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2008年2月 7日 (木)

日銀総裁人事のゆくえ

今日は朝から冬晴れのいいお天気でした。気温はそこそこ上がったようなんですが、ランチタイムに外出した際には風が強くて冷たいと感じました。

国会同意人事の日銀総裁の任命に関する与野党の動きがいよいよ始まりつつある様子です。おさらいになりますが、日本銀行の総裁と副総裁は日銀法第23条の規定により、「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とされています。ついでながら、第23条題2項の規定により、審議委員の任命も同様です。昨年7月の参議院選挙の結果を受けて、与党が参議院で多数を失い、今年年初からの国会同意人事の焦点となっています。法律案と違って、憲法でも衆議院の 2/3 による再議決は規定されていません。ただし、今週末には G7 が日本で開催されますから、本格的に動きがでるのは週明けとなると私は考えていたんですが、ここ2-3日の新聞報道ではいろいろと動きが出始めているようです。まず、いつもの NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

与野党は7日午後、3月19日に任期満了を迎える福井俊彦日銀総裁の後任人事について正式に協議に入る。自民党の大島理森、民主党の山岡賢次両国会対策委員長が会談し、日銀総裁人事決定の手続きや段取りなどを話し合う。政府は与野党の意向を踏まえながら人事案提示の時期を慎重に見極める。
政府は元財務次官の武藤敏郎日銀副総裁の昇格を軸に検討中。一方で民主内には財政・金融分離論を理由に「武藤総裁」への反対論があり、大島氏は山岡氏との会談を通じて民主内の感触を探る。日銀総裁人事は衆参両院の同意が必要。政府は議院運営委員会両院合同代表者会議で人事案を示す。

1998年3月に新日銀法が施行された経緯から、今回も総裁と副総裁の合わせて3人が一気に3月19日に任期満了を迎えます。この制度的な不都合があるために、ねじれ国会と呼ばれる状況の中で今回の任命が特に注目されているともいえます。世界の中央銀行でもめずらしいように思います。私は20年近く前にリサーチ・アシスタントとして米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) に短期間だけ派遣されていたことがあるんですが、ちょうど、前のグリーンスパン議長が就任してブラック・マンデーなんかを乗り切った直後だったような気がします。まだ、昭和の御世だったと記憶しています。FED では日本の金融政策決定会合に当たる連邦公開市場委員会 (FOMC) に出席する7名の理事は、地区連銀の総裁はよく知らないんですが、任期14年で7人ですから割と単純に2年ずつズレて任命されていて、議長や副議長も含めて一気に大幅な人事の交代が生じないように工夫されています。日本の場合は、新日銀法が金融危機のさなかに制定・施行されて、少し制度的な設計に配慮が足りなかったとの批判があり得るかもしれません。

Marking Down Bernanke

上のグラフは最近の "Wall Street Journal" から取ったものですが、景気後退のオッズが49%に上昇したとの記事の中で、FED のバーナンキ議長の評価が厳しくなって来ていることを示した図です。日本に話を戻すと、私は5年前の2003年に現在の日銀福井総裁が任命された時には、ジャカルタにいて遠い距離から眺めていたんですが、この福井総裁の5年間の活動を振り返って、決して高い評価は与えられません。福井総裁が任命された時点で、消費者物価上昇率は2002年が▲1.1%、2003年が▲0.3%の下落と、言わばデフレの真っ只中でした。5年を経て、昨年2007年が原油価格の上昇があっても0%ですから、明らかにデフレから脱却したと言うことは出来ません。政府も日銀もデフレ脱却宣言を出せずにいることは周知の通りです。デフレ脱却を大きな目標に日銀総裁に任命されながら、5年を経ても目標が達成できなかったんですから、合格点を与えられないことは明らかです。特に、遠い距離から見ていても、福井総裁は就任の後で微妙に態度を変えたような気がしてなりません。最近では、デフレ脱却がなされないままに、カキカッコ付きの「金利の正常化」を進めているように私には見受けられます。

財政に大きな赤字を抱えて政策発動の余地が極めて限られている我が国では、金融政策による景気調整機能に頼る部分が大きいわけですから、本当にデフレ脱却を成し遂げ、日本経済の成長軌道を確固たらしめるような日銀総裁を、多くの日本人は望んでいるんではないでしょうか?

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