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2005年11月22日 (火)

金利が上がると何が起こるのか?

一応、念のために申し上げておきますが、タイトルを分かりやすくするために、最初の「短期」を意図的に抜いてあります。金融政策当局が操作できるのは短期金利であると考えられているからです。

日銀のタカ派的な発言から量的緩和の時間軸効果は吹っ飛んだと思いますが、それでは、実際に日銀が短期金利を引き上げたら、何が起こるのでしょうか。
まず、長期金利が上がります。しかし、現在のようなゼロ金利下では長期金利は短期金利の上げ幅ほどは上がらない可能性が高く、イールドカーブは寝てくると予想されます。現時点では米国をはじめとして、世界的にイールドカーブは寝ています。
ここまでは容易に想像できます。

昨夜のブログで、民間シンクタンクを取り上げましたので、ここから先、今夜は政府の研究所を取り上げます。内閣府に設置されている経済社会総合研究所です。
今年の7月に ESRI Discussion Paper Series No.152 として、「(研究ノート)短期日本経済マクロ計量モデル(2005年版)の構造と乗数分析」が発表されていますので。この計量モデルではどうなっているでしょうか。なお、このペーパーはここにあります。ペーパー本体もPDFでダウンロードできます。
本当であれば、日本単独モデルよりも世界モデルの方がより一般均衡的なのですが、多大のコストを要する大規模なモデルは最近では見かけなくなったので、ここではこの日本モデルで考えてみましょう。
こ計量モデルのシミュレーション結果として、短期金利1%ポイントの引上げケースの乗数は以下の通りです。この画像は先ほどのWEBサイトから取りました。

モデル

影響を受ける大きさ、つまり、マグニチュードについては小数点第2位までの精度を求めるのはどう考えてもムリそうな気がしますので、取りあえず、プラスの影響か、マイナスの影響か、符号だけを見てみましょう。
まず、利子所得が増える影響からだと思いますが、確かに、消費にはプラスと出ています。しかしながら、実質も名目も成長率もGDPにはマイナスの影響となります。これは設備投資や住宅投資が消費以上にマイナスになるからです。絶対値の大きさはともかく、このGDPコンポーネントの動きの方向は常識的だと思います。
輸出入ともにマイナスの影響ですが、輸出は金利差に感応的な資金流入により円高となるためで、輸入は国内需要が減少するからです。これもとても素直に受け入れやすい結果だと思います。ただし、輸出入の動きの結果としての経常収支については、円高の価格効果が輸出に与える影響の方が所得効果の輸入より大きいらしく、マイナスの影響となっています。この経常収支への影響はモデルの方程式のパラメータの大きさによって符号は一定しない可能性があります。
賃金・物価については、消費者物価の代理変数である民間消費デフレータにマイナスの影響となり、単位時間あたり賃金も同じ影響が出ます。失業率は逆サイクルですので上昇します。これまた当然の結果です。
注目される財政収支への影響は明らかにマイナスです。つまり、財政赤字が増える方向に影響が出ます。GDPへの下押し効果で税収にマイナスとなり、金利上昇で直接的に国債利払いがプラスになるからです。これもとても分かりやすい結果です。

要するに、経常収支への影響を別にすれば、計量モデルを持ち出すまでもなく、短期金利引上げがもたらす影響の方向は明らかだと言うことです。もっと言えば、現時点で見通せる範囲内の1年から1年半先くらいの期間における金利引上げは明らかに景気や物価にマイナスの影響を与え、デフレを長引かせ、景気後退につながる可能性があります。逆に、金利引上げはネガティブな影響を与えるべき経済状況で発動することが重要になります。つまり、景気過熱とインフレです。
そこで、もう1点、景気過熱ついて日銀はとても「トンデモ」の見方をしています。即ち、日銀は潜在成長率を1%程度と見ていることです。詳細は失念しましたが、1.5%成長について、「潜在成長率を上回る」と表現したことがあり、日銀は潜在成長率を1%と見ていることについて、市場でコンセンサスがあるように見受けられます。逆に言えば、現実の経済成長率が潜在成長率の1%を超えると景気過熱と判断していることになります。国民経済の観点からこれは議論のあるところだと思います。

結論です。
昨夜お示ししたように、消費者物価(CPI)前年比上昇率が来年度後半でも0.4-0.5%程度との民間シンクタンクの経済見通しが支配的な状況で、日銀が金利政策を発動する状況にはないと思います。

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