景気動向指数 (DI) から今後の景気転換点を占う
今日は、朝のうちは雲が厚かったんですが、すぐに秋晴れのいいお天気になりました。気温もかなり上がりました。

昨日の午後に内閣府から発表された景気動向指数 (DI) の先行指数が速報ベースながらゼロをつけたことが話題になっています。なお、上のグラフは右下に11月5日更新とあるように、最新時点のデータを入れてなくて先行系列がゼロになっていません。ご容赦下さい。それでは、いつもの NIKKEI.NET のサイトから引用すると以下のとおりです。
内閣府が6日午後発表した9月の景気動向指数(速報)は、景気の現状を示す一致指数が66.7%だった。生産関連の指数が堅調に推移し、景気が上向きかどうかを判断する50%を6カ月連続で上回った。一方、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する金融資本市場の混乱が続き、先行きを占う先行指数は低迷。現在と指数を構成する指標に違いはあるが、速報段階で0.0%になるのは1991年10月以来、約16年ぶり。
景気動向指数は景気に敏感な経済指標を3カ月前と比べ、改善した指標が全体に占める割合で景気の現状や先行きを示す。指標が50%を上回れば、景気が上向きと判断される。
先行指数を押し下げたのは東証株価指数などの市況関連。サブプライム問題に揺れる株式相場などの混乱が響いた。改正建築基準法施行による新築住宅着工の落ち込みも重しになった。
日本では景気動向指数として、一致系列がそれなりの注目を集めているんですが、米国などでは leading indicator として先行系列の方が注目される場合が多く、16年振りにゼロになったのは少し驚きです。現時点では速報値ですから上方改定される可能性も否定できませんが、株式市況関連と住宅着工が押下げ要因となっており、特に、後者の住宅着工は制度的な要因で、年間の GDP に引き直して 2-3 兆円、気前よく弾くと5兆円くらいの下振れとなると試算する向きもあります。こうなると成長率で換算して1%近い落ち込みとなる可能性もあったりします。
さらに、私なんかが景気動向指数とともに注目しているのはコンポジット・インデックス (CI) の先行系列です。詳しくは内閣府のホームページの一番下のグラフにありますが、2006年5月の108.0をピークにゆっくりと下向きになっているのが見て取れます。最近時点でも速報ベースながら、7月、8月、9月と3ヶ月連続で低下して来ており、9月速報では100を割って99.2まで低下しました。 CI は DI と違って、水準でも見るべきですので、直近の CI 先行系列のボトムである2001年10月の87.2と比較すると、水準はそこまで下がっていませんし、もちろん、グラフで見ても、CI の一致系列はまだまだ110を超えていて、高水準で上向きを維持しているように見えるんですが、9月10日付けのエントリーでも指摘したように、ジワジワと景気の転換点が近づいてきているような気がしないでもありません。少なくとも、2004年から2005年にかけての景気の踊り場では一致系列も先行系列も CI が100を割ることはありませんでしたから、今回の下がり方が景気転換点に向かってピーク・ボトムをつけるような兆候があるのかどうかは注視する必要がありそうに思います。
前世紀終わりごろから景気循環の様相がかなり違って来て、以前は単純で把握しやすい在庫循環に着目していればよかったんですが、最近では、経済のサービス化の進展や在庫管理技術のの向上などにより、古典的とも言える循環が見られる IT 在庫を別にすれば、在庫循環がはっきりした形で観察されないようになり、加えて、設備投資循環と在庫循環が入り混じって、複雑な景気循環を見せるようになって来ています。2004年から2005年の踊り場では在庫循環が下向きになる一方で、設備投資循環がそれを打ち消すような動きが見られて、結局、踊り場と称されるようにピーク・ボトムをつけるには至りませんでした。昨年の今ごろまでは今回も夏場までに IT 在庫の循環が一巡し、今年後半には景気は上向くとの予想が主流でしたが、米国のサブプライム・ローン問題に端を発する金融市場の混乱などから、昨年今ごろの私の見通しはもろくも崩れ去ってしまいました。私の同業者の中には、「景気後退局面に入るリスクは40-50%」とするリポートを送って来た人もいたりします。
この先、景気が後退局面入りするリスクとして大きなポイントを2つ上げることが出来ます。ひとつは日銀の福井総裁も指摘した海外経済の下振れから輸出が鈍化することです。これは所得要因なんですが、為替レートが円高に振れるとすれば価格要因として、これも含めて考えるべきかもしれません。いずれにせよ、欧州は景気拡大が続いているように見えるんですが、米国は7-9月期の GDP 統計や最近の雇用統計にもかかわらず、今後、経済が減速すると考えるエコノミストが多いですし、外需依存度の高い我が国の現状では、米国経済が減速してもデカップリングされずにその影響をモロに受けたり、円高がさらに進んだりする場合は、景気悪化につながる可能性は無視できません。もうひとつは住宅投資の急激な悪化です。建築着工申請の遅れから住宅着工が大幅に落ち込み、住宅建設に連なる建材生産などへ波及する可能性も十分あります。今までも政府・日銀が不況の引き金を引いたことは何度もありましたが、ある程度は意図した引締め政策の結果であって、それが認知ラグやその他の要因と重なって景気悪化につながったことはあっても、このような形で景気後退をもたらすのは世界でも例がないような気がしないでもありません。
私自身は40-50%の景気後退の可能性を弾き出すまでの自信は毛頭ありませんが、引き続き、今しばらく景気の動向には注意が必要だろうという気がします。
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