来週から衆議院予算委員会での本格審議が始まる
国会が1月20日に開会して2週間がたちました。
国会では本年度の補正予算案の審議を終え、来週からいよいよ来年度予算の本格的な審議に入ります。このブログでもふれたように、議会とは歴史的に見て国王や政府が勝手に国民に課税することを防止し、国民の立場から課税をチェックするための機関として設立されました。ですから、課税のコインの反対側である支出についても当然チェックする役目を果たします。
今国会において野党は少し前まで3点セットによる与党の追及を掲げていましたが、最近では4点セットに増えたようです。3点セットとは、耐震偽装、BSE、ライブドアの3つです。これに防衛施設庁の談合を加えて4点セットとなります。一方、与党は今国会を行革国会と位置づけ、行政改革基本法案などを提出し、公務員の定数削減などを進めようとしています。
エコノミストの私の目から見て、4点セットのいずれも、公的な監視の目が行き届くかどうか、あるいは、行き届かせるためには結果的に大きな政府になってしまうんですが、これを行革とどこで折合いをつけるかがポイントになります。昨年2005年12月7日のブログでも書きましたように、ほとんどの場合でフリーランチとして提供される政策はありえません。耐震偽装をチェックしようと思えば、民間検査機関から役所の検査に戻して、さらに、検査にたずさわる公務員をかなり増員しなければなりません。BSEについても同じようなことがいえます。ライブドアや防衛施設庁の談合についても同様の事件を防ぎ、市場に対する投資家の信頼を取り戻したり、官庁の入札に不正がないかどうかをチェックしたりするには、それ相応の役所の体制の強化と公務員の人員増強が必要となります。役所の方ではチャンスとばかりに組織の拡充と定員の増加の必要性を声高に訴えるでしょう。不都合を生じた官庁が、結果として、組織や人員を増やすような焼太りを許すべきでないのはいうまでもありません。
もちろん、他方で、昨年9月11日の衆議院総選挙の結果は、郵政の民営化だけでなく政府のサイズを小さくすることを国民が支持しているように受け取れます。これは公的な監視の目を行き届かせることと明らかに矛盾するように見えます。監視の目を行き届かせるためにはどこまでコストをかけるのが適当なのか、それを決めるのが国民の代表で構成される国権の最高機関の役割といえましょう。今国会はその意味で、今までよりもさらに見ごたえのある論戦を期待したいと思います。
最後に、エコノミストの視点とはまったく関係がないのですが、皇室典範の改正についても注目すべきかと思われます。あえて誤解を恐れずに申し上げると、エコノミストから見ると皇室を誰が継ごうと、男系であろうと女系であろうと、経済的には何の意味も持ちません。極端にいえば、皇室がなくても経済活動には特段の影響はないと私は考えています。
しかし、皇室典範改正に対する賛成論は、私から見ればやや根拠薄弱で、「皇室典範の改正は、愛子さまが天皇になる道を開くものであり、逆に、皇室典範改正に反対する勢力は愛子さまが天皇になることを間接的に反対している」との意見が一般に多く見られるような気もします。もっとも、皇室典範改正に反対する陣営も根拠薄弱であることにかわりはありません。
いずれにせよ、エコノミストから見てどうでもいい問題が国民のコンセンサスを得ないで国会に提出されたりすると、無用の議論を引き起こしたり、妙にクローズアップされたりするのは、本当の論点をぼかす可能性があることから、あまり好ましくない気がしています。それなりに日本社会にとって皇室制度が重要であることも理解しているつもりですので、自分勝手ないい方ではありますが、国会はもっと重要な問題に取り組んで欲しいと思います。
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