注目されない会議
今日は、朝から冬晴れのいいお天気でしたが、気温は上がらず、真冬の寒さでした。天気予報なんかでは爆弾低気圧の影響で風が強いと聞きましたので、我が家の子供達には何か飛んで来たらレジ袋のように見えても決して受止めようとせずによけるように言っておいたんですが、私の実感としてはそんなに風は強くありませんでした。
今夜のエントリーでは、最近、めっきり注目されなくなった経済に関する2つの会議を取り上げたいと思います。日銀の金融政策決定会合と政府の経済財政諮問会議です。まず、前者の日銀の金融政策決定会合については明日から開催される予定なんですが、ブラックアウト期間に入っていることを考慮しても、日本のメディアにはほとんど注目されていません。仕方がないので、ロイター通信のサイトから最初のパラだけを引用すると以下の通りです。
日銀は、現在の国内景気の状況について、前向きメカニズムが崩れないかどうかの正念場を迎えていると捉えており、その行方を見極めるため14、15日に開催する金融政策決定会合で、現状の政策金利を維持する見通し。米経済の後退リスクが次第に大きくなっている中で、世界経済にそれなりの打撃がありうるとの見方が日銀内で強まっており、日本経済も輸出や生産という景気拡大の起点に影響が出かねないとの懸念が高まっている。だが、景気が悪化していることに対応するための利下げ余地は小さく、金利感応度の低い日本経済には効果が薄いとの見方も根強い。このため会合では、将来の可能性も含め幅広い政策の選択肢について議論をすることになりそうだ。
日銀の金融政策決定会合が世間の注目から外れている原因は明らかで、近い将来に金利の引上げを含む金融政策の変更があり得ないと予想されているからです。日米経済ともに景気後退の崖っぷちにあるとの認識が広まりつつあり、米国の連邦準備制度理事会 (FED) が金利引下げ局面にある中で、日銀がカギカッコ付きの「金利正常化」を進められるわけもなく、ある意味で、当然ともいえます。例えば、昨日、(財)経済企画協会から発表された ESP フォーキャスト調査の結果でも、来年2009年1月以降の金利引上げを予想するエコノミストが33人のうち18人と過半数を占めるに至りました。かなり多数のエコノミストは年内には利上げはないと予想しているわけです。おそらく、メディアもご同様で、特段の金融政策の変更が予想されない金融政策決定会合は注目されないのは自然な現象だといえます。なお、ESP フォーキャスト調査について付言すれば、私がこのブログでも昨年10月来嘆いて来たところなんですが、ようやく、金融政策の先行き見通しが私の見方に近づいて来たように思います。先月発表された調査結果では33人中、27人のエコノミストが今年9月までの利上げを予想していたのに比べて、ずいぶんと理解が進んだようで喜ばしい限りです。また、今月の結果から注目されるのは、33人中たった1人ですが、日銀の利下げを予想したエコノミストが現れたことです。来年2009年1月以降の引下げとの回答のように見受けましたが、ひとつの見識を示す意見として大いに注目すべきであると私は考えています。
もうひとつの注目度を落としている会議は経済財政諮問会議です。これも少し前までの小泉総理大臣と竹中経済財政担当大臣の下での経済財政諮問会議の役割と現在の役割が大きく違っていることに起因しているのは明らかです。数年前までデフレが厳しかったころ、経済財政諮問会議は政府を代表してデフレ圧力を強めるのを覚悟の上で構造改革を進めるエンジンとなっていました。数年前の状況では、経済政策の割当ては明らかで、政府が構造改革を担当し、その名の通り構造的、中長期的・質的、あるいは、供給面の政策をデフレを悪化させることを覚悟の上で推進し、それを日銀の金融政策で循環的、短期的・量的、あるいは、需要面からデフレを緩和させることをサポートする体制だったと私は理解しています。蛇足ですが、ですから、先週2月7日の「日銀総裁人事のゆくえ」で指摘したように、5年たってもデフレから脱却できなかった日銀の福井総裁には合格点をつけられないと私は考えています。
話を経済財政諮問会議に戻すと、先月1月24日付けのエントリーで紹介した「日本経済の進路と戦略」について、シンクタンクの同業者と話をする機会があったんですが、いつ閣議決定されたのかも認識されていないくらいに、この「進路と戦略」や経済財政諮問会議の影が薄くなっています。その前には、昨年のゴールデンウィーク明けだったと記憶しているんですが、民間金融機関の同業者と電話で話をしている時に、「私は経済財政諮問会議の議事録を読むのを止めますから、吉岡さん、がんばって読み続けて下さい」みたいなことを言われたこともあります。しかし、私も昨年11月くらいで議事録を読むのを止めてしまいました。
経済財政会議が注目されなくなったのは2つの原因があるように思います。ひとつは客観的な経済情勢として、景気が数年前の最悪期を脱して景気拡大を続けていたことです。過去形で書いてしまいましたが、日米景気とも昨年第4四半期がピークだった可能性があると私は考えているからです。第2には、第2のコインの裏側なんですが、経済以外の政策課題に注目が集まり、昨年の安倍内閣での教育再生会議や現在の福田内閣での社会保障国民会議と消費者行政推進会議のように、経済財政諮問会議と同等の会議が出来ていることです。例えば、マスメディアなんかで取り扱われる情報量、すなわち、テレビのニュースの時間や新聞の紙面のページ数なんかに大きな差がないとすれば、経済財政諮問会議と同じような会議が出来れば、経済財政諮問会議の希少性は希釈されます。要するに、ニュースバリューが落ちたわけで、メディアへの露出が減るのはあり得ることかもしれません。加えて、可能性は低いんではないかと私は考えていますが、政府の中での政策課題のプライオリティがシフトしているとすれば、リソースもシフトされる結果、経済財政諮問会議のアウトプットの質も落ちていることも考えられなくもありません。もしも、希少性が希釈されている上に、アウトプットの質も落ちているのであれば、後者については私は懐疑的ですが、いずれにせよ、注目度を落とすのは当然とも言えるかもしれません。
しかし、最初の方に書いたように、日米ともに景気後退のリスクが上昇しつつあると懸念される中で、日銀の金融政策決定会合と政府の経済財政諮問会議が存在感を示して経済政策の舵取りをリードすべき局面が近づきつつあるような気がしないでもありません。
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