骨太2007素案を読み、経済財政諮問会議の役割を考える
今日も朝からまずまずいいお天気でした。そこそこ気温も上がりました。
昨夕の経済財政諮問会議において「基本方針2007 (素案)」、いわゆる骨太2007が公表されました。まだまだペンディングを示す (P) がついた部分が多いんですが、この素案を基に6月中くらいに骨太2007が決定されるんだろうと思います。取りあえず、目次を引用すると以下の通りです。
第1章 新しい日本の国づくりに挑む
第2章 成長力の強化
1. 成長力加速プログラム
I 成長力底上げ戦略
II サービス革新戦略
III 成長可能性拡大戦略―イノベーション等
2. グローバル化改革
3. 労働市場改革 4. 地域活性化
第3章 21世紀型行財政システムの構築
1. 歳出・歳入一体改革の実現
2. 税制改革の基本哲学
3. 予算制度改革
4. 公務員制度改革
5. 独立行政法人等の改革
6. 資産債務改革
7. 市場化テストの推進
8. 地方分権改革
第4章 持続的で安心できる社会の実現
1. 環境立国戦略
2. 未来への投資
(1) 教育再生
(2) 少子化対策の推進
(3) 再チャレンジ支援
3. 質の高い社会保障サービスの構築
4. 治安・防災等の強化
5. 多様なライフスタイルを支える環境整備
第5章 平成20年度予算における基本的考え方
1. 今後の経済動向と当面の経済財政運営の考え方
2. 平成20年度予算の方向
(別表) EPA工程表
新聞各紙の見出しには、痛みや不人気政策の先送りとか、あるいは、総花的とかの批判的な表現が並びました。確かに、すでに決定されている、あるいは、もうすぐ決まるような政策、例えば、アジア・ゲートウェイ構想、長期戦略指針「イノベーション25」、経済成長戦略大綱なんかを引合いに出したりして、新味に欠けると指摘されるとそうかもしれないという気がします。内閣も経済財政諮問会議のメンバーも去年から交代したんだから、何らかの新味が欲しいというのも分からないでもありませんが、歳出・歳入一体改革なんかは昨年の骨太で決まっていて、これなんかは着実な実行を確保・検証するのが今年の骨太なわけですから、それはそれで仕方のない面もあります。
何よりも、2-3年前であれば、骨太は言うに及ばず、経済財政諮問会議の報道が1面で扱われていたのに対して、今日の大部分の全国紙のトップはここ1週間ほどの流れで年金問題が取り上げられ、経済財政諮問会議や骨太の扱いが小さい気がします。年金の問題は恒常所得に大いなる影響を及ぼし、現在の消費性向を下方修正させるインパクトをもたらすものですから、エコノミストの立場からもその重要性は十分に認識されているんですが、ある意味で、事務処理がズサンだったことに起因しているわけですから、政策対応を必要とする課題であるかどうかは、やや疑わしいと私は考えています。要は、社会保険庁の職員がサボっていたわけで、しっかり働かせればそれでいいことです。もっとも、今まで長きに渡ってしっかり働いて来なかったんですから、それをしっかり働かせるのに一苦労という側面はあります。
年金は今夜のエントリーのメインではないので、さて置き、昨年9月までの小泉内閣から現在の安倍内閣に政権が交代して、骨太や経済財政諮問会議の注目度が低下している原因は、いくつかあると私は考えています。第1に、総理大臣というか、内閣の目指す方向が違うことです。アジェンダ要因です。郵政民営化を最終目標にして経済政策を中心に運営して来た小泉内閣と、憲法改正を最終目標にしている安倍内閣とでは経済財政諮問会議の位置付けが異なるのは当然です。第2に、失礼ながら、人的リソースの問題もあるような気がしないでもありません。当時の竹中経済財政担当大臣と現在の大田大臣を比較する向きもあります。また、日本経団連会長として財界トップにありながら、経済財政諮問会議の場で自社の偽装請負について発言する人がいたりしますから、私なんかはびっくりしてしまいました。まあ、特定の個人を取り上げるのはともかく、私は経済財政諮問会議の3日後に公表される詳細な議事録には目を通すようにしているんですが、最近の議事録を見ると、全体として、事前に用意されたメモを読み上げるような発言が多い印象を受けます。昨年2月だったと記憶しているんですが、金利と成長率の論争があった時のような、丁々発止のホットな議論は最近では見受けられません。議事録上でカットされているだけなのかもしれませんが、必要な際に必要最小限の発言で済ませる場合が多いような気がしないでもありません。例えば、同情こそすれ批判する気はさらさらないんですが、日銀総裁なんかは表紙の出席者に名前を連ねているだけで、ここ何回かの議事録にはまったく登場しなかったりします。それから、我と我が身を振り返って、役所のサポート体制も心配です。第3に、幸運なことに経済が好調なことです。小泉内閣初期には金融不安が高まり、毎年のように三月危機説がささやかれ、不良債権処理をすすめたり、あるいは、デフレ対策なんかの必要性が高まっていたんですが、力強さに欠けるとはいえ、現在は、景気は長期に渡って拡大を続けていますし、デフレ脱却についても日程に上ったりしています。思い切った改革をスピーディーに進める必要性は低下している可能性が高いんではないかと思います。
これらの中で、上に述べた字数は最も少なかったんですが、私はやっぱり総理の目指す方向の違いが最大の要因ではないかと考えています。経済の季節が終わって、憲法改正なんかの政治の季節に入ったのかもしれません。
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