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2008年6月 4日 (水)

法人企業統計調査結果から何を読み取るか?

今日は、雲が多かったものの、晴れ間も見えてまずまずいいお天気でした。昨日よりもずいぶんと気温は上がったように感じます。でも、感性よりも慣性で服装を選んでいる私は今日も長袖でした。

財務省から今年1-3月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。ヘッドラインの全産業の設備投資額は16兆8648億円となり、前年同期に比べ▲4.9%減少でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

財務省が4日発表した1-3月期の法人企業統計によると、全産業の設備投資額は16兆8648億円で、前年同期に比べ4.9%減少した。国内総生産(GDP)を推計する基礎となるソフトウエアを除いた設備投資額は同5.3%減の15兆5327億円となり、季節調整して前期と比べると1.3%増加した。
ソフトウエアを含めた設備投資の内訳は、製造業は前年同期比0.9%増の6兆250億円、非製造業は7.8%減の10兆8398億円だった。
同統計は金融・保険を除く資本金1000万円以上の約2万社が対象。全産業の売上高は同1.5%減の390兆6315億円で、このうち製造業が5.9%増の122兆6771億円、非製造業は同4.5%減の267兆9544億円。経常利益は17.5%減の13兆7548億円で、製造業が15.7%減の5兆3893億円、非製造業は同18.6%減の8兆3655億円だった。

通常、法人企業統計調査は2次統計であるGDP統計の基礎統計となりますから、どうしても、設備投資の数字が注目されます。ですから、今日発表された法人企業統計調査の結果を単純に当てはめると、来週の6月11日に発表される2次QEへの寄与が+0.1%ポイントくらいあるので、その他の条件を同じと考えれば、1次QEで前期比+0.8%増だったGDP成長率は2次QEで少し高まると試算した結果が私の同業者のエコノミストから送られて来たりしました。もちろん、2次QEで改定されるのは設備投資だけでなく、消費や貿易などもありますから、そんなに単純な話ではありません。

経常利益の推移

私が今回の法人企業統計調査で注目したのは、設備投資もさることながら、商品市況の高騰のあおりで原材料費が上昇する中で経常利益がどうなっているかです。上のグラフの通りです。直感的にもゆっくりと減益に向かっているのが読み取れると思います。少し細かな計数を追うと、全産業の経常利益は前年同期比で見て、昨年上期は1-3月期+7.4%、4-6月期+12.0%と順調に拡大して来ていたのが、7-9月期に▲0.7%減と減少に転じた後、10-12月期▲4.5%、今年に入って1-3月期▲17.5%と減少のペースが急加速しています。今年度については、私は企業収益は▲5-10%くらいの減益で、2桁を大きく上回る減益は想定していませんでしたが、ひょっとしたら、▲10%を超える減益もあり得るかもしれないと思い始めています。特に、統計を詳しく見ると、原材料高の影響をモロに受けている製造業ではなく、非製造業の建設業、卸小売業、不動産業などの減益幅が大きくなっています。今後、原材料高の影響を受けて交易条件が悪化する製造業が減益幅を拡大すれば、全産業でより大きな減益になる可能性も否定できません。
もちろん、企業収益が減益になると、第1に、資金面から設備投資の減少要因となり、第2に、株価の下落要因ともなります。ひいては、賃金を抑制する方向に向かいかねないとも考えられるんですが、実は、この1-3月期には逆の現象が起きているように見受けられます。すなわち、先日発表された毎月勤労統計にも現れているんですが、賃金の上昇が少しずつ実現されているようです。大きな要因はいわゆるパートタイム労働者法が4月から施行されることで、3月くらいから前倒しで正社員化の効果が現れていると見るのが適当な気がします。もうひとつは、原材料価格上昇の負担について、製品価格に転嫁されないとの前提の下では、限界的な労働分配率に従うとの説を紹介しましたが、平均的な労働分配率がかなり低位にある現在の局面では、逆に、限界的な労働分配率が高くなっている可能性があります。この両者が相まって、労働分配率を押し上げる方向に作用しているような気がします。もしもそうだとすれば、企業収益の減少はそんなに悲観する必要はないのかもしれません。いずれにせよ、もう少し長い期間で観察しなければ確定的なことは言えないように思います。

今日発表された法人企業統計調査の結果は、現在の景気局面下で生じているいろんな事象を凝縮しているように私は感じています。いずれも現時点では確定的なエビデンスを見出せるわけではありませんが、今年の上半期は何らかの意味で潮目が変化する時点に当たっているのかもしれません。

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