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2006年3月30日 (木)

どうして法学部と経済学部には差があるのか?

今週4月1日号の「週刊東洋経済」のThe compassなるコラムで、我が母校である京都大学の橘木教授が「入試の弁当代にも表れた法学部優位」と題して、入試の試験監督の弁当代が、法学部は700円で経済学部が500円だった、と紹介されています。もっとも、橘木教授は経済研究所の教授ですので、厳密にいうと、法学部でも経済学部でもありません。たぶん、学部の授業は受け持たずに、大学院生だけを教えていらっしゃるような気がします。私の学生時代の経済研究所の先生方はそうでした。なお、経済研究所の先生方の中でも、橘木教授は経済格差の問題などでいろいろと発言されています。

やや面白おかしく書かれているコラムなのですが、要するに、法学部は入学時の偏差値が経済学部よりも高く、さらに、官庁や企業の昇進においても経済学部よりも法学部の優位が明らかで、日本ではどの学部を卒業したかが重要である、との観点から、法学部優位は中央官庁で法学部が優位になっていることの表れ、とのお説を展開されています。民間企業でも経済的規制の強かった日本では官庁との関係で、やっぱり、法学部が優位となっている、とのお考えのようです。もっとも、コラムの結論は法学部や経済学部ではなく、理工系の人材をもっと登用すべきである、ということになっています。
橘木教授が指摘されているように、官庁では法律案や政令案を作成するのが重要な業務ですから、法学部優位になっているのが現実です。私も、何度か、公務員は官庁で何をしているのか、と聞かれたことがあります。その際には、「日本は法治国家ですから、法案や政令案などを作成しています」と答えた記憶があります。ですから、昨年2005年11月16日付けのブログに書きました通り、キャリアの公務員であっても私のような経済学部出身のエコノミストは傍流と見なされます。例えば、今は知りませんが、私が採用された20年余り前には、キャリアの国家公務員試験の合格者は法律職が300人を超えていたのに対して、経済職はわずかに90人だったと記憶しています。
しかし、民間会社では法律案を作成しているわけでもありませんし、法学部出身者が経済学部出身者よりも昇進しているのは、経済社会で規制緩和がこれほど進んだ今となっては、橘木教授のコラムように、規制のために官庁とのお付き合いが必要だった、とする説には私は同意しかねます。もちろん、今でも規制がとても強くて、MOF担と呼ばれるような官庁との折衝担当者を置いている金融業界であれば、橘木教授のような説も成り立ちますが、これは産業界の中でも少数派ではないでしょうか。

私の説はあくまで仮説なんですが、2つの考え方があると思っています。ひとつは、やっぱり、法学部を目指す、あるいは、法学部に入学した人の方が経済学部よりも優秀だ、という説です。やや偏ったサンプルながら、我が母校の京都大学では法学部と経済学部では一部の授業を両学部の学生が受講するシステムだったんですが、この共同授業の折には、法学部の学生は前から座り始めて、経済学部の学生は後ろから座り始める、という明らかな傾向がありました。京都大学だけにいえることなのかもしれませんが、それだけ、法学部の学生の方が経済学部の学生よりも勉強熱心で優秀である可能性は十分あると思います。優秀な人の方が企業でも昇進するのは当然でしょう。
もうひとつの仮説は、優秀さに大きな差はないけれど、法学部の出身者が名を取って、経済学部の出身者が実を取っている、という説です。先月の2006年2月21日付けのマーケット・エコノミストについてのブログに書きましたように、エコノミスト業界に限った話なんですが、銀行や証券会社などの金融機関に勤務するマーケット・エコノミストはかなりの年収を得ているのではないか、と私は考えています。もちろん、これら金融機関の役員や社長さんはもっと年収が高いんでしょうが、中堅どころのマーケット・エコノミストでも相当なもんです。経済職国家公務員試験をとても優秀な成績で合格して、ある官庁に就職した後で金融機関のマーケット・エコノミストに転職した、この業界で著名な方と私は面識があるんですが、優秀なマーケット・エコノミストは凡庸なガバメント・エコノミストの2-3倍くらいの年収ではないかと想像しています。ただし、根拠はありません。なお、ガバメント・エコノミストの業界においては、優秀であろうと凡庸であろうと年収に差はありませんので、念のため。ですから、法学部出身者は昇進することを選択し、経済学部出身者は高い年収を選択している可能性があると思います。もっとも、マーケット・エコノミストがすべて経済学部出身者と決まっている訳ではないので、この点には留意する必要があります。

私の2つの仮説は何とも検証しがたいのですが、理由は何であれ、橘木教授のおっしゃる通り、法学部と経済学部の間には入試の試験監督の弁当代の700円と500円くらいの差は十分にありそうな気がしてなりません。

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