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2007年12月 4日 (火)

"The Economist" の日本特集 "Going hybrid"

今日は、朝からいいお天気で、まずまず気温も上がりました。でも、明日は寒くなるとの天気予報です。

"The Economist" の12月1日号の特集記事で "business in Japan" が取り上げられています。やや下品な表現かも知れませんが、いわゆる centerfold の部分に表紙と広告も含めて20ページの特集記事です。15年間の経済的な停滞を経て、日本企業の収益は上がっている一方で、そんな簡単ではないものの、日本経済が新しいモデルを模索しているといったトーンで書かれているように感じました。各論はかなり辛辣で悲観的な印象を受けるんですが、最後の結論は楽観的な締めくくりだったような気がします。なお、印刷された雑誌を買うだけでなく、グラフなんかも含めてオンラインで読むことも出来ます。最初と最後のレポートは導入と結論で、間に各論の4つの記事があり、全体で以下の6つの記事からなっていますので、リンクを張っておきます。ご興味ある方はどうぞ。もちろん、英語です。

いくつかグラフをピックアップして、簡単に紹介すると、以下の通りです。
まず、最初のイントロダクションに当たる "Going hybrid" では、1990年代初くらいまでの日本経済の強みを終身雇用、年功序列賃金、企業内労働組合の3つの労働慣行に加えて、企業間の関係であるメインバンク制と系列などから解き明かし、それが現在では崩壊し、新たなモデルが摸索されていると問題提起しています。しかし、政府財政が先進国の中では飛び抜けて悪化していること、企業統治が株主を向いていないこと、人口構成が高齢化に向かい労働力人口比率が急速に低下していること、研究開発投資の効率が低いこと、国際化の遅れなどを取り上げています。

Economist.com: Getting the hang of it

各論で最初の記事の "Message in a bottle of sauce" では、タイトルの通り、話題になったブルドッグ・ソースの例を最初に取り上げて、"The Bull-Dog saga was a litmus test for attitudes to shareholder capitalism." と言い切り、企業統治 (corporate governance) が株主の方を向いておらず、ROE が欧米企業に比べて低いことを明らかにし、解禁された三角合併の活用の可能性に触れています。しかし、いまだに敵対的な買収に対する嫌悪感が根強く残っていることなどから、そんなに明るい見通しが見てないような結論に読めなくもありません。がんばりましょうね、といったところかもしれません。

Economist.com: Running out of workers

次の記事である "Still work to be done" では、労働市場の改革によって労働の柔軟性 が増し、年金のポータブル化も進みつつあるとしながらも、非正規雇用の増加が格差をもたらしているとし、さらに、出来高賃金制について富士通の例を引きつつ、やや批判的なトーンも忘れていません。もちろん、人口の高齢化に伴う労働力人口の絶対的な減少とともに、上のグラフにある通り、労働力人口の比率が先進国の中でも劇的に下落するとの国連の見通しを引いています。

Economist.com: Spending more on less

各論で3番目の記事である "Not invented here" では、日本の企業家精神について "Japan scores poorly on almost every measure of entrepreneurship." であるとして、ベンチャー投資のGDP比が OECD 諸国の中でも下から2番目とか、教育制度や文化的な要因から企業家活動の初期段階に対する活動が弱いと結論しています。研究開発 (R&D) 投資については、上のグラフの通り、R&D 投資の効率性が最近まで下がり続けていたと指摘しています。

Economist.com: Self-contained

各論の最後で、"No country is an island" と題して、しばしば、私がこのブログでも指摘する国際化の遅れを取り上げています。日本が英国とともに島国であることを念頭においたタイトルです。上のグラフにある通り、日本の輸入依存度と直接投資の受入れが先進国の中で最低レベルにあることを踏まえて、"Why is Japan such an outlier?" との問いを発しています。回答としては、戦後、国内産業育成のために規制が強かったこと、日本企業間での株式の持合いなどを上げています。これを解決するためには、対外と対内の企業の合併が考えられるんですが、日本市場に進出する場合のスターバックスの成功例と撤退したボーダフォンの例を引いたりしています。

結論として、"JapAnglo-Saxon capitalism" と題するレポートで、この特集全体のタイトルになっているように、トヨタのプリウスを取り上げ、ハイブリッドなモデルを提唱しています。ハーバード大学のボーゲル教授の “Japan has both embraced and rejected American capitalism." という言葉に凝縮されています。労働者に終身雇用を約束し、業績賃金やストック・オプションを導入する一方で、株主とは協力関係を強めて、海外の市場や技術に幅広いアクセスを確保している企業です。社会的な価値と結合した資本主義のビジネス・モデル、"a new model that combines capitalism with social values" とも表現しています。でも、このハイブリッド・モデルに分類される企業はまだ24%で、42%が伝統的な日本モデルに立脚しており、残り34%はこの間にあるとの早稲田大学の研究成果にも言及されています。

各論の最初の記事である企業統治や M&A に関するレポート、あるいは、同じく各論3番目の国際化の遅れの記事などについては、日ごろから私の感じていることと、かなりの部分で共感できるような気がします。3段組みで分量はそれなりにありますが、そんなに難しい英語ではありませんから、ご興味のある方は一読をオススメします。

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