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2008年5月17日 (土)

川端賞受賞の田中慎弥「蛹」(『新潮』2007年8月号収録)を読む

今日も、まずまず五月晴れのいいお天気でした。気温も上がりました。でも、夕方から一天にわかにかき曇り、少し雨が落ちて来ましたが、カサを差すほどではありませんでした。明日くらいまで東京ではいいお天気が続くようですが、お天気は周期的に変化し、来週にもまた雨が降るとの天気予報です。

『新潮』2007年8月号先日、第34回川端康成文学賞の発表がありました。受賞したのは『新潮』2007年2月号に収録されていた稲葉真弓さんの「海松 (ミル)」と同じく『新潮』2007年8月号収録の田中慎弥さんの「蛹」です。左の画像は『新潮』2007年8月号の表紙です。川端賞はよく知られている通り、短編小説に対して与えられる文学賞で、井上ひさしさんなどが選考委員になっています。田中さんは1972年生まれの新進気鋭の作家で、川端賞の最年少の受賞だそうです。故郷の山口県下関市にお住まいのようです。田中さんは『切れた鎖』(新潮社)が昨年の芥川賞候補になり、川端賞とちょうど同じ時期に『切れた鎖』で三島由紀夫賞も受賞でしたので、私も注目していたものですから、日比谷図書館で『新潮』2008年8月号を借りて「蛹」を読んでみました。なお、「蛹」は新潮社から出ている『切れた鎖』にも収録されています。私の感想は少し違いますが、朝日新聞のサイトなんかでは「格差社会の隅から声援」と題して、「『蛹』は、引きこもりの若者が社会に出ようと、もがくさまを描いたとも読める」と評しています。
とっても不思議な小説です。主人公はかぶと虫で人間は出て来ません。父親のかぶと虫の代から書き起こして、幼虫のころから題名の通りの蛹で終わっています。甲虫の本能かもしれませんが、闘う人生を賞賛して植物に対する優越感を示す部分もあります。しかし、蛹になってしまえば、その瞬間は動けないわけですから植物と同じといえなくもありません。もちろん、蛹は成虫になる前の準備段階である一方で、成虫になってしまえば、かぶと虫なんかはひと夏の命です。その昔に、「太く短く」と「細く長く」といった例えで人生を語る人もいたかに記憶していますが、前者がかぶと虫をはじめとする甲虫、後者が植物なのかもしれません。その中で、甲虫であれ何であれ、蛹の時期というのは、決して「細く長く」ではないんですが、植物的な状態になっています。その蛹の状態を通らないと甲虫にはなれない必要不可欠なステップなわけです。私はそういった甲虫の代表であるかぶと虫と植物を対比させるような読み方をしました。ひょっとしたら、引きこもりは植物的な状態に例えることが出来るのかもしれませんが、何らかの成長のための必要不可欠な状態ではありませんし、甲虫の蛹とはほど遠いものであると私は思います。

何となく、いいお天気なのに図書館くらいしか出歩かず、ヒマにしている週末に文学的な時間の過ごし方をした一日でした。

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