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2007年11月10日 (土)

台東区立書道博物館に行き顔真卿の『自書告身帖』に感激する

今日は、朝からでした。暗くなってから止みましたが、気温は上がらず、冷たい秋の雨となりました。

顔真卿『自書告身帖』

今日は、特に予定もなかったので、フラッと台東区立書道博物館に行きました。どうして行ったかと言うと、3日前の朝日新聞の夕刊の水曜アートで見かけたんですが、顔真卿の『自書告身帖』の真蹟が展示されていると知ったからです。書道博物館では10月6日(土)から12月24日(月)まで中村不折コレクションの中から選りすぐった隋・唐時代の肉筆の作品を「肉筆の美 -隋・唐時代の書を中心に-」と題する特別展が開催されていて、その中に、顔真卿の『自書告身帖』があるということで出かけました。顔真卿の楷書の真蹟で現存するただ一紙のものです。楷書以外でも顔真卿の真蹟は数点しか現存していないと聞きます。ただし、11月25日(日)までしか真蹟は展示されていなくて、その後はレプリカになってしまうということで、かなり大急ぎで行きました。
『自書告身帖』の「自書」の意味は明らかなんですが「告身」は辞令という意味だそうです。皇太子の教育係である太子少師に降格・左遷されたのを機に揮毫したもので、建中元年8月25日の日付がありました。ですから、『建中告身帖』とも呼ばれます。この名称であれば、法学部出身の人は著作権に関する事件で有名なモノだと思い出す人もいるかもしれません。まったく今夜のエントリーとは関係がないんですが、思い出してしまった人は最高裁判決が慶応大学のサイトにありますからご覧下さい。さて、話を元に戻して、建中元年は西暦でいうと780年に当たります。顔真卿は709年生まれで785年に没していますから、数え年で72歳の時の作品です。日本語でいえば古文にあたる中国語ですから、高校時代に習った漢文の知識だけでは意味は判然としませんが、大振りの楷書で顔真卿らしい太い字に感激しました。力強いエネルギーを感じさせる楷書でした。時代が違うんですが、現在に引き直せば60ポイントくらいの大きな字でした。どうでもいいことを続ければ、顔真卿もすでに老眼が進んでいたのかもしれないと考えてしまいました。なお、鎌田舜英先生のホームページに『建中告身帖』として詳しい解説があります。原則としてリンク自由とありましたので勝手にリンクを張っておきます。

そもそも、楷書は北魏から隋・初唐にかけて成立したものですから、真蹟で現存している作品はとっても貴重です。もちろん、この時代の書家としては何と言っても書聖と呼ばれる王羲之が第一に上げられますが、生没年は不詳ながら4世紀に活躍した書道家ですし、唐の太宗がかの有名な『蘭亭序』を含む真蹟と摸写を含めて2297紙を収集して、そのすべてを陵墓に埋めてしまったと伝えられていますから、真蹟が残されていようハズもありません。王羲之の真蹟に限りなく近いとされるのは『快雪時晴帖』で、台北の故宮博物院で展示されています。それから、楷書といえば、私が書道を習っていた時にお手本にしていた欧陽詢 (557-641) と弟子筋に当たる虞世南 (558-638) が有名です。このあたりで楷書は完成したと考えられています。もう10年近く前になりますが、毎週毎週、先生が書いてくれる欧陽詢の『九成宮醴泉銘』をお手本にお稽古に励んでいたことを懐かしく思い出してしまいました。欧陽詢や虞世南は欧法・虞法と並び称されるような細身の楷書を完成させたんですが、生没年から明らかなように、顔真卿は彼らから150年後の人で顔法とか顔体と呼ばれる書体を完成させました。もっとも、顔法は顔真卿の叔父にあたる顔元孫が漢字、特に楷書の書体を「干禄字書」という本で分類した時に、芸術としての書道というよりも、官吏やその登用試験である科挙で使うべき漢字の正字との意味合いも強くあります。正字として、通字や俗字とは違う位置づけを与えられているとも言えます。
話がやや逸れてしまったんですが、最後に、台東区立書道博物館について紹介すると、JR線の鶯谷駅から歩いて10分足らずのところにあります。台東区周辺には樋口一葉に因んだ一葉記念館とか、正岡子規に由来する子規庵などの施設があったりするんですが、書道博物館は中村不折を記念したもので、顔真卿の『自書告身帖』は1階の入ったところにレプリカが置いてあり、真蹟は2階の中村不折記念室にありました。鶯谷駅の日暮里寄りの改札を出て目の前にある交番で道を聞くと、朝日新聞で紹介されたからなのかどうか、手回しよく道順を案内した小さい紙をくれました。でも、書道博物館に着くと人出はまったくなく、ホンの10-20人ほどでした。比較的お年を召した女性が多かったような印象があります。書道展はだいたいこんなもんです。館内はもちろん写真撮影禁止ですから、外から写真を撮ろうかとも思いましたが、雨が降っていましたし、何よりも、失礼ながら、写真に撮っておこうと思うほどの建物ではありませんでした。でも、顔真卿の『自書告身帖』は見ておく価値があると思います。

最近は、音楽のコンサートや美術の展覧会なんかはトンとご無沙汰していますし、書道展も昨年2006年2月19日のエントリーで取り上げた、上野の国立博物館で開催されていた「書の至宝展」から数えても1年半を超えて久し振りです。でも、専門分野の経済を忘れて久々に芸術の秋をして来ました。

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