福田内閣は大きく増税に舵を切るのか ?
今日は、朝から秋晴れのいいお天気でした。気温も季節なりに上がった気がします。役所からの帰り道で、三日月と半月の間くらいの月が見えました。
今日の全国紙の朝刊各紙の1面に昨日の経済財政諮問会議の記事がありました。昨年の安倍内閣の成立以降は少し影が薄かった経済財政諮問会議なんですが、福田内閣が成立してから再び脚光を浴びるようになったのかもしれません。それはともかく、主たる内容は、一昨年の骨太で決定した歳入歳出一体改革の歳出削減を踏まえても、名目経済成長率見通しを下方修正した成長制約ケースでは、消費税率に引き直して2.5%以上の増税が必要になるとの試算結果が経済財政諮問会議において了承されたというものです。日経新聞では自民党の政策調査会の財政改革研究会の与謝野会長のインタビューととともに1面トップでした。まず、その NIKKEI.NET のサイトから引用すると以下の通りです。
政府の経済財政諮問会議は17日、2011年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標について、名目経済成長率を3.0%から2.2%に下げるなど前提を変えると、最大で6兆6000億円の増税が必要とする内閣府の試算を了承した。消費税率に換算すると2.5%程度の引き上げが必要となる。自民党財政改革研究会の与謝野馨会長も同日、成長率の下方修正を検討する考えを表明した。年末の税制改正や予算編成に向け、財政再建を巡る議論が加速しそうだ。
諮問会議が増税必要額を明示するのは初めて。福田康夫首相は同日の会合で「先送りすれば選択肢はさらに厳しくなる。国民の立場に立った分かりやすい議論を早急に積み重ねる必要がある」と強調した。首相は社会保障と税に関する政府・与党協議会を近く設置し、09年度に予定する基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げの財源を確保するため、消費税増税を含め検討に着手する意向だ。
上のグラフは昨日の経済財政諮問会議に提出された資料からの抜粋です。このままでは見にくいと思いますが、クリックすると別窓でオリジナルサイズの画像が現れます。さて、一昨年の歳入歳出一体改革で想定したように名目成長率が3.0%であれば、国と地方を合わせた財政のプライマリー・バランスは黒字になるんですが、上のグラフは名目成長率が2.2%だった場合の試算です。赤のラインが歳出削減14.3兆円のケースに対応し増税必要額は3.2兆円、青が歳出削減11.4兆円で増税必要額は5.8兆円、さらに、一昨年の歳入歳出一体改革にはなかったんですが、緑のケースは14.3兆円の歳出削減に加えて毎年度1兆円の追加歳出があるケースで増税必要額は6.6兆円に上ります。
昨日の経済財政諮問会議には舛添厚生労働大臣も臨時議員として出席し、2004年の年金制度改革、2005年の介護保険制度改革、2006年の医療制度改革などを強調しました。しかし、現在の福田総理大臣が自民党の総裁選挙に立候補した際に、政権公約として掲げたのは「希望と安心のくにづくり」で、そのひとつが高齢者医療費負担増の凍結でした。当時の麻生幹事長の政権公約「日本の底力-活力と安心への挑戦」が日本の経済社会の活力を引き出す方向であったのに対して、福田総理は社会的弱者への配慮をにじませたものと報道されたりしましたが、結果的に、財政負担を増大させるものと受け取る向きもありました。昨日の経済財政諮問会議で了承された試算を重ね合わせて見ると、福田内閣は社会的弱者への配慮や年金などの将来の安心のために増税に舵を切ったと考えるエコノミストがいても不思議ではありません。しかし、増税に舵を切る前に社会保障の増加をいかに抑えるかをもう少し真剣に検討するべきだと私は考えています。どうしてかというと、成長率を低めに見積もって増税を実施すれば、さらに成長率が下がる危険が大きく、悪循環に陥るリスクがあるからです。加えて、2005年に開催された財務省と国際通貨基金 (IMF) の共催になる国際シンポジウムでも海外の出席者から日本の高齢者は selfish で、社会保障支出が硬直的なのが日本財政のひとつの問題との指摘があったと聞いたことがありますが、私は日本の高齢者はそんなに selfish ではないと実感していますし、地域間格差がここまで拡大するくらいに公共事業を切り詰めているんですから、医療や年金なんかの高齢者向けの社会保障を改革する必要性も理解される可能性は十分あると思います。そうでなければ、このまま日本の財政は破綻コースを走りかねないと危惧しています。現在の福田内閣にはこの高齢者に対する歳出削減の視点が欠けているような気がしてなりません。私はかつてこのブログで市場の圧力にさらされていない4+2分野として、政府、教育、医療、宗教とオマケで農林水産業と特定の分野の中小企業を上げたことがありますが、我が国においては高齢者も大きな既得権益集団になりつつある気がします。
最後に、ついでのトピックになってしまったんですが、昨日、 国際通貨基金 (IMF) が World Economic Outlook を公表しました。米国のサブプライム・ローン問題に端を発するクレジット市場の流動性危機から、広範な国と産業への成長率の下押し圧力を勘案して、前回の見通しを下方修正しています。前回から上方修正されたのは原油価格上昇の恩恵を受ける中東くらいのものだったりします。特に、米国経済については、連邦準備制度理事会 (FED) が発表した地区連銀報告(いわゆるベージュブック)でも減速が確認されています。前の引用と同じく、 NIKKEI.NET のサイトから IMF 世界経済見通しについて最初のパラグラフだけを引用すると以下の通りです。なお、詳しい計数は引用の下の総括表をご覧下さい。クリックすると別窓で詳細が表示されます。
国際通貨基金 (IMF) は17日発表した最新の世界経済見通しで、米国の実質経済成長率を2007年、08年ともに1.9%と予想した。08年は今年4月時点よりも0.9ポイント下方修正し、下げ幅は主要国で最大。サブプライムローンの焦げ付きが増え、金融市場が動揺した悪影響が米国で最も色濃く表れるとみている。
ついでのついでに、ベージュブックに関するNIKKEI.NET のサイトからの引用は以下の通りです。これも最初のパラだけです。
米連邦準備理事会 (FRB) は17日、地区連銀経済報告(ベージュブック)を発表した。9月上旬から10月上旬にかけて「米経済の拡大が続いたが、成長のペースは減速した」と総括。9月5日の前回報告より景気判断を下方修正した。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が住宅市場を一段と冷え込ませているだけでなく、個人消費や企業生産にも打撃を与えつつあることをにじませる内容になった。
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