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2008年5月22日 (木)

貿易統計から先行きの経済見通しを考える

今日も、朝からいいお天気の五月晴れでした。気温もかなり上がりました。今週と来週は役所では背広なんですが、さ来週からは6月に入りますのでクールビズが始まります。このくらいの気候が続くと、そろそろ半袖が恋しいです。

名人戦の投了図本題に入る前に、昨夜、将棋の第66期名人戦七番勝負の第4局が95手で終了し、挑戦者の羽生二冠が森内名人を破り、対戦成績を3勝1敗としました。左の投了図は共同主催の毎日新聞のサイトから拝借しています。第1局こそ森内名人が先勝しましたが、第2局以降は挑戦者の羽生二冠が3連勝です。七番勝負ですから、まさに、羽生二冠が名人位に王手をかけたわけです。次の第5局は6月に入ってから甲府で開催されるそうです。羽生二冠はすでに名人位を4期務めていますので、今回、名人位に就けば5期となり、引退後に永世名人を名乗ることが出来ます。現在、名人位にある森内名人はすでに名人位に6期就いていますから、第18世の永世名人を名乗ることが予定されており、もしも、羽生二冠が名人位に返り咲けば第19世となるのかもしれません。資格取得と引退のどちらの時点で何世と数えるのか、私はよく知りません。先に永世名人の資格を取得した方が順番が早そうな気がしますが、先に引退した方が大きい数字の永世名人を名乗って、後から引退した方が小さい数字の永世名人なのも少し奇異に感じないでもありません。特に、森内名人と羽生二冠は同い年のようですから少し微妙です。まあ、どうでもいいことかもしれません。

輸出貿易指数の推移

さて、本題に戻って、今日発表された貿易統計速報については、貿易収支がほぼ半減と大幅に減少したんですが、輸出は強い数字が出たような印象を私は持っています。先月も取り上げた記憶がありますが、輸出指数の前年同月比伸び率は上の表の通りです。まず、輸出よりも貿易収支に着目し過ぎている偏りはあるんですが、日経新聞のサイトからヘッドラインの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。

財務省が22日朝発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた輸出超過額(貿易黒字)は前年同月比46.3%減の4850億円となった。高級車を中心に自動車輸出が伸びたものの、原粗油の輸入通関価格が1バレルあたり100.7ドルと過去最高を更新するなど原油高が引き続き影響した。
輸出額は4.0%増の6兆8956億円と4月としては過去最高。主にロシアやサウジアラビア向けに高級車が伸びた一方、半導体等電子部品や二輪自動車が減少した。輸入額は11.9%増の6兆4106億円と7カ月連続で増加した。原粗油は55%増、液化天然ガスも65.8%増加した。

輸入との差引きの貿易収支については、これほど原材料の商品市況が高騰しているんですから、貿易収支半減に驚かないわけではないですが、生産や消費に必要な輸入を行っているとすれば、あり得る事態かもしれません。しかし、上の引用で言うと、後の方のパラの輸出に私は注目しています。引用した記事にもある通り、輸出は金額で+4.0%増、上の表にあるように数量で+9.9%増となっています。単月の統計で判断するのはムリがありますが、先月の統計では輸出の増勢が鈍化し始めた可能性が示唆されていた一方で、今月の数字はそれを否定しているようにも見えます。

輸出と鉱工業生産

景気転換点を探る場合、繰返しになりますが、日本では景気サイクルの先頭を走る鉱工業生産と、さらに、生産に先行するかもしれない輸出がキーポイントになると私は考えています。その輸出と生産をプロットしたのが上のグラフです。赤い棒グラフが鉱工業生産の前年同月比伸び率でパーセント表示の左目盛りです。青い折れ線グラフが輸出数量の前年同月比で右目盛りです。再び、単月の統計で判断は出来ないものの、3月は生産と輸出のどちらもが下に振れましたが、4月の鉱工業生産統計はまだ発表されていないものの、今日発表された4月の輸出数量は持ち直しつつあると見ることも出来ます。
いずれにせよ、景気転換点を探る上で、私がが何度かこのブログでも主張しているように、秋口以降の消費に不透明感があるとしても、消費から景気が転換して景気後退局面に入ることは日本の場合は考えにくいと思いますから、GDP のコンポーネントで注目すべきは設備投資とそれに先行するかもしれない輸出だと私は考えています。さらに、設備投資を考える際には輸出だけでなく、企業業績も考慮する必要があります。もちろん、金利水準の大きな変動がないと仮定した場合です。新聞などのメディアでも報道されているように、商品市況の上昇を受けた原材料高から、今年の企業業績については軒並み減益が予想されていて、商品市況がさらに上昇すれば10%近い減益になる可能性も排除できません。今日発表された貿易統計でもその一端は伺い知ることが出来ます。先日発表された機械受注は設備投資の先行指標と考えられるんですが、内閣府は基調判断を「足元は弱含んでいる」に下方修正しました。どうも、控えめに言っても、今年の設備投資は弱そうな雰囲気が漂っています。しかし、今日の貿易統計を見る限り、設備投資につながる部分が大きくて、生産を下支えするであろう輸出は堅調なように見えます。問題は輸入の方で、商品市況の上昇に起因する原材料高が企業収益を圧迫しています。堅調な輸出と価格上昇の激しい輸入のどちらの影響力が大きいかによって、ある程度、設備投資や今度の景気動向にも影響が出るんではないかと私は考えています。

各機関の経済見通し

ということで、最後に、上の表は各機関の今年度と来年度の経済見通しの一覧表です。朝日新聞のサイトから引用しています。大雑把に言って、今年度・来年度ともに潜在成長率のレンジの下限近傍の数字が並んでいるように見えますし、特に、今年度高いところは来年度に落ち、逆は逆であると見ているような気がしないでもありません。私もこの14機関すべての経済見通しを見たわけでないんですが、私が見た範囲だけでも、2機関が昨年末から景気後退局面入りしている可能性が高いとリポートしているのが注目点だと思います。ニッセイ基礎研と、上の表にはないんですが、三菱UFJ証券です。現時点で利用可能な経済指標を見る限り、足元ですでに景気後退局面入りしていると、多くのエコノミストを納得させるに足る明確なエビデンスは見当たりませんが、もう少し時間がたってから歴史的に振り返れば、昨年10-12月期をピークにすでに景気後退局面に入っていると判定される可能性は否定できないと私も考えています。

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