いろいろと8月の月次経済統計が発表される
今日は、朝からいいお天気で気温も上がり、30度を超える真夏日になったようです。クールビズ最終日で助かったんですが、それでも外を出歩くと真夏の蒸し暑さに近かったです。役所では昼前からエアコンを入れてくれました。昨日はエアコンなしでしたから、オフィスにいる限りは、今日はずいぶんとラクでした。来週からはネクタイ着用になりますが、クールビズが終わってからも、しばらくの間、暑い日は上着は失礼しようかと私は密かに考えていたりします。
ミャンマーで僧侶らが主導して始まった反軍事政権のデモが広がりを見せる中で、邦人カメラマンが銃撃されて死亡し、朝夕の新聞やテレビのニュースでも持切りなんですが、ひっそりと経済ニュースもいくつか報じられています。すなわち、年度半期の月末最終の営業日ということもあって、日銀は短期市場に対して午前と午後合わせて1.8兆円の資金供給オペを実施しましたし、統計としては、米国の4-6月期のGDP統計の改定や法人企業統計調査に基づく我が国の2006年度の企業収益、あるいは、国税庁の民間給与実態統計調査結果などの四半期や年次の統計を別にしても、今朝は月次の経済統計がワンサと発表されました。以下に、いつもの NIKKEI.NET のサイトから項目だけピックアップしてリンクを張っておきます。なお、スペックが変更されたので、ウェブ魚拓のサービスは使わないことにしました。リンクが切れていたら諦めて下さい。
- 8月の消費支出1.6%増、総務省「個人消費は堅調」
- 8月の鉱工業生産指数3.4%上昇、過去最高更新
- 8月の消費者物価0.1%下落、薄型テレビやパソコン下がる
- 8月の小売業販売額0.5%増、猛暑でエアコン好調
- 8月の失業率3.8%に上昇、雇用者数は増加
- 8月の新設住宅着工43.3%減、2カ月連続マイナス
新聞の見出しだけからは明確ではないかもしれませんが、要するに、NIKKEI.NET から引用した順に、家計調査、鉱工業生産、消費者物価、商業販売統計、失業率なんかの雇用統計、建設着工統計の5つの経済統計の8月の結果が発表されたわけです。8月単月の統計ですし、断定的な評価は難しいかもしれませんが、少し前に発表された4-6月期のGDP統計や貿易統計なんかも併せて考えると、成長率がマイナスに突っ込む中で、失業率が上がって有効求人倍率は下がって、さらに、物価がマイナスを記録しているわけですから、どのような角度から見てもデフレが続いていることは明らかです。新築住宅着工については、例の耐震構造疑惑から建築着工申請の審査が遅れ気味という特殊要因がありますので、大幅減は少し割り引いて考える必要がある一方で、家計調査に基づく消費支出については、総務省は「個人消費は堅調」としていますが、7月のやや涼しかった気候に比べて8月は文字通りの猛暑だったわけですから、こちらも、逆の方向で猛暑効果を差し引いて考える必要があり、ヘッドラインの数字をそのまま受け入れるのは抵抗があります。同じく総務省の試算によれば、8月の猛暑による押上げ効果が0.68%あったそうですから、ヘッドラインである8月の季節調整済み前月比0.4%は実力ベースではマイナスということになりますし、前年同月比の1.6%増も1%を割り込むことになります。また、商業販売統計の小売りの増加についても、市場予想を大きく上回る3カ月振りの前年比増だったんですが、あるシンクタンクのレポートによれば、実質化した上で7-8月でならせば4-6月期に及ばないとの試算もありました。所得に目を転ずると、昨年度の統計ながら、給与は法人企業統計調査では増加、民間給与実態統計調査では減少となっていますから、控えめに言っても、所得が堅調に増加しているとは言い難いです。住宅投資はいうに及ばず、個人消費は底堅いものの景気を積極的にリードするとまでは言えないような気がします。
米国経済も4-6月期のGDP統計が下方修正されたのに見られるように、サブプライム問題が発生する前から減速して来ています。年央の景気減速は昨年から予想されていたことで、サブプライム問題に端を発する流動性危機から実体経済の減速がさらに大きく、また、長引くことは確実です。今後、8月の統計指標が発表されるに従って、米国経済の先行き見通しは下方修正されるようになるだろうと考えられます。まずは、来週金曜日に発表される雇用統計が注目されるところでしょう。それでも、我が国の貿易統計が8月に大幅な黒字を計上したのは、一見矛盾しているようですが、中身を見ると、米国向けの輸出数量の減少を EU 向けやアジア向けでカバーしているのが真実だろうと思います。特に、貿易統計では7月の新潟沖地震の影響で落ち込んでいた自動車がリバウンドした面があり、今後は、為替相場が内外金利差からやや円高基調で推移し、原油価格が高止まりするのであれば、貿易収支は縮小に向かうと考えるのが自然ではないかと思われます。また、新潟沖地震からの復旧の影響については、鉱工業生産にも見られます。8月の輸送機械が大きく反発しているからです。なお、いまだに古典的な循環を示している IT 在庫の調整については、鉱工業生産から見る限り、この夏でほぼ終了したと考えられます。生産サイドニは持直しの動きが見られます。
別の角度から、今週の新聞各紙の調査結果によると、新しく成立した福田内閣の支持率は軒並み50%を超えており、政治的な混乱は収束したようにも見受けられます。しかし、閣僚がほとんど再任されているんですから、遠からず内閣改造があると考える向きもありますし、今後の経済動向に及ぼす影響も引き続き不透明と言わざるを得ません。他方、多くのエコノミストの間では経済動向については基本的なシナリオは大きな変化はないとのコンセンサスがあるように見受けられます。すなわち、昨年来考えられていたように、年央に踊り場を経て年度後半から潜在成長率近傍に戻る、というのが、スケジュール的にやや後ズレして、しかも、戻りのペースが鈍化する方向では修正されるものの、このまま減速から景気後退に向かうと考えるエコノミストは少数派であるような気がします。もっとも、このための前提は、為替と外需です。逆に言えば、設備投資が確度高く堅調なことを除いて、その他の内需は余り期待されていないのかもしれません。為替相場が大きく円高に振れることなく、さらに、米国経済が潜在成長率を下回るもののリセッションに入らず、さりとて、インフレにもならず、加えて、中国をはじめとするアジア地域や EU の景気拡大が継続する、というものです。やや、前提条件が多過ぎるような気がしないでもありませんが、これら前提が実現する蓋然性は決して小さくないと多くのエコノミストは見ているようです。
今週は先週に続いて週末が3連休で営業日が少ない上に、月末週なこともあって各種経済統計なんかが発表され、いつもは気楽な話題を取り上げる金曜日まで経済のエントリーを書くハメになってしまいました。実は、先月8月30日にハリー・ポッター第7巻の「死の秘宝」のネタバレ第1弾で分霊箱 (horcrux) を取り上げた後、発売前に話題になった誰が死ぬか、についてネタバレ第2弾をそろそろ書こうと思っていたのですが、今週はムリでした。何とか来週にはアップしたいと思います。早目にまとめてしまわないと、私の方が忘れてしまいそうな気がしないでもありません。
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