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2007年9月18日 (火)

国際機関のエコノミストはデカップリング論がお好き?

今日は、朝からが広がって余り陽射しがなく、週末ほどは気温は上がりませんでした。蒸し暑いのはそんなに変わりありませんでしたが、残暑が厳しいと言うほどでもありませんでした。夜は涼しいくらいでした。

昨日、9月17日にアジア開発銀行 (ADB) から Asian Development Outlook 2007 Update が発表されました。先週のエントリーにも書いたように、私なんかが日本の景気転換についてウォッチしている最中に、日本とオーストラリア・ニュージーランドの先進国を除くアジア・太平洋の発展途上国では、今年3月の時点の経済見通しよりも、今年も来年も成長率を上方改定していたりします。コンパクトに報道されていましたので、いつもの朝日新聞のサイトから引用すると以下の通りです。なお、どうでもいいことかもしれませんが、新聞社なんかのニュースサイトは少しすると削除されてしまったりしますので、今夜から、ウェブ魚拓のサービスを使うことにしました。でも、私が朝日新聞のこのページを登録しようとすると、すでに今日の午前中のうちに誰かが登録を済ませてくれていたらしく、私はちゃっかり便乗しています。

アジア開発銀行(ADB、本部=マニラ)は17日、日本、オーストラリア、ニュージーランドをのぞくアジア・太平洋地域の07年の国内総生産(GDP)成長率が8.3%になるとの見通しを発表した。3月に発表した7.6%から上方修正した。中国、インドに加え、中央、東南アジアなど「堅調な成長が広範囲で見られるため」としている。
08年の域内成長率予測は、3月時点の7.7%から8.2%に上方修正。ただ、米経済や金融市場動向など不透明な要因もあるとも指摘した。
中国経済は引き続き高成長を維持。07年の成長率予測は11.2%、08年は10.8%で、ともに3月の予測を上回る。
東南アジアの07年の成長予測は6.1%。フィリピンやインドネシアは上方修正したが、タイは政情不安が影響して前回予測と同じ4%にとどまりそうだという。中央アジアの伸びは、原油価格の高騰、鉱物資源の輸出拡大などが支える。太平洋諸国は4.5%から3.5%に下方修正。東ティモールの景気回復が期待されていたほどではなかったという。

私のブログでも4月12日と13日に連続して国際通貨基金 (IMF) の世界経済見通しに関してデカップリング論を取り上げましたが、ADB でも米国経済の減速を視野に収めつつも、アジア経済は米国からデカップリングして順調な成長を続けると見通しているようです。米国経済の減速については、最初の章で Can developing Asia weather a US slowdown? との項目を立てて少し分析していますが、アジアの域内貿易比率の高さなどから、明確な主張ではないにしても、デカップリング論が成り立つことを示唆しています。アジアの域内貿易比率の高さはかねてから衆目の一致するところで、経済統合を果たした欧州なんかよりもよっぽど高いわけですから、それなりの理論武装はしているわけですが、貿易連関構造から見て最終輸出地として米国の占める地位が高いのは明らかですから、私なんかのデカップリング論に懐疑的な見地からすれば、少し根拠が薄弱であるとの批判もあり得ます。
私が考えるに、デカップリング論が成り立つのは3つの場合があるように見受けられます。第1は、世界経済から孤立しているような場合です。自国以外の世界経済から孤立したアウタルキーを形成しているのであれば、世界経済のイベントからはデカップリング出来るのは当然です。大昔の共産主義のころのソ連なんかが当てはまりそうな気もしますが、世界経済から孤立しているとすれば、世界から自国への波及経路が切断されているということであり、同時に、自国から世界経済へも何らの影響を及ぼさないわけですから、エコノミストとして分析する必要すらないように思わないでもありません。第2に、ある国の何らかのイベントが影響を受ける国によって逆方向に働く場合が考えられます。典型的には、商品価格の動きなんですが、原油価格で考えると分かりやすいでしょう。原油価格の上昇は産油国以外の、例えば、日本なんかには景気へのマイナス要因となりますが、産油国側からするとプラス要因となるわけで、産油国への輸出が順調に増加すれば、原油価格の上昇を相殺出来る部分があり得ます。イベントに対して景気の方向の偏微係数の符号が逆になっているわけです。第3の場合は、景気に波及するラグがとっても長い場合です。教科書的な景気循環では、在庫循環が2-3年、設備投資循環でも8-10年ですから、例えば、ある国から別の国への波及ラグが何らかの要因で6四半期以上の長さであれば、イベントの初発国で景気後退が生じていても、その時点では別の国には波及しておらず、また、別の国に波及するころには初発国では景気が回復している、といったサイクルが考えられないでもありません。山と谷が逆になるのであれば、デカップリングが成り立っていると言えます。

ADB からすれば、経済見通しの対象となる域内経済では中国+インドの2国でシェアが55%に達し、この2国が米国経済の減速にもかかわらず順調な成長を続けていますから、高めの成長率見通しを出そうという気になるのは大いに理解はしますが、それにしても、4月に紹介した IMF とともに、国際機関のエコノミストがデカップリング論をお好きなのには、正直なところ、少し驚いています。従来から主張しているように、私はデカップリング論には少し懐疑的で、控えめに言っても、実証的に疑う余地なく支持されているわけではないと考えているんですが、米国経済からの波及ラグが、大西洋経由のヨーロッパ諸国と違って、太平洋経由のアジアでは地域的な特性から長いんだとすれば、ひょっとしたら、日本も含めてアジアではデカップリング論が成り立つ素地があるのかもしれません。

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