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2006年5月 8日 (月)

原油価格が上昇すると何が起こるか?

ゴールデンウィーク前に原油価格が指標となるWTIでバレル75ドルをつけ、その後、先週末にかけて70ドルくらいまで落ちて来ました。ほんの2-3年前までは25ドルくらいでしたので、3倍くらいになったことになります。しかし、世の中では大したことも生じていないように見えます。もちろん、一部の筋では大騒ぎしている人もいるようです。
少し前の分析なんですが、最近、知り合いのエコノミストに国際エネルギー機関(IEA)が出している"Analysis of the Impact of High Oil Prices on the Global Economy"というペーパーを教えてもらいました。WEBではこちらからダウンロードできます。もちろん、英文ですが、ご興味ある方はどうぞ。
この分析は2004年5月の日付で、エコノミストの層が決して厚いとは思えないIEAの分析部局を自ら意識したのか、OECD経済部とIMF調査部との共同研究成果であり、OECDのInterlink modelとIMFのMultimodを用いて試算したと注記してあります。これだけで有り難がる奇特な人もいそうな気がしないではありません。
この分析によると日本への影響は、ベースラインをバレル25ドルとして10ドルの上昇で、GDPの乖離(deviation)あるいはモデル的には乗数がマイナス0.4%ポイント、消費者物価の乖離がプラス0.3%ポイントくらいと試算されているようです。もしも、75ドルが続けばベースラインから50ドルの乖離となりますから、モデルがリニアであるとすれば、GDP成長率は2%ポイント押し下げられ、消費者物価は1.5%ポイント押し上げられることになります。ですから、まだ、75ドルの水準がこれからも続くと決まったわけではありませんが、もしそうだとすると、成長率が2%ポイント押し下げられ、インフレが1.5%ポイント押し上げられるのは、一見したところ、現時点での日本経済のパフォーマンスからして、過大推計になっているような気がしないでもありません。
もちろん、逆の見方をしている人も少なくありません。これからの先行きでバレル100ドルを目指す展開になると予想する人もおり、その場合の経済的な影響はいままでの価格上昇よりももっと大きいんではないかと警戒している向きもあるようです。現時点までは過大推計だったけれども、今後の先行きは過小推計ではないか、というわけです。私の信条とする微分方程式に沿った連続的な変化ではなく、カタストロフィックな変化を生じる可能性を指摘する人々です。私は原油問題に関する専門家ではありませんし、第1次及び第2次の石油危機をそれなりの判断の出来る年齢で経験していますので、このようなカタストロフィックな変化をまったく否定するものではありません。でも、可能性は高くないと考えています。
この場合、通常のエコノミストが重視するのは、需要サイドから価格上昇が生じているのか、供給サイドから生じているのかです。経済学が好んで使う需要曲線供給曲線からすると、価格が上昇するのは需要曲線が上方シフトするか、供給曲線が上方シフトするか、のどちらかです。前者では価格上昇と同時に生産量も増加しますが、後者では生産量は減少します。
繰返しになりますが、私は原油問題の専門家ではなく、最近は、かなり経済指標のチェックもサボっていますので、確たることをいう自信はありません。でも、需要曲線の上方シフトが原油価格を上昇させているのであれば、原油は稀少性に従って価格付けされており、市場が適正に希少な資源である原油を配分してくれるハズです。2度にわたる石油危機の際は供給曲線が非経済的な要因で上方シフトしたことが原因でしたから、大きな経済的な混乱を引き起こしたことを記憶している方も多いでしょうが、需要サイドから原油価格が上昇しているのであれば、市場メカニズムは適正に作用していることになり、エコノミスト的には何の問題も生じないことになります。もちろん、原油への依存度によりいろんな製品の相対価格は変化する可能性が大きく、単純なデノミ的な価格上昇ではありませんから、平たい言葉でいえばをする産業や人とをする産業や人が生じることは避けられません。
しかし、国際的に見ると、原油価格の上昇による交易条件の悪化から所得の産油国への移転は生じるものの、ならしてみると、日本の産業は原油への依存度がとても低いので、相対的な影響度は他の国々に比べて小さいであろうと予測することも可能です。もちろん、相対的にはマクロでは小さいながらも、産業や地域などによっては絶対的にはとても大きい影響を受ける可能性もあります。そして、ネガティブな影響を受けた人は大騒ぎするのに対して、得をした人は口をつぐむのが常です。

要するに、よく分からないながらも、また、まったく何の論証にもなっていませんが、個人的には、私は原油価格上昇の影響は大きくない可能性が高いのではないか、と考えています。
今夜のブログは、当然、久し振りに、経済評論の日記でしょう。

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