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2005年12月15日 (木)

来年は給料が上がってデフレを脱却できるか?

昨日の新聞を見ると、日本経団連の奥田会長が来春の賃上げを容認する姿勢を示しているようです。ここ数年、物価が連続的に下落するデフレ下で、下方硬直性のある賃金が下げ止まって実質賃金が上昇し、賃金コストが企業の収益に悪影響をもたらし、景気が悪化した要素があるのは確かですが、最近は景気が踊り場を脱して順調に拡大する中で企業収益が大幅に改善し、株価が上がるとともに、好調な企業がそろそろ賃金を引き上げて、労働者の確保の動きに出る余裕が出来てきたのでしょう。
デフレもそろそろ終盤を迎えつつあるのかもしれません。賃金がそれなりに上昇して、単位労働コスト(ユニット・レイバー・コスト)が上昇すれば、デフレは終わると私は考えています。ですから、賃金上昇を容認する経営者側の姿勢は、その面からも評価されるべきです。労働組合の組織率が低下を続け、「春闘」なる言葉が死語となりつつある中で、労働組合にもがんばって欲しいと思います。
特に、今回の景気上昇局面で、失業率の改善はそこそこだったものの、有効求人倍率がかなり1に近くなってきています。企業の方も賃金を引き上げる余裕が出来たこともさることながら、個別企業によっては人材確保の観点から賃金を引き上げなければ、逼迫する労働市場から優秀な人材を確保できなくなってきたことを肌で感じていることの表れだと思います。

他方で、株価が日経平均で上昇を続けていますが、企業収益と労働賃金は短期にゼロサムであるとすれば、賃金が上がるのは企業収益にマイナスの影響を及ぼし、株価の調整局面を迎える可能性も否定できません。もっとも、今年度は設備投資が2桁で伸びる勢いですし、来年度もプラスの計画が出ているようですから、労働の資本装備率が上がれば労働生産性も上昇し、賃上げを吸収できる可能性も大いにあります。しかし、いずれにせよ、下がり続けてきた労働分配率は近く反転する可能性が十分あります。

公務員は労働三権が制約されていて、その代償措置として人事院が民間給与に準拠した賃金水準を政府に勧告します。いわゆる人事院勧告と呼ばれるものです。民間で賃金が引き上げられ、単位労働コストが上昇するとともに、賃上げが所得拡大につながって、需要と供給の両面からデフレを克服できる可能性が大きくなりつつあります。ただし、それには株価の修正局面入りを伴う可能性もあることに留意する必要があります。もちろん、日銀が早まった引締めに走らないよう注視することも忘れてはなりません。日銀が出口政策で適切な金融政策レジーム転換を行わず、しかも、早めに従来手法の金利引上げを、何らかの将来コミットメントなしにそれだけで実施してしまえば、景気が大きく落ち込んで後退局面に入るおそれすらあります。
長くて暗いデフレのトンネルでしたが、来年こそは、労働組合にがんばってもらえれば、さまざまな面から公務員もハッピーになれそうな気がします。

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