の秘書だった高木清寿など、傍で見ていた観察者ではなく、実際の当事者に近い存在ですから、どこまで脚色されているのかが判りかねます。その上、同じ帝国陸軍軍人ながら、開戦から本土決戦まで主戦派だった東条英機と、いわゆる「最終戦争」まで隠忍自重を主張した石原莞爾では、まったく方向性が異なるわけですし、陸軍関係者ばかりのインタビューで、海軍サイドの見方は欠けており、例えば、ホントに海軍が開戦に反対だったら太平洋戦争は始まらなかった、とか、中国で陸軍が華々しい戦績を上げているのを海軍は羨んでいた、などと主張されると、ますます信頼性が低下するような気がします。たしかに、組織的な隠滅工作が実施されて、戦争に関する史料が極端に少ないのは理解しますが、それをインタビューで埋めようとするのは、やや疑問です。主として、誘拐事件などで論じられるストックホルム症候群のような現象が取材者と取材先で生じるようなリスクも感じられます。細かな人間関係などのマイクロな開戦や終戦の理由ではなく、もっと歴史的な必然性を炙り出すような大きな流れを解明する歴史観が必要ではないでしょうか。もちろん、開戦や終戦のバックグラウンドとなる経済社会的な実情についても考えを巡らせるべきであろうと思います。

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次に、エドワード・スノーデン『スノーデン独白』(河出書房新社) です。6年前の2013年の衝撃的な情報漏洩事件の首謀者の自伝です。CIAとNSAという世界最強の米国諜報業界(IC=たぶん Intelligence Circle)を敵に回して、結局、ロシアから出られなくなった人物です。情報漏洩、あるいは、リークという意味では、いわゆる「パナマ文書」によるモサック・フォンセカからの流出と、本書のスノーデンからのリークが今世紀前半では「大事件」といえるんでしょうが、モサック・フォンセカが単なる民間の一会計事務所であるのに対して、スノーデン文書の方は米国諜報機関の赤裸々な活動実態を明らかにしているだけに、より興味をそそられる、というのも事実でしょう。スノーデン本人の生まれ育ちから、リークに至るまでとさらにリーク直後の事実関係を、おそらく、かなり正確に描写している気もします。ただ、スノーデン本人、すなわち、リークした側からすれば、「やった、やった」というカンジで過大に評価するバイアスがかかる一方で、CIAやNSAのようにリークされた側では「たいしたことではない、情報の価値は低い」などと過小評価するバイアスがかかるでしょうから、本書については、それなりに、眉に唾してハッタリをかまされないように気を付けながら読み進む必要があるかもしれません。私自身は昨年3月に定年退職するまで長らく国家公務員として政府に勤務しており、国家公務員でなければできない職業として、スパイと外交官と軍人がある、なんぞとうそぶいていた人間ですので、本書の情報リークに関しては、それなりにリークされた側にシンパシーを感じかねないバイアスがあるような気もします。例えば、007ジェームス・ボンドは、小説上の設定ながら、MI7に勤務する海軍将校であり、当然、国家公務員なんだろうと思います。ですから、私はスノーデン個人がどれだけの知性を持った人物か、加えて、どれだけの覚悟をもってリークしたのか、を読み取ろうとしましたが、なかなかに難しい課題だった気がします。リーク事件直後の直感的な受け止めで、スノーデンの知性は高くない、という印象は本書を読んでも否定されませんでした。ただ、覚悟については、それなりに理解が進んだ気がします。ルービック・キューブのシールにマイクロSDを隠して情報を持ち出すシーンや、リーク後の香港出発やロシアの空港でのやり取りなど、それなりにサスペンスフルな場面もありましたが、私にはそれほど印象的ではありませんでした。ただ、映画化されれば見に行くような気もします。

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次に、米澤穂信『Iの悲劇 』(文藝春秋) です。著者は、古典部シリーズなどで人気のミステリ作家です。この作品は、小市民シリーズのように、ある意味で、ユーモア・ミステリ、というか、ややブラックなユーモア・ミステリで、殺人などの深刻な犯罪行為は出て来ませんし、でも、かなり論理的で本格的な解決が示されるミステリ長編、ないし、連作短編集といえます。舞台と主たる登場人物は、市町村合併で巨大な市が形成された中で、とうとう、数年前に無人になった集落にIターンとして人を呼び戻すため、まだ使える家屋などを低廉な家賃で貸し出して、移住者を集めて定住化を促進しようとする市役所の支所で働く3人の公務員です。定時で帰宅してそれほど仕事熱心とも見えない課長と、やや社会人というには幼い新人女性にはさまれた男性が主人公に据えられています。別サイドには無人化した集落に移住を希望する人々が据えられ、でも結局、すべての移住希望者が去ってしまい、有名なミステリのタイトルよろしく「そして誰もいなくなった」で終わります。最初の方は、公務員3人のキャラがよく出ていて、それでも、仕事熱心と思えない課長の謎解き能力に驚かされたりもしますが、だんだんと読み進む上でタマネギの皮をむくように真実が明らかになっていきます。最終章に至るまでに、この作品の作者のファンであれば、ほぼほぼ全員が真相にたどり着くことと思います。また、各章で問題を起こしたり、あるいは、去っていく維持遺希望者も立派なキャラが立っていて、読み進んでも混乱をきたすことはありません。というか、私自身は、こういった限界集落のような田舎に移住したいとは思いませんから、この作品に登場するような移住希望者は、やっぱり、少し変わったところがあるんだろうと楽しく読めます。ただし、第5章だけは、ヤル気なし課長の守護神、火消し役としての面が明らかにされるほかは、後半は主人公と弟の間で延々と電話の会話がIターンの意味について考えさせられる、という意味で、この連作短編集の中で、それなりの重要性はあるものの、章として独立させる意味があるのかはやや疑問です。作者の力量からすれば、こういった課長の守護神=火消し役としての能力やIターンの意義に貸しては、個別にところどころに溶け込ませることも十分可能ではないかという気がします。まあ、こういった個別の章建てで論じてもらえば、私のような頭の回転の鈍い読者にも結論が見えてくる、という意味では意味あるかもしれませんが、やや冗長な章立てだっという気もしました。でも、この1点を別にすれば、とても秀逸なミステリだと思います。ここまで素晴らしいミステリは久々です。出来のいいミステリが多い作家であることはいうまでもありませんが、ひょっとしたら、本作が代表作といえるかもしれません。でも、やっぱり、クローズド・サークルの『インシテミル』かなという気もします。

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最後に、ハーラン・エリスン[編]『危険なヴィジョン 完全版』123(ハヤカワ文庫SF) です。編者は、米国のSF作家であり、よく「奇才」と称されたりしているんではないかと思います。本書では、SFをScience Fictionではなく、Speculative Fictionnと称していたりします。全3冊に渡る30編余りの短編で編まれており、アシモフやスタージョンをはじめ、キラ星のようなSF作家が作品を寄せています。第1巻巻末の解説にあるように、作家協会の会員が選ぶネビュラ賞やファン投票で決まるヒューゴー賞を受賞あるいは最終候補に残った作品もいくつか含まれています。全編書下ろしといううたい文句です。米国で原書が出版されたのは50年以上も前の1967年なんですが、さすがに、やや古いと感じさせる短編もある一方で、まだまだ輝きを失っていない作品も少なくありません。もちろん、米ソの冷戦の環境下で、また、そもそも海外SF小説ということで、ソ連の技術的な脅威を過大評価していたり、あるいは、やや残虐な場面が少なくないような気もします。短編作品ごとに付された編者の序文や著者のあとがきがウザい気もしますし、もちろん、短編ごとの統一感ないのは承知の上で読み始める必要があります。ただ、古さを感じさせる作品も含めて、ある意味で、いくつかある米国SF小説の黄金時代のうちのひとつの雰囲気を感じることが出来ると思います。読みようによっては、各巻1時間ほどで読み切ることも可能ですし、逆に、じっくりと時間をかけるだけの読み応えもあります。

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2020年1月24日 (金)

2019年12月の消費者物価(CPI)はエネルギー価格動向により上昇幅を拡大!

本日、総務省統計局から昨年2019年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.7%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.9%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の全国消費者物価、0.7%上昇 伸び率拡大
総務省が24日発表した2019年12月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.2と18年12月に比べ0.7%上昇した。プラスは36カ月連続。材料費や人件費の高止まりを背景とした外食、宿泊料などの上昇に加え、損害保険大手が火災・地震保険料を引き上げたのも物価上昇に寄与した。
上昇率は19年11月の0.5%から拡大した。宿泊料などの上昇に加え、原油価格の上昇でガソリンや灯油の価格の下落幅が縮小したのも物価上昇につながった。一方、携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
19年12月は生鮮食品を除く総合では387品目が上昇した。下落は112品目、横ばいは24品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を勘案したCPIの試算値も公表した。総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、19年12月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.4%となる。
19年12月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.1と18年12月比0.9%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.3と0.8%の上昇だった。
あわせて発表した2019年平均の全国CPIは、生鮮食品を除く総合が101.7と18年比0.6%上昇した。上昇は3年連続。外食やエネルギー関連項目の上昇がけん引した。前の年と比べた上昇率は18年の0.9%から縮小した。生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.6%上昇、生鮮食品を含む総合は0.5%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、昨年2019年の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。12月統計ではコアCPI上昇率が+0.7%と少し上昇幅を拡大しているものの、このコアCPI上昇率+0.7%のうちの+0.20%が制度要因といえます。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月と11月は消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%でしたが、12月統計では+0.4%にやや加速しています。このコアCPI上昇率の加速の大きな要因はエネルギーであり、かなりの程度に、国際商品市況における石油価格に連動しています。ただ、やや話がややこしいのは、まだ12月統計でもエネルギー価格が下落している点です。すなわち、11月統計では前年同月比で見たエネルギー価格の下落は▲2.1%でしたが、12月統計では▲0.6%に下落幅を縮小させ、その分、コアCPI上昇率の上昇幅拡大に寄与しています。その寄与度差は+0.13%と統計局のリポートで示されています。この寄与度差+0.13%のうち、ガソリンだけで+0.14%に上っており、自動車に乗らない人にはやや実感が薄いかもしれません。また、このエネルギー価格の下落幅の縮小によるコアCPI上昇率へのプラス寄与については、2018年11月に国際商品市況で石油価格がピークを打っていますので、その1年後の2019年11月に物価上昇へのマイナス寄与がもっとも大きくなっているわけで、その後、というか、この先数か月に渡ってエネルギーは我が国物価にプラス寄与しそうです。従って、国際商品市況における石油価格や為替レートの動向にも依存しますが、この先、今年2020年年央くらいまでコアCPI上昇率は+1%近い上昇率を続ける、との見方がエコノミストの間で広がっていることも事実です。その後、消費税率引上げの物価押上げ効果も剥落し、コアCPI上昇率は減速する、との見立てです。金融政策よりもエネルギー価格の方が、我が国物価へのインパクト大きい、という点は変わりないようです。

年初早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したとの報道があり、中東の地政学的リスクから石油価格の動向を私は懸念したんですが、その後、国際商品市況において石油価格が急騰したということにはなっていないようで、例えば、私が時折拝見しているみずほ証券の「マーケット・フォーカス 商品:原油 2020/1/9」では、中東リスクによる不透明感あるものの、「長期的な原油価格の変動要因としては地政学リスクよりも世界景気に軍配があがろう」と指摘していますし、私の知り合いも、米国内のシェール・オイルなどの裏付けあって、石油価格の高騰を招く可能性小さいと考えたからこその軍事行動である、との指摘も受けました。石油価格動向は私には極めて不案内で専門外なんですが、そうなのかもしれません。

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2020年1月23日 (木)

2か月連続で貿易赤字を記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.3%減の6兆5771億円、輸入額も▲4.9%減の6兆7296億円、差引き貿易収支は▲1525億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の貿易収支、1525億円の赤字 通年は2年連続赤字
財務省が23日発表した2019年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1525億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1510億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.3%減の6兆5771億円、輸入額は4.9%減の6兆7296億円だった。
併せて発表した19年の貿易収支は1兆6438億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は2年連続。輸出額は18年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円だった。

いつもの通り、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが貿易赤字▲ 1510億円でしたから、実績の▲1525億円の赤字はほぼほぼジャストミート、何のサプライズもなかったといえます。また、季節調整済みの系列を見ても、12月の貿易収支は▲1025億円の貿易赤字となっており、2018年年央7月からほぼ1年半に渡って貿易赤字を続けており、黒字を記録した月は例外的ともいえ、2019年中では2月と6月だけで、前者2019年2月の黒字は明らかに中華圏の春節の影響だと私は考えています。この1年半の間、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入とも緩やかに減少のトレンドにあるように見えるのは、明らかに、米中間の貿易摩擦による関税率引上げに起因した世界的な貿易の停滞やひいては世界経済の需要低迷の影響であると考えるべきです。ここ1年半ほどのトレンドとして、日経新聞の記事「輸出入3年ぶりマイナス 米中貿易戦争で需要減」をはじめとして、年統計に注目した報道の通りといえます。このブログでは景気動向に私自身の興味があるものですから、出来る限り、high frequency という観点から、年統計よりも四半期統計、四半期よりも月次統計を重視していますが、報道では年統計に着目したものが多いので、ここでは、少しニッチを狙って四半期統計に着目したいと思います。すなわち、2018~19年の2年に渡って貿易収支は赤字を続けているわけですが、2019年の各四半期でも、季節調整していない原系列のベースながら、4四半期連続で貿易収支は赤字を続けました。特に、直近では2019年7~9月期▲5263億円、10~12月期▲2249億円となっており、ホントは経常収支ながら貿易収支だけから見て、2019年10~12月期の貿易収支の赤字幅が縮小していますからGDP成長率に対して外需はプラス寄与する可能性が高い、と私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、12月統計では輸出数量の前年同月比のマイナス幅が大きく縮小していることも事実であり、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。

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2020年1月22日 (水)

世界経済フォーラム主催のダボス会議におけるOXFAMのリポートやいかに?

いくつかの報道に見られる通り、今週1月21日から24日までダボス会議が開催されています。その中から まあ、私の趣味に従って、昨年と同様にOXFAM のリポート Time to Care に注目したいと思います。ダボス会議の主催者である世界経済フォーラムのサイトにも言及がありますし、もちろん、pdfの全文リポートサマリーリポートもアップされています。このリポートでは、性差別経済が不平等の危機を拡大している "our sexist economies are fuelling the inequality crisis" と、特に以下の3点を例として強調しています。OXFAMのサイトから引用しています。

Time to Care
  • The 22 richest men in the world have more wealth than all the women in Africa.
  • Women and girls put in 12.5 billion hours of unpaid care work each and every day - a contribution to the global economy of at least $10.8 trillion a year, more than three times the size of the global tech industry.
  • Getting the richest one percent to pay just 0.5 percent extra tax on their wealth over the next 10 years would equal the investment needed to create 117 million jobs in sectors such as elderly and childcare, education and health.

下の INFOGRAPHICS は、全文リポートの p.8 から引用していますが、サマリーリポートの p.6 にもほぼほぼ同じものが掲載されています。

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男女間の性別の不平等をはじめとして、格差や不平等は単に不正義であるだけでなく、大きく経済を歪めていると私は考えています。何としてもこれらの不平等を是正し、経済を正常な状態に戻す方策を探る必要があります。その意味でも、OXFAM Japan が2018年9月限りで解散したのは誠に遺憾千万、残念この上ありません。

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2020年1月21日 (火)

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日1月21日から開催されたダボス会議を前に、昨日1月20日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, January 2020 が公表されています。副題は、Tentative Stabilization, Sluggish Recovery? とされており、前半部分もさることながら、特に後半部分がよく中身を表している気がします。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなんですが、昨秋2019年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2020年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方改定されて+3.3%と見込まれている上に、来年2021年も▲0.2%ポイント下方修正されて+3.4%と予測されています。この下方修正の要因は、リポートでは、"The downward revision primarily reflects negative surprises to economic activity in a few emerging market economies, notably India" と、インドに起因することを明記しています。広く報じられた通り、住宅金融のノンバンクであるデワン・ハウジング・ファイナンス(DHFL)のデフォルトによる金融混乱を指していると多くのエコノミストは受け止めていることと思います。ただ、同時に、IMFのブログ・サイトでは、"some risks have partially receded with the announcement of a US-China Phase I trade deal and lower likelihood of a no-deal Brexit" と、米中間の第1段階の貿易合意の発表、また、合意なきBREXITの可能性の低下などをリスク低下の要因として上げています。私が見た範囲では、全国紙各紙とも見通し下方修正の要因としてインドに軽く触れている一方で、もっと明るい話題というか、何というか、米中貿易合意とか、BREXTの方の注目度が高かった気がします。先行きについては、リポートでも、"On the positive side, market sentiment has been boosted by tentative signs that manufacturing activity and global trade are bottoming out" と、製造業と世界貿易の落ち込みがボトムアウトする兆候により市場センチメントが向上する、とする一方で、"few signs of turning points are yet visible in global macroeconomic data" と、世界のマクロ経済には転換点を示すデータはまだほとんどない、と先が長い可能性も示唆しています。
日本の成長率見通しについては、今年2020年が+0.7%成長と前回見通しから+0.2%ポイント上方修正された一方で、来年2021年は変わらず+0.5%と見込まれています。このあたりが潜在成長率近傍なのかもしれません。なお、今年2020年の成長率を上方改定した理由は、"healthy private consumption, supported in part by government countermeasures that accompanied the October increase in the consumption tax rate,robust capital expenditure, and historical revisions to national accounts" と、昨年2019年10月の消費税率引上げに合わせた政府経済対策にも部分的に支援されて消費が堅調であり、設備投資も伸びているとしています。ただ、最後のポイント、すなわち、過去にさかのぼっての国民経済計算統計の改定という理由は、まあ、わざわざこんなことを明記するんですから、統計の信頼性に対する苦情にやや近い気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.4~+0.5
<+0.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 2020年度+0.8~+1.1
<+0.9>
+1.0~+1.1
<+1.0>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 2021年度+1.0~+1.3
<+1.1>
+1.2~+1.6
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>

最後に目を国内に転ずると、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。各セル下段の>< >内は中央値となっています。ただし、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。IMF見通しに従って、というわけでもないんでしょうが、日銀見通しも成長率については上方修正されていて、日銀自身も「展望リポート」1ページめのサマリーで、成長率については「2020年度を中心に、上振れている」と見ている一方で、物価の見通しについて「おおむね普遍」と自己評価しています。上のテーブルで明らかな通り、実は、やや下方修正という見方も成り立つような気がします。

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2020年1月20日 (月)

「中長期の経済財政に関する試算」の結果やいかに?

先週金曜日、1月17日に経済財政諮問会議が開催され、スマート化・グリーン化投資と関連人材投資を軸とした産業構造・経済構造の再構築などをはじめとする2020年前半の主要議題や来年度予算とともに、「中長期の経済財政に関する試算」、すなわち、財政収支と公債残高のGDP比の試算が2029年度まで示されています。

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見れば判ると思いますが、上のパネルが国・地方のプライマリ・バランスのGDP比、下が国・地方の公債等残高のGDP比となっています。報道では、プライマリ・バランス黒字化が目標の2025年度に達成できず、赤でプロットされている成長実現ケースでも2027年度に先送りされ、青のベースラインケースでは試算期間中の2029年度までではプライマリ・バランスは赤字のまま、という点が強調されていたように私は受け止めています。でも、上のグラフをよく見れば、プライマリ・バランス赤字を続けるベースラインケースでも、公債残高のGDP比は190%くらいで安定します。現代貨幣理論(MMT)を持ち出すつもりもありませんが、このあたりで十分ではないでしょうか。

なお、国際通貨基金(IMF)のサイトによれば、「世界経済見通し」World Economic Outlook の改定が本日1月20日のダボス会議で明らかにされる予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2020年1月19日 (日)

今年の花粉飛散予想やいかに?

つい先日までお正月気分だったんですが、早くも1月の終わりに近づき、2月に入れば花粉の季節となります。やや旧聞に属する話題ながら、東京都福祉保健局から先週1月16日に「令和元年度東京都花粉症対策検討委員会(第2回)検討結果」として、花粉の飛散開始日は2月14日から18日ごろ、また、今春の飛散花粉数は、例年の6割、昨春の6割程度、との報道発表資料が明らかにされています。参考資料の「飛散花粉の総数の予測」のpdfファイルから都内12地点平均の飛散花粉数の経年変化のグラフを引用すると以下の通りです。

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おそらく、3月中には私は関西に引っ越す予定なんですが、昨シーズンや平年の6割程度の飛散であれば、かなりラクそうな気もします。

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2020年1月18日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとして文庫本まで含めて計7冊!!!

先週の読書は巡り合わせにより経済書がなかったりしたんですが、今週の読書は、明々白々たる経済書が2冊あり、経済活動にも十分配慮した進化心理学の専門書、モバイル機器を通じたアテンション経済に対する批判など、以下の計7冊の読書だったんですが、うち3冊は文庫本だったりします。この先、しばらく、読書のペースは落ちそうな気がします。

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まず、鶴光太郎・前田佐恵子・村田啓子『日本経済のマクロ分析』(日本経済新聞出版社) です。著者3人は、経済企画庁ないし内閣府において「経済白書」または「経済財政白書」の担当部局の課長補佐や参事官補佐を経験したエコノミストです。ただし、なぜか、というか、何というか、課長や参事官を経験したわけではないようです。いずれにせよ、私自身が従来から考えているように、本流の官庁エコノミストはこういった白書などのリポートを、政府全体や個別の役所の公式見解として取りまとめることを担当する人たちなんだろうと思います。私も、とある白書を1回だけ執筆担当したことがありますが、「経済白書」や「経済財政白書」といった役所を代表する白書ではありませんでしたし、それもたった1回のことです。他方、私の場合は長らく研究所に在籍して、「役所の公式見解ではなく、研究者個人の見解」という決まり文句をつけた学術論文を取りまとめることが多かったような気がします。まあ、私は傍流の官庁エコノミストなのだと改めて実感しました。ただ、どうでもいいことながら、最近知ったんですが、私が白書を担当したころとは違って、「経済財政白書」なんぞは執筆担当者の個人名が明記されるようになったりしています。少しびっくりしました。というおとで、本書は我が国のバブル経済が崩壊した1990年ころ以降から現在まで約30年間の日本経済を概観し、いくつかのパズルを設定して解き明かそうと試みています。第1章で成長の鈍化をほぼほぼすべて生産性と要素投入という供給サイドで説明しようと試みていて、私なんぞの傍流と違って、本流の官庁エコノミスト諸氏はやっぱり供給サイド重視で、見方によればかなり右派的な思考をするんだと感心してしまいます。ただ、3章の景気循環あたりから需要サイドにも目が向くようです。全体として、大きなテーマに対して索引まで含めても250ページ足らずのボリュームの本に仕上げようとしていますので、よく表現すれば、とてもコンパクトに日本経済を概観して諸問題を提起している、といえますし、他方で、やや辛口に表現すれば、もう少していねいに掘り下げた分析も欲しいところ、という気もします。これは私自身でもまったく実践できていないんですが、エコノミスト的に問題に対する診断を下すことは出来ても、コンサルタント的に問題に対処する実践的な処方箋を提示することは難しい、と常々感じます。その昔に、よくゴルフをプレーしていたころの判りやすい例として、エコノミスト的には「ボールをティーアップしてドライバーを振って、250ヤード先のフェアウェー中央に飛ばす」というのがアドバイスとしてどこまで適当なのかどうか、もっと実践的に、ヘッドアップしないとか、脇を締めるとか、そういったアドバイスが必要なのではないかと思わないでもありません。繰り返しになるものの、私自身も実践できていませんが、本書におけるパズルへの回答は、その意味で、エコノミスト的なようにも見えます。

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次に、井上智洋『MMT 現代貨幣理論とは何か』(講談社選書メチエ) です。著者は、駒澤大学の研究者です。従来から、AI導入経済におけるベーシックインカム、左派的な財政拡張論などで、私は注目しています。ということで、本書はコンパクトに現代貨幣理論(MMT)について取りまとめた入門書となっています。ただ、著者もまだ完全にMMT論者として、MMTのすべての理論に納得しているわけではないことは明記しています。貨幣の成り立ちについても、その昔の宋銭の導入などの商品貨幣の例を見ても、「万人が受け取る」という主流派経済学の考え方は捨てがたく、MMTの根源的な貨幣論への部分的な反論も持ち合わせています。私は貨幣論の方はともかく、いまだに、MMTの財政によるインフレのコントロールについては疑問を持っています。すなわち、本書では取り上げていませんが、財政政策は基本的に法定主義であって、認知ラグと波及ラグはともかく、決定ラグが金融政策よりもかなり長い可能性が高くなっている上に、本書でもやや批判的に紹介している雇用保障プログラム(Job Guarantee Program=JGP)の運用については、財政支出の柔軟性がどこまで確保されるかはもっとも疑問大きいところです。すなわち、デフレであれば財政赤字を増やして、インフレであれば財政赤字を削減するわけですが、そもそも、それほどの機動性を確保できるかが疑問な上に、どのような歳入や歳出が柔軟に増減できるかは未知数といわざるを得ません。現在の日本のようにデフレだから何らかの財政支出を増加させるとしても、インフレに転じた時に簡単にその財政支出をカットできるかどうか、その点が疑問であるとともに、そんなに簡単にカットできるような歳出をして雇用を維持すべきかどうかも疑問です。私の基本的な経済に対する見方として、財政よりも雇用の方がとても重要性が高いのは十分に認識していて、おそらく、日本のエコノミストの中でも財政と雇用の重要性の開きがもっとも大きなグループに属しているのではないか、とすら思っているんですが、インフレ時に簡単にカットできるような歳出によって維持すべき雇用の質については、国民のモチベーションをどこまで引き出せるかは否定的な思いを持ってしまいます。加えて、本書の著者が指摘しているように、10年やそこらの期間であれば現在の日本クラスの財政赤字のサステイナビリティは問題ないとしても、30年とか50年の期間を考えれば、JGBを取り扱う金融市場がどのように動くかは、何とも、経済学のレベルでは予測がつきません。ただ、逆にいえば、5年とか10年くらいで集中的にデフレ脱却を目指す政策としてはMMTはかなり可能性あるんではないか、という気もします。いずれにせよ、昨年2019年11月9日の読書感想文で取り上げたレイ教授の『MMT 現代貨幣理論』では、立命館大学の松尾教授が「MMTの命題は『異端』ではなく、常識である」と題した巻末解説を寄せていましたが、数年間でのデフレ脱却を目指す政策の観点からは、その通りだと私も考えます。ただし、本書の著者はユニバーサルなベーシックインカムの推進論者なんだと私は理解していますが、MMT理論に基づくとベーシックインカムの財源は財政赤字ではなく、キチンとした財源が必要、という点は忘れるべきではありません。インフレに転じたからといって、ベーシックインカムを削減したり、取り止めたりすることはできないからです。

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次に、ウィリアム・フォン・ヒッペル『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか』(ハーパーコリンズ・ジャパン) です。著者は米国出身で、現在はオーストラリアのクイーンズ大学の研究者をしています。英語の原題は The Social Leap であり、2018年の出版です。ということで、上の表紙画像に見られるように、「進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略」ということですので、やや読み始める前には懸念があり、進化心理学ですから、すべてを種の保存、あるいは、狭義にはセックスに結び付けているんではないか、とおもっていたところ、さすがにそうではありませんでした。3部故末井となっており、第1部はわれわれはどのようにヒトになったのか、第2部は過去に隠された進化の手がかり、第3部は過去から未来への跳躍、と題されていて、最後の第3部の「跳躍」が英語の原題のLEAPに当たりますし、第1部でも、熱帯雨林の樹上生活からサバンナへの移動も「社会的跳躍」と位置付けられています。その第1部は、その昔に読んですっかり内容は忘れたものの、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』を進化心理学から解き明かしたような中身になっていて、人類史をかなり唯物史観で見ている気すらしました。本書第1部は、チンパンジーとアウストラロピテクスなど人類の祖先との比較から始まります。チンパンジーは集団で狩りをしたり敵の群れを攻撃したりする時のみ、少しだけ協力するものの、彼らは怠け者と協力者をほとんど、あるいはまったく区別しようとせず、怠け者のフリーラーダーも同じ獲物にありつける一方で、類人猿のアウストラロピテクスは集団的な石投げで狩りを行い、協力しない者を集団から追放、あるいは、処罰したと推測しています。そして、当時の生活状況からすれば、類人猿の集団から追放されれば生き残れる確率が格段に低下しただろうとも推測しています。第2部では、経済学の分野のイノベーションも考察の俎上に上ります。偉大なイノベーションを起こした人はそれほど実生活が充実しているわけではない、と指摘していたりしますし、その他、極めて多くの進化心理学の研究成果が紹介されており、出版社のサイトに目白押しで取り上げられています。たとえば、最近の経済活動の上で「モノ消費」から「コト消費」、すなわち、耐久消費財などを買うよりも旅行などの体験を重視する消費へのシフトも進化心理学の研究成果から、その正しさが裏付けられていたりします。加えて、60歳を超えた私なんぞが少し注目したのは、高齢者の孤独は喫煙などよりもよっぽど危険であり、年を取れば、むしろタバコを吸いながら仲間と談笑する方がリスクが小さいと指摘されていました。ひょっとしたら、そうなのかもしれません。今週の読書の中では、350ページ超ともっともボリュームがありましたが、トピックも楽しく邦訳も上質で一気に読めます。

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次に、カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト』(早川書房) です。著者は、米国ジョージ・タウン大学の研究者であり、専門分野はコンピュータ科学だそうです。英語の原題は Degital Minimalist であり、2019年の出版です。タイトルのデジタル・ミニマリストとは、トートロジーですが、デジタル・ミニマリズムを実践している、あるいは、実践しようとしている人のことであり、著者は、実際に、何人か集めてデジタル・ミニマリズムを実践することまでやっているようです。ただ、私としては、本書で使っている他の用語「アテンション・レジスタンス」の方が、より適当な気がしています。ということで、本書が指摘するように、いろんなところで、口を開けてスマホの操作に熱中している人を見かけると、私もモバイル機器の操作、おそらくは、スマートフォンを使ってのゲームとSNSには中毒性があるんではないか、と疑ってしまいます。本書では、30日間のスマートフォン断食などを提唱する一方で、スマートフォン操作に代わって、人生をもっと豊かにする趣味の充実などを提唱しています。ただ、読んでいて、私もようやく今月になってスマートフォンに切り替えましたが、私自身はミニマリズムではないとしても、少なくとも合理的な範囲でのオプティマイズは出来ている気がします。TwitterやInstagramは使っていませんが、さすがの私もFacebookは使っていて、おそらく、毎日30分くらいは使っていそうな気がします。でも、ほぼほぼ機械的に「いいね」のボタンを押しているだけで、その対象は半分以上が趣味の世界、特に阪神タイガースに関する記事だったりします。メールはスマートフォンでチェックこそすれ、実際に読む価値あるメールはスマートフォンではなく、パソコンで読んでいます。スマートフォンでそのまま削除するメールも決して少なくありません。ですから、繰り返しになりますが、パソコンも含むデジタルではなく、スマートフォンなどのモバイルに特化したタイトルにした方が判りやすかった気がします。著者は、スマートフォンをヤメにしてフィーチャーフォンに切り替え、SNSなどはパソコンからのアクセスを推奨しています。私も、ご同様に、スマートフォンなどのモバイル・デバイスからSNSにアクセスするのと、パソコンからのアクセスはかなり違うと感じていて、パソコンを多用しているのが実態です。その上で、私は私自身の「アテンション」にそれなりの価値があると自負していて、スマートフォンからのSNSへのアクセスに限らず、私のアテンションを向ける先は合理的に厳選しているつもりです。中毒性ある行為に対してはもちろん、期待値がマイナスになるに決まっているギャンブル、喫煙や過度の飲酒などなど、非合理的なアテンションの向け方、あるいは、時間の使い方は決して賢明ではないと考えていて、それなりに、主流派経済学が前提とするような合理的なホモ・エコノミカスとして考えて行動したい、と願っています。もっとも、どこまで実践できているかは不明です。

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次に、モーム、フォークナー他、小森収[編]『短編ミステリの二百年 1』(創元推理文庫) です。上の表紙画像にも見られるように、明確に第1回である旨が示されており、上中下を越えて4巻以上のシリーズになるものと私は予想していますが、詳細は明らかではありません。本書冒頭でも示されている通り、私も昨年の今ごろは江戸川乱歩[編]『世界推理短編傑作集』の第1巻から第5巻までを読んでいたりしましたが、本書が嚆矢となるシリーズについてはよく知りませんでした。江戸川乱歩編のシリーズは1844年から1951年が対象となっているらしい一方で、本書のシリーズは前後ともにさらに長いタイムスパンを持つ200年です。編者である小森収ご本人が、そういった詳細について、本書の後半部分で「短編ミステリの200年」として取りまとめていますが、序章と第1章の途中で終わっている印象で、続巻でさらに明らかにされるんではないかと私は受け止めています。出版社のサイト「Webミステリーズ」の情報でもよく判りかねます。ということで、、シリーズの全貌は不明な部分が多いんですが、取りあえず、この第1巻の収録作品は、リチャード・ハーディング・デイヴィス「霧の中」、ロバート・ルイス・スティーヴンスン「クリームタルトを持った若者の話」、サキ「セルノグラツの狼」及び「四角い卵」、アンブローズ・ビアス「スウィドラー氏のとんぼ返り」、サマセット・モーム「創作衝動」、イーヴリン・ウォー「アザニア島事件」、ウィリアム・フォークナー「エミリーへの薔薇」、コーネル・ウールリッチ「さらばニューヨーク」、リング・ラードナー「笑顔がいっぱい」、デイモン・ラニアン「ブッチの子守歌」、ジョン・コリア「ナツメグの味」、となっています。「さらばニューヨーク」の作者のウールリッチは別のペンネームはウィリアム・アイリッシュであり、アイリッシュ名義で書かれた『幻の女』はオールタイムベストのトップ10に必ず入るくらいのミステリの名作だったりしますが、サキの2作品など、あまりミステリとは考えられない短編の週録も少なくなく、どういった編集方針なのかは私にはよく理解できません。ただ、ミステリかどうかはともかく、短編の名作が収録されていることは確かですし、十分に読書を楽しめると考えてよさそうです。

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最後に、キャロル・ネルソン・ダグラス『ごきげんいかが、ワトスン博士』上下(創元推理文庫) です。シャーロック・ホームズを出し抜いたほぼほぼ唯一の女性であるアイリーン・アドラーを主人公にした「アイリーン・アドラーの冒険」シリーズの第3作です。アイリーン・アドラーが探偵役で、ホームズを出し抜いて事件を解決します。当然、シャーロック・ホームズのパスティーシュです。このシリーズで邦訳されたのはすべて同じ出版社からの文庫本で、第1作の『おやすみなさい、ホームズさん』では正典の「ボヘミアの醜聞」をアイリーン・アドラーの側から捉えた小説であり、第2作の『おめざめですか、アイリーン』ではパリの事件を解決します。これは、ホームズものの中の、いわゆる「書かれざる物語」で、ワトソン博士が言及しただけの事件なのかもしれませんが、私はそれほど熱心なシャーロッキアンではありませんから、よく知りません。第3作の本作品では、正典作者のドイル卿が混乱を示しているワトソン博士の銃創について作者なりの解釈を示しています。すなわち、ワトソン博士はアフガニスタンでの従軍により銃創を負ってロンドンに帰還するわけですが、その銃創が肩なのか、足なのかで正典に混乱が見られ、この作品では、ワトソン博士は肩に銃撃を受けた後、現地の熱病にかかって生死の境をさまよい、その際に足にも銃創を負った、という解決を示しています。ストーリーとしては、アフガニスタンの戦役でワトソン博士に命を助けられたという退役士官とアイリーン・アドラーがパリで遭遇し、ワトソン博士が命を狙われている事実を突き止め、もちろん、ホームズを出し抜いて鮮やかに解決に導く、ということになります。

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2020年1月17日 (金)

明日から始まる最後のセンター試験、首都圏は雪の可能性!?

明日から最後のセンター試験が始まりますが、ウェザーニュースによれば、下の画像の通り、首都圏で雪の可能性があるようです。早めの行動が必要です。

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がんばれ受験生!!!

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«イレギュラーな大型案件で増加した機械受注と消費税率引上げでプラスを続ける企業物価!