消費税引上げは必要か?
今日は、朝のうちは激しい雨が降りました。またまた台風が近づいて来ているようで、風も強くてカサを差してもムダなくらいの降りでした。昼前には雨が止んで蒸し暑くなりました。
昨日、社会保障国民会議の所得確保・保障分科会が開催され、「公的年金制度に関する定量的なシミュレーション結果」について議論がなされました。左の表は朝日新聞の今朝の朝刊に掲載されていたものを引用していますが、どのような試算をしても2050年度には消費税に換算して10%を超える税率が必要であるとされています。私もシミュレーション結果について大雑把にリポートを拝見しましたが、マクロ経済に関する前提の置き方により2050年度の数字なんかは大きな差が生じる可能性は否定出来ないものの、少なくとも、厚生労働省や財務省の主張を通すために大きく不自然な前提を置いているようには見えませんでした。控えめに言っても、将来がこの姿になる可能性は排除できません。まず、図表を引用した朝日新聞のサイトから最初の2パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
政府の社会保障国民会議は19日、基礎年金の財源をすべて税で賄った場合、09年度に9.5-18%まで消費税を引き上げる必要があるとの試算を公表した。保険料負担は減るが、増税との差し引きで年金受給者や会社員世帯では負担増となる一方、厚生年金の拠出金がなくなる企業の負担は減る。
基礎年金を巡っては、保険料と税を併用する現行の「保険方式」を見直し、全額税で賄う「税方式」に改めるべきだとの考えが、民主党や経済界のほか、自民党の一部にもある。税方式に伴う負担のあり方を具体的に示した今回の試算は、今後の年金制度の議論に影響を与えそうだ。
このところ、米国が景気後退に突入したりして、短期的な景気動向に私の関心も集まっていたりしたんですが、比較的短期の2-3年くらいのタイムスパンの景気循環は中央銀行が金融政策により対応し、より長期の社会保障などの制度設計が政府の本来の役割です。しかし、昨年の年金問題は事務ミスの要素が強かったものの、今年の後期高齢者医療制度を見ていると、日本の高齢者はハッキリと負担の増加を拒否しているように私は受け止めています。いつかのエントリーで、日本の高齢者は selfish ではなく、応分の負担は受け入れる可能性が高いと書きましたが、私の認識間違いでした。もしも、高齢者が負担の受入れを拒否するのであれば、別の財源を考える必要があるのは当然です。しかも、時間的な余裕は少なくなりつつあります。すなわち、いわゆる団塊の世代は1946-48年生まれですから、今年中に全員が60歳か60歳を超えます。10年後には70歳なのは小学生でも計算できます。おそらく、財政の大きな部分を占めている年金や医療・介護の制度についてサステイナビリティを考える時間的な余裕は10年も残されていません。
最近、日本の高齢者が selfish であるかどうかとともに、もうひとつ、財政のサステイナビリティについても考えを変えつつあります。2年ほど前のエントリーで財政がサステイナブルでなくなるとどうなるかを考えた際のエントリーでは、一気に国債が売れなくなって金利が急上昇することは考えにくく、プレミアムを要求される一定の期間があるハズで、ひょっとしたら5年くらいあるかもしれないと書きましたが、最近、いろんなエコノミストとお話していて、逆に、sudden death かもしれないと考え始めています。幸田真音さんの『日本国債』の世界です。確かに、金融資産市場の調整スピードがかなり速いのは事実です。もっとも、そんな世界が見通し得る近い将来に起こるとは私も考えていませんし、無用の不安を煽るつもりもありません。取りあえず、考えを修正しつつあり、5年は悠長に過ぎると考えているだけです。
今回の後期高齢者医療制度で私が一番印象的だったのは、先ほども書いた通り、日本の高齢者は負担の増加を拒否する姿勢をハッキリと示したことです。これは私にはかなりショックでした。私は日本の財政の配分がかなり高齢者に偏っており、それをひとつの遠因として少子化対策も考えるべきだと思っていて、考えようによっては、カギカッコ付きで「高齢者に冷たい態度」を意識的に取って来たりしたんですが、いっそう、その傾向が強まってしまうのは少し困ったことだと受け止めています。私の専門外ですが、現在の内閣支持率の低下の一部は後期高齢者医療制度に起因しているとの分析もあります。繰返しになりますが、高齢者が負担を拒否するのであれば、別の財源が必要です。
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