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2006年6月 5日 (月)

村上ファンドの証券取引法違反と今後の見通し

今日の11時から村上ファンドを率いる村上世彰氏が記者会見を開きました。テレビで放送していたようですが、取りあえず、各種報道を基にこの記者会見のポイントを私なりに取りまとめると以下の通りです。

(1) ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引の証券取引法違反を認める。
(2) 組織としてのファンドの活動は継続を希望するものの、自身はファンド活動から身を引く
(3) 阪急ホールディングズの提案する阪神電鉄株の公開買付け(TOB)に応じ、阪神電鉄への役員派遣の株主提案は取り下げる。
(4) ファンドの解散は考えていないが、阪神電鉄株の売却により1800億円の現金が入るので、現在見込んでいる出資金1/4の1000億円程度の個別の解約には十分応じることが可能である。

5月30日のこのブログで、他の点はともかく、阪急ホールディングズの阪神電鉄株に対する公開買付け(TOB)について、検察特捜部の動きもにらみながら、私は村上ファンドが危険回避的な観点から割合と早い時期に受入れの結論を出すのではないか、との見通しを表明しましたが、その通りにコトが運んでいるようで、それなりに満足しています。もっとも、見通しが当たったからといって、一介の公務員には何のにもなりません。

そこで、今夜は一連の村上ファンドに関係する事件などについて、エコノミストの視点から少し考えてみたいと思います。エコノミスト的な視点ですから、証券取引法違反かどうかの法律家的な解釈は提供できません。悪しからず。ただし、阪神ファン的な視点は少し盛り込みたいと思います。
まず、第1に、村上世彰氏がファンド活動から引退することについては、ややまやかしがあるような気がします。証券取引法違反を認めているのですから、投資顧問業の欠格事項に抵触することは明らかで、期間はよく知りませんが、ご本人が「止める」と大見得を切らなくても、欠格条項のためにファンド活動が出来なくなるのは明らかです。ですから、どこかのシロートさんが「潔い」と評価したりすれば、恥をかくことにもなりかねません。要するに、「潔く引退する」のではなく、証券取引法違反により不適格者の烙印を押されるだけなんです。なお、世間の耳目を集めた村上世彰氏らのファンドマネージャーが投資顧問業を出来ないのは損失と考える向きもあるかもしれませんが、日本にはまだまだ優秀なファンドマネージャーがいっぱいいると思いますので、我が国全体の経済厚生的にもそんなに大きな損失ではないと思います。
第2に、村上ファンドが阪急ホールディングズのTOBを受け入れるのは危険回避的な場合だと考えていましたが、本来、危険中立的なファンドがTOBを受け入れる理由は、今回の検察特捜部の動きにより危険回避度が増したか、それとも、村上世彰氏をはじめとするファンドの主要構成員が十分危険回避的になるほどファンドが稼いだか、どちらかだと思います。そうでなければ、引き続き、危険中立的なファンド活動の範囲内で、暴落しかねない阪神電鉄株を保有し続けるリスクと阪神電鉄の企業価値を高めるチャンスを比較考量したものでしょう。ですから、検察特捜部が阪神タイガースの救いの主になったとばかりはいえないような気がします。今回の検察特捜部の立件とは関係がなく、あくまで、冷静な経済計算の結果である可能性も大いにあるからです。
第3に、この観点から、阪神球団の星野シニアディレクター(SD)が「天罰」発言をしたのは、阪神ファンである私から見ても大人気ないと思います。村上世彰氏の逮捕で星野SDは勝ったような気でいるかもしれませんが、阪神電鉄や球団の経営能力に大きな疑問が残されていることは事実で、今後、阪急との経営統合によりややレベルの低い阪神の経営能力も高められることが必要です。私は5月31日のブログに阪急のTOBは瀬戸際戦略と書きましたが、結果的に、大成功に終わったわけですから、阪神よりの阪急の方が経営能力が高いんでしょう。なお、星野SDの「天罰」発言に戻ると、村上世彰氏の記者会見の中で大いに批判していたそうですが、これもどうかと思います。私はこんな場合にとても適切な言葉を知っています。喧嘩両成敗です。もっとも、ケンカを始めたのは星野SDのような気がしないではありません。なお、どうでもいいことですが、村上世彰氏が認めた証券取引法違反は罰則が3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科も可)という微罪ですから、検察特捜部も大騒ぎの割には成果が少ないような気がしますし、今回の一連の出来事の勝者がいるとすれば、まんまとTOBを成功させた阪急ホールディングズということになるだろうと私は考えています。少なくとも阪神電鉄はTOBされるんですから、とても勝者とはいえません。
第4に、村上ファンドの存続については、私は懐疑的です。まず、今日の日経新聞朝刊の1面にも出ていたキーパーソン・クローズのために、解約したい出資者はかなり有利な条件で解約できるからです。企業としてもオリックスは資金を引き上げたとの情報もあります。さらに、検察特捜部とともに、最近、特に摘発に熱心な金融庁を含めた金融や規制などの当局のスタンスからすれば、コンプライアンスは絶対の信頼条件であり、トップが証券取引法違反となれば、資金を引き上げる投資家は1/4にとどまらない可能性があると思うからです。ですから、たとえ村上ファンドが存続したとしても、ファンドに残るのは怪しげな個人投資家だけということになりかねません。
第5に、今回の一連の村上ファンド事件のマーケットへの影響は限定的だと思います。理由は3点あって、すでにこのブログで表明済みのものです。おさらいをすると、マーケットはすでにライブドア事件で調整局面に入っていること、村上ファンドの立件はすでにマーケットに織込み済みであること、日本経済のファンダメンタルズが引き続き良好であると考えられていること、3点です。3番目のは、本当にファンダメンタルズが良好であるかどうかはともかく、良好であると考えられていること、が重要なポイントです。むしろ、村上世彰氏の逮捕によりマーケットはアク抜け感があって、これから上昇に向かう可能性すらあります。この見通しは、阪急のTOBを村上ファンドが早期に受け入れる、との予想よりも自信がありますが、私のこの予想に従って損失を被っても、一切、何らの保障はありませんので、念のため。
最後に、村上ファンドとは必ずしも強い関係はないですが、オリックスの先行きについて心配しています。村上世彰氏の後見人的な存在としてオリックスの豪腕経営者の宮内会長がいたことは周知の事実ですが、オリックスの企業グループとしてはともかく、プロ野球球団のオリックスについてはやや心配があります。一昨年に近鉄を吸収して、球団名こそオリックス・バファローズにしましたが、昨年からのユニフォームはオリックスのままで近鉄ファンの気持ちを逆なでしましたし、来年以降は大阪ドームを買収して神戸を見捨てようとしています。エコノミストとしては理解できなくもないですが、経済合理性のみに従って、プロ野球ファンの気持ちに対して無神経な球団経営を進めれば、ファンからソッポを向かれて、結果的に、経済合理性を失うことにもなりかねません。現在、パリーグの5位ということは、シーズンを始める前から楽天が最下位であると予想されていたのですから、実質的な最下位とすらいえます。ファンに無神経な球団経営の上に成績もさえないとなれば、経済合理性の観点から球団が売りに出されないとも限りません。大阪ドームの命名権を京セラが買ったことから、早くも、京セラ・バッファローズ誕生との怪情報も流れています。もっとも、京セラだったらまだ関西圏にプロ野球球団が残りますが、経済好調な中部圏の企業にでも買われたら関西圏には阪神タイガースしか残らなくなってしまう、なんて冗談も飛び出さないとも限りません。

やや長くなったのでここまでとし、今夜のブログはさすがに評論しましたので、阪神タイガースの日記ではなく、久し振りに、経済評論の日記に分類しておきます。

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