2006年10-12月期 国内総生産(GDP)速報から先行き経済をどう見るか?
今日の東京は昨日とは打って変わっていいお天気でしたが、気温はそれほど上がらなず、やや肌寒かったような気がします。
今日の朝に昨年2006年10-12月期の国内総生産(GDP)の第1次速報が内閣府から発表されました。私が役所に出勤する準備をしている時に、NHKのテロップで前期比年率4.8%成長との速報を目にしました。日経Quickの事前予想では3.6%だったので、市場の予想より少し高かったことになります。以前にこのブログでも書いたかもしれませんが、エコノミストの業界ではこの統計のことを短くQEと呼びます。Quick Estimationだか、Quarterly Estimationの略なんだろうと思います。
最近1年半、つまり、6四半期の主要な需要項目別の成長率は以下の通りです。
需要項目 | 2005/ 7-9 | 2005/ 10-12 | 2006/ 1-3 | 2006/ 4-6 | 2006/ 7-9 | 2006/ 10-12 |
---|---|---|---|---|---|---|
実質GDP | +0.7 | +0.4 | +0.7 | +0.3 | +0.1 | +1.2 |
民間消費 | +0.5 | +0.3 | +0.1 | +0.6 | -1.1 | +1.1 |
民間住宅 | +1.2 | +1.3 | +0.9 | -2.1 | -0.1 | +2.0 |
民間設備 | +0.8 | -0.5 | +3.3 | +3.3 | +0.8 | +2.2 |
民間在庫 | -0.2 | 0.0 | +0.2 | -0.2 | +0.2 | -0.1 |
外需 | 0.0 | +0.6 | +0.1 | -0.1 | +0.4 | +0.2 |
輸出 | +3.0 | +3.7 | +2.3 | +0.7 | +2.4 | +1.1 |
輸入 | +3.5 | -0.3 | +2.0 | +1.4 | -0.5 | +0.0 |
名目GDP | +0.2 | +0.3 | +0.4 | +0.2 | -0.1 | +1.2 |
GDPデフレータ | -1.4 | -1.6 | -1.3 | -1.1 | -0.7 | +0.5 |
なお、民間在庫と外需は寄与度で、GDPデフレータはなぜか前年同期比の上昇率です。その他の項目は前期比の成長率となっています。理由は知りませんが、内閣府の発表資料がこうなっているので、そのまま転記しました。htmlでテーブルを組むのに多大なる労力を費やしましたので、計数のチェックがおろそかになっている可能性があります。より正確を期される場合は内閣府のホームページをご覧下さるようお願い申し上げます。
大雑把に見て、前期比で1.2%成長、年率に換算すると4.8%成長ですから、いざなぎ景気を超えて、現在の景気拡大の力強さをうかがわせます。ですから、NYダウが史上最高値を更新したことも好感して、東証の日経平均は5日連騰で、本日の終り値は前日比144円59銭(0.81%)高の1万7897円23銭をつけました。でも、この株価の上昇ピッチは少し早過ぎると1月24日のエントリーで書きましたが、私のこの考えは変わっていません。3月中くらいまでは株価ははやす可能性がありますが、その後は8-9月くらいまで17000円台の前半から半ばくらいでウロウロする可能性が高いと、私は引き続き考えています。
さて、少し長めの成長率の表を苦労して書いたのは、昨年1年くらいの経済の状況を概観するためです。まず、景気の鍵となる民間消費は昨年1月の所得税の定率減税の半減、6月からの住民税の同じく定率減税の半減を、実に正直に反映して、昨年2006年1-3月期に少し鈍化した後、7-9月期には1.1%の落ち込みを見せています。財政政策が個人消費の伸びを押さえ込んだ形になっていると考えられます。今日発表された昨年10-12月期の消費の回復も、7-9月期からの反発であり、実額で305兆円のトントンに戻っただけであるとの見方も成り立ちます。
次に、金融政策については、3月に量的緩和が解除され、7月にゼロ金利が解除されました。これまた、とても素直に、4-6月期と7-9月期の住宅投資がマイナスをつけ、設備投資も7-9月期に大きく鈍化しています。ただし、円安の進行を受けて企業収益が回復していることから、10-12月期には設備投資も伸びを回復しつつあるように見えます。
財政政策と金融政策の動きを受けて、少し民間部門の消費と投資が小さなショックを受けた後、10-12月期に正常化したと見ることも出来ます。しかし、先行きは楽観を許さないと私は考えています。フォワードルッキングに考えて、先行きの懸念材料は2点あります。ひとつは金融政策の動向です。私は25ベーシスくらいのコールレート引上げは、実体経済により大きな影響を及ぼす長期金利にストレートに直結するわけではなく、来週の日銀の金融政策決定会合での金利再引き上げにも、先月と同じようにニュートラルなんですが、個人消費が本格的に回復しないうちに金利の先高期待が形成されると、単に金利だけでなく、為替も含めてジワジワと景気の下押し圧力となる可能性があります。現在、春闘交渉の真っ最中ですが、賃金動向などから個人消費の回復が本当にフォワードルッキングに確信できるのでしたら、市場との対話の中で許容されるのであれば、金利引上げもオッケーだと思うんですが、中途半端にメンツを考慮した金利引上げとみなされれば、スケジュール的な先行き金利引上げ期待を形成しかねませんから、景気のマイナスになる可能性が高いと思います。もうひとつは、海外経済の動向です。10-12月期からゆっくりと輸出の伸びが鈍化する気配を示しています。昨日、議会証言で連邦準備制度理事会(FED)のバーナンキ議長はソフトランディングにかなり強い自信を示したようですが、年央にかけて、米国経済の踊り場が深ければ、輸出がさらに鈍化する可能性も否定できません。
現在の景気拡大をさらに継続して、企業から家計への流れをストップさせないことが重要だと思います。
| 固定リンク
コメント