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2008年4月25日 (金)

コストプッシュの消費者物価上昇はグローバル経済の帰結

今日は、朝から少し雲が多かったんですが、昼過ぎには晴れていいお天気になりました。気温も午後には20度くらいまで上がったようです。下の子は今日が遠足でしたので、少し前からお天気を気にしていたんですが、今朝は張り切って出かけました。高尾山への遠足はとっても楽しかったようです。でも、張り切り過ぎたのか、疲れ切って帰って来ました。ついでながら、いよいよ、この週末からはゴールデンウィーク前半の部です。まずまず、お天気には恵まれるようです。

全国消費者物価指数の推移

今日、3月の全国と4月の東京都区部の消費者物価 (CPI) が発表されました。3月の全国コア CPI は市場のコンセンサスとおなじ前年同月比1.2%の上昇でした。上のグラフのとおりです。CPI が前年同月比で1%を超えたのはかなり久し振りのようです。まず、いつもの NIKKEI.NET のサイトからヘッドラインの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。

総務省が25日発表した3月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合が100.8と、前年同月比1.2%上昇となった。上昇は6カ月連続。項目別で価格の上昇幅が大きかったのは光熱・水道(4.2%上昇)だった。生鮮食品を含む総合では101.0と、1.2%上昇した。
生鮮食品を除く総合は、日経QUICKニュース社がまとめた市場予測平均値(1.2%上昇)と同じだった。
同時に発表した4月の東京都区部の消費者物価指数(中旬の速報値、2005年=100)は生鮮食品を除く総合で100.7と、前年同月比0.7%上昇した。

需要曲線と供給曲線コア CPI 1.2%ということは、日銀の「物価安定の理解」の中央値を超えたことになります。しかし、上限の2%にはまだ余裕があります。他方、コストプッシュだから「悪いインフレ」だと言われることもあります。しかし、私は「よいデフレ」と「悪いデフレ」の区別に意味がないのとまったく同様に、「よいインフレ」と「悪いインフレ」の区別にも意味がないと考えています。まず、基本的なおさらいですが、左のグラフのように、初級経済学のテキストで扱われている通り、産出と価格のカーテシアン座標において右下がりの赤の需要曲線と右上がりの青の供給曲線を仮定します。実線がシフト前で、破線が何らかの要因で物価上昇をもたらす方向、すなわち、上方または右方へシフトした後です。コストプッシュのインフレの場合は青の実線の供給曲線が青の破線にシフトし、右下がりの需要曲線を仮定する限り、価格は上昇して産出は減少します。逆に、ディマンドプルのインフレの場合は赤の実線の需要曲線が赤の破線にシフトし、右上がりの供給曲線を仮定する限り、価格が上昇すると同時に産出も拡大します。私のようなリフレ派のエコノミストは物価が上昇して産出も拡大する、このような状態を目指すべきと考えているわけです。それはともかく、テキストの世界では「ディマンドプルはいいインフレ」で、「コストプッシュは悪いインフレ」という見方も出来ないわけではありません。しかし、少なくともグローバル経済の観点からは、コストプッシュとばかりは言い切れないと私は考えています。
現時点では、主としてコストプッシュの要因として一次産品価格が上げられていることから、取りあえず、原油について簡単に検証すると、少し古いんですが、国際エネルギー機関 (International Energy Agency: IEA) の "Key World Energy Statistics 2007" の統計に当たってみました。グラフを3点取っています。上から地域別の原油生産の推移、産業別の石油の最終消費の推移、主要な石油価格の推移です。繰返しになりますが、2007年初頭までの古い統計なので、グラフは原油価格が現在のように1バレル120ドル近辺で推移しているようにはなっていません。悪しからず。でも、大雑把には原油価格の上昇振りも見て取れると思います。

Crude Oil Production

Total Final Consumption

Key Crude Oil Spot Prices

フォーマルな分析なしにグラフだけで考えるのは危険であると何回か繰り返しているんが、少なくとも、私の目には原油価格の上昇の裏づけとして、消費と生産が着実に増加しているように見えます。報道されているように、OPEC は増産を渋っているますし、必要な油田開発のための投資がなされていないとの見方もあり、コストプッシュの要素がまったくないと主張するつもりはありませんが、ある程度は需要にサポートされた価格上昇であると見なすことも出来るのではないかと思います。要するに、グローバルなコンテクストの中では新興国などの高い成長や、先進国でも長期にわたる景気拡大が続いて来た中で、少なくとも、1970年代の2度にわたる石油危機とは様相が異なっていることは明らかです。このグローバルなコンテクストの中で、一定の需要にサポートされた価格上昇が、日本のドメスティックな市場にはコストプッシュの原因となる価格上昇として入って来ているわけです。もちろん、グローバルな需要の中には、石油本来の燃料や化学工業の原料といった需要とともに、資産価値に着目した需要も含まれていることは明らかです。
現在の一次産品市況の上昇は行き過ぎている面もあり、私は何らかの反落局面があり得ると考えていますが、結論として、コストプッシュとディマンドプル、あるいは、「よいインフレ」と「悪いインフレ」を区別して議論することに、私は大きな疑問を感じています。要するに、新興国、特に中国などの工業化の進展により、グローバル経済が大きく変容したため、5年ほど前までのひとつの相対価格体系から別の相対価格体系に移行した結果ではないかと感じています。原油などの一次産品についての世界的な希少性がダイナミックに変化しているのであり、価格はそのシグナルです。市場における希少性に従った価格付けを容認するのであれば、価格に従った使用方法が求められるのは言うまでもありません。古典的な価格政策としての便乗値上げ監視とか、場合によっては、原油価格高騰に対する何らかの激変緩和措置も必要になる可能性は排除しませんが、コストプッシュだとか、「悪いインフレ」であるとかで済ませるんではなく、ましてや、従来の相対価格体系を前提にした補助金めいたものではなく、新しい相対価格体系にスムーズに対応できるような政策が必要なんだという気がします。

何となく、最近の新聞などの論調が紋切り型で、所得が伸びていないので仕方がない面も理解しますが、現在の1%を少し越えるくらいの緩やかな物価上昇に対して、「コストプッシュ」とか「悪いインフレ」とか名づけているだけで、少し疑問に感じないでもなかったので、私なりに論点を整理してみたつもりです。原油価格の上昇はグローバル化の進展の結果であるという面を忘れるべきでないと思います。最後になりましたが、今回の物価上昇はあくまで相対価格の変化であり、一般物価水準の上昇にまで及んでいないと私は判断しています。別の機会があれば詳しく考えたいと思います。

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