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2007年11月16日 (金)

やっぱり最後は日本経済の見通しに関するメモランダム

今日は、朝からが広がり、陽射しが余りなくて気温が上がりませんでした。一気に冬が来たようなお天気でした。感性よりも慣性で洋服を選んでいますから、今日はコートを着ませんでしたが、コートを着用に及んでも不思議ではない天候だった気がします。

GDP growth and forecasts from the latest WSJ.com survey引き続き、エコノミストの年中行事の経済見通しに向けて、取りあえず、今夜のエントリーでも昨夜の続きで、最初の方で、経済大国ニッポンからすれば与件でもないんでしょうが、海外経済の見通しをウォッチしておきたいとおもいます。まず、 Wall Street Journal の ECONOMIC FORECASTING SURVEY が発表されました。右上のグラフの通りです。エコノミストごとの見通しを含めた詳細は WSJ.com の Economist Forecasts で見ることが出来ます。グラフを一見して分かる通り、10-12月期は7-9月期から一転して成長が大幅に減速し、来年1-3月期以降の回復も緩やかです。年末にかけてゆっくりと潜在成長率近傍に戻るとの見通しです。もちろん、これは米国経済の見通しのサーベイ結果なんですが、日本の場合は10-12月期にマイナス成長を記録する可能性がありえることはすでに何度か書きましたし、また、私の見方では米国以外の日本も欧州も、もちろん、グラフの絶対値は違うものの、同じような足取りをたどるのではないかと考えています。引用したのは上方に凸のグラフなんですが、日本の場合は下方に凸の可能性があると私は考えています。すなわち、10-12月期にかなり落ち込んだ後、1-3月期も低めの成長が続き、私は4-6月期は少し上向くと考えているんですが、ひょっとしたら、4-6月期も停滞感が継続する可能性を排除できません。でも、何となくではありますが、私が今年と来年の日米欧の経済見通しについて考えているホンワカとしたイメージをよく表している気がしますので、日本経済の見通しの前段として取り上げてみました。

Table 1. East Asia Economic Growth

それから、日米欧経済以外の新興国の経済見通しのひとつとしてアジアを考えると、 "East Asia Remains Robust Despite U.S. Slow Down" と題して、世銀が東アジアの経済見通しを発表しています。コンセンサス予想だそうです。ほとんど注目されていませんが、上の表の通りです。一応、日本も東アジアの国ですから、最後の列に入っていたりします。発表文の最初の2パラだけを原文で引用すると以下の通りです。世銀らしく、単なる経済見通しだけでなく、1日当たり2ドル以下で生活している貧困層が1990年の10億人から初めて5億人以下に減少したなど、貧困削減の進展なんかについても触れています。

Washington, DC, November 14, 2007 - East Asian economies are likely to remain robust in 2008 despite growing concerns about the U.S. sub-prime crisis and increasing global oil prices, says the World Bank's latest East Asia & Pacific Update - Will Resilience Overcome Risk? Highlighting this, the report finds that for the first time, the number of poor people living below $2 a day in East Asia has fallen below 500 million - down from 1 billion in 1990.
The Update - a six-monthly report on the region's economic and social health - finds that growth in emerging East Asia is expected to exceed 8 percent in 2007 for a second year in a row and to moderate only slightly in 2008. Although East Asian exports to the US have already slowed, more buoyant investment and consumption in China and other countries have allowed growth to remain strong and even pick up this year.

日本の新聞をはじめとして、海外でもほとんど注目されなかったんですが、唯一、 International Herald Tribune だけが記事として取り上げていたりしました。一番下の列ですから、ついでに入ってるだけなんでしょうが、日本も今年2007年2.0%、来年2008年1.8%の成長と見通されていたりします。本邦エコノミストは政府経済見通しに合わせたのかどうか、年度で計数を出す習慣になっていて、暦年と年度の微妙な違いはありますが、なかなか、いいセンを行っているような気がしないでもありません。アジアでは米国のサブプライム・ローン問題に端を発する金融市場の動揺の影響も少なく、2桁成長を続ける中国を含めて、東アジアの途上国では2008年までの見通し期間において8%成長を達成するとの見通しです。現在の日本では考えられないような高成長に見えます。注目はされていないんですが、東アジア地域の最新の見通しとして、日本も含めて、リーズナブルな結果のように思わなくもありません。なお、念のためなんですが、Wall Street Journal と違って、世銀のホームページには日本語訳もあったりします。拠出額はかなり大きいですから、当然かもしれません。欧米だけでなく、アジアの経済見通しも視野に入れています。ジワジワと日本に近づいています。

最後に、いよいよ、日本経済の見通しに関するメモランダムです。今週13日に発表された1次QEを受けて、同業者の間でも今年度と来年度の経済見通しの作業がほぼ一段落したんではないかと思います。もっとも、12月7日の2次QEを待っているところもありますし、少なくとも、2次QEで足元調整を行うところが少なくないような気がします。ある意味で、11月から12月にかけては経済見通しに関係するエコノミストにとってもっとも忙しい時期のひとつであると言えます。エコノミストの間で意見交換がもっとも頻繁に行われる季節でもあります。ということで、最後の最後に、1次QEを受けた経済見通し作業をすでに終えた主要なシンクタンクなんかの WEB 上に置いてある発表文書(PFDファイル)へのリンクを50音順で以下に取りまとめておきます。見通し機関の後のカッコ内の数字はヘッドラインの実質成長率です。今年度は1%台半ば、来年度が2%を少し上回るくらい、というのが中央値かもしれません。

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