景気拡大が企業から家計へ波及する日銀シナリオは崩れるのか?
今日は、朝から少し雲が広がりました。今朝も朝の冷え込みは厳しく、日中も日差しがなくて気温は上がりませんでした。本格的に真冬に入った気がします。
昨日、政府の月例経済報告が発表され、今日は政府経済見通しも決定されました。また、今日から日銀の金融政策決定会合が始まり、明日まで続きます。金利は据え置かれる見通しのようです。一連の流れの中で、景気の拡大について、企業から家計への波及に疑問を生じさせるような表現が見受けられるようになりました。すなわち、12月の月例経済報告では、企業活動がかなり下方修正されて表現されています。今月月初に公表された7-9月期の法人企業統計で経常利益が前年同月比▲0.7%減となったのを受けて、機械的に表現を変更したのかもしれませんが、12月の月例経済報告では「企業収益は、改善に足踏みがみられる」とか、「企業部門が底堅く推移」にトーンダウンしました。11月の月例経済報告では「企業収益は、改善している」とか、「企業部門の好調さが持続」とされていた部分です。詳しくは、先月からの主要変更点で明らかにされています。
この政府の景気に対する見方の変更を受けて、私の知り合いのエコノミストの中には、日銀シナリオの崩壊と捉えている人もいたりします。特に、先の月例経済報告の変更点と重複しますが、11月の月例経済報告では「先行きについては、企業部門の好調さが持続し、これが家計部門へ波及し国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。」とされていたのに対して、12月は「先行きについては、企業部門が底堅く推移し、景気回復が続くと期待される。」とトーンダウンし、特に大きな赤い字で強調表示しておいた下線部の家計への波及が削除されています。日銀は長らく景気拡大が企業から家計に波及し、その結果として、賃金上昇が物価の上昇につながることをメインのシナリオとして、金利の正常化なるものを進めようとしていたんですが、政府はこの日銀シナリオを暗黙のうちに否定し始めた可能性があります。日銀もこれを認識しているようで、今朝の日経新聞の朝刊に日銀の金融政策決定会合に関して記事が掲載されていました。いつもの NIKKEI.NET のサイトから引用すると以下の通りです。
日銀は19、20両日に金融政策決定会合を開き、12月の企業短期経済観測調査(短観)で企業の景況感が悪化したことを受けて、景気認識を1年5カ月ぶりに小幅修正する方針だ。「緩やかに拡大している」との大枠は維持するが、企業心理などに「慎重さがみられる」といった文言を加える方向。金融政策は現状を維持し、政策金利を据え置く見通しだ。
短観では大企業製造業の業況判断指数(DI)が3四半期ぶりに悪化した。日銀は生産や雇用情勢など経済活動はなお堅調とみており、景気の基本認識の大枠は変えず、文言の追加による微修正で足元の企業心理や住宅着工の悪化をにじませる方向で検討している。
当然ながら、景気循環局面は2つとして同じものはないわけですから、確定的なことは言えませんが、一般的な理解からすると、景気の回復局面でも若い段階においては、家計部門よりも企業部門が先導し、地方圏よりも大都市圏で景気拡大が始まるのが通例です。その後も景気拡大が続くと、好景気がもたらす賃上げという形で企業から家計に、さらに、大都市圏から地方圏に波及すると考えられています。大都市圏と地方圏の地域別はともかく、景気拡大の主役は企業から家計にバトンタッチされると考えるのが一般的なんですが、そのバトンタッチがなされずに景気後退局面を迎える可能性も出て来たと政府は考えているのかもしれません。私は官庁エコノミストを自称し、政府の中にいるんですが、政府が何を考えているのか、のあたりは少しあいまいに表現しておきます。諸事情ご賢察の上、ご容赦下さい。
12月6日に発表された(財)経済企画協会の ESP フォーキャスト調査の結果を発表当日12月6日のエントリーで取り上げましたが、11月下旬から12月上旬にかけての調査時点で、日銀の利上げ予想は来年2月と7月に二分されていました。でも、私の知り合いの割合と強気な日銀ウォッチャーも先日のニューズレターで白旗を揚げ、福井総裁の任期内の利上げは困難とし、来年年央の利上げにメイン・シナリオを変更したようです。私はすでに10月22日のエントリーで福井総裁の任期内の利上げは難しいと明記していたので、私から約2カ月遅れでキャッチアップしてくれて、とってもうれしく感じたことを記憶しています。でも、今夜のエントリーのタイトルの疑問文に対する回答がもしも YES だとして、企業から家計への波及という日銀のシナリオが崩れると、次の利上げはもっと先までズレ込む可能性すらあります。
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