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2008年1月28日 (月)

米国の景気後退と日本の不況の違いから景気拡大継続の重要性を考える

今日も朝からいいお天気の冬晴れだったんですが、午後から雲が広がり、明日は雪か雨が降りそうだとの天気予報です。ここ2週間ほどと同じで、気温はそんなに上がらず、冬本番の寒さが続いています。

今年に入ってから、我が同業者の間で米国の景気後退の確率が高まっているとの議論が盛んになっています。特に、今年に入ってから、米国の雇用統計と ISM 指数の発表を受けて、米国がすでに景気後退に入っているとの論調もあったりします。1月26-27日付けの週末版の "Financial Times" では Recession という名の雪崩が Davos に行かないように食い止めている人々のマンガが書かれたりしています。さらに、日本でも米国の景気後退に関する確率が高まっているとのレポートに接することも少なくありません。。例えば、1月11日付けの日本総研の「リサーチアイ」なんかでも、「『景気後退』の領域に近づく米国景気指標」として、たんねんに指標を検討していたりします。しかし、私の目から見て、米国の景気後退と日本の不況を混同している議論も見受けられたりします。私は日米で景気後退や不況に関する認識にかなりギャップがあると感じ始めています。
日本の不況と米国の景気後退の違い、あるいは、米国における景気後退への恐怖感は、まだまだ、日本ではエコノミストですら理解されていない部分があるように感じられます。一言でいうと、米国の景気後退が強烈なインパクトを持つ理由は、レイオフによる雇用調整がメインになるからです。日本でも前世紀の終わりころからリストラという名で雇用調整が始まりましたが、終身雇用制度がある程度の広がりを持つ日本では、まだまだ雇用を失うというより、歴史的に見て、ボーナスなどの賃金=価格調整で乗り切る面が強く、いきなりレイオフ=数量の調整に入る米国との差は大きいと私は考えています。この雇用調整の広がりが米国において景気後退が恐怖感を持って受け止められている大きな要因だと私は考えています。
しかも、米国では五大湖周辺の製造業が典型的なんですが、日本的に言うところの正社員の福利厚生は我が国の公務員もしのぐくらいに手厚く、地域コミュニティが企業に丸抱えされている例も少なくありません。企業が中心となって、病院を経営し、学校を建設し、ショッピングセンターまで運営している例もあったりします。レイオフされると、これらの福利厚生サービスから締め出されるか、締め出されないまでも価格が跳ね上がる例も見られます。不況になってもボーナスが減額されるくらいで済んでいた日本と違って、景気後退になればレイオフで正社員の地位を失うダメージはお給料に止まらず、福利厚生を含めて計り知れないものがあるわけです。
日本でも景気循環が長期化し、景気後退や不況になれば数量的な雇用調整が始まる場合もあり得る時代になりましたが、まだまだ、米国的な景気後退の強烈なインパクトに関する理解が不十分な気がしないでもありません。我が同業者の中でも官庁エコノミストはこの傾向が少し残っているように感じないでもなく、私も昔はそうだったんですが、不況期に効率性の点で劣る企業が淘汰されるのは次の景気拡大期の健全な成長にはマイナスにならない、との清算的な思考回路も残されているように見受けられる場合もあったりします。しかし、日本でも不況や景気後退が壮大な生産要素のムダにつながることは、デフレ期に実感されたように思います。

何とか、雇用調整を伴う不況や景気後退には入らず、政策的には難しい時期に来ている気もしますが、景気拡大を継続することが重要であると私は考えています。

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