本日発表されたいくつかの経済統計から
今日も、朝から雨が降ったり止んだりで、少なくとも午前中はカサが手放せませんでした。昼前に雨は止んだものの、気温は下がり続けているようで、今日なんかは外を出歩いてもそんなに汗をかくこともなく、逆に、少し肌寒く感じるほどでした。役所では来週からのクールビズに対するお達しのメールが送られて来たんですが、このまま気温が上がらないと長袖で始めることになるのかもしれません。
今日はいくつか経済統計が発表されました。このブログで取り上げようと考えている順に、鉱工業生産、労働力調査、消費者物価なんですが、家計消費なども公表されています。今夜のエントリーでは、今日発表された最新の統計だけでなく、少し長い目で見た経済の動きについて注目したいと思います。
最初にまず、鉱工業生産を見ておきたいと思います。上のグラフの通りです。季節調整済みの月次の系列です。繰返しになりますが、米国では雇用 ⇒ 所得 ⇒ 消費 ⇒ 生産の景気のサイクルが見られるのに対して、日本では生産 ⇒ 雇用 ⇒ 所得 ⇒ 消費のサイクルのシークエンスですから、GDPに占める比率が 1/4 程度とは言え、日本の景気循環のシークエンスで占める生産の位置は重要です。と言うことで、1-3月期のGDP統計で年率3%を超える成長が記録されてはいるんですが、グラフを見る限りは昨年10-12月期をピークにして、今年の3-4月は下落しています。ここで参照すべきは2004年後半から2005年にかけてのいわゆる景気の踊り場の局面です。この当時は2000年の旧基準だったんですが、現在の2005年の新基準で見ると、2004年7月の100.4をピークに2004年12月の97.6まで下がり、2005年1月に99.8へ戻した後、2005年10月の99.8までほぼ横ばいの状況となります。その後、グラフで見る通り、再び上昇局面に戻っています。軽くまとめると、半年ほど下落局面があった後、1年近くの横ばいが続いて、その後は上昇局面に戻るという形になっています。ですから、このまま景気後退局面に入るのかどうかについては、ongoing の鉱工業生産指数の下落がいつまで続くのかを見極める必要があると私は考えています。現時点では、2004年後半から2005年にかけてと同様に踊り場で終わるのか、それとも、景気後退局面に進むのかは即断できないと私は見ています。
失業率も再び4%台に乗りました。上のグラフの通りです。私が少し注目したのはグラフから明らかですが、失業者数が増加に転じたことです。グラフは引用しませんでしたが、有効求人倍率は4月には 0.93 と 前月の 0.95 よりも 0.02 ポイント悪化し、一昨年2006年7月の 1.08 をピークにゆっくりと悪化して来ているのは以前にも取り上げたかと思います。有効求人倍率は景気動向指数 (DI) の一致系列に採用されていますから、これだけを見ると景気後退局面に入っている可能性もありますが、日銀短観などのマインド調査のソフトデータによれば、まだまだ雇用不足感は存在しますので、一概には何とも言えない状況が続いていると私は考えています。
最後に消費者物価です。4月は広く知られた特殊要因、すなわち、ガソリン暫定税率が1ヶ月だけ廃止と言うか、中断されたため、前月3月の前年同月比の1.2%の上昇から少し下がって0.9%となりました。上のグラフの通り、黄色のエネルギーの寄与度も引き続き大きいんですが、最近半年くらいでは食料品の寄与度が目立って高まっています。上のグラフではピンクの非耐久財に区分されています。この背景は、言うまでもなく、エネルギーとともに穀物などの商品価格が上昇しているからです。
穀物などの食料品価格については、昨日、経済開発協力機構 (OECD) と国連食糧農業機関 (FAO) が合同で、"OECD-FAO Agricultural Outlook 2008-2017" を発表しています。OECD 東京事務所が日本語のサマリーも公表しています。上のグラフの通りです。これによれば、この先10年くらいは食品価格は高止まりを続けるようです。しかし、私の見方ではエネルギー価格とともに食品価格も落ち着いてくれば、一定のタイムラグを伴って一般物価水準の上昇につながるでしょうから、その落ち着いた段階で、第1に、どの水準で落ち着くのかはもちろん、第2に、どのような世界的相対価格体系が形成されるのか、が注目点だと思います。私が勝手に定義した広義にせよ、通常の意味の狭義にせよ、エンゲル係数が高い国や家計を直撃する物価上昇ですから、エンゲル係数の高低に従った格差が広がる方向にあるのは確かであろうと考えています。さらに、マクロで考えても、私は従来から日本の個人消費は年央くらいまで底堅く推移すると見通していたんですが、物価上昇により消費のダウンサイド・リスクが高まったと受け止めざるを得ません。
いろんな同僚エコノミストとお話していると、日本経済の先行きの見通しはエコノミストに聞くより、商品市況のアナリストに聞いた方が正確ではないかと思わないでもないんですが、いずれにせよ、引き続き景気判断の難しい局面にあることは間違いないと私は考えています。
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