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2007年11月13日 (火)

7-9月期 GDP 速報は過去の数字か?

今日も、朝から秋晴れのいいお天気で陽射しもありました。11月中旬の今ごろの季節にしては気温も20度まで上がりました。でも、今週後半から気温は下がるとの天気予報です。

今朝、内閣府から7-9月期の GDP速報 が発表されました。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれているものです。ヘッドラインの実質成長率は季節調整済み前期比で0.6%、年率2.6%となりました。市場の事前予想は改定前の4-6月期の▲0.3%減(改定後▲0.4%減)から7-9月期には1.5-2.0%の潜在成長率近傍にピックアップするとのコンセンサスでしたので、4-6月期の下方改定を考慮すると、ほぼジャストミートしたということが出来ます。だからというわけでもないんでしょうが、日銀は金融政策決定会合で政策金利の据置きを決めました。東証の日経平均は下げて3年振りの8営業日続落となり、株式市場は GDP 統計も日銀の決定もほとんど材料視していないようです。いつもの NIKKEI.NET のサイトから事実関係を報じた記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が13日朝発表した7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算で2.6%増だった。1%台半ばから後半とされる潜在成長率を上回り、2四半期ぶりのプラス成長に転じた。輸出による外需の取り込みや、企業の堅調な設備投資が寄与し、住宅着工の遅れなどによる悪影響を吸収した。
けん引役は外需で、輸出が前期比2.9%増加した。控除項目の輸入は0.5%増にとどまり、外需は成長率を0.4%押し上げた。外需の寄与度がプラスになったのは5四半期連続。
内需は0.2%増加。設備投資が1.7%増と前期の2.1%減から持ち直したほか、個人消費も0.3%増(前期は0.2%増)と堅調だった。6月の改正建築基準法の施行に伴い建築着工が急減し、住宅投資は7.8%減と落ち込んだが、内需の柱である設備投資と個人消費の伸びで補った。民間在庫の寄与度はプラス0.1%となり、GDP成長率のうち内需の寄与度はプラス0.2%だった。
需要項目2006/
7-9
2006/
10-12
2007/
1-3
2007/
4-6
2007/
7-9
実質GDP▲0.0+1.3+0.7▲0.4+0.6
民間消費▲1.0+1.1+0.8+0.2+0.3
民間住宅+0.8+2.2▲1.4▲4.1▲7.8
民間設備+0.9+2.3▲0.3▲2.1+1.7
民間在庫  *+0.1▲0.1▲0.0▲0.1+0.1
公的需要▲0.5+0.7▲0.4▲0.2▲0.3
外需 *+0.4+0.2+0.4+0.0+0.4
名目GDP▲0.2+1.4+0.3▲0.3+0.3
雇用者所得+0.0+0.2▲0.1+0.1▲0.2
GDPデフレータ▲0.7▲0.5▲0.3▲0.3▲0.3

上の表は2006年7-9月期から今日発表された2007年7-9月期まで5四半期のGDP成長率と各需要項目の推移です。基本的に季節調整済みの前期比の計数ですが、アスタリスクを付した民間在庫と外需の2項目は寄与度で算出されています。内需寄与度は四捨五入のラウンドを考慮しなければ、実質GDP成長率と外需の寄与度との差でインプリシットに求められると思います。一見して明らかなのは次の4点です。第1に、外需の寄与度が大きくて、内需に力強さが欠けている印象があります。第2に、建築基準法ショックにより住宅投資が下げ幅を拡大していることです。第3に、消費のスローダウンは雇用者所得の伸悩みに起因しているように見えることです。最後に、第4に、GDP デフレータが依然としてマイナスを続けており、大田経済財政担当大臣の閣議後の発言にあったように、「デフレ脱却が足踏み」していることです。昨夜のエントリーでは「デフレ脱却」という言葉は死語であるかのような印象で書いてしまいましたが、大臣が閣議後の記者会見で発言されているようですから、まだまだ現役のように見受けられます。失礼しました。
さて、 GDP 統計だけでなく、経済統計はどうしようもなくバックワード・ルッキングな指標ですので、先行き見通しに関しては統計指標を離れてエコノミストとしての感覚を加えて考える必要があるんですが、上のパラグラフで上げた4点に合わせる形で、以下の点が重要だと考えています。第1に、外需は米国経済の減速と円高が進むとすれば、いつまでも頼りに出来ないということです。10月24日のエントリーでも取り上げたように、貿易統計を見ても外需が減速を始めていることが明らかです。第2に、住宅投資が急速に回復することはとっても望めないどころか、新築着工の大幅下落がこれから GDP 統計上で顕在化して景気の足を引っ張り続けることはコンセンサスになっています。第3に、国内需要の伸悩みに為替相場の円高の進行や原油高の影響に起因する企業の収益環境の悪化が加われば、所得環境が好転するハズもなく、個人消費が力強く上向く兆しもありません。第4に、デフレ脱却とは直接の関係はなく、そんなに長く継続するとは考えていないものの、原油高が続くとすれば、コストプッシュと生産活動への下押し材料として、引き続きリスクがあります。交易条件を媒介にして石油輸出国への所得移転につながります。さらに、原油のような輸入品は GDP で考えると控除項目ですから、輸入物価デフレータが上昇すると GDP デフレータが上昇するという関係があります。
明日に発表される予定の欧州の GDP 統計も含めて、7-9月期は日米欧ともに高めの成長を記録したと考えられるんですが、今後、目先の2-3四半期、来年の前半くらいまで成長が継続する気配は読み取れません。もちろん、これは日本経済だけでなく、米国や欧州を含めて同じことで、10-12月期の成長は大きく減速し、日本の場合はマイナス成長すら考えられます。米国の連邦準備制度理事会のバーナンキ議長の先週の議会証言を借りれば、 "slow noticeably" ということになり、その後も、1-3月期から4-6月期にかけても、同じく、 "sluggish" な可能性が高いと考えられます。中国をはじめとするエマージング諸国は別にして、日米欧の先進国の三極が目先2-3四半期は同じような経済状況になると私は予想しています。2008年、あるいは、2008年度でもいいんですが、技術的には、いわゆるゲタと呼ばれる発射台が低いところから始まる可能性が高く、2008年や2008年度についても緩やかな成長が続く可能性が高いんではないかと考えています。

ここしばらくは、エコノミストの季節労働なんですが、来年の経済見通しについていろいろと考える時期に入って来ています。今日発表された7-9月期の1次 QE は発表された瞬間に過去の数字になってしまいました。来年も前半は低成長になるとの見通しに継ぎ足して、もう少し成長率見通しについて考えを進めたいと思います。

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