2026年10月 7日 (水)

6か月ぶりに下降した8月の景気動向指数と8か月連続で実質賃金が増加した8月の毎月勤労統計

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。景気動向指数のヘッドラインとなるCI先行指数は前月から+0.4ポイント上昇の118.0、CI一致指数は6か月ぶり下降して▲1.9ポイント下降の118.7を記録しています。毎月勤労統計の方は、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は311,364円と前年同月比+3.8%増となり、消費者物価上昇率を上回ったため実質賃金は前年同月比で+1.5%増と、8か月連続のプラスを記録しています。まず、各統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気動向指数8月は前月比1.9ポイント低下、6カ月ぶりマイナス
内閣府が7日に公表した景気動向指数速報(2020年=100)によると、足元の景況感を示す一致指数は前月比1.9ポイント低下し118.7となった。6カ月ぶりのマイナス。基調判断は「改善を示している」で据え置いた。
一致指数を構成する経済指標のうち、熊本地震や台風の影響による自動車やアルミ建材の減産により、鉱工業用生産財出荷指数や耐久消費財出荷指数、輸出数量指数などが悪化したことが響いた。
一方、先行指数は前月比0.4ポイント上昇の118.0と2カ月連続でプラスだった。12年7カ月ぶりの高水準となった。中小企業売り上げ見通しや消費者態度指数などが押し上げに寄与した。
8月実質賃金は前年比1.5%増、8カ月連続プラス=毎勤統計
厚生労働省が7日公表した8月の毎月勤労統計によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年比1.5%増加し、8カ月連続で対前年で伸びた。ただ伸び率は2カ月連続で鈍化した。消費者物価が2カ月連続で2.2%の伸びと高止まりしていることが要因。
厚労省によると、実質賃金の8カ月連続の伸びは2017年1月まで続いた12カ月連続の伸び以来の記録。
名目賃金に当たる現金給与総額は31万1364円で、前年比3.8%増加した。前月の4.3%増からは鈍化したものの、7カ月連続して3%超の伸び率が続くのは34年5カ月ぶり。
名目賃金のうち基本給に当たる所定内給与は同3.8%増の27万7861円と、前月と同水準の伸びを維持した。
毎月勤労統計で使う消費者物価指数(2020年基準=100)は、持家の帰属家賃を除く総合で実質化したもの。8月は前年比2.2%上昇し、7月と同水準の伸びだった。
実質賃金の伸びが継続しているのは、堅調な所定内給与と前年は3-4%台で上昇していた消費者物価が今年は1-2%台に鈍化してきたことが主因、と厚労省は分析する。賃金の基調に変化は見られないが引き続き実質賃金の動向を予断を持たずに注視する意向としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは次の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、CI一致指数が前月から▲2.0ポイントの低下と予想されていました。実績の一致指数▲1.9ポイントの下降はコンセンサスからやや下振れしました。繰返しになりますが、8月統計のCI一致指数は、6か月ぶりの下降となります。さらに、内閣府のプレスリリースによれば、CI一致指数は、3か月後方移動平均は前月から+0.13ポイントの上昇、8か月連続の上昇となり、加えて、7か月後方移動平均も前月から+0.10ポイント上昇し、これも8か月連続の上昇です。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「改善」で据え置かれています。先行きに関しては、私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、そもそも、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本銀行が金利引上げに前のめりになっていますし、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東戦争は、私はそれほど情報を持っているわけではありませんが、一応の膠着状態でニュースも少ないようですので、日米ともソフトランディングの確率はそれほど低くないと考えるべきです。石油価格は指標となるWTI先物がバレル当たり90ドル前後で推移しています。東証の日経平均株価は7万円を超える高値圏で推移していますが、長期金利が3%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかです。日米同時リセッションの可能性がまったく否定されるわけではありません。
一応、本日公表の統計のうち、CI一致指数の前月差▲1.9ポイント下降への寄与度を見ておくと、引用した記事にもあるように、鉱工業用生産財出荷指数が▲0.64ポイントともっとも大きく、次いで、耐久消費財出荷指数が▲0.44ポイント、輸出数量指数が▲0.35ポイント、生産指数(鉱工業)が▲0.32ポイント、などとなっています。出荷や生産がマイナスに寄与したのは、いくぶんなりとも、熊本地震の影響であろうと考えるべきです。CI先行指数については、中小企業売上げ見通しDI、消費者態度指数、日経商品指数(42種総合)などのプラス寄与が大きくなっています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上のパネルは、名目及び実質の賃金指数の前年同月比の推移であり、下は季節調整済みの所定外労働時間指数です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。まず、賃金については、8か月連続で前年同月比で実質賃金がプラス、8月統計では+1.5%増というのは、引用した記事にもあるように、現金給与総額が前年同月比で+3.8%増となった上に、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が+2.2%にとどまったためです。ただし、8月統計の速報ベースではなく確報ベースの実質賃金の前年同月比伸び率を見ると、6月統計の+2.2%から7月統計では+2.0%、そして、本日公表された速報ベースながら8月統計では+1.5%と、徐々に実質賃金の伸びが縮小してきています。最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+2%ほどですので、賃金上昇がようやくインフレを上回る状態になった、あるいは、逆から見て、政策的に名目の賃金上昇率を下回るインフレに抑制されているということが出来ます。要するに、政策的な物価抑制策がな死には、実質賃金がプラスにはならない、ということが出来ます。したがって、引用した記事にもあるように、名目賃金上昇率とともに物価抑制策が、実質賃金の伸び、ひいては、消費の増加のカギとなります。

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2026年10月 6日 (火)

韓国における食料廃棄税の効果やいかに?

"Does a Food Waste Tax Work? Evidence from Quasi-Experiments in South Korea" と題する学術論文を読みました。査読を経て、The Review of Economics and Statistics という経済学分野でインパクトファクターの高い学術誌への掲載が予定されています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、論文のAbstractをジャーナルのサイトから引用すると次の通りです。

Abstract
Globally, one-third of food is discarded, generating lifecycle greenhouse gas emissions comparable to those from road transport. Further, waste management is among the largest municipal budget items worldwide. Exploiting plausibly exogenous unit-based food waste tax expansions in South Korea, I find that the tax substantially reduces food waste by discouraging excessive grocery purchases. Households sustain food intake despite buying less, but at the cost of additional time spent on meal production. Nonpecuniary motivations appear central to the policy’s e!ectiveness, and the tax is likely welfare-improving because more e"cient food use not only reduces externalities but also offsets time costs.

要するに、ざっくりいって、韓国で2005年以降段階的に導入・拡大された食品廃棄物の従量制課税が、家計の食品廃棄行動に与えた影響を検証し、とてもポジな結果を導いています。すなわち、自治体、住宅タイプ、導入時期の違いを利用した準実験的な差の差(DiD)分析の結果、課税により家計の食品廃棄量は年間21%(49kg)、食料品購入量は5.5%(41kg)減少した、と推計しています。他方、家庭内での食事量・栄養摂取量はほぼ維持されています。したがって、食品廃棄が減ったのは購入を減らしたからであり、購入を減らしても食生活の水準は低下しておらず、家計は食品の購入とともに、保存・調理・食事計画などに費やす時間を増やして廃棄を抑制しており、追加的な時間コストは年間約175ドルと推計されています。食料品購入費の節約約169ドルがこれをほぼ相殺しており、著者は外部不経済の削減も含め、制度が福祉改善につながる可能性を示唆している、と結論しています。

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以上の結論を明確に示しているのが Figure 2: The E!ect of the Unit Tax on Food Waste and Purchases となります。論文から引用すると上の通りです。左のパネルでは、自治体における課税対象世帯比率の増加幅と、1世帯当たり食品廃棄量の変化をプロットしています。課税対象比率が大きく上昇した自治体ほど、食品廃棄量が大きく減少するという負の相関関係が明瞭に示されます。一方、右のパネルはイベントスタディで、課税導入前の係数はほぼゼロであり、食品廃棄物風斧導入後に食品購入量が▲5%ほど低下して、その効果が持続していることが示されています。ですので、課税により食べる量を減らすのではなく、買過ぎを抑制し、保存・調理・食事計画を工夫することによって、食品廃棄を減らしているという点です。食品廃棄量21%減に対して食料購入量は5.5%減にとどまっているのが特徴的といえます。ですので、家庭内での食料消費・栄養摂取は維持されています。

とても参考になる分析結果だと私は受け止めています。韓国の食料自給率は、Sustainable Japan のサイトの記事「【韓国】政府、2027年までに食料自給率を55.5%へ。食料安全保障強化計画策定」によれば、約40%強らしいのですが、日本は40%を下回っています。日本はすでに賃金水準などで韓国を下回っていることは広く知られていますが、こういった日本より進んだ韓国の例を参考に、日本でもフードロスを削減し、食料自給率を上げる試みを進めるべきではないか、と私は考えています。

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2026年10月 5日 (月)

小幅に低下した9月の消費者態度指数

本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。9月統計では、前月から▲0.1ポイント低下し35.4を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数9月は前月比0.1ポイント低下、1年後の物価上昇見通し拡大
内閣府が5日公表した9月の消費動向調査によると、足元の景況感を示す消費者態度指数は前月比0.1ポイント低下の35.4となり、5ヶ月ぶりにマイナスに転じた。基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
消費者態度指数を構成する4指標のうち、「収入の増え方」と「雇用環境」は改善したものの、「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」の悪化幅が大きかった。
1年後の物価見通しは、上昇するとの回答比率が90.6と前月比1.6ポイント拡大し、2ヶ月ぶりに90%を超えた。1年後の物価が2%以上上昇するとの回答比率が前月比で増えた。コメ以外の食料品の価格上昇が影響した可能性は推察できると内閣府ではみている。
2022年のウクライナ侵略以降の物価上昇により、物価上昇見通しの上昇と「暮らし向き」判断などへの影響が推察されるが、内閣府では、9月の消費者態度指数への物価の影響は明確に判断できないとしている。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数を構成する4項目の指標について前月差で詳しく見ると、「暮らし向き」が▲0.3ポイント低下し33.8、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.2ポイント低下して27.3、とこの2項目は低下した一方で、「収入の増え方」が+0.1ポイント上昇し40.5、「雇用環境」も+0.1ポイント上昇して40.0と、消費者態度指数を構成する4コンポーネントが低下2項目、上昇2項目に分かれました。消費者態度指数としては▲0.1ポイントの小幅な低下であり、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いています。先々月の7月統計で上方修正してから、8-9月は据置きとなっています。私が従来から主張しているように、いくぶんなりとも、消費者マインドは物価上昇=インフレに連動している部分があります。総務省統計局による消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除くコアCPI上昇率は、政府によるガソリン暫定税率の廃止や政策効果もあって、今年2026年4-5月には+1.4%まで減速していますが、7月統計では+1.8%、8月も+1.7%と、日銀の物価目標+2%を下回っているとはいえ、やや加速を示しています。インフレとデフレに関する消費行動は、1970年代前半の狂乱物価の時期は異常な例としても、1990年代後半にデフレに陥る前であれば、インフレになれば価格が引き上げられる前に購入するという消費者行動だったのですが、バブル経済崩壊後の長い長い景気低迷期とさらにデフレを経て、物価上昇による価格の先高観から消費が進むよりは、実質所得の減少が目立って実感されるようになったのか、消費者が買い控えをする行動が目につくように変化したのかもしれません。この当たりの物価と消費の分析は、もう少しデータがそろえば必要となります。
また、消費者態度指数以上に注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が、直近のピークだった今年2026年4月統計の58.1%から最新の今年2026年8月統計では46.1%に低下していましたが、本日公表の9月統計では47.6%の小幅に上昇しています。他方で、引用した記事にもあるように、物価上昇との回答が今年2026年8月には89.0%ととうとう90%を下回ったのですが、9月統計では90.6%と上昇しています。これも、消費者物価指数(CPI)の動向に併せた適合的な期待形成ではないかと私は受け止めています。

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2026年10月 4日 (日)

Navier-Stokes 方程式の証明

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9月8日、OpenAIから Navier-Stokes 方程式の存在と滑らかさの問題に関する解法が公開されています。証明の論文pdfもダウンロード可能となっています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

Navier-Stokes 方程式とは、流体の運動を記述する2階非線型偏微分方程式であり、これだけで理解できる人はとっても頭がいいのかもしれませんが、クレイ研究所のミレニアム問題 The Millennium Prize Problems のひとつとして有名です。ということで、続いて、論文のAbstractを引用すると次の通りです。なお、邦訳は機械翻訳を基に、私の方で微修正しています。

Abstract
For every positive viscosity, we construct a solution of the three-dimensional incompressible Navier-Stokes equations that starts from rest and develops unbounded velocity infinite time while maintaining uniformly bounded kinetic energy.
あらゆる正の粘度について、静止状態から始まり、運動エネルギーが均一に有界に保たれたまま、無限の時間をかけて速度が無限大になるような、3次元非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の解を構築する(ことに成功した)。

要するに、3次元非圧縮性ナビエ・ストークス方程式について、有限時間で速度が発散する特異点(blowup)が形成される解を構成することに成功した、ということです。多くの人がこれで理解できるとは思いませんが、一応、念のため。ついでに、いくつか、この関係で専門ジャーナルと一般科学誌の反応の一部をリストアップすると次の通りです。

はい。私にはサッパリ理解できません。しかし、もはや、AIが知的能力、というか、認知能力の上でホモサピエンスを凌ぐという事実、少なくとも近く凌ぐであろうし、加えて、将来的には大きく引き離す、という事実は否定しようがないように私は思います。

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2026年10月 3日 (土)

広島には負けたけど、リーグ優勝と連覇おめでとう

 一二三四五六七八九 RHE
阪  神004000000 460
広  島01300002x 6110

【神】 才木、神宮、セベリーノ、岡留、木下、ドリス、石井 - 坂本
【広】 森下、ターノック、遠藤、大瀬良、森浦 - 石原

広島に逆転負けして、それでも、巨人が横浜に負けて、セ・リーグ優勝、そして連覇達成でした。
先発才木投手はピリッとせず、3回4失点で降板します。打線も、2回こそ2本のホームランで一時は逆転しましたが、その後は無得点に抑え込まれました。それでも、ナイターで巨人が横浜に負けて優勝、連覇でした。胴上げやいかに?

クライマックスシリーズは、
がんばれタイガース!

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今週の読書はマクロ経済書、書道史、時代小説など計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、朴勝俊・長谷川羽衣子・松尾匡『積極財政を理解するためのマクロ経済学』(せせらぎ出版)では、為替レートや金利、物価、賃金などの変動要因をよりよく理解し、怪しげな俗説に戸惑わないよう、同時に、豊かな国民生活を実現するための財政政策や金融政策の基礎となるマクロ経済学を志向しています。本田恒平『非正規雇用の政治経済学』(ミネルヴァ書房)では、非正規雇用のうちの派遣労働に主に着目しつつ、日本の高度成長期における長期雇用や年功賃金などの雇用慣行を、特に正規雇用で崩すことなく維持することに貢献した、という視点で派遣労働法の政治過程などを分析しています。アンドリュー・ハートマン『マルクス・イン・アメリカ』(新日本出版社)は、歴史的な構成となっており、南北戦争をアメリカ革命と考え、本書の出発点としつつ、金ぴか時代の労働者の組織化や労働運動、20世紀の大恐慌時代、さらに戦後ニューレフトなどの米国におけるマルクス主義を概観しています。中村伸夫『中国書道史紀行』(大修館書店)では、後世の便宜上の分類として発生順の篆書、隷書、草書、行書、楷書を区別しつつ、書聖と称される東晋の王羲之、楷書が完成した北魏から隋と唐の欧陽詢など、また、時代が下って最後の清朝までの漢字の書の名作を取り上げています。葉室麟『草雲雀』と『柚子の花咲く』(文春文庫)は、ともに葉室作品らしく、決して高位高官として後世に名を残したわけではないものの、市井でまじめに精一杯生きようとしている不器用な一般人にスポットを当てて、その生き様を大いに称揚する時代小説です。
今年2026年の新刊書読書は、1~9月で233冊、10月に入ってから今週の6冊を加えて合計239冊となります。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。

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まず、朴勝俊・長谷川羽衣子・松尾匡『積極財政を理解するためのマクロ経済学』(せせらぎ出版)を読みました。著者は、順に、関西学院大学総合政策学部教授、グリーン・ニューディール政策研究会事務局長、立命館大学経済学部教授、となっています。はい、立命館大学の同僚である松尾教授だけでなく、私は3人とも面識があります。ですので、かどうかはともかく、本書はご著者からご寄贈いただいております。本書は、タイトル通りに、日ごろから話題に上る為替レートや金利、物価、賃金などの変動要因をよりよく理解し、きわめて怪しげな財政破綻論や通貨の信認に基づく議論などに戸惑わないよう、あるいは、騙されないよう、同時に、豊かな国民生活の実現に向けて必要な財政政策や金融政策のための基礎知識を身につける上で助けとなるマクロ経済学の教科書を志向しています。5章構成であり、第1章で、現在の通貨制度におけるおカネと財政の関係を明らかにし、第2章で短期的な不況対策やインフレ抑制について考えるための理論を考え、第3章でより長期的な観点から、望ましい産業構造や総労働配分を実現するための課税のあり方などを考える思考枠組が提供され、第4章で実物経済と金融経済の関係を体系的に把握し、最後の第5章で為替レートや国際収支などについての理解を深める議論が展開されています。従来のマクロ経済学の教科書に比べて、いろいろと工夫されている点はありますが、では、大学の授業で使うか、といわれれば、やや否定的な回答にならざるを得ない気もします。ただ、大きく間違っている点はありませんし、従来のマクロ経済学ではそうそう扱わない点もたくさん盛り込まれています。しかし、ブランシャール教授の教科書にあるとはいえ、マクロ経済学のIS-LM曲線にフィリップス曲線を加えて、IS-LM-PC曲線による所得と利子率と物価の決定は、やっぱり、判りにくい気がします。通常のAD-AS曲線の方が学生には理解しやすいかもしれません。ただ、家計貯蓄残高により国債発行高の天井が形成されるという議論をきちんと否定的に考えているのは当然です。すなわち、国債を発行して市中で消化すれば、それは保有者には資産になるわけですので、国債発行とともに民間部門の貯蓄は同額増えると考えて大筋間違いではありません。ただ、両建てで政府の国債と民間部門の資産が増加しますので、金利の変動に脆弱になる可能性は考えておく必要があります。日本が米国に次ぐ世界第2位の経済大国であった時代はとうに過ぎ去り、段々と開放的な小国経済(small open economy)になりつつありますので、マンデル・フレミング・モデルからして、海外の金利の影響を受けやすくなる可能性があります。そして、最後に、為替レートの考え方です。実質実効レートが通貨の実力であるとか、産業の競争力であるという世間一般の謬見を本書が正している点は高く評価します。その通りです。しかも、本書で取り上げている4種類の為替レートのどれで考えても、円安なら輸出をする企業が有利になる点は当然です。ただし、企業の競争条件を有利にしても、まったくトリックルダウンは生じなかった、というのがアベノミクスの帰結です。それよりも、円高にして輸入品を割安にした方が国民生活を豊かにできる可能性が高い、というのが最近の論調で一定の支持を得るようになっている気がします。もっとも、円高になれば化石燃料輸入が有利になって気候変動問題に決していい影響をもたらさない、という点は気がかりです。気候変動対策としてのCO2排出を抑制するため、激変緩和は必要としても、今のようにエネルギー企業に補助金を出して化石燃料の価格を抑えるのではなく、一定は価格引上げを容認する必要があるような気もします。加えて、ひねくれた考えですが、円高で海外旅行をしやすくなるのは富裕層に裨益する可能性が高い、とも考えています。ですが、総合的に考えて、現時点では円安よりも円高の方が国民生活には利益をもたらす、というのが私の見方です。

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次に、本田恒平『非正規雇用の政治経済学』(ミネルヴァ書房)を読みました。著者は、立教大学経済学部の助教です。15年ほど前に私が勤務していた労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究員のご経験もあるようです。ご専門は政治経済学、戦後労使関係、労働政策だそうです。本書は出版社からして、基本的には学術書と考えるべきですが、小難しい計量分析をいっぱい収録しているわけではないですし、雇用や労働という身近なトピックですので、それほどハードルは高くないと考えられます。主として、タイトルの「政治経済学」を政治過程も含めた歴史、くらいに考えておけばいいような気がします。まず、非正規雇用は、定義がそれなりに難しいと私は考えています。ですので、本書でも定義を明確に打ち出すことなく議論を始めています。私は、学生諸君に雇用や労働を教える際、逆に正規雇用を定義して、その正規雇用でない雇用を非正規雇用、と教えています。すなわち、正規雇用の要件は3点あり、(1) 無期限、(2) 直接、(3) フルタイム、となります。この3条件のうちのいずれかから外れるのが非正規雇用と考えられます。最初の「無期限」というのは、その昔の終身雇用のように死ぬまで、というわけではなく、定年までの雇用であって、この(1)から外れるのが有期雇用、3年とか5年とかの有期雇用、ということになります。(2)から外れるのが、本書で主として着目している派遣労働です。雇用されている会社で働くのではなく、別の企業に派遣されて働くわけです。(3)は、その昔からフルタイムならざるパートタイム雇用というのがいっぱいあったかと思います。今でもあります。本書では、繰返しになりますが、主として派遣労働に着目します。労働者派遣法は1985年に制定され、翌1986年から施行されています。本書でも詳細に法改正が後づけられています。政府による無償の職業紹介、今のハローワークにおける職業紹介に加えて、営利事業としての職業紹介とともに労働者派遣が始まります。労働者派遣は、当初はいくつかのポジリスト、すなわち、ファイリングなどの労働者派遣を許可する職種を決めていましたが、徐々に規制緩和され、今ではネガリスト、すなわち、労働者派遣を禁止する職種を指定するようになっています。本書ではほぼほぼ無視しているのですが、私自身は2006年の製造業への派遣許可が大きかったと考えています。その労働者派遣のバックグラウンドとして、当時の日経連による『新時代の「日本的経営」』について考えています。非正規雇用拡大の契機としての日経連批判がどこまで妥当か、という視点です。私も本書と同じ結論で、決して日経連が求めなくても、何らかの非正規雇用は「発明」されていただろうと考えています。まあ、例えが悪いですが、コロンブスが発見しなくても、いずれ米州大陸は発見されていただろう、ということです。その上で、労働者派遣法の規制緩和の政治過程について、詳細に検討を加えています。このあたりは本書の最大の読ませどころですので、レビューなんぞで取り上げたりせず、お読みいただくのがベストだろうと思います。ただ、注目すべきは、派遣労働は決して日本の労働調整に反するものではなかった、という点です。すなわち、特に米国の雇用慣行などと比較して、日本の雇用は企業業績に応じたボーナス制度の存在などにより賃金の調整が大きく、逆に、雇用者数の調整が緩やかである、という特徴を持っています。米国では雇用契約が3年とかに及ぶこともあっては賃金の硬直性が高く、逆に、レイオフなどの量的調整に頼る部分が大きいと考えられます。ですので、派遣労働は日本の高度成長期における雇用慣行を、特に、正規雇用で崩すことなく、維持することに貢献した、という視点です。ただ、私のような雇用を重視するエコノミストからすれば、雇用される側の視点がいささか薄弱な気がします。本書でも指摘しているように、正規雇用を望みつつも不本意非正規に置かれている労働者は少なくありません。非正規雇用は正規雇用に比べて賃金が低い上に、雇用の安定性にも欠けるところがあり、二重の意味で正規雇用よりも不利な立場に置かれています。私も、すべての雇用者が正規雇用されるべきであるとまでは考えておらず、雇用者のサイドから見た柔軟な非正規雇用は一定認めつつも、全体として非正規雇用が減少する方向を目指し、少なくとも不本意非正規はなくなるような雇用・労働政策が必要だと考えています。

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次に、アンドリュー・ハートマン『マルクス・イン・アメリカ』(新日本出版社)を読みました。著者は、米国イリノイ州立大学の教授であり、ご専門は歴史学だそうです。本書の英語の原題は Karl Marx in America であり、2025年の出版です。はて、米国でマルクス主義がどのように捉えられていて、政治の分野で、あるいは、なんらかの市民運動でマルクス主義が影響を持っているのか、またまた、主として経済学、あるいは、ほかの社会科学の分野で基礎的な理論を提供しているのか、といわれれば、私は疑問に感じていました。例えば、日本ではフランスやイタリアなどの欧州諸国と同じで共産党が戦後の政治舞台で立派に活動し、議会でも議席を有していたりします。あるいは、共産党という名ではないとしても、階級政党のような名を冠した英国の労働党やドイツの社民党は政権を担うこともありますし、フランス社会党もご同様です。しかし、米国でも、それなりの共産主義、あるいは、マルクス主義の系譜があることを本書で知りました。本書は歴史的な構成となっており、19世紀後半の南北戦争を独立戦争に次ぐ第2のアメリカ革命と考え、本書の出発点としています。そして、金ぴか時代(Gilded Age)の労働者の組織化や労働運動、20世紀初頭のボリシェビキ革命に同調した米国におけるジョン・リードらの文学の展開、1930年代の大恐慌におけるマルクス主義、戦後リベラリズムにおける繁栄した米国経済におけるマルクス主義、、マッカーシズムに代表される冷戦下の保守主義、1970年代からのニューレフト=新左翼によるベトナム戦争への反対、1980年代のレーガン政権下における新自由主義への抵抗、最後に、21世紀のマルクス主義を議論しています。私が注目したのは、米国におけるマルクス主義、というよりも、いくつかの章で分散的に議論されているように、米国でなぜマルクス主義が大きな動きにならなかったのか、についての分析です。ひとつは、米国経済のフロンティアの追求を上げています。特に太平洋岸を目指した米国経済圏の広がりにより、不平等の拡大や資本主義の閉塞感が発生しにくかった、という解釈です。また、マルクス主義がドイツからの移民の思想と受け止められた点も上げています。2度の世界大戦の敵国であり、今での国連には敵国条項が残っています加えて、本書では明確には指摘していませんが、米国における宗教の影響も私は見逃せないと考えています。例えば、『孤独なボウリング』の著者であるパットナム教授が共著で『アメリカの恩寵』という本を書いていて、ソーシャル・キャピタルのひとつとして米国における独特の宗教の役割にスポットを当てています。そもそも、ピルグリム・ファーザーズを持ち出すまでもなく、米国はとても宗教的に濃厚な土地柄だと考えるべきです。ただ、20世紀半ばからの米国については、ニューディール政策はまったくマルクス主義者でもなんでもないローズベルト大統領が、ケインズ政策的な政策を採用し、1960年代までの民主党政権などで継続されてきたため、資本主義的経済の限界が露わにはならなかった、という点は忘れるべきではありません。本書でも1935年のワグナー法(全国労働関係法)について同じような視点を提供しています。すなわち、マルクス主義に限定されないながら、国民の利益になるような格差是正や生活水準の引上げなどにつながる政策を左翼や労働者が獲得すれば、それはそれで左翼や労働者の大きな勝利なのですが、同時に、資本主義の限界を露呈させてマルクス主義的な革命をもたらすような方向とは矛盾しかねない、という点があるのだろう、と私は考えています。もう少し考えれば、米国経済が豊かであっただけに、労働者や一般国民、資本家や富裕層ならざる一般国民の不満が高まらなかった、という点は米国でマルクス主義が盛り上がらなかった一因ではないか、という気がします。ただし、私はマルクス主義に関しては興味を持ちつつも専門性がありませんから、この読書感想文もそれほど自信がありません。

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次に、中村伸夫『中国書道史紀行』(大修館書店)を読みました。著者は、筑波大学名誉教授であり、日展内閣総理大臣賞や日本芸術院賞などの受賞歴のある書道家であり、全日本書道連盟理事長などの団体役員でもあります。書道展の関係では読売書法会に関係していて、まあ、何と申しましょうかで、伝統的な書道芸術の方向性が伺えます。ちなみに、日本における三大書道展といえば、伝統的な読売書法展と日展、そして、やや前衛的な毎日書道展となります。ただ、出典数からすれば毎日書道展が最大ともいわれています。読売と毎日はあるのですが、なぜか、朝日新聞は入りません。謎です。なお、本書はタイトルから書道の名品をたどって旅行するように受け取る向きがあるかもしれませんが、そうではありません。旅行記ではないと考えるべきです。また、中国の書道史ですから漢字だけです。本邦で発展したかな文字の書道は含まれていません。本題に入って、本書は2章構成です。第1章で書道の歴史について考え、後世の便宜上の分類として発生順の篆書、隷書、草書、行書、楷書を区別し、どうして、楷書が最後で、その後、新しい書体が現れなかったのか、と疑問を呈していますが、当然に回答はありません。250ページほどの本書の中で200ページを超えるボリュームを持つメインパートが第2章ということになります。歴史を後づけて、殷の時代の甲骨文から始まって、書聖と称される東晋の王羲之、さらに、最後の書体である楷書が完成した北魏から隋と唐、時代が下って最後の清朝までを取り上げています。私が全盛期に書道を習っていた際は、先生の方針で延々と欧陽詢「九成宮醴泉銘」の漢字を練習していました。ですので、東晋の王羲之から北魏ないし隋・唐の欧陽詢、褚遂良、虞世南、さらに、すこしおもむきがことなるものの盛唐の顔真卿、あるいは、米芾などの楷書や行書が中心となる読書でした。ただし、本書では「九成宮醴泉銘」は誠に残念にも取り上げられていません。こういった後世に残る書道作品の書き手は、当然に進士及第などの政府高官、というか、中には有能な政治家などがいたりして、決して、支配階級から大きく外れた吟遊詩人的な人物は多くありません。もちろん、時代が下るにつれて「作品のための作品」が多くなりますが、1000年以上も前の書道作品については、何らかの政治性を帯びたものが少なくありません。例えば、私がせっせと練習していたお手本の欧陽詢「九成宮醴泉銘」は、唐の第2代皇帝である太宗が離宮の「九成宮」で避暑中に、甘い湧き水=醴泉を発見した功績を記念して建立された四六駢儷調の名詩を清書した碑文です。そういった政治性を捨象して、現代にも鑑賞に耐える素晴らしい芸術性を残した書道の名品を本書では集めています。

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次に、葉室麟『草雲雀』と『柚子の花咲く』(文春文庫)を読みました。著者は、私の大好きな時代小説作家であり、2017年に亡くなっています。今回読んだ両方とも、別の出版社からすでに単行本と文庫になっていたのですが、最近になって文春文庫から2次文庫として出版されています。時代はいずれも江戸期であり、地方の決して大きくはない藩を舞台にしています。『草雲雀』では、媛野藩栗屋家の三男として生まれた栗屋清吾は、地味で控えめな性格で、家を継ぐ嫡男ではなく、いわゆる部屋住みの身です。ただ、剣の腕はめっぽう強く、道場では秘太刀「磯之波」を伝授されています。本来であれば、入り婿する先を見つけるのが当時の習慣ですが、女中のみつを妻としたために婿入りも出来ません。みつとの結婚も家長の長男には認められておらず、子を成すことも許されません。そんな時、道場仲間の山倉伊八郎から自分の用心棒になるよう頼まれます。というのは、山倉伊八郎の実父は実は元家老の国東武左衛門であることが判明し、その元家老の実父の後を継いで藩の筆頭家老を目指すため、栗屋清吾の剣が必要だということです。「子どもを持ちたい」というみつの願いに応えるためにその申し出を引き受けたものの、山倉伊八郎改め国東伊八郎の家老就任を阻もうとする敵からの刺客が次々と襲いかかります。『柚子の花咲く』では、鵜の島藩領内で牢人の遺骸が発見されます。その殺された牢人は、武士、町人、農民がいっしょに勉学に励む郷学である青葉堂村塾、これは鵜の島藩の隣藩である日坂藩にある村塾の教授である梶与五郎でした。梶与五郎は貧しい子どもに自分の弁当を与えて、いつも自分はお腹を空かしているような情の厚く、武士や農民の子どもたちから慕われる教師でした。しかし、無惨な遺体で発見された後、妻敵討ちだったとか、賭場への出入りとか、梶与五郎にまつわる悪い噂がささやかれるようになり、汚名を着せられてしまいます。そして、かつて梶与五郎の教え子であった日坂藩の郡方を務める筒井恭平と勘定方の穴見孫六が梶与五郎の汚名をそそぐべく調査を始めます。どちらの作品も、葉室作品らしく、決して高位高官として後世に名を残したわけではないものの、市井でまじめに精一杯生きようとしている不器用な一般人にスポットを当てて、その生き様を大いに称揚する時代小説です。私の好きな作家による好きなタイプの時代小説であり、大いにオススメです。

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2026年10月 2日 (金)

引き続き底堅いものの先行き注視する必要ありそうな8月の雇用統計

月初ながら閣議日である本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも8月の統計です。失業率は前月からわずかに上昇して2.5%、有効求人倍率は前月から横ばいの1.18倍を記録しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月の有効求人倍率1.18倍、前月から横ばい 失業率は2.5%に上昇
厚生労働省が2日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍と前月から横ばいだった。デジタルトランスフォーメーション(DX)による省人化やスポットワークの活用が進んで新規求人が減った。
総務省が同日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は2.5%と前月から0.1ポイント上がった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。有効求人数、有効求職者数ともに前月比0.7%増えた。厚労省の担当者は「短い日数や時間など柔軟な働き方を希望する高齢者や子育て中の人が増えている」と話す。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.4%減った。減少は2カ月連続。
主要産業別では宿泊・飲食サービス業が11.1%減と最も減少率が大きかった。卸売・小売業で10.2%減、生活関連サービス・娯楽業で5.7%減と続いた。

いずれも的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは次の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。通常、失業率が景気に対して遅行指標、有効求人倍率が一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率が先行指標と考えられています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.4%、有効求人倍率は1.18倍と見込まれていました。なお、ロイターの記事でもまったく同じ事前予測調査の結果が示されています。ですので、本日公表された実績で、失業率2.5%はやや市場の事前コンセンサスから下振れし、有効求人倍率1.18倍は一致しました。ただ、それほど大きな乖離ではありませんでした。ですので、雇用統計を見る限り、雇用情勢は引き続き悪くなく底堅いと私は考えています。特に、失業率は小幅に上昇しましたが、総務省統計局のプレスリリースによれば、季節調整済みの系列では失業者が+10万人増加しているのですが、季節調整していない原系列の統計で見て、就業者が前年同月と比べて+14万人増加している一方で、失業者は▲2万人減少しています。まあ、どちらを見るかはビミョーなところながら、それほど雇用が悪化しているという実感はなさそうな気がします。
ただし、ひとつだけ気がかりなのは、引用した記事にもあるように、雇用の先行指標と見なされている新規求人が減少している点です。厚生労働省のプレスリリースでは引用した記事と同じように、「8月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると3.4%減となりました。」と発表していますし、上のグラフの下のパネルは季節調整済みの系列をプロットしていますが、やはり、前月7月の80.0万人から8月統計では78.7万人に▲1.5%減少しています。日経新聞の記事「8月新規求人3.4%減 最低賃金引き上げ前、企業に採用控えの動き」では、10月1日から順次適用が始まる最低賃金の引上げに際して、「賃上げ原資に限りがある中小企業を中心に求人控えが進む懸念がある」と指摘しています。厚生労働省のプレスリリースを見ると、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、8月統計で新規求人数が2ケタの減少を示しているのは、宿泊業・飲食サービス業の▲11.1%と卸売業・小売業の▲10.2%となっています。この2業種については、先月7月統計公表時にも指摘したように、無人レジとか配膳ロボットなどにより省力化の進んでいる業種であり、必ずしも日経新聞が指摘するような最低賃金引上げによるマイナスの影響だとは考えられませんが、雇用については、景気拡大の後半局面でもあり注視する必要がありそうです。

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2026年10月 1日 (木)

ジャイアンツと引き分けてマジック2

 一二三四五六七八九十十一十二 RHE
読  売000100010000 270
阪  神000001001000 2140

【読】 竹丸、西舘、森田、田中瑛、中川、マルティネス、堀田、代木 - 大城、小林
【神】 村上、木下、及川、ドリス、工藤、岩崎、石井 - 坂本、伏見

ジャイアンツと引き分けて、マジック2としました。
先発村上投手は5回を4安打1失点と好投しましたが、球数多く5回で降板しました。リリーフ陣は8回に及川投手が失点したものの、12回まで2失点でしのぎます。問題はバッター陣でした。初回はノーアウト満塁のチャンスで無得点、2回のノーアウト一塁三塁も無得点、3回はワンアウト二塁三塁で外野フライが上がってもホームでタッチアウトで無得点、ことごとく序盤のチャンスを逃して残塁の山を築く間に、ジャイアンツに4回先制されます。大山選手のソロホームランで追いついても、8回に失点し、9回再び大山選手のタイムリーで追いつく、という後追い打線でした。まあ、結果的に、ジャイアンツの守護神から最終回に同点に追いついて引き分けて、マジックも減らしたからよかったとはいえ、連覇の難しさを感じさせる一戦でした。

明後日の広島戦も、
がんばれタイガース!

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6四半期連続で大企業製造業の景況感が改善した9月調査の日銀短観

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から+2ポイント改善して+24、しかし、大企業非製造業では▲2ポイント悪化の+35となりました。また、本年度2026年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+7.6%増と6月調査の+6.8%増から上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、6四半期連続改善 日銀9月短観
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感が6四半期連続で改善した。業況判断指数(DI)はプラス24だった。前回の6月調査から2ポイント改善した。
人工知能(AI)・半導体関連の需要が引き続き堅調だった。緊迫が続く中東情勢を背景に上昇した原油などの値上がりを販売価格に転嫁する動きが、企業の収益を下支えしている。
大企業製造業の業況判断DIは2018年3月調査以来の高水準となった。大企業非製造業は6月調査から2ポイント悪化のプラス35だった。悪化は5四半期ぶりだ。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。9月調査の回答期間は8月26日~9月30日。対象企業の99%が回答した。9月9日までにおおむね7割の回答があった。
日銀は9月17~18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%に引き上げることを決めた。今回の調査では9月利上げの影響を織り込む動きは限定的だ。
民間エコノミストの業況判断DIの予測中心値は、大企業製造業がプラス25への改善、大企業非製造業がプラス36への悪化を見込んでいた。
大企業製造業ではデータセンターなど旺盛なAI関連需要の影響が幅広い業種でみられた。業種別でみると、鉄鋼が12ポイント改善のプラス6、窯業・土石製品も11ポイント高いプラス22となった。非鉄金属もプラス45と、9ポイント改善した。
一方で食料品は6ポイント悪化のプラス3、紙・パルプは4ポイント低いプラス36だった。自動車もプラス11と1ポイント下がった。いずれも緊迫が続く中東情勢を背景としたコスト上昇などの影響を受けた。
大企業非製造業では販売価格の上昇で需要が鈍化したほか、地震や長雨など災害・天候不順の影響も受けた。人件費などの上昇も重荷となり、業種別でみると宿泊・飲食サービスは8ポイント悪化のプラス38となった。小売は4ポイント低いプラス29、卸売もプラス30で3ポイント下がった。
建設は4ポイント改善のプラス56、電気・ガスは4ポイント高いプラス6だった。
先行きの景況感は大企業製造業が3ポイント悪化のプラス21、大企業非製造業が5ポイント悪化のプラス30を見込む。中東情勢の先行き不透明感などに伴うコスト上昇で、収益の悪化を懸念する声があった。
企業の事業計画の前提となる26年度の想定為替レートは、全規模・全産業で1ドル=154円23銭だった。前回6月調査では152円57銭で、円安方向に修正された。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事の4パラ目にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、大企業製造業が前回6月調査から+3ポイント改善する一方で、大企業非製造業が▲1ポイント悪化する、と予想されていました。本日公表された大企業製造業の景況判断DIの+24、大企業非製造業の+35という実績は、市場の事前コンセンサスをそれぞれ▲1ポイント下回り、大きなサプライズではないものの下振れした印象です。ただ、先行きについては大企業・中堅企業・中小企業の規模を問わず、また、製造業・非製造業の産業を問わず、業況判断指数DIが悪化する見込みとなっています。この点は日銀短観の統計としてのクセといえ、先行きを慎重に見ているというだけのことではなかろうか、と私は受け止めていて、それほど悲観する材料ではないと考えるべきです。したがって、日銀はこういった強気の企業マインドを背景に、年内にも再利上げを目指す可能性があるのではないか、と私は想像しています。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については製造業を、雇用については非製造業も含めた全産業を、それぞれ取っています。経済学における生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感がほぼ払拭された、というか、むしろ、先行き不足感が強まる可能性が高いと考えるべきです。特に、雇用人員については足元から目先では不足感がますます強まっている、ということになり、この不足感は、グラフを見ても理解できる通り、大企業・中堅企業・中小企業ともコロナ禍前の人手不足感を上回っています。大企業はまだ採用ができていると聞き及んでいますが、中堅・中小企業では募集しても採用できない場合があるようです。今春闘での賃上げが高水準だった背景でもあります。春闘賃上げ率を概観しても理解できる通り、ようやく、名目賃金が物価上昇以上に上昇して、実質賃金が安定的に上向くという段階に達しつつあるように見えます。ただし、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているのかどうか、もう少し見極める必要がある、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、設備に対しては雇用ほどの逼迫感がないという点もあわせて考えると、非正規雇用のような低スキル、したがって、低賃金労働者が不足しているだけであって、外国人を含めて低賃金労働の供給があれば、生産要素間で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れである可能性が十分あるのではないかと感じます。

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続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、今回の3月調査は年度始まりの前の時点ですので、まだ年度計画を決めている企業が少ないためか、マイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。今年度2026年度の設備投資計画の推移は昨年度2025年度や一昨年度2024年に近い推移を示していることがグラフからうかがわれます。すなわち、今回の6月調査では全規模全産業で+7%増近いのプラスの伸びが計画されています。ただ、中東の武力紛争などについての先行き不透明感が大きく、この先、9月調査や12月調査などでこの6月調査よりも上積みされるかどうかは不明です。もっとも、AI活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)、カーボンニュートラルを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)、さらに、グローバリゼーション=国際化などに対応した投資がいよいよ本格化しなければ、ますます日本経済が世界から取り残される、という段階が近づいているような気がして、設備投資の活性化を期待しています。

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最後に、金利上昇局面に入っていますので、短観から全規模全産業の借入金利水準判断DIをプロットしています。金利先高感はすでにバブル経済末期の水準に達しているのが見て取れます。全規模全産業のデータですので、軽く想像されるように、大企業より中堅企業、さらに中小企業では金利先高感が強いのは当然です。おそらく、日銀のロジックとしては、これだけ金利先高感が強まっても、設備投資計画が上方改定されている上に、グラフはお示ししないものの、金融機関の貸出態度判断DIがまだ「厳しい」よりも「緩い」超なので金利引上げは設備投資には悪影響を及ぼさない、ということなのでしょうが、金利引上げとともに設備投資が計画倒れに終わる可能性も高まる点には注意が必要です。

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2026年9月30日 (水)

ヤクルトに快勝してマジック3

 一二三四五六七八九 RHE
ヤクルト000000000 040
阪  神01100012x 5122

【ヤ】 奥川、中村優、清水 - 古賀
【神】 高橋、工藤 - 伏見

ヤクルトに快勝して、マジック3としました。
先発高橋投手は8回を4安打無失点と好投しました。しかも、ラッキーセブンの7回ウラには自ら3点目のタイムリーをかっ飛ばしました。最終回は5点差ながら間隔の空いた工藤投手が三者凡退で締めました。打撃陣は、2回に大山選手が先制のソロホームラン、3回にも森下選手が追加点のタイムリー、8回には佐藤輝選手のツーランでダメを押しました。明日10月1日の甲子園での巨人戦では優勝は決まりませんが、いよいよ終盤の優勝決定に向けて期待が高まります。

明日の巨人戦も、
がんばれタイガース!

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