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2007年4月12日 (木)

IMFの世界経済見通しにおけるデカップリング論の採用

今日は朝からいいお天気で、気温も上がりました。でも、かなり大量の花粉が飛んでいたような気がします。

今朝の朝刊各紙に国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しの記事が掲載されていました。今週末に開催されるIMF・世銀の年次総会に提出されるものです。世界経済全体では2006年の5.4%成長を記録した後、今年2007年と来年2008年はともに4.9%成長にやや減速するとの予測です。詳しくはIMFのサイトでレポートされています。もちろん、英語ですので、念のため。なお、成長率見通しのサマリーは以下の通りです。1/3に縮小してありますので見づらいですが、クリックすると別画面で等倍サイズの表が表示されます。

IMF 経済見通し

表にもある通り、世界経済全体の予測で、2006年実績の5.4%から今年2007年と来年2008年がともに4.9%成長ですから、やや減速と見るのが普通だと思うんですが、Financial Times (FT) では IMF よりもさらに悲観的な見通しを持っているようで、今朝の1面トップの記事で "IMF predicts fifth year of strong global expansion" と題して、特に米国経済なんかのIMF見通しが楽観的ではないかとの主張をしています。FT のサイトから最初の2つのパラグラフだけ引用すると以下の通りです。

The world economy is on course for a fifth year of solid expansion despite recent stock market volatility and the US downturn, the International Monetary Fund said yesterday.
In its twice-yearly World Economic Outlook, the IMF said share price falls in late February had been "more of a modest correction" than a fundamental change in market sentiment and that equities remained close to all-time highs.

まあ、この間、株式市場が大きな下げを記録したばっかりなのに、そんなに楽観的でいいのか、という感じでしょうか。FT はさらに追討ちをかけるように、"The IMF reports on a wonderful world" と題する今日の社説では、"There is always a risk of rain. When the sun is shining, though, and there are few clouds in the sky, it is neurotic to be carrying an umbrella all the time." と書き始めて、やや神経質かつ警戒的なスタンスを示しています。
もっとも、IMF見通しでは、今年2007年の米国経済は2.2%成長と、昨年見通しから0.7%ポイントも下方修正しています。この水準であれば、四半期成長率の瞬間風速では1%余りの低成長を記録する四半期もあるのではないかと考えられますので、かなり厳しい見通しとなっています。エコノミストの中にはハードランディングと称する人もいそうな気がします。さらに、米国景気の急激な減速が世界経済を下振れさせるリスクであるとも指摘しており、私は結果を見れば比較的真っ当な見通しではないかと考えています。もっとも、最後に書いたように、反論はあります。また、関係ないことなんですが、日本経済目を転じると、今年2007年の成長率は2.3%とホンの少しだけですが、米国の成長率を上回るような見通しになっています。もしも、この通りに日本が米国の成長率を上回れば、日本のバブル景気が終わった1991年以来16年振りだそうです。
さて、前置きが長くなりましたが、米国経済が急減速するにもかかわらず、世界経済全体として減速が軽微なのは、日欧経済が堅調であることに加えて、エマージング諸国を含む途上国経済が高成長を続けるからです。途上国全体で昨年2006年の7.9%成長から、やや減速するものの、今年2007年は7.5%、来年2008年は7.1%と先進国では考えられないような高成長を続けるとの見通しです。特に、中国を含むアジア途上国は2007年8.8%、2008年8.4%の高成長と予想されています。
要するに、デカップリング論をサポートするような内容になっているわけです。特に、レポートの第1章では "Cross-Country Spillovers: Can the Global Economy Decouple from a U.S. Slowdown?" と題して、米国経済の減速が相対的に輸入依存度の低い住宅分野で生じていることなどから、2000-1年のハイテク・バブルの崩壊時とは様相を異にすると結論しています。もちろん、さらなる米国住宅市場の冷込みがダウンサイド・リスクであることは指摘されていますが、ベースラインのシナリオとして、IMFはデカップリング論を支持しているようで、その結果として、世界経済は減速しつつも順調な成長を続けるとの結論のように見えます。
私はこのデカップリング論に少し賛成しかねる点があるんですが、引用や表も含めて、今夜のエントリーはかなり長くなりましたので、取りあえず、今夜はここでお終いにしておきます。

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