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2007年5月29日 (火)

エコノミストの文学表現

今日も、朝からいいお天気でしたが、夕方から雲が広がりました。予報によるとお天気は下り坂のようです。

今朝の Financial Times (FT) ではドイツ連銀 Weber 総裁のインタビューが掲載されていて、欧州中央銀行 (ECB) が広報戦略を見直し、 code words の使用を中止するとの見通しが述べられていました。FT のサイトから最初のパラグラフだけを引用すると以下の通りです。なお、 Weber 総裁のインタビュー全文へのリンクはこちらです。

The European Central Bank will overhaul its communication strategy and stop using “code words” to signal interest rate changes when the current tightening cycle ends, according to a leading member of its governing council.

知り合いから教えてもらったんですが、欧州中央銀行 (ECB) のトリシエ総裁は理事会後のインタビューなんかで、先行きの利上げを示唆する以下のようなキーワードを使っているそうです。

キーワード意味するところ
monitor closely3ヵ月後の理事会で利上げする
monitor very closely2ヵ月後の理事会で利上げする
vigilance次回の理事会で利上げする
strong vigilance次回の理事会で利上げする
(50ベーシスの利上げもあり得る)

まあ、キーワードによる現在のシグナリングは分かりやすいとも言えますし、分かりにくいとも言えます。ちなみに、日本でも内閣府(昔は経済企画庁)が月例経済報告を作成して発表していますが、ここでも月例文学と呼ばれる表現が見られます。なお、月例経済報告とは、その名の通り、毎月の国内景気の状況を総合的に示すもので、基調判断において景気の方向や水準を示すほか、個人消費、設備投資、生産、雇用情勢といった項目別の判断も含まれていて、総理大臣や関係する経済閣僚、与党幹部や日銀総裁も出席する月例経済報告関係閣僚会議にて最終決定されます。
この月例経済報告では細かい言葉のニュアンスを使い分けて、景気の現状なんかを表現する必要があるんですが、我々官庁エコノミストの文学表現力の不足を感じさせるものとなっていたりします。お役所言葉という表現がありますが、月例文学なんかはお役所の中ですら理解できないものが含まれているような気がします。一例を挙げると、1998年3月の衆議院予算委員会において、当時の尾身経済企画庁長官がかなりあからさまに内幕を明かしています。すなわち、尾身大臣は「停滞」の方が「弱含み」よりも弱い表現と理解していたらしいんですが、事務方は逆であると説明したため、部内調整した結果、両者はほぼ同じと意見統一した、ということです。また、尾身大臣の次の経済企画庁長官となった堺屋大臣は、「停滞」、「弱含み」、「低迷」の3語はほぼ同義と言っていたりします。もっとも、堺屋大臣も「変化の胎動」なんて、訳の分からない言葉を使わせたりしました。
ホントは経済データを生のままグラフで示すのがもっともお手軽でいいんですが、それでも限界はありますし、解釈が分かれることも考えられます。景気や物価なんかの現状を適切に言葉で表現するのは、どうしても細かなニュアンスを出し難くて、エコノミストの不得手な分野かもしれません。もっとも、エコノミストでなくても、微妙な表現は分かり難いものだという気がします。月例文学なんかでも、例えば、物価上昇率のデータの範囲によって、安定と高騰と暴騰を定義するとか、言葉とデータの対応表のようなものがあればいいんですが、その対応表も時々の経済状態によって微妙に違いが生ずる可能性も排除出来ませんから、完全なものを望むのは無理があります。
ECB もそうなんですから、日本だけでなく、いろんな国のエコノミストも、的確に経済をあらわす文章表現に苦労しているんだろうと思います。

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