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2008年1月10日 (木)

国際商品市況の上昇と国内景気の減速は表裏一体

今日は、朝から冬晴れのいいお天気でした。でも、昨日や一昨日と比べると急に気温が下がったような気がします。逆に、今の真冬の季節にふさわしいカレンダー通りの気温なのかもしれません。

今日の日経新聞の夕刊に出ていたんですが、日銀の武藤敏郎副総裁が札幌市で講演し、国内景気について従来の日銀の見解を下方修正するような発言をしたと報じられています。取りあえず、NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀の武藤敏郎副総裁は10日、札幌市で講演し、国内景気について「当面減速が続くものの、その後は緩やかな拡大を続ける」と述べた。足元の世界経済に不透明感が増すなか、原油を中心とする原材料価格の高騰や住宅投資の急減が響くとの見方を示した。今後の金融政策運営は「経済・物価情勢を虚心に評価した上で慎重に判断したい」と指摘した。
武藤副総裁は日本経済に関し「生産、所得、支出の好循環メカニズムが一時的に弱まっている」と言及。米経済についても信用力の低い個人向け住宅投資(サブプライムローン)問題を背景に「減速感が幾分強まりつつある」との考えを示した。世界経済全体では「地域的な広がりを持ち高成長を続けるがダウンサイドリスクが増している」と語った。
経済は下振れる一方、物価は上振れるとの懸念も表明。「原油価格が1バレル100ドル台まで上昇するなど国際商品市況は高値圏で推移している」と語り、国内の消費者物価指数(CPI)は「上昇幅が拡大する」との見通しを示した。

私のこのブログの12月19日付けのエントリー「景気拡大が企業から家計へ波及する日銀シナリオは崩れるのか?」でも取り上げましたが、同様の内容を武藤副総裁は「好循環メカニズムが一時的に弱まっている」と表現しています。一時的な弱まりと崩壊の間には大きな差があるようにも見えますが、日銀のような大きな船が方向転換を始めたのかもしれませんから、表現振りほどは大きな差がないのかもしれません。
それから、物価上昇の捉え方なんですが、原油をはじめとする商品市況の上昇に端を発する物価上昇はデフレを悪化させます。単純な話で、輸入デフレータの上昇は輸入が GDP の控除項目であるがゆえに、国内デフレータを下げる方向に作用します。円高の進行も同じで、交易条件は悪化します。当然です。しかし、輸入デフレータに起因するものであったとしても、それが波及する形で国内の一般物価水準を上昇させることにつながれば、それはそれでオッケーだという気がします。さらに、11月30日付けや12月28日付けのエントリーで論じたように、国民のインフレ期待が変化すれば、もっとオッケーのような気もします。何度もこのブログで表明しているように、私は賃金の上昇がデフレ脱却の十分条件であると考えていますが、物価上昇が賃金上昇につながる形でも、それはそれでオッケーだと私は考えています。しかし、他方で、実際には物価上昇が賃金上昇につながるよりも、例えば、その昔にグランジャー因果を分析したりした際には、賃金上昇が物価上昇に先行するのが日本の歴史的事実だということも認識しているつもりです。非伝統的な政策手法も含めて、何とかデフレから脱却してマイルドなインフレを実現させようとするのがリフレ派だと私は認識していますから、ややトリッキーに見える方法でもマイルドなインフレをもたらすのはオッケーだと思いたい気がします。私の勝手な思い込みかもしれませんが、需要超過の GDP ギャップに起因するインフレだけにはこだわらないのがリフレ派だと認識しています。その点から、よいデフレと悪いデフレ、同様に、よいインフレと悪いインフレを区別するのはまったく意味がありません。
脱線してしまったので少し話を戻すと、私の見解からすれば、今夜のエントリーのタイトルにしたように、原油価格などの国際商品市況の上昇と、部分的にはこれに起因する国内景気の減速は同じコインの裏表なんですが、日経新聞の記事では日銀から見れば相反する事象のように取り上げられています。私は大いに違和感を覚えますが、国民の実感からすれば物価は確実に上がって来ているというのは事実だろうと思います。このあたりが官庁エコノミストとしては悩ましいところで、一昨年の2006年9月22日付けのエントリーでも取り上げましたが、日銀の金融政策にも国民の意志や判断が反映される仕組みが必要と主張する一方で、国民の間にコンセンサスのないインフレ・ターゲッティングの採用にも少し消極的にならざるを得ないわけですから、どのあたりに経済政策の軸足を置くのかは、私自身もフラフラしているのが実情です。

でも、虚心坦懐に考えれば、景気の現状からすればデフレ脱却が最優先課題とされるべきだと考えています。長くなるので引用しませんでしたが、今日の毎日新聞夕刊の特集記事にある三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中所長の主張のように、すでに景気後退が始まっているかどうかは別にして、控えめに言っても、現下の景気情勢からは日銀に利下げを求めるエコノミストがいてもおかしくないような気がします。

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