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2008年7月25日 (金)

消費者物価 (CPI) 上昇率はそろそろ2%を超えるか?

今日も、朝からいいお天気で昨日よりも気温が上がりました。夕方から夜にかけて雨が降るとの天気予報だったんですが、私は帰宅するまで雨には遭遇しませんでした。やっぱり、毎日蒸し暑い日本の夏が続いています。

消費者物価上昇率の推移

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が発表されました。全国の6月と東京都区部の7月です。全国の消費者物価の推移は上のグラフの通りです。青い折れ線グラフが生鮮食品を除くコア CPI 上昇率、赤い折れ線がエネルギーと食料を除く欧米流のコアコア CPI の上昇率です。6月全国のコア CPI は前年同月比で1.9%に達しました。なお、積上げの棒グラフは寄与度で、黄色がエネルギー、緑が食料、水色がその他となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する短い記事を引用すると以下の通りです。

総務省が25日発表した6月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.0と、前年同月比1.9%上昇となった。上昇は9カ月連続。項目別で価格の上昇幅が大きかったのは光熱・水道(6.8%上昇)だった。生鮮食品を含む総合では102.2と、2.0%上昇した。
生鮮食品を除く総合は、日経QUICKニュース社がまとめた市場予測平均値(1.9%上昇)と同じだった。
同時に発表した7月の東京都区部の消費者物価指数(中旬の速報値、2005年=100)は生鮮食品を除く総合で101.4と、前年同月比1.6%上昇した。

記事にある通り、プラスのインフレ率は9ヶ月連続で、1.9%の上げ幅は1997年4月の消費税率引き上げの影響を除けば1992年12月の2.0%以来だそうです。上のグラフにも見える通り、エネルギーと食料の寄与度が大きく、エネルギーの寄与度が1.13%、生鮮食品を除く食料が0.79%となり、CPI 上昇のほとんどをこの両セクターが占めたことになります。特に、ガソリンは前年同月より24.2%値上がりし、コア CPI を0.63%押し上げています。他方、エネルギーと食料以外のその他の水色は、小幅ながらまだマイナスを続けています。しかし、コアコアの CPI も6月にはプラスに転じました。
私の見立てでは、第1に、すでに基準年から3年が経過していますから、計測誤差も0.5-0.6%くらいあってもおかしくないでしょうし、第2に、まだエネルギーと食料に偏った相対価格の変化であって一般物価水準の変化まで達していない、と考えているんですが、今夜のエントリーの論点はこのインフレ率の見方と日銀の対応の2点です。まず、この物価上昇の経済的インパクトをどう見るかなんですが、考えられるルートは2つあります。物価上昇⇒企業収益圧迫⇒景気減速、と進むルートと、物価上昇⇒生活費上昇⇒賃金上昇、と考える連想ゲームのルートです。前者はエネルギー価格の上昇に当てはまりやすく、後者は食料価格に対応しやすいと考えることが出来ると思います。もっとも、若い人は「連想ゲーム」なんて知らないかもしれません。中年以降のエコノミストの用語かもしれません。本題に戻って、現在のエネルギーと食料が先導するインフレが、私の言うところの一般物価水準の上昇、昨夜も取り上げたアジア開発銀行 (ADB) や国際通貨基金 (IMF) などの国際機関の言うところの2次インフレに展開するには賃金の上昇が十分条件になります。これは日本のデフレ脱却の議論で私が指摘したとおりです。そして、現在の相対価格の変化に基づく物価上昇が賃金の上昇につながるかどうかは、労働市場の柔軟性と国民のインフレ期待がキーポイントになります。私の直感ですが、日米欧の先進国において、特に、日米両国においては労働市場の柔軟性がかなり確保されている印象があります。ホンの少しかもしれませんが、欧州は日米ほどの労働市場の柔軟性はないかもしれず、その意味で、欧州中央銀行 (ECB) が利上げを実施したのではないか、という議論は7月17日付けのエントリーで展開したと記憶しています。さらに、アジア新興国などでは労働市場の柔軟性に欠ける場合も大いにあることについては、昨夜7月24日にアジア開発銀行のリポートを取り上げたエントリーで指摘した通りです。もうひとつのインフレ期待については決定的な計測が困難でもありますが、少なくとも現時点の日本ではインフレ期待が高まっていると感じているエコノミストは少ないように思います。先ほどの連想ゲームからインフレ期待につながりかねない可能性は少しずつ高まりつつあるように私は感じていますが、他の国は別として、結論は日本については一般物価水準の上昇は足元の経済情勢では起こりにくいと多くのエコノミストは考えているんではないかと思います。
第2の論点で、今夜のエントリーのタイトルにしましたが、来月にもインフレ率が2%を超えると考えるエコノミストが多い中、2%という数字は日銀の「物価安定の理解」の上限です。もちろん、コア CPI が2%を超えたら自動的に日銀が利上げを実施すると理解しているエコノミストはいないと思いますが、一応、それなりの区切りの数字であることは確かです。こういった場合、金融引締め局面における日銀の動向に先行しているのが水野審議委員であると多くのエコノミストが考えているように思いますが、ちょうどタイミングよくと言うか何と言うか、昨日24日に水野審議委員は青森で講演し、すでに日銀のホームページに要旨がアップされています。ほぼ結論と目される「金融政策運営の考え方」では、「わが国経済を覆う霧は当面晴れそうにありません。現在は、物価の安定を通じて持続的な成長に貢献するという金融政策の目的を達成する上で、金融政策決定会合で『現状維持』を決定することに積極的な意味があると思います。」と発言しています。要するに、日銀はインフレ率が「物価安定の理解」の上限である2%を超えても、景気や成長の観点から金利引上げはすべきでないというご意見のように読み取れます。

いつかのエントリーで触れたかもしれませんが、現在の商品市況の高騰を背景とする物価上昇は、少なくとも日本では相対価格の変化に止まっていて、労働市場の柔軟性が高い一方でインフレ期待も低いことから、一般物価水準の上昇には達しておらず、従って、金融政策を引締め方向に動かす局面にない、というのが今夜のエントリーの結論です。水野審議委員といくつかの論点で意見が一致して光栄です。

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