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2008年1月23日 (水)

米国経済は景気後退に入るのか?

今日は、本当に久し振りに朝からが降りました。当然ながら、気温は上がらずに寒かったです。我が家のある団地でも少し積もって、チョッピリ雪遊びが出来たらしく、我が家の下の子は大いに喜んでいました。

CFNAI-MA3 and Business Cycles

米国時間の昨日、シカゴ連銀が CFNAI (Chicago Fed National Activity Index) を発表しました。3ヶ月移動平均の CFNAI-MA3 は上のグラフの通りです。12月単月の指数は▲0.91となり、景気後退ラインとされる▲0.7を超えてしまいました。CFNAI-MA3 も▲0.67となり▲0.7に迫っています。まず、いつもの NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米経済が景気後退(リセッション)入りする可能性が高まってきた。景気の強弱を測る物差しとなる12月のシカゴ連銀の全米活動指数(CFNAI)は景気後退の分岐点近くまで急低下した。米市場関係者の間では、米経済は「すでに景気後退局面に入った」または「近く、景気後退する」との見方が増えている。
全米活動指数は85の月次の経済指標から足元の経済情勢を判断するもので、シカゴ連銀が算出する。(1)生産・所得(2)雇用(3)消費・住宅(4)販売・受注--など主要指標を網羅しており、直近3カ月の平均が「マイナス0.7」を下回ると景気後退の確率が高いとされる。
シカゴ連銀の22日の発表によれば、12月まで直近3カ月の平均値は前月より0.17ポイント低い「マイナス0.67」と“景気後退ライン”の寸前まで悪化した。12月の単月の指数は同0.62ポイント悪化の「マイナス0.91」と、“瞬間風速”では景気後退領域に入ってきた。失業率が5%に急上昇するなど雇用の急減速に加え、消費、住宅関連指標の大幅悪化が響いたという。

通常であれば、CFNAI はそんなに注目される指標ではないのかもしれませんが、1月に入ってから ISM 指数と雇用統計の発表を受けて、多くのエコノミストが米国の景気後退を意識し始めたものですから、CFNAI にも注目が集まりました。12月の結果は上の引用にある通りで、景気後退ラインを超えています。米国の景気転換点は2四半期連続でマイナス成長を記録した時点で暫定的にリセッションとし、NBER に設置されている景気日付け検討委員会で確定しますが、ひょっとしたら、昨年2007年12月が米国景気のピークですでに景気後退局面に入っている可能性も排除できないと私は考えています。
米国景気の先行きのシナリオは私が同業者との雑談から把握する限り、以下の3通りあると思います。第1はもっとも楽観的な見方で、連邦準備制度理事会の利下げや政府の景気対策などにより目先については景気後退を回避できるというシナリオです。第2に、私の見方なんですが、今年の初めか年央くらいに、割合と底が浅くて期間も短い1年くらいの景気後退に入り、ただし、その次の景気拡大期は米国にしては短く、1年半か2年くらいで終わって、その後の景気後退はかなり深刻なものになる、というシナリオです。根拠は現在も拡大局面にある設備投資循環が2010年か2011年には反転し、在庫循環の調整と重なると考えているからです。第3に、もっとも悲観的なシナリオは、今年の年初か年央くらいに景気後退局面入りするのは第2のシナリオと同じなんですが、クレジット・クランチが設備投資循環までも反転させてしまい、底が深くて期間も長い景気後退になる、という見方です。最後に、繰返しになりますが、私の考える標準シナリオは第2のケースです。私も官庁エコノミストを自称していますから、同業者のレポートなんかをお送りいただくこともあり、最近見たショッキングな表題で「財政・金融政策を総動員しても景気後退は免れない」というのがありましたが、私も幾分かは同意するところがあります。ただし、その理由はすでに景気後退が始まっている可能性が十分あるからです。
さて、3つのシナリオのうちで、どのシナリオの確率が高くなるかの要因にはいくつか考えられますが、第1に、ほぼ織込み済みとはいえ金融政策の動向です。昨日、緊急に開かれた連邦公開市場委員会 (FOMC) で75ベーシス引き下げ、来週の FOMC でも追加で50ベーシス引き下げ、年央までにはさらに50ベーシスの引下げを見込んで、2.5%まで FF レートは引き下げられるとの見方が一般的です。実際の利下げが始まったのは昨年9月からですが、7-8月くらいから金利引下げを織り込んだ企業行動がみられますから、いくら遅くとも、今年の年央には金融緩和の効果が現れると考えられます。第2に、景気対策の規模と時期と効果です。政府の景気対策は議会との調整の真っ最中で、2月半ばの Washington's birthday を含む連休までの決着が見込まれていますが、一昨日のエントリーに引用した "Wall Street Journal" の表にある通り、議会は食料切符や失業給付を対策に加える意向を示しており、さらに、議会で多数を占める民主党の大統領候補者の対策をどの程度盛り込むかにもよります。政府案が即効性を重視した rebate check と設備投資減税に力点を置くのに対して、クリントン候補の案は対象者を絞った住宅救済基金の創設など、効果の発現に時間はかかるものの、より根本的な解決策を提示していますし、オバマ候補はその中間的な案で、加えて、地方によってはインフラ整備の公共投資も盛り込んでいます。これらの民主党の有力大統領候補者の案も含めて検討される可能性もあり、大統領府と議会でいつごろにどのような結論に達するのかは、景気の先行きシナリオに大きな影響を与えることは言うまでもありません。第3に、株価の動向です。消費に対する資産効果・逆資産効果とともに、金融機関のキャピタル・クランチがクレジット・クランチに進むかどうかも気がかりです。第4に、原油価格などの商品価格の推移です。米国の現在の景気減速で原油価格などは素直に下がっているように見えますが、株式市場の下落との関係で資金が商品市場に流れる可能性は否定できません。現下の局面では FED はインフレよりも景気を重視しているようですが、この重点が移るほどの物価上昇となれば話は別になります。最後に、かなり影が薄くなったデカップリング論の観点から、アジアなどの新興国との景気波及のタイムラグがどの程度長いかもポイントになる可能性があります。これらの総合的な指標としては、引き続き、雇用統計を注視する必要があるのではないかと考えています。

いずれにせよ、日本経済も大きく減速している状況で、米国経済が本格的な景気後退に入ることとなれば、その影響は甚大と言わざるを得ません。そのまま、連鎖倒産ならぬ連鎖景気後退に日本経済が入る可能性も排除できないだけに、「日本ではサブプライム問題の影響は限定的」とばかりは言えないと私は考えています。

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