« 下の子がボーイスカウトのスキー合宿から帰る | トップページ | 欧州経済はデカップリング論の最後の望みの綱か? »

2008年2月18日 (月)

オバマ上院議員の経済政策パッケージ

今日も、朝からいいお天気で気温も徐々に上がって来ているように感じます。天気予報によれば、明日からは一段と気温が上がるようです。

先週、米国時間の13日に米国民主党の大統領候補者でクリントン上院議員と党内の予備選を競っているオバマ上院議員がウィスコンシン州のジェインズビルの GM の工場で経済政策案を発表しました。オバマ上院議員の大統領選挙キャンペーンサイトにも BARACK OBAMA'S ECONOMIC AGENDA: KEEPING AMERICA'S PROMISE" と題して、PDFファイルでアップロードしてあります。8ページほどのコンパクトなものですから、ご興味ある方はダウンロードするのも一案でしょう。まず、日本語情報ということで、いつもの NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米大統領選で民主党のトップに立ったオバマ上院議員は13日、景気不安に対応するため総額2100億ドル(約22兆6000億円)の経済対策を発表した。環境事業などで新規雇用を700万人創出することが柱で、経済政策での政権担当能力を誇示する狙いがある。劣勢に追い込まれたヒラリー・クリントン上院議員は大票田州を遊説し、巻き返しを図った。
オバマ氏はウィスコンシン州の演説で、今後10年間で実施する対策の概要を明らかにした。環境関連事業に1500億ドルを投じ、500万人の雇用を生み出す。同時に高速道路や橋、空港などの公共事業に600億ドル拠出し、200万人を雇用するとの内容だ。

オバマ上院議員の発表の翌日2月14日付けの "Wall Street Journaml" には以下のような表で簡潔にポイントを取りまとめてあります。

Barack Obama's Economic Plan

さらに、大統領選挙キャンペーンサイトにアップしてある BARACK OBAMA'S ECONOMIC AGENDA: KEEPING AMERICA'S PROMISE" の大きな6項目を引用すると以下の通りです。

  1. PROTECT HOMEOWNERSHIP AND ADDRESS THE SUBPRIME MORTGAGE CRISIS
  2. RESTORE FAIRNESS TO THE TAX CODE
  3. ENDING THE MIDDLE-CLASS SQUEEZE
  4. PROTECT FAMILIES BY REFORMING BANKRUPTCY & CREDIT CARD LAWS
  5. CREATE GOOD-PAYING JOBS IN AMERICA
  6. STRENGTHEN RETIREMENT SECURITY AND PRESERVE SOCIAL SECURITY

日経新聞なんかが注目している環境事業や公共投資なんかは V. CREATE GOOD-PAYING JOBS IN AMERICA に入っていますが、それ以外にも、一番目に置いたのはサブプライム問題で持ち家を差し押さえられるのを防止する対策が中心ですし、年間100時間の奉仕活動に対して4000ドルの税控除を大学生に付与すること、個人破産やクレジットカード約款の片務性の改善など、いろんな細かな経済政策が盛り込まれていますし、そして、何よりも税制を中心に据えている経済政策だという印象を受けました。日本の報道ではこの点が抜けているように感じています。なお、日本政府が大いに気にしているであろう通商政策については、クリントン上院議員の方に対日強硬派が集まっているように報じられており、オバマ上院議員の経済政策では V. CREATE GOOD-PAYING JOBS IN AMERICA の章で Fight for Fair Trade として、労働基準や環境基準を重視した通商政策について簡単に触れているだけです。もっとも、後で取り上げる経済アドバイザーのシカゴ大学 Goolsbee 教授が、「人民元上昇でも米貿易赤字問題解決せず、(中略)、米国の貿易赤字問題の根は投資が貯蓄を上回っていること」であると発言したとロイター電がキャリーしていますので、割合と日本的な貯蓄投資バランス論が通商政策で重視されそうな予感もあります。
オバマ上院議員自身が anti-Wall Street と言われることもありますし、この経済政策にしてもややポピュリズム的との批判もあり得ましょうが、今回の経済政策案はスティグリッツ教授などが大いに批判した現在のブッシュ大統領による富裕層を優遇する減税政策などに対する揺り戻しの面もあると考えるエコノミストもいるかもしれません。いずれにせよ、米国民の選択の問題ではなかろうかという気がします。
なお、ややトリビア的な話題なんですが、先ほども書いた通りで、上の "Wall Street Journal" の記事では、シカゴ大学の Goolsbee 教授がオバマ上院議員の経済アドバイザーとして紹介されていました。恥ずかしながら、私は不勉強なのでよく知りませんでした。オバマ上院議員の地元のシカゴ大学教授という以上の何かがあるのかもしれません。同じ民主党のクリントン上院議員の経済ブレーンとしては、ビル・クリントン大統領のころに財務長官をしていたルービン氏、同じくハーバード大学の前の学長のサマーズ氏などが上げられています。これは分かりやすい布陣だと思います。

一応、私は国際派エコノミストだったりしますので、ロンドンにあるブックメーカーにアカウントを持っていたりするんですが、私が口座を開いている William Hill では米国大統領選挙のオッズでオバマ上院議員を最も低くして、本命のような扱いになっていたりします。私も今しばらく米国大統領選挙の行方をウォッチしたいと思います。

|

« 下の子がボーイスカウトのスキー合宿から帰る | トップページ | 欧州経済はデカップリング論の最後の望みの綱か? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オバマ上院議員の経済政策パッケージ:

« 下の子がボーイスカウトのスキー合宿から帰る | トップページ | 欧州経済はデカップリング論の最後の望みの綱か? »