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2006年7月26日 (水)

国家財政が持続可能でないと何が起こるのか?

七夕の日に骨太2006が閣議決定されました。その中では、歳入歳出一体改革がメインだったと思います。現在、日本政府の財政状況はとても厳しく、ストックとして、公債残高はGDPの2倍に近づきつつあり、さらに、フローとしても、毎年15兆円を大きく超えるプライマリーバランス赤字を垂れ流し続けています。いくつかの実証研究では、我が国の財政は持続可能ではないとの結果が出ていたりします。
気になるのは、それでは、このまま財政赤字を垂れ流し続ければどうなるのか、です。専門用語でいうとポンジーゲームになります。一般用語でいうとねずみ算的に、あるいは、雪だるま式に公債=借金が増加します。要するに、財政が破綻するわけなんですが、では、財政が破綻するとどうなるんでしょうか。あるいは、より正確には、私の今夜のブログのタイトルなんですが、国家財政が持続可能でないと何が起きるんでしょうか。わざわざ持続可能でないといい出したのは、すぐに破綻するとは限らないと私は考えているからです。
私が重要だと考えるポイントを先取りすると2点あります。第1に、国家財政が持続可能でなくても、すぐに破綻するわけではなく、一定の期間は公債金利がやや異常に高い、くらいの経済状態が続く可能性があることです。第2に、この一定の期間を経て財政が破綻すれば、その国の経済はインフレデフレかのどちらかになる可能性が高いです。必要な財政資金をどのようにファイナンスするかで、インフレになるか、デフレになるか、が違ってくると考えられます。
それから、国家財政の持続可能性とは一般的な概念であり、特定の国のみに当てはまるものではないんですが、それはそれとして、一応、バックグラウンドは日本にするのが適当だということを強調しておきたいと思います。我らが母国ですし、情けないことに、主要先進国でもっとも財政が持続可能でないと考えられているのが日本だからです。それから、我々は国債との呼び方に慣れていますが、今夜のブログでは公債と称します。大きな理由ではないんですが、その方がエコノミストっぽいからです。

一般的な議論ながら、日本を念頭に置くとして、第1に、国家財政はサドンデスではなく、じわじわと破綻に至る可能性があります。例えば、幸田真音さんの小説なんかではマーケットトレーダーの一部が陰謀的にわざと公債を買わなくなるところから物語が始まりますが、財政が持続可能でないと市場で判断されれば、一部の動きではなく、市場全体として公債に対する需要が減少しますから、公債の価格は下落し公債金利は上昇します。財政破綻とは公債価格が実質的にゼロとなり、そのために、公債金利が実質的に無限大になる現象であると解釈されます。
では、公債価格の下落と公債金利の上昇は何を判断材料にするべきかといえば、公債に代わる安全資産の金利よりも公債金利の方がプレミアムを市場に要求されることです。公債に代わる安全資産が何かはよく分からないんですが、例えば、トヨタが社債を発行しているかどうか知らないものの、トヨタの社債だとすると、公債金利にプレミアムを要求されてしまうわけですから、トヨタの社債よりも公債の金利の方が高い状態になります。要するに、この例では、トヨタよりも日本国政府の方がデフォルトのリスクが高いと市場で判断されれば、市場は公債金利にプレミアムを要求し、公債金利の方がトヨタの社債よりも高くなってしまうわけです。
これが国家財政が持続可能でなくなるシグナルだと私は考えています。そして、市場の金利体系は公債に代わる安全資産アンカーにして、そこからのリスクに従ったプレミアムをつけることになります。現時点では想像するのも難しいことですが、ありえることだと思います。市場では公債金利に寄せる形で、いろんな資産の金利がかなり上昇することが考えられます。すると、個人消費や設備投資に高金利がデフレ的なプレッシャーを及ぼし、さらに、政府部門の資金調達が難しくなる可能性もありますから、需要面から経済成長は落ち込むことになります。当然です。ただし、GDPベースでデフレギャップが発生すると考えられますが、この時点で、インフレになる可能性はほとんどありません。この期間は、ひょっとしたら5年くらいは続く可能性があります。もちろん、日本人のい大好きなパニックシナリオでは1週間ほどで国家財政が破綻する可能性もあります。
では、続いて、公債金利が実質的に無限大になる財政破綻が生ずると何が起こるのでしょうか。まず、政府や公的部門にほぼ一瞬にして資金がなくなりますので、必要とする財貨やサービスをまったく購入することができなくなります。もちろん、税収はそれなりに政府歳入の大きな部分を占めていますから、政府部門のすべての資金が一瞬にしてなくなるわけではないという人もいるでしょうが、これだけの公債残高を抱えて借換債で自転車操業しているわけですから、新発債はもちろん、借換債もまったく発行できなくなり、政府にお金は残りません。公務員としていわせてもらえば、公務員給与はトッププライオリティでお支払いいただきたいのですが、その時点で、どうなっているかは分かりません。ひょっとしたら、給料未払いのまま自宅待機になる人も多いんではないかと思います。
おそらく、まずは、政府支出が一気にゼロになります。次に、政府資産の投売りが始まります。3番目に、ここで選択肢が出てきます。増税するか、公債を日銀に引き受けさせるかです。
まず、順序が逆なんですが、後者の公債の日銀引受けを考えると、短期間は一種の錯覚が働くかもしれませんが、日本経済は一気にインフレに陥ります。しかし、場合によっては、1-2年の余裕があり、この間に増税案の取りまとめと国会での採決やその税法の施行が可能になる可能性もあります。でも、現在のようなスピーディーな世の中では少しムリがあります。ではどうなるかというと、公債に続いて円紙幣が紙くずになります。大幅なインフレになり、結果的に円安になり、輸入代金が支払うために経常収支が大幅な赤字となり、最悪の場合はIMFの介入を招くことにもなりかねません。ですから、これはとっても危険な道であるといえます。
それでは、前者の増税ということになります。一般的なお話といいながら、日本で考えると、少なくとも10兆円以上の増税が必要になります。臨時国会を開会してすぐに採決し、即日に実施となる可能性すらあります。ここで野党がヘンな動きをすると国民から大きな批判を受けかねません。でも、ホントに批判されるべきは財政を破綻に導いた与党なのかもしれません。大幅増税ですから、デフレギャップが大きく拡大し、日本経済はふたたびデフレに突入する可能性があります。この場合はインフレにはなりません。

ここまでが私の想像です。しかし、最後になってしまいましたが、この大きな前提外債がないことと、公債の所有者は居住者であると仮定していることです。あるいは、もう少しキチンといえば、外貨準備の範囲で無視できるほど外債や非居住者の公債保有が小さいことを前提にしています。まだ、考えをまとめ切れていないんですが、外債はもちろんのこと、円建て公債であっても、非居住者が保有していると何かが起こりそうな気がします。繰返しになりますが、私自身で考えをまとめ切れていません。

以上。政府財政が持続可能性を失うと、公債金利にプレミアムを要求され、結果的に、高金利を招来することから、経済的にデフレ的な圧力が加わること、そして、政府資金の調達のために公債の日銀引受けを行うとインフレになること、これを嫌えば、大増税を行わざるを得ないこと、その結果、大デフレに陥るのであろうこと、など、最後に読み返してみると、我ながらとても常識的で、この通りなんだろうと思います。余り聞かない私のオリジナリティを発揮したのは、一気に公債市場がサドンデスするのではなく、ひょっとしたら、5年くらいはチンタラと公債金利がプレミアムを要求される状況が続く可能性を指摘したことくらいでしょうか。また、最後に、国家破産の考え方もありますが、小国の仮定を取れない先進国では実質的に不可能だと思います。
すごい長いブログを30分足らずで一気に書きましたので、細かな点で間違いがあるかもしれません。

コメント歓迎です。

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