結局、消費税率は引き上げるのか、引き上げないのか?
今日は、朝から梅雨の中休みのいいお天気でした。気温もかなり上がったようです。それ以上にオフィスが蒸し暑いです。我が家の子供達の通う小学校ではプールが始まっているようで、とってもうらやましかったりします。
昨夜、経済財政諮問会議が開催され、「経済財政改革の基本方針2008」の原案が示されました。いわゆる「骨太2008」と呼ばれているものです。目次は上の通りです。本文だけで約30ページ、付属資料の約10ページを含めて、全体で40ページほどの資料です。その本文の最後の30ページにある「平成21年度予算の方向」だけを引用すると以下の通りです。
平成21年度予算は、「基本方針2006」で示した5年間の歳出改革の3年目に当たる。歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、引き続き「基本方針2006」、「基本方針2007」に則り、最大限の削減を行う。予算編成の原則を引き続き遵守するとともに、ムダ・ゼロに向けた見直しを断行し、真に必要なニーズにこたえるための財源の重点配分を行う。
取りあえず、歳出削減を進める意向は示されているものの、この部分には歳入については何ら言及がなく、このエントリーで後に示すように税制改革の部分に分けられています。しかし、我が家で購読している朝日新聞の報道からも、消費税率の引上げに関する福田総理大臣の発言が揺れ動いているように見受けられます。いくつか、最近1週間ほどの朝日新聞のサイトで見かけた関連する記事へリンクを張ると以下の通りです。
- 6月17日 消費税引き上げ「決断の時期」 首相、不可避との見方
- 6月23日 消費税上げは「もう少し先」、景気への影響も無視できない=福田首相
- 6月24日 消費税引き上げ、来年度は困難と首相 「2、3年後の話」
ホントによく読めば、決して矛盾しているわけではなく、現時点で決断して実施は2-3年先、とも考えられなくもないんですが、私のような "Simple is beautiful." 志向の人間から見ると、少し矛盾を来たしていて、福田総理大臣の決断が揺れ動いているように見受けられなくもありません。
消費税率を引き上げるかどうかについては、いくつかの考え方があるのはいうまでもありません。かなり現実離れしているんですが、社会保障の財源が確保されて将来不安がなくなって、国民一般の恒常所得が上向くようになれば、ひょっとしたら、個人消費は消費税率を引き上げても増加する可能性もあり得ます。ただし、これは中長期的な経済効果だという気がします。少なくとも、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた際の記憶からすれば、消費税率引上げの直前に仮需が発生して、その後、2-3四半期はその反動が現れるのが通常の理解ですし、現実にも起こったことだという気がします。要するに、少なくとも1年くらいの短期には、消費税率の引上げにより需要は減退すると考えられます。
他方、政府における行政のムダを排除するのがまず取り組むべき課題で、行政のムダを排除するまで消費税率の引上げは国民の理解が得られないとする考え方もあり得ます。道路特定財源でマッサージチェアを買ったり、タクシー券で接待を受けたりという報道を見かけると、特に、そのような意見が盛り上がったりします。しかし、行政のムダをなくすのは結構で、誰も反対できないと思うんですが、ひょっとしたら、それを待っていたのでは永遠に財源手当てが出来なくなる可能性もあったりします。この春先からの長期金利の上昇は、私の知り合いの同業者のエコノミストから送られて来たリポートによれば、日本財政のサステイナビリティに対する不安からリスクプレミアムが付加されている可能性も指摘されていたりします。私は市場参加者の時間的な視野はそれほど長くないと思いますし、5月20日付けのエントリーで書いたように徐々に金利が上がるんではなくてサドンデスではないかと思い始めていますから、この見方にも同意することは出来ませんが、将来的に、人口構成から考えても残された時間は5年ほどだという気がしますので、行政のムダを根拠にした消費税率引上げの反対論は現時点での高齢者の逃切りにつながるという気がしないでもありません。
これらを総合すると、やっぱり、「経済財政改革の基本方針2008」の原案の23ページに示されている税体系の抜本的な改革に向けた4つのポイントはとっても重要だと考えられます。以下の通りです。
- 生産性向上を促し、成長力を強化する。
- 税制が社会保障とともに再分配機能を適切に果たすようにし、世代間・世代内の公平を確保する。
- 少子高齢化の下で、社会保障を支える安定的な財源を確保する。
- 低炭素化促進の観点から税制全般を見直す。
5月26日付けのエントリーでも主張したように、私は政府の財政政策の効率性は、歳入と歳出とでは非対称で、例えば、地球環境保護の課題に対して、カーボン・タックスなどの税制によって特定の財の消費を抑えることはかなり効率的に出来るような気がしますが、逆に、化石燃料に頼らない新エネルギー開発などの対策に政府支出を振り向ける方は、政府の施策によって画期的な対策が出来上がることには大きな期待は持てないと考えており、その意味でも、税制による財政政策に期待する部分は大きいと考えています。
消費税率については国民のコンセンサスが重要で、そもそも議会とは税制を議論するために創設された歴史上の経緯もありますから、正確な情報に基づく選択肢を示した上で、何らかの国民の選択が示されることが必要だと私は考えています。
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