« 午前中の片付けの後、午後からはゲーム喫茶で遊ぶ | トップページ | 着々と引越しの準備が進む »

2006年2月19日 (日)

書の至宝展に感激

今日の午前中は、子供達を連れずに久し振りに1人で出かけて、上野の国立博物館で開催されている書の至宝展に行きました。中国の上海博物館や朝日新聞などの主催で開催されています。
我が家は朝日新聞をとっていますので、両陛下をはじめとする皇族方の宮さまが何人もご鑑賞にいらっしゃっている記事を数日おきくらいに拝見していましたし、私も少しの間ですが杉並に住んでいた時に書道を習っていたことがあるので、とても興味を持っていましたが、さすがに最終日の日曜日だったのですごい人出でした。朝早く出て、9時半開館の10分ほど前に着いたのですが、すでに入場待ちの長い列が出来ていました。もちろん、年齢層は高いです。私の視野に入る範囲で、平均年齢はラクに50歳は超えているように見受けられました。入ってからも混んでいて、子供達を連れてこなくてよかったと思ったほどです。

見所はたくさんあるのですが、私的には、王羲之を中心に北魏から初唐にかけての楷書、写経などの細楷、それと、平安期に確立した仮名、の3点です。そのほかに、篆書と隷書にもいいのがありましたが、私には十分な価値を見極める目があるかどうかの自信はありません。

まず、書といえば誰が何といっても王羲之です。唐の太宗がすべてお墓に持って行ってしまったので真筆は残されていませんが、模写したものからでさえすばらしさは伝わります。楷書ではありませんが、喪乱帖や孔侍中帖はすばらしいの一言です。それから、楷書では初唐の三大家の欧陽詢、虞世南、チョ遂良です。このあたりの人名は苦労して書いています。チョ遂良の「チョ」の字は出てきません。正しくは、衣へんにつくりは者に点を打った字です。ごカンベン下さい。
杉並に住んでいた当時に書道を習っていた先生は、欧陽詢をお手本にしていました。今日の書の至宝展でも拝見しましたが、九成宮醴泉銘をお手本に毎週お稽古をしていたのを思い出します。虞世南なんかも欧陽詢と同じ系列です。九成宮醴泉銘なんかは人間が書いたのかと不思議に思うくらいの完成度です。コンピュータを使ってCGかCADででも書いたのではないかと思うくらいの寸分も隙のない字体です。自分で書道のお手本にしていたのが恥ずかしくなるくらいでした。
ただし、初唐の楷書で顔真卿が欠けていました。欧陽詢や虞世南などの細身の楷書と違って、骨太でいかにも男らしい字体を見ることができなかったのは残念でした。何かの思惑があって入れていなかったのか。それとも、単純にモノがなかったのか。真相はわかりません。

それから、私は細楷も好きです。我が国の奈良時代に書かれた紫紙金字金光明最勝経は独特の字体でとても美しかったです。写経ですから、写経をしたことがある人はご存じでしょうが、各行きっちり17文字で書かれており、その様式美は何ともいい表せません。お経の有り難い内容がさらに有り難くなるような気がします。

最後の注目点は、何といっても我が国平安時代に確立した仮名書きです。当然ながら、小野道風に止めを刺します。秋萩帖も出展されていましたが、何といっても仮名書きの継色紙や升色紙です。誤解のないように申し上げておきますと、継色紙は小野道風ですが、升色紙は藤原行成ですので、念のため。しかし、しかしですよ、私の印象からすれば、お行儀のいい仮名ばっかりで、分かち書きなどの仮名独特の色紙は少なかったように思います。ずっと時代を下がって、江戸時代の松花堂昭乗の三十六歌仙帖の色紙にやや仮名独特の様式が見られただけです。小野道風が立てひざに口をあけて、狂ったように筆を握っている絵が残されていますが、こういった紙一重の天才の書ではなかったように思います。

これら3点の見所や注目点に加えて、2点ほど指摘しておきたいと思います。
まず、中国で皇帝制が確立したといわれる宋・明の時代の書で、特に宋なんですが、米フツや蔡襄の書で、陛下や聖慈などの皇帝を表す言葉や文字で上げ字をしていなかいことです。再び、フツの字が出ません。草かんむりに市と書きます。臣こそ小さい字で書いてありましたが、皇帝を表す字の上げ字をしていませんでした。清代になると皇帝を表す字は必ず2字上げて書いているのですが、このころまではそういった習慣がなかったのでしょうか。これは新発見でした。
もうひとつは、篆書と隷書です。こんなのが書けたらいいな、と思わせるような軸ものがいくつかありました。また、これと関連して、書の中に篆刻がいっぱい押してありましたが、篆刻専門の書家もいるくらいですから、篆刻の美しさに注目するのもアリかもしれません。

今日が最終日ですので、お勧めしても詮ないことかもしれませんが、日本と中国の書がこれほど一堂に会して拝見できる機会は余りないような気がしました。もっと早く行っておけばよかったと後悔しているほどです。たっぷりと2時間ほど拝見して、3000円のカタログを買い求め、マクドナルドで昼食の後、昼過ぎに松戸に戻りました。

|

« 午前中の片付けの後、午後からはゲーム喫茶で遊ぶ | トップページ | 着々と引越しの準備が進む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 書の至宝展に感激:

« 午前中の片付けの後、午後からはゲーム喫茶で遊ぶ | トップページ | 着々と引越しの準備が進む »