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2006年2月 1日 (水)

公務員の5%定員削減

昨日、行政減量・効率化有識者会議が初会合を開いたと報じられていました。セコムの飯田さんが座長です。
事業削減の重点8分野として、農林水産統計、食糧管理、北海道開発、ハローワーク、社会保険庁、行刑施設、森林管理、国立高度専門医療センターを明示的に示し、削減の重点とするようです。これに加えて、配置転換や新規採用抑制を通じて今後5年間で5%以上の定員純減を目指すこととなっています。

振り返って、先日発表された統計によると、有効求人倍率が1倍に達したそうです。13年振りだそうです。先日のブログでも取り上げたように、日本経団連の奥田会長は賃金引上げを容認する発言をしていますし、労働市場は需給が引き締まってタイトになりつつあります。失業や失業率が低下し、賃金が上昇する気配を見せ、人手不足を感じる企業が増えつつあります。要するに長かったリストラが終了に向かっています。このように、民間部門では労働力が不足に向かうと考えられているのに対して、政府部門では人手を減らそうとしているわけです。つまり、民間が終われば、今度は政府部門がリストラを始めようとしているわけです。労働組合なんかの反対は強いでしょう。だって、民間企業はリストラしないと企業が倒産する可能性がありましたが、政府はリストラしなくても倒産しませんから。

私はエコノミストですから、政府の景気対策はカウンターサイクリカルに行うべきだと考えています。すなわち、民間の景気がいい時は引締め気味に運営し、景気が悪い時には景気を拡大させるように運営するのが基本だと思います。現時点での景気はいざなぎ超えも視野に入れた長期にわたる拡大局面が続いていますが、外需に依存していて、基盤がやや脆弱な面もあります。ですから、手放しで順調な景気拡大であるとまではいえませんが、雇用面では徐々に労働需給が逼迫化する方向であることは確かですから、政府部門のリストラを始めるにはいいタイミングであると思います。バブル期のように政府と民間とで貴重な人材を取り合っていてもしかたありません。
しかし、ここで注意が必要なのは、国家公務員には団塊の世代の問題がない、ということです。つまり、通常の民間企業であれば、社会全体の人口構成と同じように、団塊の世代がほかの年齢層に比較して大きな比率を占めているのですが、国家公務員についてはそういった現象はありません。ですから、逆に言えば、ここ2-3年で団塊の世代が大量に定年退職することもないわけです。もっといえば、普通の企業であれば、ここ2-3年で団塊の世代が大量に定年を迎えるので、退職する人数が大きいですから、そこそこ新規採用も出来るのですが、国家公務員には団塊の世代で大量退職もなく、そのために、新規採用抑制で定員削減を図ろうとすれば、通常の企業よりもずっと大幅な新規採用抑制を実施しなければ定員削減が進まないことになります。

もうひとつ、忘れてはならないのは、公務員を削減する前提条件として、行政をスリム化するのが大事だということです。公務員を削減するのはいいのですが、それがそのままとはいいませんが、公共サービスの量も質も落ちるのは国民の側でも覚悟しておいていただく必要があります。人数を減らしておきながら、従来と同じ行政サービスを要求するのはワガママでしょう。その観点から、不要な行政サービスは縮小されるべきです。ここは公共サービスの受益者である国民の側から総論賛成、各論反対が出る可能性があります。

最後の問題は、さはさりながら、公務員の仕事振りは無駄が多いので効率化できる余地は大きいことです。私が役所に入ったころにお仕えした上司で、京都大学経済学部の先輩でもあり、もうお亡くなりになった方なんですが、役人が仕事を進める際の3類型について、能力で仕事をする人、人柄で仕事をする人、仕事をしない人、の3種類の役人がいると喝破した方がいらっしゃったくらいですから、昔は役人の中には仕事をほとんどしない人もいたらしいです。現在では仕事をほとんどしない人は見かけませんが、ムダな仕事をしている面はまだまだあると思います。

ですから、公務員の定員を削減するに際しては、第1に、本当にプライオリティの高い重要な仕事を、第2に、効率よく、第3に、少ない公務員で遂行する、ような仕組みを考える必要があります。昨年9月11日の総選挙を見て、公務員も覚悟を決めましたから、公共サービスを受ける国民の側でも、削られるところは削られるとの覚悟を決める必要があると思います。

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