「ゲド戦記」をマリオンに見に行く
今日はかねての予定通り、私と下の子の2人で有楽町マリオンに「ゲド戦記」を見に行きました。11時半からの回に入る予定だったんですが、10時半過ぎに座席指定を受けに行ったところ、すでに、中央の座席はスクリーンに近い前の方しかなく、左脇の後ろの席を確保します。とても入りがよくて、興行的には大成功なんでしょう。
座席指定を受けてから、まだ1時間近くありましたので、有楽町のビックカメラに行きます。下の子は8月末に誕生日が来るので、プレゼントを考えるための下見と称して、自然とおもちゃ売り場に誘導されます。かねてからキーボッツに目をつけていたようなんですが、そのうち、7月末に発売されたライシャンマオーに目が行きます。まだ、1箱だけ売り場にあり、しかも、初回生産限定の特典付きと箱に明記してあり、下の子の購買意欲を大いに刺激します。まあ、私も高い物とは思っていないので、ついつい、買い与えてしまいます。
11時半前にマリオンに戻り、下の子のトイレを済ませて、ポップコーンとコーラを買い求めます。2時間近くにわたって映画を鑑賞します。以下、「ゲド戦記」の感想文なんですが、ネタバレがありますので、まだ見ていない方は十分ご注意下さい。
まず、この「ゲド戦記」は今までのスタジオ・ジブリの作品のDNAを継承しているかどうか、とても疑わしいです。宮崎吾郎監督が父親のDNAを継承しているであろうことは間違いないと思うんですが、作品はスタジオ・ジブリだとはとても思えません。というか、私は一昨年の「ハウルの動く城」を見ていないので、そのさらに前の「千と千尋の神隠し」や15年以上も前の「魔女の宅急便」などを基に考えているんですが、夢もロマンも愛情もストーリーも登場人物のキャラも、何もかもがこれはスタジオ・ジブリの作品ではないと、私の感性が拒否しているような気がしました。もっとも、私は原作を読んでいないので、この映画だけは原作に忠実に作製されているのかもしれませんが、それにしても、私の期待を大きく裏切る出来だったです。一番よかったのは歌で、真ん中あたりのテルーの歌とエンディングの時の歌はとてもよかったです。新人の手嶌葵さんがテルーの声をやっていて、この2つの歌をアカペラで歌っています。これはとてもよくて、感動モノでした。でも、その他はイマイチでした。
まず、共食いで血を流す龍のシーンから始まります。私は血を流したり、人が死ぬことを小説や映画に持ち込むのは好きではありません。それから、息子の父親殺し、奴隷の人身売買とその基礎となる人狩り、麻薬中毒、などなど、小学2年生の下の子といっしょに見に来たのは失敗だったかと思わせるシーンの連続でした。スタジオ・ジブリが小学生とは見たくない作品を作るとは、想像も出来ませんでした。アレンが魔法の剣でクモと呼ばれる魔法使いの手首を切るシーンなんかは、妙にリアルで、子供の目を覆いたくなるようなシーンでした。このクモと呼ばれる魔法使いがドロドロの黒いゲルになるのは「千と千尋の神隠し」で顔なしが暴れるシーンを踏まえているような気がしないでもないんですが、それでも、美的表現の観点からはかなり差があったような気がします。
ストーリーもよく分からないんですが、私の嫌いな善悪の対立モノに近くて、悪者の魔法使いクモに対して、ゲドことハイタカは何も出来ず、主人公のアレンとテルーで立ち向かうんですが、ここまで善と悪の対立はスタジオ・ジブリの作品では見たことがなかったです。外国の作品を原作にしているので、キリスト教的な対立概念を背景としているのかもしれません。それはそれで新鮮だったかもしれませんが、いままでのスタジオ・ジブリの作品のDNAは感じられません。私が感動した「魔女の宅急便」にしても、「千と千尋の神隠し」でも、クモのような悪役は出てこなかった気がします。
キャラもタイトルになっている大賢人のゲドことハイタカのキャラがよく分かりません。魔法使いで大賢人とのことですが、奴隷の枷を外したり、顔を変えて見たりの小ネタの魔法は見せますが、肝心の最後のクモとの対決の場面ではなす術もなく地下牢に閉じ込められてしまいます。主人公のアレンも二重人格なのはケロロ軍曹のタママ二等兵や西澤桃華・桜華などと同じといえばそれまでで、それがアニメ界ではやっているのかもしれませんが、いきなり父親の国王を殺したりして、何が何だかよく分かりません。テルーがヒロインだと考えられるんですが、元は龍だったりするのは、これも「千と千尋の神隠し」の白を踏まえているのかもしれませんが、龍の姿になってクモを倒す最後のシーン以外では、歌の印象しかありません。
家に戻って、下の子が女房に「どんな映画だった?」と聞かれて、答えにくそうにしていましたが、小学2年生の表現力不足だけが原因ではなく、「ゲド戦記」の作品そのものにも原因がありそうな気がします。その意味で、うまく答えられなかった下の子に私はとても同情しています。来週はポケモン映画の「ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィ」を家族そろって見に行く予定にしていますので、下の子にはそこで挽回して欲しいと思います。
少し話は変わりますが、Yahooの映画のレビューでは最も高い評価を受けている「時をかける少女」の細田守監督が途中まで一昨年公開の「ハウルの動く城」を監督していたのは有名な話です。何らかの事情で途中で宮崎駿監督に交代し、「ハウルの動く城」は最後の宮崎駿監督作品として公開され、細田守監督は東映に復帰しました。このあたりのことは事情通の方で、いろいろという人がいたりします。
「時をかける少女」といえば、私なんかの世代では原田知世さんの主演による角川の実写版だったんですが、今夏の「時をかける少女」はアニメです。今日時点のYahooの映画レビューでトップです。なお、ついでながら、「ゲド戦記」は10位にも入っていませんが、逆に、興行通信社調べの7月30日付観客動員では「ゲド戦記」がトップで、「時をかける少女」は10位にも入っていません。
スタジオ・ジブリは、ビジネスや興行よりも作品性を重要視することを標榜するスタジオだと私は聞いていました。ですから、海外での上映などではノーカットにこだわったりして、作品性を守ることを非常に重要視していたりします。でも、結果として、スタジオ・ジブリを退社した形になっている細田守監督の「時をかける少女」とスタジオ・ジブリの監督職を親から相続した形になっている宮崎吾郎監督の「ゲド戦記」は、Yahooのレビューで作品性と興行成績が対称的な2作品となっているようです。スタジオ・ジブリのDNAを受け継いでいるのはどちらなのか、私にはよく分かりません。
私が自分の選択の誤りを素直に認めて、ここまで酷評するのもめずらしいかもしれません。
下の写真は、マリオンの「ゲド戦記」の劇場前で撮った写真と家に帰ってからキーボッツで遊ぶ下の子です。
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