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2007年5月30日 (水)

アルテミス・ファウルを読む

今日は朝からが広がり、午後から雨が降り出しました。気温は上がりませんでしたが、湿度が高くて、外を歩くと汗ばむくらいでした。

昨夜の風呂上りにオーエン・コルファーさんによる子供向けのファンタジー小説アルテミス・ファウルのシリーズのうち、現時点で邦訳されている第4巻までを読み終えました。第5巻の "The Lost Colony" はまだ邦訳されていません。著者によれば、第3巻までの3部作のつもりだったようですが、好評につき続編が次々と刊行されているらしいです。私や我が家のおにいちゃんには好評なので、今夜のエントリーでは私なりに読書感想文として取り上げたいと思います。なお、今夜のエントリーはネタバレがいっぱいだと思いますので十分ご注意下さい。まず、アマゾンのサイトから要約を引用すると以下の通りです。

第1巻「妖精の身代金」
アイルランドの裏社会の御曹司で12歳のアルテミスは、妖精の持つ魔法書を、コンピューターで解読、巨万の富を得ようとする。妖精たちはあらゆる手段でアルテミスに立ち向かうが…。
第2巻「北極の事件簿」
地底警察は、ゴブリンの犯罪組織に手を焼いていた。地上の何者かがゴブリンに力を貸しているらしい。ルート司令官は14歳になったアルテミス・ファウルに、捜査への協力を依頼するが…。
第3巻「永遠の暗号」
五年ぶりに帰ってきた父親に、犯罪生活から足を洗うよう約束させられたアルテミス・ファウルは、最後の大仕事をすることに。それは妖精のテクノロジーを使ってスーパーコンピューターを作り、大儲けすることだった!
第4巻「オパールの策略」
精神科医の観察のもと警戒厳重な医療刑務所に収容されているオパール・コボイ。彼女は自分をムショ送りにしたアルテミスらに復讐すべく、恐るべき計画を実行に移そうとしていた…。

一連のシリーズの主人公は著者の母国であるアイルランドの犯罪社会における名門とも言える家柄の御曹司で、アルテミス・ファウル2世といいます。どうして2世かと言うと、父親も同じ名前だからです。第4巻までのところでは、父親とファーストネームが同じであることの含意は何もありません。というか、ほとんど父親が登場しません。このアルテミスに従者のバトラーがいて、ボブ・サップ並みの体格でゴルゴ13並みの戦闘力を持っています。
この地上の人間界の主要人物に加えて、地下の妖精の世界の主要人物は地底警察の警官であるエルフのホリー・ショート大尉とドワーフの犯罪者であるマルチ・ディガムズです。2巻以降は、アルテミス、バトラー、ホリー、マルチの4人で協力して大活躍します。ただし、ショート大尉は第4巻の最後で警官を辞職します。それから、地底警察の技術者でケンタウロスのフォーリーも重要な役割を果たします。それから、悪役では第4巻のタイトルにもなっているオパール・コボイも登場します。ピクシーです。フォーリーと肩を並べるほどの科学技術力を誇っていたりします。
なお、妖精の世界にはいろんな種族の妖精がいます。エルフ、ピクシー、スプライト、ドワーフ、ノーム、ゴブリンなんかで、ヒーリングなんかの魔法を使うことが出来たりします。それから、魔法は使えませんが、やたらと頭のいいケンタウロスもいたりします。地下の妖精の世界は魔法が使える種族がいるだけでなく、地上の人間界よりも、はるかに科学技術が進んでいたりします。太古の昔には妖精と人間が地上で共存していたらしいんですが、現在は、妖精は地下に潜って人間との接触を極端なまでに避けています。でも、時々、観光旅行やなんやで妖精は地上に出たりします。パリのディズニーランドは妖精がそのままの姿で闊歩できるので、なかなか人気の観光スポットだったりします。もちろん、人間界と地下を行き来して非合法の密輸を行う犯罪者もいます。
この小説の面白い点は主人公のアルテミスが犯罪界の天才で、悪役っぽいところです。しかし、モロに犯罪的なのは第1巻で妖精を誘拐して身代金をせしめるところまでで、第2巻では地下警察と協力してゴブリンの反乱グループを鎮圧したり、第3巻では米国のマフィアまがいのIT会社社長と対立したり、第4巻でも地下警察と協力して正真正銘の悪役のオパール・コボイの策略を封じたりします。さらに、第2巻以降では犯罪者のドワーフであるマルチ・ディガムズも重要な役回りを演じて、アルテミスや地下警察のホリー・ショート大尉やフォーリーと協力したりもします。
次に面白い点としては、ハイテク満載の近未来的な装置がいっぱい出てくるところです。主として、地下の妖精の世界でフォーリーの発明になるものなんですが、その妖精の知識を基にアルテミス自身が考案したものもあります。第3巻でマフィアまがいのIT会社社長に売りつけようとしたスーパーコンピューターなんかがそうです。この近未来的なハイテク装置と妖精の魔法を組み合わせて、実際には考えられないようなことが出来たりします。ファンタジーといえば聞こえはいいんですが、悪く言えば荒唐無稽と受け止める大人もいるかもしれません。このあたりはドラえもんと同じです。子供達にはのあるお話だとも言えます。最初に書いたように、子供向けのファンタジー小説なんですが、日本人の作者であれば、小説ではなくマンガにするかもしれません。
最後に1点だけ、少し物足りない点を上げると、少し前に紹介したバーティミアスのシリーズに出てくるナサニエルといっしょで、ほとんどアルテミスの学校生活は描かれていません。これはハリー・ポッターとの大きな違いだという気がします。アルテミスは従者のバトラーや妖精の助けを借りるんですが、学校の仲間は出て来ません。両親すらもほとんど登場しません。両親よりもバトラーの妹の方がよく出てきます。学校に通わないのはポケモンのサトシなんかといっしょなんですが、実際の子供達はもれなく学校に通っているわけですから、学校生活をベースにしたハリー・ポッターなんかにより強い共感を覚える可能性が高いと思います。私の好きな日本の子供向けファンタジー小説、例えば、伊藤遊さんの「鬼の橋」や「えんの松原」なんかは時代を平安時代に設定しているので仕方ないんでしょうが、アルテミス・ファウルは現代から近未来の時代設定ですし、通っている学校の名前も出て来たりするわけですから、多少なりとも、学校の仲間との交流も欲しい気がしないでもありません。

作者の本国のアイルランドや英米においては、8-12歳の子供向けとの推奨がなされているように聞いたこともありますし、子供向けにとってもよく出来たファンタジー小説です。ハリー・ポッターほどではありませんが、私はバーティミアスよりもアルテミス・ファウルを推薦します。巻を追うごとにアルテミスの良心が大きくなって行くのも楽しみです。

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