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2007年10月22日 (月)

G7 ステートメントから日銀の金融政策の先行きを考える

今日も、朝から秋晴れのいいお天気でした。日中は陽射しがあり気温も上がり汗ばむほどでしたが、朝夕はかなり冷え込むようになりました。

10月19日の米国ワシントンでの先進7カ国蔵相中央銀行総裁会議 (G7) を受けて、株式相場が下がって来ています。先週金曜日のNY市場で経済の先行き懸念からダウ平均が366ドル94セント安の1万3522ドル2セントに急落したのを受けて、今日の東証では日経平均がザラ場で500円以上下げる展開で、375円90銭(2.24%)安の1万6438円47銭で引けました。一時は下げ幅が549円まで広がったんですが、さすがにこの水準では押し目買いが入ったようです。週明けのNY市場も始まっているのかもしれませんが、ザラ場の数字を上げても仕方ありませんから、ご興味ある向きはお調べ下さい。
この展開は G7 のステートメントにかなり景気の減速感が見られることを根拠にしているように報道されていますが、新聞などと違って、私は必ずしもそう考えていません。まず、G7 の結果について、いつもの朝日新聞のサイトから最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は19日午後(日本時間20日早朝)、米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題をきっかけにした金融市場の混乱や原油高が「世界経済を減速させる」との共同声明を発表し、閉幕した。金融市場の混乱は「しばらく続く」との認識も強調。各国が連携して役割を果たしていくことを確認した。
声明は世界経済を減速させる要因として「金融市場の混乱、原油価格の高騰、米国の住宅部門の弱さ」を指摘。力強い新興市場国の成長が世界の景気を支えており、「経済全体は引き続き強い」とした。しかし、前回の4月のG7で強調した「過去30年以上で最も力強い」という認識から大きく後退した。

まず、今回 G7 のステートメントは冒頭で、「世界経済は堅固な(robust)成長の5年目に入った」としつつも、景気悪化につながる要因を以下の通り3つ列挙しています。

  1. recent financial market turbulence
  2. high oil prices
  3. weakness in the US housing sector

その上で、"Nevertheless, our overall economic fundamentals continue to be strong and emerging markets are providing critical impetus to the strength of the world economy." と結論しています。ハッキリ言って、予想よりもかなり楽観的な表現と私は捉えています。こうした景況感を受けて、金融政策はインフレに対して警戒的 (vigilant)、すなわち、"monetary policy must remain vigilant in maintaining price stability" としています。この表現には欧州中央銀行 (ECB) の意向が汲み取れないでもないですが、金融政策を引締めにも緩和にもどちらにも慎重であるとも読めますし、逆に、金融政策当局にフリーハンドを与えたとも受け取ることが出来ます。米国では来週の連邦公開市場委員会 (FOMC) で連保準備制度理事会 (FED) が利下げする理由にもなりますし、年明けに向けて ECB の利上げ姿勢も温存されたとも言えます。ひるがえって、日銀の利上げについても決して封印されたとは言えません。ですから、福井総裁は記者会見で「これまでと同様の考え方に立って、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになる」と述べ、新聞ではかなり強気な姿勢を示した、なんて報道されたりしています。私は福井総裁の解釈が正しいんだろうと思っています。それから、少し脱線しますが、前回 G7 の声明文にあった日本の景気回復を評価する1文、すなわち、"Japan's recovery is on track and expected to continue" が削除されたことに関して、何かと取り上げている向きもありますが、今回の G7 では各国横並びで国別の経済状況評価はステートメントに盛り込まれていませんから、日本の経済状況について G7 としてインプリシットに懸念を表明したと捉えるべきではないと私は考えています。
さて、日銀の金融政策に戻ると、フリーハンドとは言っても、そんなに早期の利上げが予想されるわけではありません。今のところ、我が同業者のエコノミストの間でも、12月利上げ説が根強くあったりするんですが、まず、日本の3月に当たる12月の年末を欧米の金融機関が無事に乗り切れるかどうかを見極める必要があります。誠に失礼ながら、年内再利上げを予想している同業者のみなさんには、経済大国たる日本の中央銀行としての日銀の金融政策の影響力の大きさを正しく認識し、もう少し国際的な感覚を研ぎ澄まして欲しい気がします。もしも、いずれかの欧米の金融機関がピンチに陥って、それを日銀の利上げの結果とされるのは何としても避けたいところでしょう。さらに、来年2月には日本で G7 が開催され、金融安定化フォーラムの中間報告が報告される予定となっています。今回の G7 に関して、このあたりまでのスケジュールを頭に入れておく必要があります。最後に、そうこうしているうちに、ねじれ国会での日銀総裁の同意人事が上程されたりします。ですから、私は年度内、すなわち、福井総裁の任期中の再利上げは難しそうな気がしないでもありません。

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