芥川賞受賞作の「土の中の子供」はつまらないです
最初に申し上げておきますが、今日は敬称略で書いております。ご了承下さい。
やや鮮度の古い話ですが、本年度上半期の芥川賞を受賞した中川文則の「土の中の子供」を読みました。とてもヒドイもので、がっかりしました。
私はそんなに小説を読む方ではなく、芥川賞を読んだのは2003年度下半期の綿矢りさの「蹴りたい背中」と金原ひとみの「蛇にピアス」以来ですが、今回の「土の中の子供」は歴代の芥川賞受賞作の中でも、かなり最低レベルに近いのではないかと思います。選者の評も厳しく、たとえば、選評の冒頭から、石原慎太郎は「今回の候補作の水準は総じて高いものだとはいえそうにない」と言い切っていますし、村上龍は「今回は全体的に作品の質が低かった」と評していたりして、山田詠美にいたっては選評の表題が「低調!!」だったりします。河野多恵子も宮本輝もかなりの酷評でした。
「土の中の子供」の前に読んだ小説が「キャッチャー・イン・ザ・ライ」で、約20年振りに村上春樹訳で読み返してそれなりに感激した後だっただけに、「土の中の子供」のストーリーはつまらなかったし、登場人物はとても平べったくて、あきれ果ててしまいました。芥川賞作品のレベル、いや、日本の純文学のレベルがかなり落ちてしまったような印象を受けます。
2000年から2003年まではジャカルタ暮らしのために、なかなかタイミングよく芥川賞を読む機会に恵まれませんでしたが、かつて、1998年下半期に芥川賞を受賞した平野啓一郎の「日蝕」にはそれなりの感激を覚えたものです。これは、京都大学の後輩の作品だったから、私だけが感激したのでしょうか。
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