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2008年3月11日 (火)

中国の貿易統計はデカップリング論の破綻を示しているのか?

今日は、朝からいいお天気で気温もグングン上がりました。4月並みの最高気温だったようです。季節が一気に1ヶ月の先に進んだようでした。私は今シーズン初めてコートなしで出勤しました。

中国貿易統計

中国税関総署は10日、2月の中国の貿易統計を発表し、輸出額が前年比6.5%増と急速に鈍化し、貿易黒字は85.6億ドルに縮小したことを明らかにしました。貿易黒字がこれほど低水準だったのは2002年4月以来だそうです。上のグラフは棒グラフの貿易収支だけ12ヵ月移動和ベース書いてあるんですが、貿易黒字は5.7%減の2,504 億ドルとなりました。一方、輸入は前年比で35.1%増え、2004年12月以来の高い伸びとなしました。
もちろん、カレンダーの影響もあります。今年は1月ではなくて2月に春節、いわゆる中国式のお正月があり、生産が一部でストップしたこともありましょうし、また、2月の中国は記録的な大雪で、輸出品などの輸送体制がかなり追い付かなかったこともありますが、逆に、今年はうるう年で昨年の2月よりも営業日が多いことを考え合わせると、輸出の伸び率が大きく鈍化したとも言えます。輸入の方はうるう年効果を着実に反映して、かつ、大雪にもかかわらず大きく増加しているんですから、うるう年や大雪が輸出と輸入で非対称に作用したとは考えにくいとすれば、やっぱり、輸出先の米国などの景気後退や景気減速の影響が現れていると考えるのが自然であるように考えられます。ただし、先進国の貿易統計と違って、中国の場合は統計の詳細がもう少し先まで入手出来ません。いずれにせよ、単月の統計で趨勢が変化したと考えるのはリスクが伴いますから、来月の全体統計や今月の詳細統計が明らかになれば、中国の輸出の鈍化と輸入の増勢の強まりが統計から確認できることになるかもしれません。ただし、注意が必要なのは、中国の場合は為替がはなはだ人為的に決められている面がありますから、海外の所得動向だけでなく、為替の価格動向にも貿易が左右されることを忘れるべきではありません。
最後に、中国の貿易黒字が縮小するということは、デカップリング論の破綻を意味するのではなく、逆に、それまで中国からの輸入に漏れていた諸外国の所得の漏れが小さくなることを意味しますから、外需がプラスになることから米国などの景気を押し上げる要因ともなります。ただし、その前提は、中国が持続的に内需が牽引する景気拡大を続けることであり、米国などの外需が落ち込んで中国経済までが減速することになれば、やっぱり、デカップリング論は成り立たないことになります。

現時点で、中国を中心とする新興国が米国経済の景気後退をカバー出来るまでのデカップリング論が成り立つと考えているエコノミストは少ないと思いますが、世界経済の多様化や多極化と各国経済のグローバル化の進展は、決して悪くないことなのだということが出来ると思います。なお、今夜のエントリーのタイトルの「中国の貿易統計はデカップリング論の破綻を示しているのか?」については、決して Half ではあり得ないんですが、Half empty. Half full. に通ずる答えになるような気がします。

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