第137回の芥川賞と直木賞の感想
今日は朝から雲が広がり、雨は降りませんでした。陽射しがなくて気温も上がらず、昨日と同じように、やや肌寒いくらいでした。
昨夜、第137回の芥川賞と直木賞の選考会が開催され、芥川賞に諏訪哲史さんの「アサッテの人」(「群像」6月号)が、直木賞に松井今朝子さんの「吉原手引草」(幻冬舎)が選ばれました。どうでもいいことですが、前回は受賞作なしで終わった直木賞に文藝春秋社でない本が選ばれたのは久し振りな気がします。ということで、長くなりますが、いつもの朝日新聞のサイトから引用すると、以下の通りです。
第137回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に諏訪哲史(てつし)さん(37)の「アサッテの人」(「群像」6月号)が、直木賞に松井今朝子(けさこ)さん(53)の「吉原手引草」(幻冬舎)が選ばれた。副賞は各100万円。授賞式は8月22日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
諏訪さんは名古屋市生まれの会社員。国学院大学卒。今年、この作品で群像新人文学賞を受けデビュー、続けて芥川賞も射止めた。名古屋市西区在住。
「アサッテの人」は、「ポンパ」などと意味不明の言葉を発する癖がある、ちょっと変わった叔父の実像を描き出そうとする。語り手が、かつて叔父のことを書いた小説の草稿や叔父が残した日記を引用しながら、失跡した叔父の謎に多層的に迫る。
会見で諏訪さんは「候補になってからずっとモヤモヤした気持ちだったが、ぼくだけ先に梅雨明けさせていただいた。『ポンパ』は昨年亡くなった父の口ぐせで、生きていたら喜んでくれたでしょう」と語った。
松井さんは京都市生まれ。早稲田大大学院で演劇学を学び、97年に「仲蔵狂乱」で時代小説大賞を受賞して作家活動に入った。02年に「非道、行ずべからず」が、03年には「似せ者」が直木賞候補に。東京都世田谷区在住。
「吉原手引草」は、江戸の吉原を舞台に、人気絶頂の花魁(おいらん)が突然消えた不可解な事件を描く長編小説。遊郭に生きる様々な人々の人生模様は読み応えがある。
松井さんは会見で「本当にいい小説は、作者を忘れさせる小説ではないか」と話した。
私は小学生の息子たちといっしょに子供向けの本を読んだり、アマゾンのリストマニアを利用してエコノミストが読んだ子供向けの本のリストを作ったりしていますが、さすがに、学術書を含めて経済書を読む機会が多くて、普通の純文学や小説までは手が回らないので、芥川賞と直木賞についての事前予想は大森望さんと豊崎由美さんのお二人が主宰している文学賞メッタ斬り!のサイトを大いに参考にさせていただいています。と言うより、ほとんど丸写しだったりします。この文学賞メッタ斬り!のサイトも、131回から133回まではエキサイトブックスで、134回から136回までは nikkei BP とかのサイトで展開されていたんですが、今回137回の芥川賞・直木賞からは PARCO-CITY に移ったようです。PARCO 出版から本を出したからではないかと思います。なお、どうでもいいことですが、アマゾンのリストマニアが検索できるサイトが昨年ころから登場しています。その名もListMania Searchと言います。ハリー・ポッターで検索すれば、私のリストもヒットします。なぜか、2回もヒットしたりします。
さて、前置きが長くなりましたが、文学賞メッタ斬り!を主宰しているお二人の評価では、今回の芥川賞は受賞ナシとの予想でしたが、今回から川上弘美さんと小川洋子さんの2人の新しい選考委員が加わったので、多少無理をしてでも受賞作を出すんじゃないかという観測もありました。結局、今までの芥川賞の傾向が続かないとすればあるいは、大森さんの言葉を借りれば、揺り戻しがあるとすると「アサッテの人」もあり得る、との観測もありました。確かに、私の目から見て、サラッと淡白と言うか、やや印象の薄い作品に授賞する傾向があったような気がしないでもありません。特に、136回の青山七恵さんの「ひとり日和」や134回の絲山秋子さんの「沖で待つ」なんかがそうです。今回137回の諏訪哲史さんの「アサッテの人」は、ある意味で、エゲツないくらいのインパクトがありながら、最後は普通に終わる、という作品らしいので、それなりに楽しみではあります。
さて、直木賞の方は、いつもながら、私は芥川賞に比べて関心が薄いんですが、今回も、図書館で借りて読むことにします。昨夜、港区の図書館をインターネットで検索すると、今回137回の受賞作である松井今朝子さんの「吉原手引草」は、港区にある6館の図書館で4冊しかなく、予約の順番は60番を超えていました。実は、最近で言うと、134回の東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」と136回の森絵都さんの「風に舞いあがるビニールシート」は本を買って読みました。このブログにも読書感想文をアップした記憶があります。でも、135回の三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」は延々と図書館で待って読みました。読書感想文は書かなかった記憶があります。主たる理由は表紙にタバコがあるので、家に置いておきたくないと思ったからです。今回の直木賞の「吉原手引草」も花魁の失踪から始まって、吉原関係者17人から語られる吉原の裏と表、また、嘘と真が交錯しているような吉原モノですから、何となく、教育上の見地からでもなく、あくまで何となくなんですが、小学生の目には触れさせたくない気がしないでもありません。
いつもの通り、芥川賞については8月号の「文藝春秋」で書評とともに読みたいと思います。新たに加わった川上弘美さんと小川洋子さんの2人の選考委員の評も楽しみです。
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