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2007年9月27日 (木)

国際決済銀行 (BIS) の Triennial Central Bank Survey から何を読み取るのか?

今日は、朝からが広がり、時折、にわか雨がありました。昼前から湿度が上がって蒸し暑かったです。特に、夕方から陽射しが戻って、オフィスでじっと席に座っていても汗ばむほどの蒸し暑さでした。どうして役所はエアコンを入れてくれないのか、とっても不思議でした。昨日の天気予報では昨日並みの最高気温と報じていたので、長袖を着用に及んだ私は大失敗でした。明日の最高気温は30度を超えて、一段と暑いとのことです。

一昨日、9月25日に国際決済銀行 (BIS) が "Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Derivatives Market Activity 2007" を発表しました。今週は、一昨日のエントリーで取り上げた IMF の GFSR があったり、昨夜はペルーのフジモリ元大統領を取り上げたりで、私のブログがやや遅れ気味になっていますが、このレポートは表題の通り、3年に一度の調査ですので、今夜のうちに取り上げないと3年後になってしまいます。特に、昨夜は別にして最近は虎ブロを意識的に回避していますので、経済に関するトピックであれば、1日遅れでもスポットを当てておきたいと思います。この BIS レポートは、これまた、表題から明らかな通り、世界の主要な中央銀行と金融当局54機関を対象とした外貨とデリバティブの取引状況に関する調査です。レポート自体も PDF ファイル 100KB で 24 ページしかなく、そのうち英語の本文が 3 ページ余りで 10 ページは統計表、残りは読んでも読まなくてもいい統計に関する付注ですから、とってもコンパクトなものです。ただし、これだけでは何のことかよく分かりませんので、NIKKEI.NET のサイトから新聞記事を引用すると以下の通りです。

世界の外国為替取引規模が今年4月時点で1日平均3兆2100億ドル(約369兆円)と初めて3兆ドルの大台に乗せたことが国際決済銀行(BIS)が25日発表した調査で分かった。3年前の調査時の1兆8800億ドルと比べ約7割増えた。国別シェアで日本は6.0%と前回の3位から4位に後退し、グローバル金融市場での地位低下が浮き彫りになった。
日本の国別シェアは前回(8.3%)より下がり、比較可能な1995年の同調査以降最低。首位の英国は34.1%。英国はアジアと米欧の両方から取引に参加しやすい立地条件から、外貨取引の集中が加速した。中でも外貨準備が急増したアジアの新興国などが運用通貨をドル以外に多様化しようと英ポンドやユーロ取引を増やしたことが影響したとみられる。
2位は米国(16.6%)、3位はスイス(6.1%)だった。5位のシンガポール(5.8%)は前回よりシェアを高め、日本に肉薄している。

引用にある通り、レポートの Table 1 で世界の外貨取引高が示されています。2007年4月時点では1日当たり 32,100億ドルとなっています。日本の新聞各紙が注目していたのは、Table 5 に掲げられている国別市場のシェアで、日本は3年前2004年の8.3%から今年4月には6.0%に低下し、スイスの6.1%に抜かれて、シンガポールの5.8%に迫られている、と言うものです。ちなみに、今世紀に入ってからの調査を今年の順位でソートすると以下の通りです。今年第10位のデンマークまでをピックアップしました。単位はパーセントです。

2001年2004年2007年
英国31.231.334.1
米国15.719.216.6
スイス4.43.36.1
日本9.18.36.0
シンガポール6.25.25.8
香港4.14.24.4
オーストラリア3.23.44.2
フランス3.02.73.0
ドイツ5.54.92.5
デンマーク1.41.72.2

なお、BIS レポートの Table 5 の国別シェアの表は各国のアルファベット順に並べてありますので見づらくて、私の転記ミスなんかがあるかもしれません。ちゃんとした用途の場合は、上のリンクから BIS のホームページをご覧下さい。日本の順位もさることながら、欧州の大国である独仏もシンガポールや香港の後塵を拝しているのも事実です。産業構造から見てシンガポールや香港が金融に大きな比重があることの表れと言えそうです。
それから、国別シェアはこの通りなんでしょうが、どの国の市場で取引されているのかもさることながら、どの通貨が取引されているのかも重要なのは当然です。BIS レポートでは国別取引シェアが Table 5 なのに対して、通貨別の取引シェアを Table 3 で示しています。何となく、表番号の順からだけ言えば、日本の新聞で盛んに取り上げられた国別よりも通貨別の方に重きを置いているような気がしないでもありません。この Table 3 を2007年4月の片側シェア 5%超の6通貨についてピックアップすると以下の通りです。単位は同じくパーセントなんですが、外貨取引ですからシェアは両側 (turnover) で合計200パーセントになる点にご注意下さい。

通貨2001年2004年2007年
米ドル90.388.786.3
ユーロ37.637.237.0
日本円22.720.316.5
英ポンド13.216.915.0
スイス・フラン6.16.16.8
豪ドル4.25.56.7

この Table 3 をザッと観察するだけで、国別で見た英国市場での取引の集中は「外貨準備が急増したアジアの新興国などが運用通貨をドル以外に多様化しようと英ポンドやユーロ取引を増やしたことが影響」という日経新聞の引用が、やや怪しいと感じられます。国別で英国市場のシェアは2004年から2007年までの3年間で2.8%ポイント拡大しているんですが、通貨別で同じ期間を取れば、ユーロや英ポンドのシェアは少し落ちているからです。もちろん、ありうる反論は取引全体が大きく拡大していると言うものしょうが、それ以上に英国の金融市場の隆盛、さらに、繰返しになりますが、欧州の大国である独仏を凌ぐようなシンガポールや香港の金融市場における活発な外貨取引を説明できる別の何らかの要因が背景にあるんではないかと私は考えています。特に、日本の報道ではまったく取り上げられませんでしたが、この BIS レポートでは外貨取引とともに店頭 (over-the-counter) デリバティブがメインで調査されており、外貨取引よりもデリバティブでは東京市場はさらにシェアが低くなっています。煩雑になるので表は掲げませんが、例えば、2007年4月における国別の店頭デリバティブ取引高のシェアは BIS レポートの Table 10 にあり、英国(42.5%)と米国(23.8%)が圧倒的です。併せて世界の 2/3 のシェアを占め、日本(3.5%)はフランス(7.2%)やドイツ(3.7%)より小さなシェアとなっています。さらに、Table 9 にある通貨別の統計を見ると、円建てのデリバティブも米ドルやユーロよりもかなり小さな取引高で、FRA、スワップ、オプションなどのどの形態別でも米ドルやユーロからは大きく遅れている印象があります。日本の金融サービスの問題点がどこにあるかを象徴しているように感じないでもありません。
少し前から、日本の金融市場の国際化のための検討がなされ、経済財政諮問会議にもグローバル化改革専門調査会の下に金融・資本市場ワーキンググループが組織されて議論が進められています。別の視点ですが、先日9月3日に国際労働機関 (ILO) のレポートをこのブログで取り上げた際にも、日本はまだまだキャッチアップ型の生産性向上が可能であると私は結論しました。この2つを無理やりに総合すると、特に、生産性の低い日本の金融サービス分野では、欧米の先進国はもちろんのこと、シンガポールや香港も含めたいろんな国から取り入れるべきものが、まだまだ残っているような気がします。

今夜は、何となく、html でテーブルを組むのに疲れてしまって、統計的事実を紹介するのが中心になり、結論に具体性を欠くような印象になってしまいました。それはともあれ、BIS レポートからは日本の円と東京市場の伸び悩みないし凋落という事実が読み取れるわけですから、単に、これを後ろ向きに捉えるだけでなく、逆に見て、日本の金融サービスの生産性向上の余地は大きいと前向きに考えることも可能だという点を強調しておきたいと思います。

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