食料とエネルギーの価格上昇の主たる原因は何か?
今日は、朝から雲が広がり、そんなに陽射しはなくて朝のうちは少し肌寒かったんですが、午後から気温はそこそこ上がりました。お天気は下り坂で、東京では明日は雨が降るとの天気予報です。
"Wall Street Journal" が "Economic Forecasting Survey" の結果を公表しています。通常のインフレ、成長率 (GDP)、金利の調査項目に加えて、今回の5月調査のイシュー別の Q&A として、食料・エネルギー価格上昇の原因についての設問があります。先月の4月は米国経済が景気後退に入っているかどうかに関する設問でした。結果は上のグラフの通りです。中国やインドの需要を上げるエコノミストが多く、次いで、供給制約が大きな比率を占めています。投機が主因とする意見は、食糧もエネルギーもともに10%余りに過ぎません。まず、"Wall Street Journal" の記事の最初のパラだけを引用すると以下の通りです。
The global surge in food and energy prices is being driven primarily by fundamental market conditions, rather than an investment bubble, say the majority of economists in the latest Wall Street Journal forecasting survey.
私はすでに先月4月25日付けのエントリーで主張している通り、日本にとってはコストプッシュの物価上昇かもしれないんですが、グローバルなコンテクストの中で考えれば、新興国の経済発展や所得水準の上昇に伴う需要に支えられたディマンドプルの物価上昇であり、数年前、中国が WTO に加盟する直前くらいから、直近の時点までの期間において、ひとつの相対価格体系から別の相対価格体系に移行した結果、あるいは、移行しつつある過程ではないかと考えています。移行した結果なのか、移行しつつある過程なのかは、もう少しフォーマルな分析をしないと分かりません。でも、私の直感は今回の "Wall Street Journal" の "Economic Forecasting Survey" の調査結果におけるエコノミストの多数意見とほぼ符合しているんではないかと考えています。
他方、日本国内の論調は陰謀史観に近いと私には見受けられます。例えば、記事の中身は別にしても、「日経ヴェリタス」の最新号なんかは1面のタイトルが、いかにも、米国のサブプライム問題により資金が株や債券といった金融資産市場から穀物や原油などの一次産品市場にシフトしたことが商品市況の大幅な上昇の主要な原因である、との誤解を惹起しかねないように私は心配しています。この「日経ヴェリタス」のタイトルなんかは、今年2月11日付けのエントリーで取り上げたジョージ・メイソン大学のカプラン准教授の "The Myth of the Rational Voter" で "anti-market bias" と称されている、専門的知識に欠ける非エコノミストの偏向した見方に分類されるものかもしれません。まあ、サブプライム証券から逃げ出した資金も市場の中ではあるんですが、"Wall Street Journal" の "Economic Forecasting Survey" のコメントには、"Fundamentally too much demand, too little supply." というのもあったりします。もっとも、"In last 6 months: speculation." なんてコメントもあります。
前回4月25日付けのエントリーでは、私は何の論拠も示さずに、現時点における物価上昇はあくまで相対価格の変化に止まっており、少なくとも日本国内では一般物価水準の上昇にまで及んでいないとの認識を示しましたが、今後は、食料やエネルギーの価格上昇がいつまで、また、どの水準まで続くのかはもちろん、これらの価格上昇が一巡するころ、一定のラグを伴って、一般物価水準がどのような変化を見せるかに注目すべきではないかと考えています。
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