法人企業統計から何を読み取るのか?
今日は、朝から雲が広がり、昼前から雨が降り出しました。夕方には止みましたが、気温は上がらず、真冬の寒さに近かった気がします。
今日は財務省から今年7-9月期の法人企業統計が発表されました。注目された企業収益では全産業の経常利益は2002年4-6月期以来の減益となりました。他方、今週の金曜日に発表される2次QEへの影響については、設備投資の結果などから1次QEよりも少し下方修正されると私は見込んでいます。しかし、これには異論もあるようです。後ほど、もう少し詳しく取り上げます。まず、いつもの NIKKEI.NET のサイトから引用すると以下の通りです。
財務省が3日発表した2007年7―9月期の法人企業統計によると、全産業の経常利益は前年同期比0.7%減の13兆2936億円となった。前年同期を下回るのは02年4―6月期以来、21・四半期ぶり。原油高などが響き、製造業や中堅企業の利益を圧迫している。増収傾向は続いているものの、全産業の設備投資も二期連続で減少しており、好調を維持してきた企業部門の減速懸念が出てきている。
製造業の経常利益は前年同期比3.6%減の5兆6863億円。原油や原材料価格の高騰を背景に、化学(前年同期比11.8%減)や一般機械(同13.9%減)などが落ち込んだ。一方、非製造業は運輸業などで伸び、1.5%増の7兆6074億円と18期連続で増えたが、製造業の減少を補えなかった。
先週金曜日に消費者物価が発表された際と同じなんですが、主として、現有や穀物などの原材料価格が上昇していることから、コストプッシュの要因で企業収益が落ち始めている印象を受けます。ですから、製造業、中でも、食品(前年比▲5.1%)、化学(▲11.8%)、石油石炭(▲28.8%)、鉄鋼(▲2.3%)などの素材関連製造業の落ち込みが目立っています。長く続いた企業業績の増収増益も一服感があり、株価も今日は東証の日経平均で3日振りの反落を記録しました。
設備投資の動向については、今年4-6月期に続いて7-9月期も前年同期比で▲1.2%の減となりました。法人企業統計が原数値の前年同期比であるのに対して、2次QEでは季節調整済みの前期比で見ることや、少し体系的な相違があることは確かですが、設備投資デフレータが変わらないとの前提で、2次QEの設備投資は若干ながら下方修正されると私は見ています。すなわち、単純に実質の前期比を見ると0.2%増ですから、1次QEが1.7%増であったのに比較して上昇幅が縮小しているのは事実で、下方修正されると考えるのが自然なような気がします。しかし、エコノミストの間でも意見が分かれているようで、上方改定となるとの見通しもあるようです。設備投資以外の2次QEの改定予想を続けると、個人消費は少し上向きの改定でしょうが、公共事業はかなりの下方修正でしょうし、結局のところ、プラスとマイナスを取り混ぜて、最終の出来上がりの姿は大きな修正はないんではないかと私は考えています。せいぜいが成長率に引き直して0.1%ポイントくらいの小幅改定を私は見込んでいます。
法人企業統計に戻って、今回の統計の企業収益の構造からハッキリしたのは、本年年央時点においては、原油や穀物などの商品価格の高騰による原材料価格の上昇コストが大きく、人件費や資本コストの上昇圧力はまだ小さいということです。しかし、日銀は金利引上げ姿勢を堅持しているように見受けられる一方で、日本経団連が賃金上昇容認姿勢を打ち出していますから、企業収益に関してはマイナス要因が目白押しということも出来ます。東証の日経平均も先行きの企業収益を反映するとすれば、ここ数日で上昇ピッチが速かったこともあり、今日あたりで一服したのもうなずけます。もっとも、まだまだ企業収益は高水準にありますから、労働分配率を少し上昇させる余裕はあるように私は捉えています。
ですから、ややメンドウでややこしいパスなんですが、私の知る限りでも日銀に金利引下げを求めているエコノミストもいますし、資本コストを低く据え置いたままで、企業からすればコスト上昇要因にはなるものの、急がば回れで、賃金に関して上昇を容認して個人消費に景気の主役を転換させるのが悪くないパスだと思えて来ます。現状は一定部分を外需に依存していますから、賃金引上げを容認することは国際競争力の低下につながりかねないのは明白なんですが、内需を喚起して輸入に漏れる部分が少なければ、さらに息の長い景気拡大につながるような気がします。
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