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2007年10月 1日 (月)

日銀短観から設備投資の見通しと格差問題を考える

今日は、午後からもが広がり、気温は上がりませんでした。夕方から雨が降り出すとの予報は外れて、夜になっても雨は落ちて来ませんでした。

今朝、9月調査の日銀短観が発表されました。夕刊各紙は本日午後の福田総理の所信表明演説を1面トップに据えつつ、短観のニュースも1面のどこかで報じていました。おおむね、高水準横ばいで先行きには懸念、との報道振りが多かったような気がします。大企業製造業の業況判断DIは6月調査に比べて横ばいの23、大企業非製造業は22から20に悪化しました。しかし、中小企業は相変わらず低空飛行が続いていて、中小企業非製造業はナイマス幅を拡大していたりします。また、先行きの見通しは大企業製造業を中心にやや弱含むとの結果でした。ここで、ちょっとした注意事項なんですが、このパラの前半部分では対比させる目的で、大企業と中小企業しか取り上げていませんが、日銀短観ではその間に中堅企業というカテゴリーがありますのでご注意下さい。本論に戻って、いつもの NIKKEI.NET から最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス23と前回6月調査に比べ横ばいだった。一方で中小企業は原材料価格の上昇などが響き悪化した。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の影響はひとまず限定的で、設備投資が堅調さを保つなど景気は粘り腰をみせている。
日銀短観

日経新聞でも注目点は設備投資とのことだったんですが、報道では粘り腰と表現しています。経済を表す言葉として初めて見たような気がしないでもありません。それはさて置き、日銀短観の設備投資計画はあくまで本年度内のフォワードルッキングな計画ですから、バックワードルッキングな統計である4-6月期の法人季報統計調査の結果と照らし合わせて注目されていました。結果は引用にもある通り、6月調査と比較して順調に上方修正を続けています。もっとも、中小企業は前年度比マイナス計画なんですが、それでも、マイナス幅が小さくなっていることは事実です。さて、設備投資で注目すべき点は2つあると私は考えています。第1に昨年や一昨年と比べたモメンタムの低下です。すなわち、本年度の設備投資計画はヘッドラインの全規模・全産業で前年度比+4.9%と、6月調査からは+1.7%ポイントの上方修正となったんですが、一昨年度9月調査の+6.8%や昨年度9月調査の+8.3%を下回る結果となっています。増加基調を維持しているといえるんですが、そのモメンタムは低下しているように見受けられます。第2に、本年度最初の四半期である4-6月期の法人企業統計調査結果との乖離です。4-6月期は耐震構造疑惑などに端を発する構築物の建築申請審査の遅れなどから、設備投資が落ち込んだんですが、このまま年度計画を実現するためには、どこかの四半期でスパイクする可能性があります。なお、設備投資計画についてはこの日銀短観とともに、政策投資銀行設備投資研究所や他の機関の調査結果も同じような傾向を示しており、どこかで設備投資がスパイクして、景気ウォッチャーの目がかく乱されるのではないかと懸念する向きがないわけではありません。
引き続きの注目点は大企業と中堅・中小企業との格差が拡大傾向にあることです。私は格差問題については、基本的に、企業ごとの景況感は世界的な分業体制に、いかにして比較優位を発揮できる形で自社を組み込んでいるかに依存していると考えています。エコノミストによっては、もっと狭義にグローバル化への対応やグローバル市場へのアクセスを上げる向きもありますが、基本的には同じ方向感覚に基づいた考え方だと思います。その意味で、地域間格差については、大都市の方が地方より有利な立場にあり、規模間格差については、大企業の方が中堅・中小企業より有利な立場にあることは確かなんだろうと言う気がします。他方、生産要素のモビリティを考えると、自然人に体化した労働よりも、法人に蓄積されている資本の方がモビリティが高いのは明らかです。分かりやすく言うと、労働者よりも企業の方が何らかの悪条件に対して逃げ足が速いわけですから、その有利な分だけ、資本の収益率が高くなる一方で、労働の賃金率が上がらない現象が起きているわけです。ですから、地域間格差については、混雑状況が外部不経済を生じないギリギリまで労働が大都市に集積し、さらに、規模別格差については、労働と資本の双方が中小企業から大企業に移動する必要があるのかもしれないと、ほのかに感じ始めています。もっとも、労働のモビリティが高くないことについては留意する必要があります。前者の地域間格差については、少し研究成果を取りまとめたことがあるんですが、後者の規模別格差については直感的にそう感じているだけです。最後に、昨年の同じ時期にアップした10月3日付けのエントリーと同じで、今回の短観も見方によって、どうとでも読み取れる結果だっただけに、今日の夕刊の見出しにあったように、高水準と先行き懸念とどちらを重視するかは、論評するエコノミストの景況感が自然とにじみ出るような気がします。私自身は先行き懸念派ですから、ほぼ同義で弱気派なのかもしれません。たとえマーケットが落ち着いても、日銀の再利上げは年内は難しいとの知り合いのエコノミストの見方が正しいような気がしないでもありません。

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