日銀短観から何を読み取るか?
今日も、梅雨の中休みで、この季節にしては、まずまずいいお天気でした。朝のうちは雲が多かったんですが、午後からは陽射しもあって蒸し暑かったです。
さて、少し帰宅が遅くなった昨夜のいい加減なエントリーから、今日は経済評論の日記に戻ります。本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインを含む記事をいつもの日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す景況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス5と、3月の前回調査から6ポイント低下した。原油などエネルギー・原材料価格の高騰が響き、3四半期連続で悪化した。大企業製造業は今年度の経常利益が7年ぶりの減益になると見込んでいる。設備投資計画は伸びが鈍化し、景気の足取りはいっそう弱まっている。
企業の業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。景気への影響が大きい大企業製造業のDIは、2003年9月調査以来、4年9カ月ぶりの低水準となった。
大企業製造業で景況感が悪化したのは全15業種のうち10業種。自動車や石油・石炭製品、鉄鋼、造船・重機等の4業種は、世界的な原材料価格の高騰が響き、業況判断DIが前回調査より10ポイント以上、低下した。3カ月先の見通しでは自動車や石油・石炭製品、一般機械など8業種が悪化を予想、大企業製造業全体のDIは今回より1ポイント低下する。
引用した記事にある通り、ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲6ポイント低下して+5となりました。引用した記事にある通り、3四半期連続の悪化となります。しかし、市場の事前コンセンサスの上限から少し上回る程度でしたし、先行きも▲1ポイントの低下にとどまりますから、底堅いと評価する向きもあります。ほかにポジティブな評価を探すと、この業況判断DIとともに、設備投資も、土地を除きソフトウェアを含むベースで2008年度計画で+3.5%増と、3月調査から+3.9%ポイント上方修正されプラスとなりました。しかし、他方で、ネガティブな評価を受けそうな項目を上げると、国内需給判断DIはマイナス圏内で横ばいを続けていますし、価格判断DIでは仕入価格が販売価格に比べて大幅に上昇となっています。特に、中堅企業や中小企業に比べて水準は高いものの、大企業では経常利益率の低下幅が大きくなっています。要するに、かなり強弱マチマチの入り乱れた結果と私には見受けられました。
別の指標では、生産要素の設備と雇用に関して、生産・営業用設備判断DIが大企業でもゼロになりました。来期は▲1と不足感は根強いものの、不足を表すマイナスからゼロになったのは象徴的な意味がると受け止める向きもあるかもしれません。また、雇用判断DIもまだ人手不足を示すマイナスが続いているものの、マイナス幅はかなり縮小して来ており、経常収益率の低下のしわ寄せが雇用に及ぶ可能性も排除できませんし、先日、このブログでも取り上げた新規求人数の減少傾向と考え合わせると、やや労働指標は弱含み傾向にあると考えられなくもありません。
今回の日銀短観では市場に大きなサプライズはなかったんですが、私のサプライズは事業計画の前提となっている想定為替レートが大きく円高に振れたことです。3月調査では対ドルレートが109.21円だったんですが、6月調査では102.74円になりました。大企業製造業だけを対象にした調査ですから、一定の信頼性を保っていると考えられますが、商品市況が高騰して原材料高が続いているだけに、輸出採算に対して厳しめに見ているつもりが、逆に、原材料価格には甘めになっている可能性もあり、今後の動向が注目されます。
業況判断DIが3四半期連続で悪化したことをトップに据えたメディアの報道は弱気一色なんですが、私を含めた多くのエコノミストの見方は報道ほど弱くはないような気がしないでもありません。でも、「もはや景気拡大局面にはない」と題するリポートを送って来た同業者エコノミストもいましたし、エコノミスト各個人の持つバイアスが今回の日銀短観の評価に現れたような気もしないでもありません。
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