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2007年10月 3日 (水)

米国シティ・グループによる日興の完全子会社化は大合併時代の到来の前触れか?

今日は、朝から少し雲が多いものの、まずまずいいお天気で、気温もそれなりに上がりました。しかし、夕方からまたもや雲が広がりました。週末まで晴れ上がることはないような天気予報です。この前線が南下して、北から張り出す高気圧に覆われるようになったら、さらに秋が深まるんだろうと思います。

今日の全国新朝刊各紙は1面で米国のシティ・グループが日興コーディアル・グループを三角合併を活用して、完全子会社化すると報じています。もっとも、ジャイアンツが優勝して大喜びの読売新聞だけは原監督の胴上げ写真が大き過ぎて、このニュースが2面に追いやられていました。阪神ファンかつエコノミストの目から見れば、かなり奇異な紙面構成と感じました。それはさて置き、いつもの NIKKEI.NET から最初のパラだけ引用すると以下の通りです。

米シティグループは2日、傘下の日興コーディアルグループを完全子会社化すると発表した。日興は来年1月にも東京証券取引所などで上場廃止となる。シティは日興の経営権を完全に掌握し、日本での事業展開を加速する。子会社化の手法では日興株主にシティ株を割り当てる株式交換方式を採用。5月に外国企業に解禁された三角合併の事実上、初の事例となる。シティは本体が東証に上場する計画も明らかにした。

まず、おさらいなんですが、三角合併とは会社の吸収合併の際に、消滅会社の株主に対して現金や存続会社の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を対価として交付する M&A の手法で、1999年の会社法の改正により国内会社間の合併においてはすでに解禁されています。今年5月から外国の会社についても解禁されました。実際の流れは、外国企業A社が、日本企業X社を買収する場合、まず、外国企業A社は日本に100%子会社のB社を設立し、B社が外国企業A社の株式を対価として日本企業X社の株主から株券を取得します。ポイントは日本企業X社の株式を買い取る対価がB社の親会社である外国企業A社の株式であることです。一対一の吸収合併ではなく、存続会社の親会社もこの M&A に関与しますので、三角合併と呼ばれています。もっとも、税法上の適格合併となるためには、ペーパーカンパニーではなく事業を営んでいなければならないとか、いろいろと条件をクリアしなければなりません。さらに、三角合併のためには 2/3 の特別議決が必要となります。今回のシティによる日興の吸収合併は、日興コーディアルの不祥事などもあって早い段階から予想されていたことであり、現時点で、シティは日興の68%株主ですから特別議決も何ら問題ありません。米国のサブプライム問題でやや業績が悪化しているシティがキャッシュフローに影響を及ぼさず、さらに、時間的に迅速に子会社化できるので、手法として三角合併を選んだといわれています。この場合も明らかなんですが、私が8月2日付けの「日本経済を支えるのはミドル・マネジメントか、トップ・マネジメントか?」で取り上げたように、三角合併は TOB などで過半数の株式を押さえた後に、100%完全子会社化するための手段だと言うことが出来ます。
なお、今日の東証の日経平均は一昨日からの堅調な地合いを続け、3日続伸で終わりました。昨日のNYダウが下げたにもかかわらず、後場になって騰勢を強めて今日の日経平均の終り値は久し振りに17,200円に迫りました。その中で、日興コーディアルの株価は朝からストップ高の200円高、1,662円をつけました。もっとも、これは三角合併を好感してと言うよりも、シティが三角合併の対価として日興株を1,700円で評価したからで、明日の寄付きで1,700円をつけて、そこでピタリと止まるんだろうと思います。カラクリはそんなところですが、それにしても、一般的に、M&A は企業価値を引き上げるとの期待から、株式市場においては株価の引上げ要因となることは確かです。逆に、例のソース会社の場合なんかは典型的なんですが、株式を希薄化させるような買収防衛策を取った場合には正直に株価は下がります。
外国企業への三角合併の解禁とともに、日本企業は外資なんかに吸収されるのを極度に恐れているんですが、吸収合併されるのを防止するためにベストの方法は企業の時価総額を上げることです。高い買い物にすればいいわけです。企業の時価総額とは大雑把に言って株価×発行済み株式数で、発行済み株式数を増やせば希薄化につながるだけですから、株価を上げるような経営をするのがベストということになります。自社株式買いで消却することも含まれていいかもしれません。しかし、もっとも望ましいのは企業の持てるリソースをフルに有効活用して、株価を引き上げることであることは言うまでもありません。他方で、会社自体を大きくする方策も模索されているように聞きます。昨年、失敗に終わった製紙会社の合併なんかも、生産ラインの有効活用とともに、会社の規模を大きくして外資に吸収合併されないようにするのも誘因のひとつと言われたりしました。大きな外資に吸収合併されないようにするために、国内の同業他社を取り込んでおいて、自社の時価総額を大きくする手法と言えるかもしれません。手っ取り早いことは認めますが、経営を効率的にする質的な手法ではなく、量的な拡大手法との批判が出る可能性は否定できません。少なくとも、社会的厚生の観点から疑問を呈するエコノミストがいそうな気がします。
話がそれてしまいましたが、いずれにせよ、世界的な M&A の流れに沿うべく三角合併などの制度を整備してみても、お粗末な日本のトップ・マネジメントの方でこれに対応できず、より大きな合併を回避するために小さな合併を利用するような状況が続くんであれば、もしそうなんであれば、三角合併に解禁が大合併時代の到来をもたらすことはないでしょうし、ひいては、現時点でも十分に出遅れていると評価するアナリストもいる中で、M&A 相場と標榜されるような世界的な株式市場の活況にますます日本が取り残される危険すらある気がしないでもありません。

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